三人が(ていうか一人が二人を抱えて)店から出ると、教会らしき建物の二階から縄で吊るされたプレイヤーの胸に剣が突き刺さっていた。
「早く抜け!」
キリトが声を上げるが、武器は抜けない。すると、ユウがアスナの肩によじ登った。
「アスナ、踏ん張って」
「はぁ?」
意図がわからないアスナ。だが、すぐに分かった。ユウはアスナを踏み台にして跳んだ。ロープを切るために教会の二階へ跳んだのだ。
「誰か、受け止めないと……!」
と、アスナが言いかけた時にはキリトは吊るされたプレイヤーの真下で待っている。そして、ユウが縄を切ろうもした時だ。パキィィィィンッッ………と、男は爆散した。が、すぐにキリトは次の行動に移っている。
「ユウ!デュエルのwinner表示を探せ!」
言われる前からやっているユウだったが「分かってる」とは返さなかった。
「……ダメだよおにい。いない……、なんの表示も、見えない……!」
「そんなはず……!」
だが、その場にユウの言う通りwinner表示は見えなかった。
*
教会の一階からユウが歩いて出てきた。
「協会の中には誰もいなかった……」
「逃げられたみたいね……」
アスナもつぶやいた。
「お前がさっさとwinner表示を見つけてればな。一流と二流の差だ」
「何も出来なかったおにいに言われたかない」
と、喧嘩する二人をニコニコしながら見るアスナ。キリトもユウも、視線で「なんだよ?」と問う。
「いやー。喧嘩してる割に、さっきはいいコンビだったなーって。二人とも合図号令無しで息ぴったりに行動してたから」
「「なっ……そんなわけっ」」
と、二人が反論しようとする前にアスナは続けた。
「そんなことより、どうするの?圏内PKなんてものがあったとしたら、早く対抗手段を公表しないと大変なことになるんじゃない?」
「それもそうだな……」
すると、アスナは含みのある笑顔を浮かべた。この事件を利用すれば、もしかしたら2人を仲直りさせられると思ったからだ。
「なら、解決までちゃんと協力してもらうわよ。2人ともね」
「分かったよ」
「任せろ」
キリトは頷き、ユウは親指を立てた。
*
「すまない。さっきの一件を最初から見ていた人、いたら話を聞かせて欲しい!」
大声を上げるキリト。すると、おずおずという感じで人垣から1人の女性プレイヤーが進み出てきた。
「ごめんね、怖い思いしたばっかりなのに。あなた、お名前は?」
「ファッツユアネーム?」
アスナとユウが聞いた。
「あ………あの、私、ヨルコっていいます」
「もしかして、さっきの……最初の悲鳴も、君が?」
と、キリト。
「は……、はい。私……さっき……殺された人と、友達だったんです。今日は、一緒にご飯食べに来て、でもこの広場ではぐれちゃって……それで……そしたら……」
涙ぐみながら口に手を当てるヨルコ。その様子を見ながら、ユウは聞いた。
「はぐれたって……この広場で?」
「え?うん……きみは?」
聞かれるが、無視してユウは続けた。
「二人は教会に用事があったの?」
「え、なかったけど……」
「じゃあ、なんでさっきの人は教会にいたの?」
「そんなの、私は……」
「それに、一緒にご飯食べに来たのにどうしてあの人、防具着けてたの?見た所の装備だと、狩りにきたように見えなかったけど」
「そ、それは………」
怯むヨルコと攻めるユウ。が、そのユウの肩にアスナが手を置いた。
「ユウちゃん。今はそんなことは関係ないわ。それよりも、殺された男の人のこと教えてくれる?」
「あの人……、名前はカインズっていいます。昔、同じギルドにいたことがあって……。今でも、たまにパーティ組んだり、食事したりしてたんですけど……それで今日も、この街まで晩ご飯食べに来て……。でも、あんまり人が多くて、広場で見失っちゃって……周りを見回してたら、いきなりこの教会の窓から、カインズが落ちてきて、宙吊りに……しかも、胸に、槍が……」
「その時、誰かを見なかった?」
「はい……一瞬、なんですが、カインズの後ろに、誰か立ってたような気が……しました……」
すると、またユウが聞く。
「友達が殺されてる途中なのに、一瞬だけ後ろに人が見えたの?よく気が付いたね」
「ユウ、黙ってろ」
キリトに言われて殴りかかるユウ。そのままウガアッと喧嘩が始まるが、誰一人止めることなく話は進んだ。
「その人影に、見覚えはあった?」
「………………いえ」
「その……嫌なこと聞くようだけど、心当たりはあるかな?カインズさんが、誰かに狙われる理由に……」
だが、ヨルコはそれに答えることはなかった。ただ、首を横に小さく振るだけだった。