もし、キリトに実妹がいたら   作:スパイラル大沼

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第10話

 

 

シリカのレベリングもついでにするから手伝ってやれ、とのキリトの命令で、ユウはシリカと二人で前を歩いている。

 

「そういえば、ユウちゃんはどんな武器使うの?」

 

シリカが聞いた。さっきからユウは武器を出していない。

 

「片手剣とか?ていうか、それくらいしか思い浮かばないんだけど……」

 

「ユウは………」

 

答えようとした時、ガサッ!とモンスターが現れた。

 

「来た……!」

 

すると、ようやくユウは武器を取り出す。でっかい男前な斧が出てきた。それを見て、シリカは心底ドン引きしつつも、ユウは気にせずにモンスターを斧で斬って、一撃で怯ませた。

 

「シリカ、今」

 

「あっ、うん!」

 

言われるがまま、シリカはそのモンスターにとどめを刺した。そのまま順調に突き進んでいく。そして、数分後、

 

「あれが思い出の丘だよ」

 

キリトがそこを指差して言った。

 

「見たとこ、分かれ道はないみたいですね?」

 

「ああ。ただ登るだけだから道に迷う心配はないけど、モンスターの量は相当らしいな。気を引き締めていこう」

 

「はい!」

 

そのまま三人で、たくさんのモンスター達を狩っていく。もうすぐピナを生き返らせられると思うと、シリカのテンションはどんどんと上がるものだが、それ以上にユウの実力に驚いていた。

どんなにモンスターに囲まれようが、表情一つ崩さずに、その身体の二倍はある斧を振り回してモンスターを撃破していく。

その兄貴であるキリトは何もしなかった。自分に襲い掛かってくるモンスターがいれば、普通に倒していたが、シリカの手助けはほとんどユウがやっていた。余裕満々で敵を倒していく2人を見ながらもシリカはレベルもグングン上げて、ようやく丘に到着した。

 

「とうとう着いたな」

 

「ここに、その花が……?」

 

「ああ。真ん中あたりに岩があって、そのてっぺんに……」

 

キリトが言い終わらないうちにシリカはその花があるはずの場所へ。そして、そのプネウマの花を手に取った。

 

「これで……ピナを生き返らせられるんですね……」

 

「ああ。心アイテムに、その花の中に溜まってる雫を振り掛ければいい。だがここは強いモンスターが多いから、街に帰ってからの方がいいだろうな。もうちょっと我慢して、急いで戻ろう」

 

「はい!」

 

そのまま三人で丘を降りて、街道を歩く。そのまま小川にかかる橋を渡ろうとした時、シリカをキリトが止めた。

 

「えっ?」

 

「そこで待ち伏せてる奴、出てこいよ」

 

キリトが言うと、橋の向こう側からロザリアが出てきた。

 

「ろ……ロザリアさん……⁉︎なんでこんなところに……!」

 

「あたしのハイディングを見破るなんて、なかなか高い索敵スキルね、剣士さん。あなどったかしら?」

 

そこまで言って、ロザリアはシリカに目を戻す。

 

「なんでって?そんなの決まってるじゃない。あなたの……」

 

「ギルドに寄生して、ターゲット泳がせて、金やアイテムが溜まった後に後ろからオレンジカーソルの仲間と共にボコって全部奪う……ってところ?」

 

「!」

 

ロザリアの台詞を遮って、ユウが続きを言った。

 

「なっ………」

 

「ギルド名、タイタンズハンド。自分たちよりレベルの低いギルドを狙って、リーダー自らは手を汚そうともしない、それどころか一番の獲物であるシリカを挑発し過ぎてギルドから追い出してしまうまるでダメなリーダーの鏡をリーダーにしてるギルド。いや、チンピラの集まり?」

 

「な、なんでそれを……!」

 

「いかにも三流小悪党が考えそうな事。いいから、その辺に潜んでるオレンジのお友達も出せ」

 

心なしか、ユウは少し不機嫌そうにしていた。すると、十人のプレイヤーが姿を現した。

 

「ふぅん、よく調べてたみたいね、お嬢ちゃん。ひょっとして、私達のファン?」

 

「俺たちもあんたらのことを探してたからさ、ロザリアさん」

 

キリトが答えた。

 

「あんた、10日前に38層でシルバーフラグスっていうギルドを襲ったな。メンバー四人が殺されて、リーダーだけが脱出した」

 

「………ああ、あの貧乏な連中ね」

 

