もし、キリトに実妹がいたら   作:スパイラル大沼

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第38話

 

 

 

 

数百人の攻略組プレイヤーがひれ伏す中、立っているのはトッププレイヤーであるキリト、ユウ、そしてヒースクリフの三人だけだ。

 

「で、どーするユウ?二対一で行くか?」

 

「どっちでも」

 

「じゃ、ここは二人で行くか」

 

キリトが言うとユウは頷いて、背中から斧を取り出した。キリトもエリュシデータを抜いた。

 

「行くぜ」

 

「べいべっ」

 

そのままキリトとユウは突撃した。

 

「はぁっ!」

 

「よっ」

 

先にユウが斬りかかる。斧と盾がぶつかり合い、火花が散る。その瞬間、盾の後ろから鋭い突きが飛んでくる。それを首だけ横に傾けて躱し、斧を軸にしてジャンプし、盾を飛び越えてヒースクリフの顔面に蹴りを入れた。

 

「ぬうッ……‼︎」

 

後ろに若干よろめくヒースクリフ。ユウは回転しながら着地すると、その遠心力でさらに斧で斬りつけた。それをさらにガードするヒースクリフ。みたいな感じでユウは小さな体による身軽さと、斧の威力を利用してヒースクリフと互角に戦ってみせた。が、やはり押してるのはヒースクリフだ。攻撃の全てを完全に回避できるわけではない。攻撃は掠めたりしてユウのHPを徐々に減らしていった。

 

「むうっ」

 

避けきれずに少し拗ねるユウ。その時だ。さっきまで防御に徹していた盾が急に突撃してきた。

 

「っ!」

 

それがユウに直撃し、後ろにぶっ飛ばされた。そして、そこに追撃しようとヒースクリフは剣を構えて突っ込んだ。

 

「終わりだ。将棋、楽しかったよ、ユウくん」

 

だが、その後ろにキリトが回り込んでいた。そして、エリュシデータを思いっきり振るった。その時だ。

 

「やはりな、ユウくん一人で攻めてくるからおかしいと思った」

 

ヒースクリフは盾だけをキリトに向けた。そのままキリトのエリュシデータは弾かれた、瞬間、反対の手からダークリパルサーが迫り、ヒースクリフの盾のしたから斬り上げた。

 

「っ‼︎」

 

(しまった……!キリトくんの真骨頂は二刀流だったか……!こんないやらしいタイミングで2本目を出してくるのは、ユウくんの作戦か……?)

 

ようやく与えたダメージ。だが、HPバーを全て減らすには程遠い。すぐにヒースクリフは姿勢を整えてキリトに突きを放とうとする。その剣が後ろから弾かれた。ユウの斧だ。

 

「ぬうっ‼︎」

 

そのまま盾だけとなったヒースクリフにキリトは二刀流ソードスキル、ジ・イクリプスを使った。

 

「終わりだ。茅場ッ‼︎」

 

キリトはそう言い放ち、ヒースクリフのHPバーを0にした。

 

 

 

 

キリトが気がつくと、水晶の板の上で寝転がっていた。が、頭に華奢で柔らかい感覚。

 

「………?ここは……」

 

「きがついた?」

 

頭上から聞き慣れた声がした。見ると、ユウが膝枕していた。

 

「……珍しいな、ユウが膝枕してくれるなんて」

 

「いつもやってくれてるから、おかえし」

 

「そうかい……」

 

そのまま起き上がるキリト。そして立ち上がった。すると、巨大浮遊城が崩壊しているのが見えた。

 

「あれは、アインクラッド……?」

 

一応、ユウに聞いたつもりだった。だが、返事はない。

 

「ユウ?」

 

「足、しびれた」

 

「慣れないことするからだろ」

 

クスッと微笑むと、キリトはユウを肩車した。

 

「まだ、俺の上に乗ってろよ」

 

「むう、かたじけない」

 

で、二人は崩壊するアインクラッドを眺めていた。その時だ。

 

「なかなかに絶景だな」

 

茅場晶彦が現れた。ヒースクリフではなく、本来の姿。

 

「なんで、こんなことしたんだ?」

 

キリトが聞いた。

 

「なぜ、か。私も長い間忘れていたよ。なぜだろうな。フルダイブ環境システムの開発を知った時、いやその遥か以前から、私はあの城を、現実世界のあらゆる枠や法則を超越した世界を創り出すことだけを欲して生きてきた。そして私は……私の世界の法則をも超えるものを見ることができた……」

 

茅場はキリトとユウをチラッと見て、またすぐに顔を戻した。

 

「子供は次から次へといろいろな夢想をするだろう。空に浮かぶ鉄の城の空想に私がとりつかれたのは何歳の頃だったかな……。その情景だけは、いつまで経っても私の中から去ろうとしなかった。年経るごとにどんどんリアルに、大きく広がっていった。この地上から飛び立って、あの城に行きたい……長い、長い間、それが私の唯一の欲求だった。私はね、まだ信じているのだよ。どこか別の世界には、本当にあの城が存在するのだと……」

 

そう語る茅場。その方をただなんとなくキリトは眺めて、そして言った。

 

「ああ……。そうだといいな」

 

そのまま三人でアインクラッドを眺める。城はようやくおそらく90層辺りであろうところまで崩壊した。すでに自分達で登った階層はすでに落ち切っている。

 

「言い忘れていたな。ゲームクリアおめでとう、キリトくん、ユウくん。さて、私はそろそろ行くよ」

 

そう言い残し、茅場の姿は消えた。

 

「さて、俺たちも戻るか」

 

キリトがそう言うと、ユウはぴょんっと肩から降りる。

 

「うんっ……。おにい、ありがと。二年間くらい」

 

「何言ってんだ。お前とはこれからも一緒に暮らすだろ。それに、お礼を言いたいのは俺の方だ」

 

キリトは俯いて言った。

 

「ユウがいなかったら……何回心折れてたか分かんないよ」

 

「おにい、メンタルとーふ。20層くらいのときにカブトムシ逃がしてガチ泣きしてた」

 

「うっ、うるせえ。お前だって47層で初めてあのキモい花のモンスターに出会したときにビビってた癖に」

 

「あ、あれはビックリしただけ。おにいこそゴースト系モンスターに初めてあったときに泣きそうになってた」

 

「お、お前こそなぁ!」

 

が、そこでキリトの口は止まる。かわりに二人は微笑みあった。そして、ユウが言った。

 

「つづきは、もどってから」

 

「……そーだな」

 

「じゃ、帰ろっか。かずと」

 

「ああ、柚葉」

 

そのまま二人は現実の世界へ足を踏み入れた。

 

 

 

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