過度な期待はし無いでください。
世界は悪意に満ちている。少女はそう言った。
悪意だけでは無いさ。と、少年はそう返す。
世界は残酷にできている。少女はそう言った。
慈悲だってあるだろ。と、少年はそう返す。
心を閉ざした少女は世界を憎み、
心が捻くれた少年は世界を慈しむ。
十人十色、人は一人一人違うと言うが、
---さて、世界はどうだろう?
何も無い空間、左右すら分からなく、明るいか暗いかも分からない。そんな空間に私はいた。
なぜ、こんなところにいるのかすら分からなく、いつからここにいたのかも、すべて分からない。
もしかしたら、私は死んでいるのかもしれない。
……そうか、私は死んだのか。
記憶も思い出せないし、身体……肉体すら失っているが、なんとなく……そうなんとなくだけど、本能が、理性が、心が、そう理解している。理解、してしまっている。
なら、ここは死後の世界なのか?
ーいや、それは無いだろう。
なぜなら、私は一度、ここに来ている。
……そうだ、思い出した。ここは"世界の狭間"。
世界と世界の間にある空白の場所だ。
まあ、簡単に言うと大陸と大陸の間にある海みたいなものだ。
何故、こんな場所をしっている···?
ふと頭をよぎるのは、深い悲しみに真っ暗な風景、そして絶望の匂い
そして自分という存在が消えていく感覚。
それだけではなく他の記憶も頭をよぎっていく。
明るい陽の光に人の笑い声、そして喜びの匂い。
これは……どういうことだ?
私の中に二つの記憶が存在している…
一つは"魔法"が発達した世界。
そこでは人々を導く"女神"として絶望の日々を。
もう一つは"科学"が発達した世界。
そこではただの"人間”として幸せな日々を。
その二つの記憶が私を混乱させる。
さらに私はある事に気ずく。
両方とも"終って"しまっていることに
ふふ、これは笑える。
女神として絶望し、自分の存在を消したのに、結局消えきれず別の世界に生まれ変わっていたとは……
人々を見捨て、自分の役割を放棄したのに。
自分だけ別の世界で幸せにすごしていたとは……
そんな権利、私には存在しないというのに…
人間では無い私が、触れてはいけない温かさだと言うのに。
なんと滑稽で、なんて無様なんだろう。
いくら導いても成長しない人間に絶望し、
人間を完璧に導けない自分の力に絶望し、
それでもやはり人間を見捨てることが出来ず。
最後には自分の存在さえ消滅させなくてはならなくなった。
しかも、自分を消滅させることすら完璧に出来ず、挙句の果てには別世界に転生してしまうとは。ほんとうにーーー
------し…ない…------
何処から、声が聞こえた気がする。
辺りを見渡しても何も無い。
当たり前だ。ここは世界の狭間。声など聞こえるはずが---
------し…ないで------
…!? さっきよりもハッキリと声が聞こえた‼︎
聞き間違いでは無い!!
そう確信し、さらに耳をすませてみる。
------死なないで------
------1人にしないで------
それはとても不安そうで…
------死んじゃやだぁ------
今にも消えそうなくらいのか細い女の子の声で…
------ロイド、エリィ------
------ティオ、ランディ------
------死んじゃ、やだよぉ------
助けを求める声で…
------1人は、さびしいよぅ------
その声を聞いた瞬間、何かに引っ張られるように意識を失った。
なんとなく思いつきで書いたので続編は時間がかかる……かも。