「まず、一つだけ確かなのはこうしてウチまで移動させられたからにはNPCじゃないよな」
「そう……だね」
キリトがベッドにユウを転がして言った。
「バカチン!うんこたれ!キリト!」
「な、なんだよユウ……つーか俺のプレイヤー名は悪口か」
「まだそう決めるのは早い。この子はカーソルがないっ」
「いや、それはそうなんだが……。NPCなら接触した時点で何か窓とか出るはずだろ?だけどそれがないってことはプレイヤーで、カーソルがないのはバグってことに……」
「バカチン!チンチン!キリト!」
「お前今なんて言った?怒らないから言ってごらんなんて言った?」
「こんな今までバグらしいバグが見つかってないゲームの中でカーソルがないなんてものがあるはずない。まぁ、NPCじゃないっていうのはユウもそう思うけど……」
「じゃあなんなんだよ」
「それはこの子に聞けば分かること」
「………そうだな。とにかく、目を覚ますまで待とう」
だが、その日はその女の子が目を覚ますことはなかった。
*
翌日の朝。アスナがぼんやり眼を覚ますと、女の子が目を覚ましていた。
「! き、キリトくん!キリトくんってば!」
アスナに叩き起こされ、キリトは目を覚ます。すると、女の子と目が合った。
「うおっ!め、目が覚めたの、か?」
「た、たぶん……。お名前は?」
アスナが女の子に聞く。するとその子は首を傾げながら答えた。
「な………まえ………。わた……しの……なまえ……。ゆ……い。ゆい。それが……なまえ……」
「ユイちゃんか。いい名前だね。わたしはアスナ。この人はキリトよ」
「あ……うな。き……と」
「もう一人いるんだけど……まだ寝ちゃってるみたいね。ね、自分がどうなったか、解る?」
アスナの問いに、ユイは答えた。
「わかん……ない……。なん……にも、わかんない……」
困ったように、いやむしろ可哀想な顔で二人はユイを見た。だが、キリトはなんとか笑顔を作って、ユイに言った。
「やあ、ユイちゃん。……ユイって、呼んでいい?」
こくんと頷くユイ。
「そうか、じゃあ、ユイも俺のこと、キリトって呼んでくれ」
「き………と」
「キリトだよ。き、り、と」
「…………きいと」
「ちょっと、難しかったかな。何でも言いやすい呼び方でいいよ」
すると、ユイは少し考えるように目を閉じた。そして、やがてこう呼んだ。
「……パパ」
さらに、アスナを見上げて言った。
「あうなは……ママ」
二人は若干困ったものの、アスナがユイを抱き上げる。
「そうだよ……。ママだよ!ユイちゃん!」
「ママ!」
「誰がママ?」
また新しい声がした。見ると、ユウが寝ぼけテイストで起き上がっている。
「信じられない……幼女に自分を親と呼ばせて洗脳する……犯罪………」
「違うわよ!………ああ、ユイちゃん。この子はユウちゃんだよ」
「ユ、ウ………?」
しばらく瞬きした後、ユイは言った。
「おねえ、ちゃん……」
「そう、ユウはお姉ちゃん。ユイ、お手」
「妹はペットじゃないわよ!」
*
ユウとユイが遊んでるのを他所に、キリトとアスナはどうするか会議。
「とにかく、やっぱ始まりの街の孤児院に預けたほうがいいんじゃないか?」
「そうよね……。でも、私……」
「アスナ、気持ちはわかるがダメだ。預けたほうがユイのためだ。それに、一層には俺もユウもコネがある」
「知り合いがいるの?」
「ああ。まぁな。じゃ、行こうぜ」
キリトはそう言いながら立ち上がった。