夜。キリトホーム。ベットの中。キリトの胸前で、こじんまりとうずくまって、すぅすぅと寝息を立てるユウ。そんなユウを見ながらキリトは思った。
(………最近、ユウがよく甘えてくるようになったなぁ……)
一緒に寝ることは毎晩あっても、ここまで甘えてくるのはそうなかった。
(やっぱ、まだ年相応というか……そういう歳頃なのかな……いや、年齢的には13か……ていうかこいつ、なんやかんや二年経ってるけどまったく成長がねぇな……。あれ?そういえば保健体育で、子供の成長にはスキンシップが大切とか言ってた気がするんだが……こいつ大丈夫なのか?)
チラッとユウに再び視線を戻す。
「んっ……おにい……ちゅー……」
「はっ⁉︎」
すると、ユウは自分の親指を小さく口に付けた。若干、頬を染めつつキリトは焦った。
……………な、なんの夢を見てるんだ……。
「と、いうわけなんだが、どう思う?」
エギルの店。ラグーラビットを売りに来たついでにその事を話した。ちなみにユウはリズに武器の依頼に向かっている。
「いや知らねーよ」
すごくどうでもよさそうに答えるエギル。
「ていうか、妹との惚気かよ」
「いや、最近はなんつーのかな……妹としての一線を超えてるというか……」
「いや結婚してる時点で手遅れだと思うが……」
「俺は真面目に相談してるんだが……」
「お前が真面目にそんな事を俺に相談してるのが一番信じられねぇ。………ていうか、お前はどうしたいんだよ」
「どうしたい?」
「ああ。迷惑ならやめろって言えばいいだろ。俺だったら、さっさとこの話を切り上げてこのウサギの肉の取引を続けたい」
「あ、ああ。そうだったな。先にこっちから済ませるか」
「しかし、お前これ自分で食おうとは思わなかったのか?」
「料理出来るほどのスキルがないんだよ」
「なるほどなぁ……。ユウちゃんは出来ねぇのか?」
「出来ると思うか?」
「…………悪い」
なんて話してると、後ろから肩を突かれた。
「キリトくん」
振り返ると、アスナが立っていた。
「シェフ捕獲」
「な……なによ」
「そうだ。ついでにちょっと相談したいことがあるんだ」
「さっきからなんの話よ。下らないことには巻き込まないでよね?」
「いいから。ラグーラビット食わせてやるから」
「いいわよ」
「変わり身はえーな」
すると、アスナは後ろの男に言った。
「今日はここから直接セルムブルグに転移するから、護衛はもういいです。お疲れ様」
「ア……アスナ様!こんなスラムに足をお運びになるだけに留まらず、素性の知れぬ奴をご自宅に伴うなど、と、とんでも無い事です!」
「ともかく、今日はここで帰りなさい。副団長として命令します」
そのままキリトを引っ張って、アスナは転移した。
「なぁ、大丈夫なのか?」
「いいのよ。それよりどうする?どこで調理すればいい?」
「俺の家はロクな器具ないし……アスナの家でいいか?」
「わかった。じゃあ、ユウちゃんも呼ぶね?」
「いいよ呼ばなくて。食う分が減るだろ」
「ふぅーん。そういう事いうんだぁ」
「な、なんだよ……」
「いや、意地悪だなぁって思って」
「いいから行こうぜ。腹減った」
*
その頃、ユウ。ぬぼーっとリズの店で天井を眺めていた。
「ふぅ……。ユウ、そろそろお店閉めるわよ」
「……………」
「聞いてるの?」
が、返事はない。リズはため息をついてユウの目の前に移動した。
「ねぇ、ユ……」
そこで、いきなりユウの目が見開いた。
「っ⁉︎」
「おにいが……ユウの知らないところで……何かしてる……気がするッ‼︎」
そのまま走って出て行った。
*
「ふう……食ったな……」
「で、相談ってなによ」
食べ終わり、アスナがキリトに聞いた。すると、キリトは昨日の夜の話をする。
「惚気?」
「ちげーよ。大体、妹だぞ?ありえないだろ」
「妹ならそんな事で焦らないの」
「でもなぁ……その、なに?お前にも分かるだろうけど、あいつ基本は生意気だろ?」
「うーん……うん。そだね」
「だからこそ、ああやって甘えられると……その、何。…………引くなよ?」
「は?」
「ああやって甘えられるとだな……。可愛過ぎて、その……ドキッとする」
「ないわー」
「いやだから引くなよ!妹だって自覚はあるから!なんつーのかな…!そう、ギャップ萌えって奴だよ!」
「まぁ、ユウちゃんは可愛いけど……。あなた、兄貴でしょ?」
「お、お前だって何日か居候させてやってたんだから分かるだろ?」
「分かりません」
「むぅ……」
「とにかく、別に嫌ってわけじゃないんでしょ?だったら、それくらい許してあげなさい。階層も上がってきて、もういつ死ぬか、分からないんだから……」
アスナがつい深刻に言ってしまう。
「………そうだな。悪い」
「さて、じゃあ相談に乗ってあげたんだから、明日一緒に狩りに付き合いなさい」
「はぁ?なんでそうなるんだよ!」
「いいの?ラグーラビットのこと、言っちゃうよ?」
「ぐっ……!わ、分かったよ」
「はい、決定」
アスナは微笑むと、キリトにパーティ申請をした。すると、キリトも若干微笑みながらyesのボタンを押した。その時だ。
「なにしてるの?おにい」
ビクゥッ‼︎と2人の体が跳ね上がった。ギギギッとギコチナイ動きで振り返ると、ユウが氷の霧氷情で立っていた。
「ゆ、ユウ…ちゃん……?」
「おにい」
「は、はいっ!」
天使の羽並に背筋をピーンッとさせるキリト。そんなキリトにユウは笑顔で言った。
「大丈夫、怒ってないよおにい」
「うえっ……?」
「大丈夫、おにいがコソコソ知らない女とラグーラビット食べてたことも、怒ってないよ?」
「知らない女って……」
「だって、」
そこで、口を開けて、八重歯をキラんと輝かせるユウ。
「ラグーラビットを食べたおにいを食べれば、ユウもラグーラビットを食べたことになるから」
ゾッとする2人を捨て置いて、ユウはバッ!とキリトに飛び掛かった。
「待っ……!ユウ!ごめんなさ……ギャアアアアッッ‼︎‼︎」