翌日。桐ヶ谷家。
「おはよう、ユズ」
「おにい、おはっ」
「昨日、随分遅かったな。ちゃんと時間見て切り上げないとダメだぞ」
「わかっちょる」
「それと、ALOにも帰ってくるんだろ?スグが毎日死にそうになってるからちゃんと戻ってきてやれよ」
「そしたら、ユズが絞め殺される」
「それもそうか」
*
その日の夜。ユウはGGOの世界で武器屋にいた。BOBの準備はすでに終わっているが、暇潰しにである。その時だ。
(このBOB優勝したら、お金も貯まる。これで、おにいと……)
心の中で二ヘラっと笑ってると、声が掛かった。
「あら、ユウ」
「むっ?」
「はっ?ユウ?」
シノンが立っていた。そして、そのシノンの隣には女の子のようプレイヤーが立っていた。
「ほう、シノンか。昨日ぶりだな」
「何それ。ここで何してるの?BOBの準備?」
「ふんっ。戦の準備など戦の一週間前には終わらせておく。それが兵士というものだ」
すると、隣の女性っぽいプレイヤーは引き気味に口を開いた。
「な、なんかすごい人ですね……」
「口調はアレだけど腕は確かよ。あそこに見えるゲームあるでしょ?」
「? どれ?」
「あそこ」
店の奥に、Untouchable!と書かれたゲームがあった。
「なんですかあれ?」
「あそこのガンマンがいるでしょ?あいつがこっちに向かって撃ってくるんだけど、それをすべて躱してガンマンに触ればクリア、あそこに表示されてる額をすべてもらえるの」
表示されてる額は250万円。
「全部ですか⁉︎」
「うん。だって無理だもん。……と、思われてたんだけど、つい最近クリアしたやつがたった一人いてね。それがそこのユウ」
「ふっ。あれしきの遊びをクリアしたところでなんの自慢にもならん」
「それで、チャレンジャーが増えちゃってね。で、今はあの額ってわけ」
「ふーん……」
相槌を打ちながらその女の子はゲームの前に立った。
「や、やるの?」
「原理的にクリアできるゲームならクリアしてみたいでしょ」
そう言うと、いざプレイ。見事な脚さばきでクリアして見せた。
「すごい……」
と、シノンが声を漏らす中、ユウは「んんっ?」と声を漏らす。
(あの動き……何処かで見たような……ていうか、いつも見てるような……)
明らかに覚えのある動きにドッと汗が浮かんだ。
「? どうしたのユウ?」
「い、いやなんでもない……彼女の動きに惚れ惚れしてしまっただけだ」
「………惚れたの?」
「私が惚れるのは強い者だけだ」
(そうだよね……あの人、おにいである以前に女の人だもんね……)
と、無理矢理自分を納得させるユウだった。
「で、ではシノン。私はこの辺で失礼する」
「? う、うん……」
「次の戦場ではライバルだ。手加減無用で頼むぞ」
「そっちこそね」
そのままユウは逃げるように去った。