翌日。エギルの雑貨屋の二階でキリトとユウは死にかけていた。なぜなら、《軍の大部隊を全滅させた悪魔、それを単独で撃破した二刀流使いの50連撃》と噂が広まっているからだ。
「引っ越してやる……どっかすげえ田舎フロアの絶対見つからないような村に……」
「人混み、無理……あいつら、許さない……」
などと呟くアホ兄妹にエギルが言った。
「まあ、そういうな。一度くらいは有名人になってみるのもいいさ。どうだ、いっそ講演会でもやってみちな。会場とチケットの手はずはオレが………」
「するか!」
「ていうかユウよ、人混みが嫌ならキリトから離れりゃいいんじゃねぇか?一時的に……」
「や」
「なんで」
「おにいと離れたく、ないっ」
キリトの背中にキューっと抱き着くユウ。
「……随分と仲良くなったなキリト」
「やめてくれ。お陰でシスコン剣士って言われてんだよ」
「まぁ事実だからな」
「斬られたいのか」
「冗談だ」
なんて話してると、バタんっ‼︎と扉が開いた。ビックリして三人はドアの方を見る。そこにはアスナが立っていた。
「や、やあ、アスナ……」
「どうしようキリトくん……」
泣きそうな声を出すアスナ。
「なにかあったの?」
ユウがキリトから離れてアスナによじ登り、よしよしと頭を撫でた。
「大変なことに、なっちゃった……」
*
そんなわけで、エギルを置いて三人はグランザムへ。ユウはキリトに肩車されている。アスナが昨日のボス戦のことを話したら、ヒースクリフがキリトに会いたいというのだ。
「おにい……ちょっと早い……」
「あ、ああ。悪い。ていうか文句言うなら降りろ」
なんて言いながら歩く。すると、大きな門に到着した。その前には見張りなのか、大きな槍を装備したプレイヤーが2人並んでいる。
「任務ご苦労」
「ごくろう」
アスナがビシッと敬礼すると、無効の見張りも敬礼する。すると、ユウも頭の上で敬礼した。で、そのまま更に奥へ。中には螺旋階段があり、そのままコツコツと音を響かせながら登っていく。
「ねぇ、アスナ。まだー?」
「もう少しよ」
「ていうか自分で歩いてないだろお前は」
そのまま数分、ようやく到着。
「ここか……?」
「うん……」
三人が入ると、中には五人のプレイヤーが座っていた。
「ちゃおっす。ヒース」
「やぁ、ユウくんも一緒に来たのかね」
「将棋、やろう」
「すまないが、彼と話をしてからにしてくれないかね?」
「りょっ」
「あちらの机にお菓子などがある。食べていても構わない」
「さんきゅー」
そのままユウはお菓子を食べに行った。すると、ヒースクリフが口を開いた。
「話をするのは67層攻略戦以来だったかな、キリトくん」
「そうですね。あれは辛かったです」
「我々も危うく死者を出すところでしたよ。トップギルドなどと言われても戦力は常にギリギリだよ」
「そうですか。それで、何の用です?」
「なに、簡単な話だ。その君の二刀流というのを見せてもらいたい」
「………と、言いますと?」
「私とデュエルしたまえ」
「なっ……!ちょっと待って下さい!」
アスナが反応した。
「どうしてそうなるんですか⁉︎」
「落ち着きたまえアスナくん。別に命のやり取りをするわけではない」
「っ」
「単に興味があるだけだ。そして、君の腕が私の想像以上である場合、君には血盟騎士団に入ってもらう」
「なっ……」
「団長!」
アスナに怒鳴られてもヒースクリフは涼しい顔。すると、キリトが言った。
「まるで、自分が勝つ前提のような話ですね。団長様」
「おかしいかな?」
その一言にキリトはイラッとした。
「いいでしょう。受けて立ちます。その代わり、俺が勝てばいくつかこちらの望みを聞いてもらいます」
「ほう、では私が勝てば君には血盟騎士団に入ってもらう、ということでいいかな?」
「はい」
「すとっぷ」
幼い声が割り込んだ。ユウがいつの間にかキリトの頭の上にいる。
「どうしたんだ?ユウ」
聞くキリトをユウはジト目で睨むと、ぽかんと叩いた。
「痛っ」
「おにいが負けたら、ユウもついていく」
「ほう。いいのかね?」
「おにいと一緒なら、ユウはどうでもいい」
「……ふふっ、なるほど。では、そうさせてもらおう」
そんなわけで、別れた。