翌日の学校の屋上。和人、里香、明日奈に加えて圭子が参加している。昨日の夜に和人は圭子に「ユズがどんな感じか見てやってくれ」とメールで送って、その結果報告を聞きに集まったのだ。だが、
「は?来てない?」
「はい……。柚葉ちゃんのクラスに覗きに行ったんですけど……」
「何やってんだ、あのバカ……」
「ていうか、一緒に登校したんじゃなかったの?」
里香が聞いた。
「一人で行くとか言って別で来たんだよ」
「うーん……サボりじゃない?」
「あり得るな……。あいつ、学校サボって昼ドラとか見てたらしいし……」
腕を組んでため息をつく和人。
「とにかく、今日一緒に様子見に行ってみよっか」
「そうね、見に行ってみましょう」
明日奈が言うと、里香が賛成する。
「あたしも行きたいです!」
圭子も乗ってきて、三人は桐ヶ谷家に行くことになった。
*
で、桐ヶ谷家に来たのだが、
「は?帰ってない?」
和人が聞くと、先に帰ってきていた直葉が言った。
「うん。ていうか、お兄ちゃん達が一緒に帰ってくるんじゃなかったの?」
「いや、あいつ今日学校来てなくて……」
和人の頭の中に「家出」の二文字が浮かぶ。滝のように汗を流していると、直葉の目が鋭くなる。
「お兄ちゃん……?もしかして、柚葉ちゃんに何かしたの……?」
「えっ、あっいや……」
すると、シュンッと音を立てて直葉の右手に木刀が現れた。
「ち、ちょっと待てお前今どこから出した⁉︎」
「見付けて来るまで帰って来るなァァァァッッ‼︎」
木刀が和人の顔面に振り下ろされ、追い出された。
*
で、外をトボトボと歩く四人。
「だ、大丈夫ですか?和人さん……」
「鼻血が……いい歳して鼻血出ちゃったよ……あのバカ、本気で殴りやがったな……」
圭子にもらったティッシュを鼻につめながらぼやく和人。
「で、どうすんのよ」
里香が聞いた。
「家出だったらヤバイわよ。この中にあの子より頭の良い奴いるの?」
「確かにこの手のことに関してはあいつより頭いい奴なんていないよな……」
「この敗北感はなんでしょうか……」
ゲンナリした様子で圭子が言った。すると、明日奈がふと思ったように口を開いた。
「ねぇ、今思ったんだけどさ。柚葉ちゃんっていつもどうやって登校してるの?」
「「「はぁ?」」」
いきなり何を言い出すんだこいつは、みたいな顔で反応する三人。だが、別段気にした様子はなく明日奈は再び聞く。
「いいから。ねぇ、和人くん」
「え、えーっと……俺がおんぶしてあいつは背中で寝てるな」
「やっぱり……」
「なんなのよ明日奈。説明してよ」
里香が聞くと明日奈は言った。
「もしかしたらさ、柚葉ちゃん迷子になってるだけなんじゃない?」
「「「へっ?」」」
「ほら、和人くんの背中で寝ながら学校来てたんでしょう?だったら、学校の生き方とか分かってないかも……」
「バカ言っちゃいかんよチミィ」
バカにしたように和人は言った。それにイラっとする明日奈だったらが、気付かずに和人は続ける。
「あいつは頭だけはいいんだぜ?学校への道なんて一回でも起きて登校してりゃ……一回でも……一回、でも……一回も……一回も起きて登校してないな……」
「ほら見たことか」
今度は明日奈がバカにしたような顔をする番だった。
「と、とにかく探さないと!手分けして探そう!」
急に慌て出す和人。
「俺はとりあえず日本を探すからみんなはヨーロッパ辺りを……」
「いや待ちなさいよ。規模が広すぎるし何自分だけ国内で済まそうとしてんのよ」
里香がジト目でツッコんだ。
「だっだだだだって柚葉が迷子なんだぞ⁉︎そんなん落ち着けるかハゲ‼︎許さん!絶対許さん!」
「何を許さないのよ。つーか誰がハゲだおい」
「とっととととにかく探さなきゃ……!あいつ一回迷子になって福岡まで行ったことがあるんだよ!」
「それはすごいわね!そしてよく会えたわね!」
「とにかく行くぞ!俺は太陽系内を探すからみんなは……」
「落ち着きなさい」
明日奈のラリアットが和人の顎に直撃し、そのまま電柱に叩きつけた。
「ゲッファッ‼︎」
「こんな時だからこそ落ち着きましょう。まずは川越付近から探して、徐々に範囲を広げていきましょう」
「ゲフッ!ェゲフッ!」
「じゃあ、私は駅の方を探すから、里香は商店街、圭子ちゃんはデパート、和人くんは念のため学校に行ってくれる?発見したらちゃんと連絡すること。いいわね?」
「「「了解」」」
で、四人は行動開始した。この後、森林公園付近で発見されたが、結局柚葉の甘えん坊は元に戻った。