魔法少女リリカルなのは ~悪を断つ剣~ 作:ダラダラ@ジュデッカ
それでもよろしければ↓をご覧ください。
それから、後書きにアンケート的なものを用意しました。宜しければ答えていただければ嬉しいです。
「すみません、大変お待たせしました」
「いえ……」
少し申し訳なさそうに頭を下げた青年―——いや、実際にはそのように見えるだけで、年齢としては三十後半なのだが―—に、ゼンガーはたいして気にしていないという素振りを見せる。
先ほどまで騒がしたかった店内も、その最もたる理由である子供たちがいなくなったおかげか静けさで寂しいくらいだ。
客席であろうテーブルには自分たちが食べた皿がきれいに片づけられている様子を見る限り、店側にとってはありがたいだろう。
「桃子……いえ、妻から話を聞きました。娘を助けてくれたそうで……なんとお礼をいっていいやら」
「……。いえ、当然の事をしたまでです」
少し間を置き、そういえばそのような設定になっていた事を思いだす。
まあ、嘘はついていない。事実、助けたのは本当の事である。ただ、それに至る過程が違うだけの話である。
―――と、いきなり話を進めたが、今現在ゼンガー・ゾンボルトがいる場所は『翠屋』という喫茶店の中にいる。
この翠屋は、なんと高町なのはの両親である高町士郎と高町桃子が経営する喫茶店であり、評判も上々との事。今回、なのはの父親である高町士郎が是非ともゼンガーにお礼がしたいとの事で、こうして招かれたのだ。
他人の好意を無碍には出来まい。ジュエルシード収集も滞っていたゼンガーは、またも釣りに興じていたのだが、なのはから話を聞き、それならばと足を運んだ。
「娘を助けてくれたこと、本当に感謝しています。ですが……本当にコーヒー一杯だけでいいのですか?」
「無論です。このコーヒー、俺にとっては大変美味ですので」
一言、ゼンガーはそういってコーヒーカップを手に取る。
彼が頼んだものは、コーヒー一杯。士郎にとっては娘の恩人の為にコーヒー一杯では物足りないだろうと思っていたが、この男は迷うことなくそれを注文した。
たかが一杯、されど一杯。実に一週間ぶりとなるコーヒーの味にゼンガーは十分すぎるほど満足していた。
砂糖やミルクなど入っていない、正真正銘のブラックコーヒー。喫茶店だけあって、きちんとした豆で作っているのだろう。普段の大半はインスタントで済ませてしまうゼンガーにとってはこれで十分なのだ。
「……そうですか。喜んでいて、こちらとしても嬉しい限りです」
にっこりと、士郎は笑んだ。
コーヒーだけとはいえ、その味を褒められた事は嬉しい事に違いない。
そんな士郎の笑顔を読んだが、ゼンガーは変わらずコーヒーを口に含んだ。
(…………)
コーヒーを飲みながら、ゼンガーは何かを考える様子が伺える。
しかし、それを他人に読ませるほど彼も甘くない。一瞬だけ彼は目を閉じたが、その一瞬で彼が何を考えたのかは分からなかった。
「……大変、美味でした。では、俺はこれで」
「いえいえ。ですが、もう少しゆっくりしていってもいいんですよ?」
「いえ……これ以上、甘える訳にもいかないので。それでは」
コーヒーを飲み終えると、ゼンガーは腰かけていた椅子から立ち上がる。
これ以上、ここに留まる必要もない。そう感じたのか、あるいは何か思うところがあったのか。
木刀を片手に持ち、士郎に一礼する。士郎は相変わらずにこやかに笑っていたが、その視線がゼンガーの木刀に向けられている事を、ゼンガーはすぐさま悟る。
いや、悟る―——というよりは、最初からゼンガー自身に興味があったのだろうか。木刀を持って堂々と店に来店してくるゼンガーも現実的に考えてみれば凄いのだが、木刀と同時にゼンガーにも興味を持った様子だった。
別に、悪意を持っているような視線ではない。ならば何かと問われれば、それは“剣士”として、純粋にゼンガーに興味を持ったといっていい。
実は、高町士郎という男、元はといえば全世界を渡り歩くSP――いや、ボディーガードの仕事を過去にしていた事がある。
