第56話
ある日の風呂。
「おにい、ち○こデッカい」
「ブフォッ!」
噴き出す和人だった。
「…………おい、誰に習ったんだその言葉。つーか、他の人のナニを見たことがあるのか」
「とりあえずち○こを褒めとけばモテるってALOの人が言ってた」
「もうそいつと関わるな。いいな?出会い頭に殺せ。お願いだから」
「分かった」
なんてやってると、ガチャッと風呂の扉が開いた。
「ゆーずーはーちゃん!一緒にお風呂入ろー!………って」
直葉が入って来た。数秒後、悲鳴とビンタの音が響いた。
*
「…………と、いうわけなんだ」
和人は明日奈と里香に相談していた。
「待ちなさい。あんた達一緒にお風呂入ってるの?」
「ああ。兄妹だし」
里香に聞かれてもケロっと答える和人。それにまず二人は呆れたようにため息をついた。
「まぁそこはいいよ。で、相談って?」
「で、そのせいなのかもわからんが兄目線で分かるくらいあいつは普通じゃない。まずこの歳で俺と風呂に入りたがる」
((あっ、おかしいとは思ってたんだ))
「あと寝てる時もいつの間にか俺と一緒に寝てるし、休み時間は必ず俺の教室にくる。高等部に。てかたま授業中でも来る。友達もいないっぽい」
和人の顔は真剣だった。
「だから、その……なんだ?兄離れさせてやって欲しいんだ」
「あー……うん。なるほどね」
「大体分かったわ」
で、二人は腕を組んだ。
「でもいいじゃん。懐いてもらえてるなら兄冥利に尽きるんじゃない?」
里香が言ったが、
「『ユズの処女あげる……』って言い出すほどの懐き具合なんだが……」
と、和人は一蹴する。
「いっそのこと突き放してみればいいじゃない」
「馬鹿野郎明日奈!そんな可哀想なこと俺が出来るか!」
「うん、なんか今のでユズちゃんがそうなる理由が大体わかった気がした」
明日奈がうへっとする。
「でも和人。実際、そうでもしないと無理だと思うわよ。それくらい柚葉はあんたに依存してるもん」
里香が言うと和人は腕を組んで考える。
「で、でも……やっぱそんな可哀想なことは……」
「兄貴だったら甘いこと言ってないの」
ぴしゃりと里香が黙らせた。
「そうだよ和人くん。男だったらそういう事はキッチリ言わないと。ね?」
「むぅ……。わ、分かったよ」
*
そんなわけで、夜。飯を食い終わり、風呂も入った後、柚葉はいつものように和人の部屋へ向かった。
「おにい、お邪魔します」
だが、今日は和人は起きて待っていた。
「…………おにい?」
「ユズ、今日からお前は一人で寝なさい」
「えっ?」
「あとお風呂もダメだし学校の間はこっちに来ちゃダメだ。いいな?」
和人がそう言うと、柚葉はしばらく固まった後、すごすごと直葉の部屋に戻った。
「……これで良かったのかな……」
良くなかった、と次の日から思い知ることになった。