「うぐっ‼︎」
サラマンダーの火炎魔法がとうとうリーファの……あっ、リーファって言っちゃったよ。まぁいいや。リーファの背中を捉えた。そして、そのまま森の中に落下した。それを追いかけるサラマンダー三人。
「梃子摺らせてくれるじゃねーの」
右端の男がそう言った。そして、中央の男も続く。
「悪いがこっちも任務だならな。金とアイテムを置いていけば見逃す」
「あと1人は絶対に道連れにするわ。デスペナルティの惜しくない人からかかって来なさい」
「諦めろ、もう翅が限界だろう。こっちはまだ飛べるぞ」
言われた通りだった。だが、リーファに諦める気はない。
「気の強い子だな。仕方ない」
リーダーも肩をすくめると、ランスを構え、翅を鳴らして浮き上がった。左右のサラマンダーもだ。その時だ。
「ぅぁぁああああぁぁぁあぁあっ‼︎⁉︎‼︎⁉︎」
すごい、悲鳴とともに黒い影が落ちてきた。予想外のことに四人の動きが止まる中、能天気な声がした。
「うう、いてて……。着陸がミソだなこれは……」
緊張感の欠片もない声とともに立ち上がったのは……もうキリトでいいや。キリトだった。
「何してるの!早く逃げて‼︎」
リーファが声を上げた。が、何食わぬ顔でキリトは言った。
「重戦士三人で女の子一人を襲うのはちょっとカッコよくないなぁ」
「なんだとテメェ‼︎」
そして、リーダー格の男が言った。
「一人でノコノコ出てきやがって馬鹿じゃねえのか。望み通りについでに狩ってやるよ!」
そのまま突撃してくるサラマンダー。が、そのランスの先端をキリトはガシッと掴み、別のサラマンダーに投げつけた。
「わああああ」
キリトはそのままリーファを見た。
「ええと……あの人たち、斬ってもいいのかな?」
「……そりゃいいんじゃないかしら……。少なくとも先方はそのつもりだと思うけど……」
「それもそうか。じゃあ失礼して……」
キリトは背中の貧相な剣を抜く。その瞬間、突然ズバァン‼︎という衝撃音と共に少年の姿が掻き消えた。そして、サラマンダーの一人が四散、そのまま残り炎が漂う。そのまま二人目も斬り、残りはリーダー格の1人となった。キリトはそのリーダー格の男を見た。
「どうする?あんたも戦う?」
「いや、勝てないな。 やめておくよ。アイテムを置いていけというなら従う。もうちょっとで魔法スキルが900なんだ。デスペナが惜しい」
「正直な人だな。そにらのお姉さん的にはどう?」
「あたしもいいわ。今度はきっちり勝つわよサラマンダーさん」
「正直、君ともタイマンで勝てる気はしないけどな」
それでその場は収まり、リーダー格の男が去ろうとした時だ。そのリーダー格の男が突然四散した。
「「なっ⁉︎」」
キリトとリーファは声を上げる。その瞬間、キリトはリーファの背後に気配を感じた。
「危ない!」
「えっ?」
ギリギリ、キリトがガードする。
「い、いつの間にっ⁉︎」
リーファが声を上げる中、キリトはその猫耳の生えた剣の主に聞いた。
「おいあんた、どういうつもりだ?せっかく丸く収まったってのに……!」
「……夜中に、ギンギンうるさい……木の上で、寝てたのに……全員殺す……」
猫耳の生えた少女、というより幼女は眠たげな表情で、しかししっかりとした殺意を見せた。
(こいつ、ヤバイ……!)
