テイルズオブエクシリア2.ご!〜エル・ウィル・クルスニクの日常〜 作:ふぁみゆ
ふぁみゆが悪いんじゃない。時代が悪かったのさ←
「あぁ!お嬢様!お料理なら私が!」
買い出しから帰ってきたエルはこの家の雇い主の娘である。ラルが台所に立っているのを見つけ慌てて静止に入る。
「いいのよ、エルさん。これは私の趣味ですから。」
と言って止めようとしたエルをあしらう。
「しかし、もし火傷などなされては…」
「あら、エルさんは私を馬鹿にしてるの?」
「いえ、そういうわけでは…」
完全にラルのペースに載せられてしまうエル。そして、戸惑うエルにラルはちょっとした提案を投げかけた。
「なら、エルさんも手伝ってくれないかしら?私が怪我をしないように見張って頂戴。」
「は、はい。畏まりました…」
台所に立つ二人。顔がよく似ているため傍から見れば仲のいい親子にでも見えただろう。しかし、事態はそんなに単純では無かった…
今、この家で働いている少女、"エル・ウィル・クルスニク"の旧名は"エル・メル・マータ"だ。今の名前は大切な相棒から貰ったものであり、親に名付けられた名前ではない。つまり、彼女の本当の名前はエル・メル・マータなのである。
そして、エルが働くこの家の娘、ラルの名前もラル・メル・マータ。この二人には決して切れない確かな繋がりがあった…
「今日のお夕飯は何にするの?やっぱりトマト料理?」
今のところその事情を知っているのはエルだけだ。この世界の人間であるラルには知ることができない。そのおかげでラルとエルは良好な関係を築くことができていた。
「いえ、今日はマーボーカレーにしようかと。いつもトマトばかりでは飽きてしまいますし…」
「マーボーカレー!私好きなのよ!もう晩が楽しみだわ!」
「えぇ、楽しみにしておいてくださいね…」
だが、それでもエルは簡単には割り切ることができていなかった。
なぜなら、彼女はこの世界とは異なる、分史世界の人間だからだ。そして、ラルは正史世界のエルの…
「ラル、こんなところにいたのかい?料理なんてメイドに任せればいいのに」
二階から一人の若い男が降りてくる。彼はマグナ・ゼク・ルギエヴィート。
ラル・メル・マータの許嫁の男。そして、本来ならばラルと"出会うはずの無かった"男だ。
「マグナさん。メイドじゃなくて名前で呼んであげてよ。彼女にはエル・ウィル・クルスニクっていう素敵なお名前があるんだから。」
エルのことを鼻で笑うマグナ
「ハッ、メイドはメイドだよ。それにね、僕の目に映るのは君だけだよラル…」
「もう、マグナさんは…でも、お菓子作りくらいは私にやらせて頂戴。数少ない私の趣味なんだから。」
「ははは、分かったよ。おいメイド!彼女に怪我でもさせたら承知しないからな」
「……はい。」
そして、何やらGHSを触りながら出て行った…
「ごめんなさいね。あんな態度で……」
「い、いえ……」
申し訳無さそうにするラル、彼女は手を止めると自分たちについて話し始めた。エルのマグナに対する印象を少しでもいいものにしようとして…
「家はね、元々クランスピア社と強い結びつきのおかげで反映していたの。でも、ビズリー社長と要人達の相次ぐ死亡事件があったでしょ?あれで、父は焦ってしまってね。クランスピア社との提携を解除してしまったの…」
その話を聞いたエルはぐっと唇を噛みしめる。なぜならばエルはそのことをよく知っているから、ある意味では当事者とも言える立場だったからだ。
「でも、クランスピア社はイバル新社長の奮闘で見事に返り咲いた。それに対してクランスピアとの繋がりがなくなった家はどんどん落ちていってね。そこで父が打った手は娘である私をある名家に嫁がせることだった。」
それがルギエヴィート家。元々は傍流の貧しい家庭だったが長男が一人でのし上がったことによって名声を集めた家。本来ならばそんな庶民上がりのところに頼るのは貴族として恥ずべきことなのだが、それだけに断られる確率の少ない安全な方法だったと言えるだろう。
それだけに事件に関わったエルはマータ家の運命を大きく変えてしまったと言えるだろう。
「それじゃあ、お嬢様はお家のために…」
しかし、話す彼女に暗い表情は無かった。寧ろこんな状況でも、笑っていた…
「初めはね、すごく嫌だった。なんで家に家のために自分の人生を変えなきゃいけないんだって…人に言われた相手と絶対結婚なんかしたくないって…でもね、私が思っていた以上に彼は優しかったの…」
家のために嫁いできた自分にマグナは本当に気を使ってくれたこと、優しくしてくれたこと、尽くしてくれたこと。それをラルは全て話した…
「だから、今は思ってる。あの人と一緒になれて良かったと…」
「……」
目を閉じるエル。
そして、噛みしめるように言葉を紡いだ
「お嬢様は幸せですか?」
それにラルは迷いなく答えた…
「えぇ、幸せよ!…」
ーーーーーーー
「ルドガー社長。本日の予定ですが…」
クランスピア社に入ったルドガーは多くの社員の礼を受けながら社長室へ向かう。
秘書であるヴェルの言葉を耳半分に聞きながら…
「本日の面会ですが、相手はラル・メル・マータ」
その言葉を聞いた途端血相を変える。そして、社長室へ走りだした。
荒い息で社長室の扉を開けるとその人は
いた…
「はじめましてルドガー社長!ラル・メル・マータです。」
ーーーーーーー
「はっ!?」
エルは屋敷の寝室のベッドから飛び起きた。
まだ荒い息であたりを見渡す。時刻はまだ深夜…
「…夢?」
エルが夢に見たのはルドガーが生きていた場合の未来。確かにありえた未来だ…
「…」
自分は確かにこの世界に存在し、この世界にいる人々の運命に影響を与えている…
ラルに出会い、その事実を確認するエルは胸を締め付けられるような感覚に襲われる。
「今は、仕事に集中しないと…」
気持を切り替え、窓の外を見るエル…
屋敷に見知らぬ人物が入ってくるのを見つけると、そのまま静かに部屋を出た…
さて、ルギエヴィートという名前にピンときたひとは何人いるでしょう?
今回の評価と同じくらい気になります
感想、アドバイス、お待ちしています!