次の日。
「DDAが?」
キリトの報告を聞いてアスナが眉をひそめた。どうやら、昨日の帰り道にDDAのシュミットというプレイヤーと出会して、武器を寄越せと言われたらしい。
「何それ?」
「DDAも知らないとか、記憶錆びてんなユウ」
「人間性がサビ腐ってるおにいに言われたくない」
「はぁ?」
「あーほらほら二人とも。………で、キリトくん。もしかしてその人が犯人かもって?」
「断定は危険だけど、まあないよな。足がつくことを恐れて凶器を回収する、くらいなら最初から現場に残す必要がない。あの槍はむしろ、犯人のメッセージだったと俺は思う」
と、そのまま二人は話す中、ユウも頭を捻っていた。
(本当に、カインズは死んだの……?昨日の揺さぶりでヨルコは大きく動揺した。そもそも、ユウ達は死亡エフェクトを見ただけでカインズのHPがゼロになるのを見たわけじゃない。この世界における死亡エフェクトはモンスターもアイテムも同じ。何か、トリックがある気がする……。そして、なぜ圏内で殺人をする必要があったのか。人を殺すなら圏外の方がよっぽどやりやすい。これはどう足掻いても、圏内PKなどというありえない事態で騒ぎを起こして、別のプレイヤーを釣ろうとしていたと考えるのが自然な気がする……)
「……ちゃん、ユウちゃん!」
「ふえっ?」
アスナに名前を呼ばれていた。
「? 何?」
「検証に行くわよ」
「けんしょう?なんの?」
「付いてきて」
*
フィールド。
「試すのは、貫通属性武器で刺されたまんま圏内に移動したら継続ダメージはどうなるか」
「………そんなの検証しなくても、街に入った時点で周りの誰かが気付くし、何よりヨルコと死ぬ直前にご飯食べてたならありえない……」
「いいから試すのよ。………って、キリトくんが言うの」
「おにい、脳味噌腐ってる……」
「黙れ。じゃ、行くぞ」
キリトは小さなピックを取り出した。
「待って」
「? どうしたのユウちゃん」
「どうせやるなら、誰かに刺された状態でやったほうが検証のしがいがある」
「バカ!そんなことしたら危ないわよ!」
「確かに……遺憾ながらユウの言うことは一理ある」
「キリトくん⁉︎」
「だから、ユウに任せて」
「もう!どうなっても知らないわよ!」
で、ユウはアイテムストレージから武器を出した。全長3mほどの槍、先端の穂先は三つに分かれていて、その中心にはドクロのマークが刻まれていた。
「いざ、検証っ!」
「「いや待てえええええっっ‼︎‼︎‼︎」」
当然ながら、デュエットで突っ込むアスナとキリト。
「お、おまっ……お前それっ……!49層ボスのLAボーナスだろうが!」
「だいじょーぶ。ソードスキルは使わない」
「そういう問題じゃねんだよ!てかお前それ、使わねーからエギルに売るとか言ってなかった⁉︎」
「勿体無いっ」
「とにかくダメよ!そんなのでやったら……!」
「心配いらない」
言いながらユウは頭上でブロロロロッと槍を回すと、ジャキンッとかまえる。
「殺しはしない」
「ちょっ……!バカバカやめて止めてやめて止めてやめて止めてやめっ……!」
が、キリトの制止を無視してユウはキリトの腕に突き刺した。腕が吹っ飛んでないのが不思議なくらいだ。
「ギャアァァァァッッッ‼︎‼︎ぬ、抜いてえええ!お願いだからっ………!」
が、そんなキリトをユウはパシャリと写メった。
「おまっ……撮ってないで……!」
「いいから、早く圏内に行く!」
アスナが蹴飛ばし、圏内に飛び込むキリト。すると、止まった。
「と、止まった、な……」
「え、ええ。そうね……」
「おにい、乙っ」
「なっ……!ていうかユウ!お前さては知ってたな⁉︎止まること!」
「もちろん。おかげで、最高の一枚が撮れた」
言いながらユウは写真を見せた。キリトのグチャグチャになった泣き顔が写っていた。
「お、お前なぁっ!」
「それよりおにい。感覚は?」
「残ってるよ!もう抜くぞこの槍!」
そのままキリトはズボッと槍を抜いた。
「あー……なんか腕がズキズキ言ってる気がす……うわっ⁉︎」
最後のは、アスナがキリトの腕を両手で掴んで、胸に引き寄せ、むぎゅーっと思い切り握った事によるものだ。
「むっ」
ユウがムッとする中、キリトは「お、おまっ……なっ……」と慌てふためく。が、すぐにアスナは離した。
「これでダメージの残留感覚は消えたでしょ?」
「う、うん、まあ、ども……」
「ヘンタイ」
「ゆ、ユウ!それは誤解だ!ていうか誰のせいだと思ってんだ!」
だが、ユウはそっぽを向いたまま、自分の胸をさわさわと触って呟いた。
「…………バカにい」
*
ヨルコさんの元へ行って、三人は再び話を聞きに行った。
「悪いな。友達が亡くなったばっかりなのに……」
「いえ……」
「で、早速なんだけど、ヨルコさん。あなた、この名前に聞き覚えはある?グリムロック、とシュミット」
すると、ピクリと反応した。
「………はい、知ってます。二人とも、昔、私とカインズが所属してたギルドのメンバーです」
その2人とギルドの話をまとめると、黄金林檎というギルドがあって、たまたまレアアイテムがドロップして、それの売却に賛成したのが五人、反対が三人という結果になって、リーダーのグリセルダ(グリムロックの嫁)が売りに行った。が、帰ってこなかった。生命の牌を確認したら死んでいた。………という話だ。
「………なるほどっ」
ユウが呟いた。キリトとアスナが質問を続ける中、ユウはそれ以上何もしゃべらなかった。