過去に重傷を負った事で引退したが、全盛期には相当の腕との噂も。そして、彼は永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術という剣術の師範である。いや、あった、というべきなのだろうか。
―――この永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術というのは、古来より護衛や暗殺術として名を馳せている流派である。
なのはも彼等の流派を聞いたことがあるが、まだ幼い彼女にその本質を理解することは出来ず、また士郎たちも自分たちが行っている剣術の本質を知られたくないようにしていたので、なのはも聞くことはなかったのだが。
しかし、これは職業柄というものなのだろうか。どうしても興味を持ってしまうのが本音だろうか。
ゼンガーに興味が尽きない様子の士郎に、ゼンガーも心の中で溜息を吐き、彼に問う。
「……先ほどから俺の木刀を見ていますが……何か?」
「ああ、いえ。実は、僕も昔は剣術を嗜んでいまして。その経験があるからか、貴方の木刀に興味を持ったんですよ。立ち振る舞いからしても、相当な腕前なのでしょう?」
「…………」
嗜む? それは嘘だろうとゼンガーは感付く。この高町士郎という男、こうしてにこやかに笑っているように見えるが、実は何処にも隙を見せていない。
ゼンガーを警戒している訳ではないが、過去の経験とやらが影響しているのだろうか。底知れぬ実力の持ち主なのだろうと判断した。
「……そういう事でしたか」
「ええ、そうなのですが……もしかして、不愉快な思いをさせましたか?」
「いえ……。その程度の事、構いませぬ」
「それならいいのですが。いやあ、悪い癖ですね、どうも。はっはっは」
声に出して笑い、頭をかく士郎だったが、やはり油断ならない相手のように思えてしまうゼンガーだった。
■
ゼンガーが翠屋から出て、どれぐらい経ったのだろうか。
もしかすると、そんなに時間は経っていないのかもしれないし、あるいは思ったよりも時間が過ぎたのかもしれない。
今、ゼンガー達の眼前に聳えていたのは―——巨大な大木の数々だった。
なぜこうなったのかといえば、どう説明してよいやら。強いて言うならば、気が付けばこのように大木が伸び、見る見るうちに町の中に生えていったというべきか。
こんな超常現象が突然起きる訳がなく、理由はジュエルシードなのだとすぐに気付いたが、今までのような暴走体ではない事は明らかだ。
まず、この大木たちはただその場に居座っているように存在するだけで、敵意というもは感じられない。相当ひどい場合は根っこなどを使って攻撃してくるやもしれぬと考えていたが、それは深く考え過ぎだったのか。
しかし、敵意がなく襲ってくる気配もないとはいえ、これだけの大きさである。更に、その巨大さから海鳴市全体に深刻なダメージを与えており、交通は当然麻痺し、けが人も出ている様子。
―———恐れていたことが、遂に現実になったか。
ユーノやなのは、そしてゼンガーも懸念していた他人への被害。それが、こういった形で出てくるとは。
「酷い……」
「多分、人間が発動させちゃったんだと思う。強い想いを持った者が願いを込めて発動させちゃったとき、ジュエルシードは一番強い力を発動する。だから、この現象もきっとそうだと思うんだ」
先ほど合流したなのはは魔法少女に変身したものの、目の前の光景に唖然とする。ユーノの推測も恐らくは本当だろうが、それにしてもなのはにとってはあまりにもひどい光景だった。
ゼンガーは目の前の光景を見て、ただただ腕を組んでいるだけだったが、果たしてどうしたものかと考えていた。
木を斬るだけならば容易い事だ。しかし、これだけ多量の木を斬っていくのは流石のゼンガーも骨が折れる。更に、その本体を探し出すのは至難の技だ。
それに、ユーノの説を信じるならば、発動させたのは人間という事になる。今までのような蜂や狗といった生命体ではなく、人だ。
勿論、蜂や狗も生き物である。だが、向かってくるのならば正面から斬り伏せるのみだった。
が、現状はそうではない。だからこそ、ゼンガーは特に動こうとはしなかった。
