もし、キリトに実妹がいたら   作:スパイラル大沼

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第30話

 

 

 

 

「な、なんじゃこりゃあっ⁉︎」

 

またまたエギルの店の二階。着替えた血盟騎士団の制服に着替えたキリトがこんな声を上げた。

 

「何って、みたとおりよ。さ、早く立って!」

 

「じ、地味な奴って頼まなかったっけ……」

 

「これでも十分地味なほうよ。うん、似合う似合う!」

 

キリトは脱力したように椅子に座り込んだ。すると、扉の奥から声がした。

 

「アスナ、着替え終わった」

 

「あ、いいよー入って」

 

呼ばれてユウが入ってくる。入って来たのは、白と赤のウェディングドレス姿のユウだった。

 

「結婚式か!」

 

ふふんと何故か得意げな顔をするユウだったが、アスナに「着替えてきなさい」と冷たく言われて再び着替えに戻った。

 

「……なんか、すっかり巻き込んじゃったね……」

 

「いや、いいきっかけだったよ。二人でやっていくのも、八十層くらいが限界かなって思ってたんだ」

 

「そう言ってもらえると助かるよ」

 

「それに、ユウのためにも、そろそろギルドに入らないとと思ってたんだ。死んじまったら、何も残らないから」

 

「そう、なんだ……。そうだね」

 

すると、また扉が開いた。そこには血盟騎士団の服を着たユウが立っていた。

 

「着替えおわった」

 

 

 

 

「訓練?」

 

翌日、ゴドフリーにキリトが声をかけられた。

 

「そうだ。私を含む団員四人のパーティを組み、ここ五十五層の迷宮区を突破して五十六層の主街区まで到達してもらう。ユウちゃん、君は副団長と共に五十四層の迷宮区に挑んでもらおうかな」

 

すると、ユウはムッとした。

 

「やだ!おにいと一緒がいい!」

 

「お、おいユウ……」

 

キリトが止めようとするが、ユウは止まらない。

 

「我儘を言わないでくれないかな?君と彼はいいコンビネーションだと聞くが、単体で戦えなければ使い物にならない」

 

「やだ!やだやだやだーっ!」

 

困った顔をするゴドフリー。すると、キリトが言った。

 

「大丈夫だ。ユウ。大体、五十五層くらいで俺が負けると思うか?」

 

「………思わない」

 

「なら安心して待ってろ。帰ってきたらうんと構ってやるから」

 

「……………わかった」

 

すると、ゴドフリーがアスナに聞いた。

 

「彼らは、本当に兄妹なのですかな?」

 

「自称ね」

 

そんなこんなで、訓練することになった。

 

 

 

 

三十分後。

 

「じゃ、いってらっしゃーい。キリトくん」

 

「おにい。なるべく早く終わらせてね」

 

「ああ。分かってるよユウ」

 

そのままキリトは集合場所に向かった。

 

「じゃ、私達はどうする?ユウちゃん」

 

「行かないダルいめんどくさいおにいがいない」

 

「だよねー……、ユウちゃんの強さは私知ってるし」

 

そのままユウはトタトタと歩いて、アスナの膝の上にのった。

 

「おにいの代わり」

 

「はいはい………甘えん坊ね」

 

そのままユウはアスナの胸に頭を置いた。

 

 

 

 

「よし、ここで一時休憩!」

 

ゴドフリーが声を上げた。すると、キリトとパーティメンバーのクラディール、そしてもう一人は岩の上に腰を下ろした。

 

「では、食料を配布する」

 

そう言ってゴドフリーは革の包みを四つ出して、全部四人に配った。キリトはため息をつきながら水を一口飲む。すると、クラディールの姿が目に入った。垂れ下がった前髪の奥から奇妙な昏い視線をキリトに向けている。その瞬間、全身の力が抜け、キリトはその場に崩れ落ちた。麻痺毒だ。

見れば、周りの団員もそうなっている。ただクラディールのみが立っていた。

 

「クッ……クックックッ……クハッ!ヒャッ!ヒャハハハハハ‼︎」

 

突然笑い出すクラディール。そのクラディールにゴドフリーは言った。

 

「ど……どういうことだ……この水を用意したのは……クラディール……お前……」

 

「ゴドフリー!速く解毒結晶を使え!」

 

キリトが言うが、クラディールに結晶アイテムを取られてしまう。

 

「クラディール……な、何のつもりだ……?これも何かの……訓練なのか……?」

 

「バァーーーーカ‼︎」

 

未だ事態を把握出来てないゴドフリーの顔をクラディールは蹴り飛ばした。

 

「ゴドフリーさんよぉ、馬鹿だ馬鹿だとは思っていたがあんた筋金入りのノーキンだなぁ‼︎」

 

