48層。そこにユウはいた。とある武器屋に向かう。NPCではなく、プレイヤーの店だ。カランコロンと音を立てて店に入ると、NPCの店員以外誰もいなかった。
「……アスナが言うには、オススメのはずなんだけど……」
そう呟いてから店の中をグルリと見回す。そこそこ強そう武器が飾ってあるが、攻略組トップのユウが使うような武器はなかった。ていうか、斧がなかった。
「いらっしゃいませ」
声がして振り返ると、今回はNPCではなくプレイヤーだ。ユウを一目見て、そのプレイヤーは完全に子供を相手にする姿勢になった。
「何か、お買い物?」
「おにいの片手剣。ジャンケンで負けてパシらされた」
「は、はぁ……それで、性能とか……具体的な数値はどうする?」
「ふむっ……考えてなかった。エリュシデータ、で分かる?」
「うーん、と……50層ボスのLA、だったっけ?」
「そう。それに、限りなく近い性能」
「でもそのレベルになると、レベルの高い鉱石が必要になるんだけど……」
「じゃ、ユウが取りに行く。だから、その鉱石を言って」
「へ?取りに行くって……ひ、一人で?」
「うん。ヨユー」
そのプレイヤー、リズベット思った。この子は未だにこのゲームのことを分かってない、と。この子をパシリにしてるそのおにいとやらを是非とも殴りたかったリズだが、堪えて言った。
「うーん…じゃあ、お姉さんと一緒に行こっか?」
「邪魔だからいらない」
「……カッチーンときた」
ヒクッと頬が吊りあがり、リズは言った。
「あんたねぇ!歳上バカにするのもいい加減にしなさいよ!大体、今この現状は遊びでやれるものじゃないのよ⁉︎」
「少しでも攻略組の支えになりたいという大義名分の元に戦いから逃げて鍛冶屋に成り下がった奴に言われたくない」
「んなっ……!あったま来た!誰があんたなんかの為に武器なんか作ってやるもんですか!」
「えっ?」
「店にだって客を選ぶ権利はあるのよ⁉︎さっさと出て行きなさい!」
「ま、待って!それは困るよ!」
「………何よ」
ほとんどジト目でリズはユウを睨む。ユウは気恥ずかしそうに答えた。
「その……おにいと、この前喧嘩しちゃって……その、ごめんなさいの証に……剣を………」
「………あんた、さっきパシられたって言ってたじゃない」
「それは、その……」
珍しくハッキリしないユウ。だが、やがて答えた。
「は、恥ずかしかった、から………」
うっ……と、困った表情になるリズ。
「ちょっと、待ってなさい」
リズはアスナにメッセージを飛ばした。
『やっほーアスナ。お願いがあるんだけど、小学生くらいの女の子が一人で鉱石を取りに行くって聞かないから、一緒についてきてくれない?』
すぐに返事が帰って来た。
『その子って、黒い長髪、眠たげな目、白と黒のコートの子?』
『そうだけど……知ってるの?』
『一人で行かせて平気よ』
『ほ、本気⁉︎』
『うん。だから、行かせてあげて』
かなり疑わしかったが、アスナが言うなら少しは信頼したほうがいいと思い直し、リズは言った。
「分かったわ。鉱石、取りに行きましょ?」
すると、パァァッと明るくなるユウ。
「ありがとうっ……!」
「私はリズベット。リズでいいわ。よろしくね」
「ユウ、よろっ」
敬礼してみせるユウ。そんなユウの頭を撫でつつ、二人は出発した。