もし、キリトに実妹がいたら   作:スパイラル大沼

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ファントム・バレット
第58話


 

 

ALO内。

 

「ねぇ、最近ユウちゃんいなくない?」

 

アスナがふと思って言った。

 

「ああ、あいつなら辞めたよ。ALO」

 

「へっ⁉︎な、なんで⁉︎」

 

「なんか新しいゲーム買ったらしい。どのゲームかは教えてくれなかったんだけどこの前コンバートしたって」

 

「あの重度のキリト依存症の子が……?」

 

「ああ」

 

ガビーンとするアスナ。

 

「……もしかしたら明日、世界終わるかも……」

 

「そこまでじゃねぇだろ!」

 

「いやいや、結構珍しいことだと思うぜ?」

 

クラインが口を挟んだ。

 

「あの二言目にはキリトの名前の出てくる寝坊助がキリトの元を離れたんだ。親としては寂しい気もするだろ?」

 

「親じゃないよ。まぁ寂しくないことはないけどな。でもそこのに比べたらマシだろ」

 

キリトの視線の先では、リーファが「あはははははは」と乾いた笑いを浮かべながら、自動モンスター撲滅機の如くモンスターを片っ端からぶっ殺していた。

 

「ちょっとあの子怖いんだけど……」

 

引き気味にリズが言った。

 

「なんとかしてユウを戻してこないとあの子自殺するんじゃない?」

 

「しねぇよ。と、思うよ。てか思いてぇよ」

 

「ドンドン信用なくなってるけど⁉︎」

 

「まぁ、しばらくは俺もいなくなるしなぁ」

 

「えっ?そなの?」

 

リズが声を上げた。

 

「ああ。ちょっと事情があってな……。ガンゲイルオンラインっていうゲームに用があるんだ」

 

「ガンゲイルって、あの玄人向けのガンゲー?」

 

「ああ」

 

「すごいゲームに入るんだね、キリトくん……」

 

アスナも声を漏らした。

 

「おいおいキリトよぉ。そしたら新星アインクラッドの攻略はどうすんだよ。おめぇとユウちゃん無しで攻略できんのか?」

 

「大丈夫、なるべく早く帰ってくるからさ」

 

そんなわけで、GGOである。

 

 

 

 

GGO内。どっかの荒野。そこにそびえ立つ廃墟。

 

「ったく、いつまで待たせんだよ……。おいダインよう、ほんとに来るのかぁ?ガセネタなんじゃねえのかよ?」

 

「奴らはこの三週間、ほとんど毎日のように同じ時間、同じルートで狩りに出てるんだ。俺が自分でチェックしたんだぞ。確かに今日はちょっと帰りが遅いけど、どうせモンスターの湧きがよく粘ってるんだろ。そのぶん分け前が増えるんだ、文句言うなよ」

 

と、6人のパーティのうちの二人が話している。そのパーティにはシノンという少女がいた。

 

「でもよぉ、今日の獲物は先週襲ったのと同じ連中なんだろ?警戒してルートを変えたってことも……」

 

「前に待ち伏せてからもう6日も経ってんだぜ。それからもあいつらはずっと同じ狩場に通ってるんだ。奴らはモンスター狩特化スコードロんだからな……。何度襲われて、儲けを根こそぎにされても、それ以上に狩りで稼げればいいと思ってるのさ。俺たちみたいな対人スコードロンには絶好のカモだ。あと2、3回はこの手でいけるさ」

 

「でもなあ、信じられねえなあ。普通、一度やられれば何か対策するだろう」

 

「翌日くらいは警戒したかもしれないが、すぐ忘れたんだろうさ。フィールドモンスターのアルゴリズムは毎日一緒だからな。そんな狩りばっかしてるとそいつらもモンスターみたいになっちまうのさ。プライドのねえ連中だ」

 

シノンは聞いててだんだん不愉快になり、マフラーに顔を埋めた。すると、もう一人の男が口を挟んだ。

 

「いい加減にせんか、貴様ら」

 

「ああ?」

 

言われてダインは不愉快そうに眉を釣り上げる。

 

「確実に勝てる相手に何度も挑むような下衆に連中を罵る資格はない」

 

「はぁ?何言ってやがんだユウ」

 

「同じパーティで参加してる時点でお前も同じ穴の狢だろうが」

 

で、ケラケラと笑う二人。ユウ、と呼ばれた男は舌打ちすると不愉快そうに目を閉じた。その時だ。

 

「来たぞ」

 

別の男が声を上げた。

 

「ようやくお出ましかい」

 

小声で唸りながらダインは中腰で移動し、双眼鏡で敵の戦力を確かめた。

 

「……確かにあいつらだ。七人……先週より一人増えてるな。光学系ブラスターの前衛が四人。大口径レーザーライフルが1人。おっと、ミニミ持ちが一人。こいつは先週は光学銃だったから慌てて実弾系に持ち替えたんだろうな。狙撃するならこいつだな。最後の一人はマント被ってて武装が見えないな……」

 

「なら挑まんほうがいいだろう。今日のところは引いた方がいいと思うが?」

 

先ほどの文句言っていたユウが口を挟む。

 

「バカ言え。これだけ待たされて何もしないで帰りますなんて冗談じゃねぇや。ビビってんならお前一人で帰ってろ」

 

ダインがぴしゃりと言う。それにユウはチッと舌打ちした。そんな中、シノンはスコープからターゲットを覗いていた。

 

「あの男、嫌な感じがする。最初に狙撃するのはマントの男にしたい」

 

「何故だ?大した武装もないのに」

 

「根拠はないけど。不確定要素は気に入らないだけ」

 

「それを言うなら、あのミニミは明らかに不安要素だろう。あれに手間取ってる間にブラスターに接近されたら厄介だぞ」

 

すると、シノンはさっきのユウを見た。この二人はなんかアレ、結構仲良い。だが、ユウは好きにしろ、と言わんばかりに目を逸らした。

 

「……わかった。第一目標はミニミにする。可能だったら次弾でマントの男を狙う」

 

「おい、喋ってる時間はそろそろないぞ。距離2500だ」

 

別の奴が言うと、ダインは頷き、言った。

 

「よし。俺たちは作戦通り、正面のビルの陰まで進んで敵を待つ。シノン、動き始めたら俺たちには奴らが見えなくなるからな、状況に変化があったら知らせろ。狙撃タイミングは支持する」

 

「了解」

 

「ユウ、お前は補欠だ。余計なことはするなよ」

 

「ふんっ」

 

で、ダイン達は出発し、位置に着いた。

 

「あなたはいいの?」

 

「何がだ?」

 

「出なくて」

 

「構わん。出るな、と言われれば出ないまでだ」

 

「………そう」

 

するの、ヘッドセットから声がした。

 

『位置についた』

 

「了解。敵はコース、速度ともに変化なし。そちらとの距離400。こちらからは1500」

 

『まだ遠いな。いけるか?』

 

「問題ない」

 

『よし、狙撃開始』

 

「了解」

 

作戦開始だ。

 

 

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