そのままゴドフリーに剣を突き刺すクラディール。

 

「ぐああああああ‼︎」

 

「ヒャハアアアア‼︎」

 

そのままゴドフリーは消えていった。すると、今度はもう一人の団員の方を向く。

 

「お前にゃ何の恨みもねえけどな……俺なシナリオだと生存者は俺一人なんだよな……」

 

「ひぃぃぃぃっ‼︎」

 

「いいか〜?俺たちのパーティはァー、荒野で犯罪者プレイヤーの大群に襲われェー、勇戦虚しく三人が死亡ォー、俺一人になったものの見事犯罪者を撃退して生還しましたァー」

 

言いながらその団員も消してしまったクラディール。そして、キリトの方を見た。

 

「よォ、おめぇみてえなガキ1人のためによォ、関係ねえ奴を2人も殺しちまったよ」

 

「その割にはずいぶんと嬉しそうだったじゃないか」

 

その瞬間、クラディールはキリトの背中に剣を突き刺す。

 

「グッ……!」

 

「どうよ……どうなんだよ……もうすぐ死ぬってどんな感じだよ……。教えてくれよ……なぁ……」

 

クラディールはあくまでにやにやしている。

 

「なんとか言えよガキィ……死にたくねえって泣いてみろよぉ……」

 

キリトのHPがイエローへと変色した。すると、キリトはなんとか左手で突き刺さっている剣を握った。

 

「お……お?なんだよ、やっぱり死ぬのは怖ェッてかあ?」

 

「そうだ……。まだ……死ねない……」

 

「カッ!ヒャヒャッ‼︎そうかよ、そう来なくっちゃな‼︎」

 

クラディールはさらに剣に体重をかける。

 

「死ねーーーーッ‼︎死ねェェェーーーーッ‼︎」

 

そう叫びながらクラディールはさらに剣を押し込んだ時だ。ゴガッ!とクラディールを蹴り飛ばす影。

 

「な……ど……⁉︎」

 

驚愕な叫びとともにクラディールはその殴られた方を見る。

 

「間に合った……間に合ったよ……神様……間に合った……」

 

アスナが立っていた。

 

「生きてる……生きてるよねキリトくん………」

 

「ああ……生きてるよ……」

 

そして、キリトは回復ポーションでHPをフル回復する。

 

「待っててね。すぐ終わらせるから……」

 

どう見てもクラディールに勝ち目はない。そう悟ると、クラディールは背中を向けて逃げた。

 

「ハッ!誰がテメェらなんてまとめて相手するかってんだよ!そこで永遠に惚けてろ!」

 

そう吐き捨てて走るクラディール。そのクラディールにアスナは言った。

 

「言っとくけど、そっちに逃げないほうがいいわよ。私なんかより、もっとおっかないのがいるから」

 

「ア?」

 

言われてクラディールは立ち止まった。前を見ると、小さな影が大きな武器を引きずって歩いてきている。

 

「はぁ?ガキじゃねぇか……」

 

完全に舐め腐ってるクラディールの後ろでキリトが声を漏らした。

 

「ユウ………?」

 

まるで鬼気のようなオーラを出して近付いてくるユウ。前髪で目は見えないが、おそらくうちは一族ばりの眼光を放っているだろう。

 

「んなガキに俺が負けると思ってんのかァァァァッッッ‼︎‼︎」

 

剣を構えて突っ込むクラディール。そのまま突きを放とうとした時だ。ユウは斧を縦に振り下ろし、正面から叩き斬った。クラディールは真っ二つに裂けた。

 

「んなっ……‼︎」

 

そして、そのままパキィィィン………ッッと消えていった。

 

「ユウ………」

 

キリトに名前を呼ばれ、ユウはものっそい速さでキリトに抱き着いた。

 

「バカにい……」

 

「なんか、ごめんな……。ユウ」

 

「やだ。絶対、ぜーったい……許さない……」

 

「ハハハッ……それは困った……アスナもユウも、ありがとな、助かったよ……」

 

「本当よ……心配かけさせて……」

 

アスナも泣いている。キリトは若干微笑みながらユウの頭を撫でる。

 

「もう離さない、離さないからね……おにい……」

 

「ああ、分かってる」

 

「アスナもっ。ユウ一人じゃこんなの面倒見切れない」

 

「今こんなのって言った?」

 

「わ、私も?」

 

「うんっ。これからは、三人一緒」

 

すると、キリトとアスナはお互い顔を見合わせた。

 

「でもおにいは渡さない」

 

ええ〜っといった顔になる。

 

「とりあえず、戻ろっか」

 

三人はグランザムに戻った。

 

 

 

 

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