「リーダーだった男はな、毎日朝から晩まで、最前線のゲート広場で泣きながら仇討ちしてくれる奴を探してたよ。でもその男は依頼を引き受けた俺たちに向かって、あんたらを殺してくれとは言わなかった。黒鉄宮の牢獄に入れてくれと、そう言ったよ。あんたに、奴の気持ちが解るか?」

 

「解んないわよ」

 

面倒くさそうに答えるロザリア。

 

「何よ、マジんなっちゃって、馬鹿みたい。ここで人を殺したって、本当にその人が死ぬ証拠なんてないし。そんなんで現実に戻った時罪になるわけないわよ。だいたい戻れるかどうかも解んないのにさ、正義とか法律とか、笑っちゃうわよね。あたし、そういう奴が一番嫌い。この世界に妙な理屈を持ち込む奴がね」

 

そこで、またニヤリと口を歪ますロザリア。

 

「で、あんたら、その死に損ないの言うこと真に受けて、あたしらを探してたわけだ。ヒマな人だねー。ま、あんたの撒いた餌にまんまと釣られちゃったのは認めるけど、たった三人でどうにかなると………」

 

と、言いかけたところで、ズウゥゥゥンッッ……と、重低音が響いた。キリト達の横にあった木が倒れたのだ。が、斬ったのはシリカでもキリトでもない。ユウだった。

 

「ごめん、おにい。ユウ、約束破る」

 

「ユウ………」

 

とても小学生とは思えない眼光でユウはロザリアを睨んだ。

 

「な、何よ……文句あるの?」

 

ビビりながらもそう口にするロザリア。

 

「むしろ、たかだか10人で、ユウ1人に勝てると思ってるの?」

 

「な、何を……!ナメるのも大概に……!」

 

と、言いかけたロザリアの真横に、気が付けばユウは立っていた。そして、真横に斧を振り下ろした。

 

「なっ……!」

 

「危なかったね。今の当たってたら、死んでた」

 

「…………ッ」

 

「どうしたの?冷や汗が流れてるよ?ここで死んだからって、本当に死ぬかわからないんでしょ?」

 

ユウはあくまで淡々と話す。すると、今度は後ろからキリトが言った。

 

「別に、俺もユウも、正義とか法律の為なんかに動いてるわけじゃない。ただ、こんな異常な事態なのに、そこに紛れて、人の不幸を喜ぶような奴が許せないだけだ」

 

「ッッ」

 

すると、オレンジカーソルのプレイヤーが後ろからユウに斬りかかった。その武器をキリトが弾く。

 

「なっ……⁉︎」

 

「一応、言っておくぞ。ユウは俺と違って甘くない。これ以上抵抗すると、あんたらの好きな法律や正義の通用しない死に方をするぞ」

 

「………っ‼︎」

 

「全員、この回廊結晶で牢獄まで飛んでもらう!」

 

こうして、タイタンズハンドは壊滅した。

 

 

 

 

宿。さっきまでガンギレしてたユウは、今はキリトの膝の上で寝息を立てている。

 

「ごめんなシリカ。君を囮にするようなことしちゃって」

 

「いえ、大丈夫です。むしろ、ありがとうございます。二度も、助けてもらって……」

 

「元々、俺もユウも奴らを壊滅させるために君と一緒にいたんだ。助けたわけじゃないさ」

 

「………………」

 

すると、シリカはチラッとユウを見る。

 

「キリトさん、その……なんていうか、何か、あったんですか?ユウちゃんに……」

 

「……ああ。まぁ、少しな。ちょっと前に、俺とユウは月夜の黒猫団っていうギルドにいたんだ。その中にいたサチって子とユウはとても仲良くなってね。それで、よくみんなでダンジョンに潜ったりしてたんだけど……月夜の黒猫団は壊滅したんだ。ステージトラップにハマってな。それで、俺とユウとサチだけが生き残っちゃって……」

 

「…………そう、だったんですか……それで、サチさんは、どうなったんですか……?」

 

「今は始まりの街にいるよ。ユウは、今でもたまに会いに行ってる」

 

「それで、ユウはあんなに怒ってたんですか………。すみません。嫌なこと聞いちゃいましたね……」

 

「いや、いいんだ。それより、早くピナを生き返らせてあげよう」

 

「はい!」

 

そのまま、シリカはプネウマの花の雫をピナの心に振りかけた。

 

 

 

 

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