キリトは直感した時だ。
「お姉、ちゃん……?」
キリトの胸ポケットから声がした。ヒョコッとユイが顔を出した。
「あ、こら出てくるなって……お姉ちゃん?」
で、キリトはその猫耳の幼女を見た。ユウの面影が確かに残っていた。
「ゆ、ユウ!俺だ、キリトだ!解るか?」
「おにい……?」
そこで、ようやく殺意が止まった。ホッとするキリト。正直、タイマンだとユウに勝てるかは分からない。
「お前何やってんだよこんなところで」
「領地に着く前にバグって……森の中に落ちてきて、眠くなったから木の上で寝てた」
つくづく猫っぽい奴だなと思ってると、ユイがユウに飛び付いた。
「お姉ちゃん!」
「…………誰?」
「私です!ユイです!」
「ユイ………?」
その瞬間、ユウはそのユイを抱き締めた。
「ユイ……ひさしぶり……」
「お姉ちゃん……お姉ちゃん……」
完全に置いてけぼりになってるリーファだった。
*
「で、あなた達はなんなのよ」
リーファが聞くと、キリトが答えた。
「えーっと、このユウとは兄妹なんだ」
「ふーん、それとなんでスプリガンがこんなところにいるのよ。ケットシーはすぐ近くだけど、スプリガン領はずっと向こうじゃない」
「み、道に迷って……」
「迷ったぁ⁉︎方向音痴にもほどがあるよー。君変すぎ‼︎」
爆笑するリーファ。
「まあ、ともかくお礼を言うわ。助けてくれてありがとう。あたしはリーファっていうの」
「俺はキリトだ。この子はユイ」
「ユウ、よろっ」
ピシッと敬礼するユウ。
(助けたといえば……最後に逃した人はもう少しで魔法スキルとやらが900だったんだよなぁ……すみませんうちの妹が……)
なんてしみじみ心の中で謝っていると、リーファがまた口を開いた。
「………ね、この後予定ある?」
「ないよ?」
「なら助けてくれたお礼に一杯おごるよ」
「それは嬉しいな。実は、この世界について教えてくれる人を探してたんだ。特に、あの木のことをね」
「世界樹のこと?いいよ。じゃ、ちょっと遠いけど北の方に中立の村があるから、そこまで飛ぶよ」
「へ?スイルベーンってとこの方が近いんじゃ……」
「そりゃそうだけど……ほんとに何も知らないのねえ。あそこはシルフ領だよ」
「何か問題あるの?」
「問題っていうか……街の圏内じゃ君はシルフを攻撃できないけど、逆はアリなんだよ」
「へえ、なるほどね……。でも、別にみんなが即襲ってくるわけじゃあないんだろう?リーファさんもいるしさ。シルフの国って綺麗そうだから見てみたいなあ」
「……リーファでいいわよ。ほんとに変な人。まあそう言うならあたしは構わないけど……命の保証まではできないわよ」
で、リーファは軽く飛んだ。飛翔力も回復している。
「あれ?リーファは補助コントローラなしで飛べるの?」
「あ、まあね」
「俺はちょっと前にこいつの使い方を知ったところだからなぁ」
キリトは左手を動かす仕草をする。
「おにい、なにそれ」
「お前、飛んでないのか?」
「ずっと木の上で寝てた」
呆れて何も言えなくなるキリトだった。
「じゃ、二人とも後ろ向いて。コントローラは出さずに」
リーファに言われ、従う二人。二人の肩甲骨の少し上を触れる。
「今触ってるのわかる?」
「うん」
「あのね、随意飛行って呼ばれてはいるけど、ほんとにイメージ力だけ飛ぶわけじゃないの。ここんとこから、仮想の骨と筋肉が伸びてると想定して、それを動かすの」
その瞬間、ユウが飛んだ。それもトランザム並みの速さで、残像も見えてる気がする。
「超ヨユー。なにこれ最高」
ユウは上機嫌に飛び回った。そして、未だ飛ぼうとしているキリトの真上で、小馬鹿にしたように口を歪めた。
「あんにゃろ……」
と、その瞬間リーファはじれったくなったのか、キリトの背中をドンっと押した。その瞬間、垂直に飛び上がるキリト。
「うあっ⁉︎」
「ゴッフ!」
ユウの顎にキリトの頭がクリティカル。
「「あっ」」
そのまま落下する2人。
「お、にい……後で、殺す……」
「ゴメッ……まじ俺が悪かった……」
死にかけてる2人だった。