宿。ユウの座ってる椅子の前の机に座っているユイ。キリトはベッドの上ですでにログアウトしている。ユウが先に戻らせたのだ。
「さて、ユイ」
「なんですか?」
ユウはユイをガシッと掴んだ。
「な、なんですか?」
「じゅるり」
「ひっ、ま、まさか……!」
「いただきます」
「いやあああ!やめてくださあい!」
10秒後、キリトが戻ってきて止めた。
*
「おかしいと思ったよ。お前が先に帰らせてくるもんだからな」
「うう……だからって蹴るのはヒドイ……」
今は二人で風呂に入っている。
「ていうか、お前もう中学生だろ?兄と一緒に風呂入ることに抵抗とかないのか?」
「ない。おにいにならユズの何を見られてもいい」
「うっ……」
そう言われると、兄としは嬉しい反面、少し気恥ずかしい和人だった。
「なんなら、ユズのどーてー、おにいにあげよっか?」
「ば、バカなこと言うな!そもそもお前は童貞じゃなくて処女だ!」
「おにい、顔真っ赤」
「……兄をからかうとはいい度胸だな」
「何かしたら、大声出す」
「んぐっ……!それはマズイ……!」
ふふんっと勝気な顔の柚葉。
「ねぇ、おにい」
「なんだ?」
「スグねえの言ってること、気にしちゃだめ」
「!」
「おにいは、悪くない」
「………ああ。サンキュー」
「うむ、よろしい」
少しだけ元気の出た和人だった。
*
翌日。柚葉がパソコンでALOについて調べてる時だ。
「ゆーずーはーちゃんっ!」
後ろから直葉が抱き着いてきた。
「スグねえ」
「なーにしてるの?」
「うえっ⁉︎え、えっと……い、今流行ってるゲームの情報を……」
「ゲーム?って、ALOに興味あるの⁉︎」
「? 知ってるの?」
「もちろんだよー。あたしもやっ……」
そこで言葉が止まる直葉。和人に「妹を巻き込むな」と言っておきながら自分がやってるとは言えなかった。
「? スグねえ?」
「ううん。なんでもない。それより今日は一緒にお風呂……」
「やだ」
*
スイルベーンに集合。
「やあ、早いね」
「ううん、さっき来たとこ。ちょっと買い物してたの」
「あ、そうか。俺も色々準備しないとな。ユウも行くか?」
「攻撃を喰らわなければ……回復アイテムはいらない……」
「ふーん、すごい自信だねユウ?」
リーファに挑戦的に言われるユウ。
「後ろから斬っちゃってもイイ?」
「10年早い……」
「ムカつく!」
自分で売った喧嘩で逆上するなよ……と、キリトは思わずにはいられなかった。で、三人は買い物へ。キリトは馬鹿でかい剣を買った。その頃、ユウは、
「ムムム……迷う」
「どうしたユウ?」
キリトに聞かれた。
「次の武器、迷ってる」
「斧じゃダメなのか?」
「や。あれ重い。それに飽きた」
「アッそう」
で、小一時間悩み続け、リーファが苛立ちのあまり、壁を殴り出す奇行に走った瞬間、決まったようだ。
「決めたっ。槍にする」
「また長い物を……」
キリトがそう言うと、ユウはその槍を買った。それはランスのような槍じゃなくて、こう……なんつーの?薙刀みたいな感じ。ていうか薙刀でいいや。問題は、全長7mくらいあるということだ。
「って、そんな武器振れるのかよ‼︎」
と、突っ込んだ瞬間、ユウはそれをバトンのように振り回す。
「? 何か言った?」
「なんでもない」
そのまま三人は塔へ向かった。高度を稼ぐためだ。その時、三人の前に男が二人出てきた。
「!」
「パーティから抜ける気なのか、リーファ」
「シグルド……」
困ったようにリーファは呟いた。
「うん……まあね。貯金もだいぶできたし、しばらくのんびりしようと思って」
「勝手だな。残りのメンバーに迷惑するとは思わないのか」
「ちょっ……勝手……⁉︎」
「お前は俺のパーティーの一員として既に名が通っている。そのお前が理由もなく抜けて他のパーティに入ったりすれば、こちらの顔に泥を塗られることになる」
シグルドのその台詞にリーファは少し言葉を失った。すると、隣から幼い声が聞こえた。
「元々泥だらけの顔のくせになにいってるの?」
あちゃー…と顔に手を当てるキリトだった。で、キッ!と睨まれるユウ。だが、無表情のままユウは続けた。
「元々ゲームっていうのは自由にやるもの。一言も言わずにひっそりいなくなろうとしたリーファもクソアホバカちんだけど、メンバー一人の一時的な脱退も許せないようなクソリーダーはリーダーとしての価値がない」
「なっ……⁉︎」
「仲間にパーティという名の枷を作るならそんなのはパーティリーダーとして相応しくない。今まで世話になってたなら、少しの間抜けるくらい見送ってあげるべき」
「………………」
「グスッ……」
「ち、ちょっとキリトくん何泣いてんの?」
「いや…ユウも成長したなと思って……他人を罵ることが多かったというのに……」
すると、シグルドは急に態度を変えた。
「……そうだな。何処へでもいけリーファ」
「う、うん……あたしも、ごめんね。何も言わずに去ろうとして」
「気にするな」
で、そのまま三人は飛んで行った。
「………グスッ。ユウ、成長したな……」
「おにい、殺すよ」
「ごめん」
*
塔。
「いいんですか?シグルドさん」
「あそこでまだこちらがゴネれば、周りから不信感を持たれる。その方が今後として良くない」
「それは、そうですね……」
「なに、俺を裏切ったことを近いうちに後悔する事になるさ」
シグルドは薄く笑った。