44人。それがトールバーナの噴水広場に集ったプレイヤーの総数だった。その様子をユウはただ眺めながらキリトの背中で爪を噛んでいた。
「少ない……」
「仕方ないさ。死んだら終わりのボス攻略だ」
「少ないの……?」
いつの間にか隣にいたフードの人が反応した。
「ああ、この人数じゃレイド一つ作れない」
「そういうものなの?」
「まぁ、そうだな」
そんな事を話してると、中央に青髪の男が立った。
「はーい!それじゃ、五分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいます!みんな、もうちょっと前に……そこ、あと三歩こっち来ようか!」
堂々とした声がした。随分と場慣れしている感じだ。
「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!知ってる人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな!俺はディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!」
すると、ドッと沸き、口笛や拍手が飛んだ。
「ユウは、気持ち的に夜の女王」
「ユウ、誰に聞いたんだその台詞」
「ネトゲの人」
「頼むから勘弁してくれ。あの連中の言うことは忘れるんだ」
なんてやってる中も話は進む。
「さて、こうして最前線で活躍してる、言わばトッププレイヤーのみんなに集まってもらった理由は、もう言わずもがなだと思うけど………。今日、俺たちのパーティが、あの塔の最上階へ続く階段を発見した。つまり、明日か遅くとも明後日にはついに辿り着くってことだ。第1層の……ボス部屋に!」
その言葉に周りのプレイヤーはどよどよ、とざわめく。
「一ヶ月、ここまで、一ヶ月もかかったけど……それでも、俺たちは示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリアできるんだってことを、始まりの街で待ってるみんなに伝えなきゃならない。それが、今この場所にいるオレたちトッププレイヤーの義務なんだ!そうだろ、みんな!」
拍手喝采が起きる。それに、キリトもなんとなく加わった時だ。後ろから声がした。
「あの人、眩しい……浄化される……」
「落ち着けユウ。お前は闇じゃない。浄化されない」
「あの人が光であることは認めるのねあなた……」
なんて話してると、低い声が聞こえた。
「ちょお待ってんか、ナイトはん」
「………サボテン?」
「ユウ、しっ!」
急いでユウの口を塞ぐキリト。ギリギリ聞こえてなかったようで何より。
「そん前にこいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな」
「こいつっていうのは何かな?まあ何にせよ、意見は大歓迎さ。でも、発言するなら一応名乗ってもらいたいな」
「………………フン。わいはキバオウってもんや」
「ダサい」
「ユウ本当に静かに」
「こん中に、5人か10人、ワビぃ入れなあかん奴らがおるはずや」
「詫び?誰にだい?」
「はっ、決まっとるやろ。今まで死んでった二千人に、や。奴らがなんもかんも独り占めしたから。一ヶ月で二千人も死んでしもたんや!せやろが‼︎」
すると、その場はピタッと押し黙った。その静寂の中、ディアベルが声を出す。
「キバオウさん。君の言う奴ら、とはつまり……元ベータテスターの人たちのこと、かな?」
「決まっとるやろ。ベータ上がりどもは、こんクソゲームが始まったその日にダッシュで始まりの日に消えよった。右も左もわからん九千何百人のビギナーを見捨てて、な。奴らはウマい狩場やらボロいクエストを独り占めして、自分らだけぽんぽん強うなって、その後もずーっと知らんぷりや。………こん中にもちょっとはおるはずやで、ベータ上がりっちゅうことを隠して、ボス攻略の仲間に入れてもらお考えてる小狡い奴らが。そいつらに土下座さして、溜め込んだ金やアイテムをこん作戦のために軒並み吐き出してもらわな、パーティーメンバーとして命は預けられんし、預かれんと、わいはそう言うとるんや!」
そのままシーンっと静寂がその場を包んだ。誰も、何も言わない。ディアベルですら黙っていた。が、とうのキバオウは周りを睨み付ける。すると、ペタッペタッと足音が聞こえた。その人物は真っ直ぐ中央へ向かっている。そして、全員の前に立つと言い放った。
「ユウは、ベータテスター」
(何してんだお前ェェェェェェッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎)
キリトは心の中で全力のシャウト。だが、そんなこと知る由もなく、キバオウはユウに困った様子でいった。
「じ、嬢ちゃん。嘘ついたらあかんよ?ていうか迷子?」
「ほんと。ユウはベータテスター。近いうちに、情報屋の人と一緒に作った攻略本が配られる。それが証拠」
それを聞いてキリトは納得した。ここ最近、夜になるとユウが何処かに出掛ける事が多かった。そんなもの作ってたのか、と少し安心してみたり。
「そ、そか………」
困った様子のキバオウを無視してユウはいきなり土下座した。
「んなっ……⁉︎」
「ごめんなさい」
「ち、ちょおお嬢ちゃん!何を土下座して……」
「キバオウさん、詫び入れろって言った」
「や、それは………」
「それと、はい、少ないけど……2000コル、始まりの街にいる、お兄ちゃんのために、溜め込んだお金……」
「はいストーップ!はいそこまでぇ!ワイが悪かった!だからやめて!うん!この話はおしまい!さぁ続けましょうディアベルはん!」
「…………いいの?」
「うん!いい!いいから!ごめんね脅すようなことしちゃって!」
そのままユウはキリトの元へ引き返した。瞬間、ニヤリと口を歪ませた。
「ふっ、チョロい」
「おい、ユウ。誰が始まりの街にいるお兄ちゃんだ」
「でも、ユウのおかげで助かった」
「はいはい……感謝してますよ」
なんてやってるキリトの裾をフードの女性は引っ張った。
「なんだ?」
「あなた、その子をどういう育て方したの?」
「………俺も分からん」