しかし、唖然としていたなのははハッと気づく。人間が発動させたジュエルシード―——それは、本来ならば止められた筈だったのだ。
――――何故ならば、なのはは見ていたのだ。父親である高町士郎がオーナーを務める“翠屋JFC”の一員である少年がポケットにジュエルシードらしきものを入れたことを。
気が付いていた筈なのに。それを気のせいだと決めつけて。
それがどんなに愚かだったのかを、今更になって思い出す。罪悪感がなのはを襲い、バリアジャケットを強く握りしめる。
(私……気付いてたはずなのに……。こんな事になる前に、止められたかもしれない筈なのに……っ)
勿論、だからといってなのはを責めるというのは酷な話だ。
だが、なのはは無垢だ。無垢ゆえに、責任感も人一倍強い子なのだ。防げた事態を、全て自分のせいだと思い込む。それも、彼女の悪い癖である。
様子を伺っていたゼンガーだったが、だからといってなのはに声をかける事はしなかった。今、彼女に慰めの言葉など必要ない。それはかえって逆効果にしかならない。
ならば、何が正しいか。それは、彼女がどのような判断を下すか、どう行動するかということが大事なのだ。
―――無論、それを幼き少女に決めさせるのも酷な事である。が、なのはは何かを決意したかのように顔を上げ、それと同時にレイジングハートが輝き始める。
「な、なのは?」
(何を始める気だ……?)
魔法に関しては素人の為、一体なのはが何をしようとしているのかはさっぱりだ。
だが、彼女はこの状況を打破する方法を使用するのだろう。―――それを、己のせいだと自身を戒めながら。
「ユーノ君……。こういう時、どうすればいいの?」
「え?」
「答えて、ユーノ君」
突如、そのような質問がなのはからユーノに飛んだ。
当然、問われたユーノは困惑する。何を始める気なのかも分からず、果たして応えていいものなのか。
だが、問われたからには応えなければならない。ユーノはなのはの方を見ながら、こう答えた。
「えっと、ジュエルシードを封印するには接近する事が必要なんだ。でも、まずはその前に発現の原因となっている部分を見つけ出さない事には……」
そう、それはゼンガーも考えていた事。
今までの封印は、暴走体の本体を拘束し、出来るだけ近くでジュエルシードを封印していた。だから、今回のパターンも同様なのだと。
しかし、これだけの数だ。探すといっても一日かかってしまうだろうか。それだけで疲労を積み重ねても致し方がない。
更にはこの事態を重く見る人物もいるかもしれない。もっと被害が拡大する前に、この事態をどうにかしなければならないのだ。しかし、短時間で解決するにはどうしようもなく大きすぎる。
「それを見つければいいんだね?」
「う、うん。理屈としてはそうだけど……」
「だったら……!」
そういって、なのははレイジングハートを両腕で持ち、構える。
『Area Search』
なのはが何をしたいのかはレイジングハートには理解できているようで、応えるかのように光を帯びる。それを確認した上で、なのはは自身の周りに円を描いた。
すると、桜色の魔法陣が彼女の周りに生成され、彼女はすぐさま目を閉じて呪文を唱える。
「リリカル、マジカル。探して、災厄の根源を!」
唱え、なのはは杖をやや下に傾ける。
すると、何本もの桜色の光が彼女の周囲から出現し、散っていく。桜色の細い光であったが、それは海鳴市全体へと散らばっているようだった。
(今の光は……探索系の魔法なのか?)
ゼンガーの予想は、まさに正しい。
なのはが放った光は、正式には「サーチャー」と呼ばれる多数の端末である。中距離―——といっても、海鳴市全体には行き届く程度の―——の範囲で使用する事が出来、またその端末から送信される視覚情報により、目的のものを発見できるという代物だ。
そのような魔法も使用できたのか、とゼンガーは思う。今まで使う機会がなかったのか、それとも、今この場で考えて使用したのか。どちらにせよ、探す手間が省けたというもの。
後はなのはが発見次第、その場所に急行するのみだ。
(どこ……? どこなの……?)
一方、なのははサーチャーより送られてくる視覚情報の全てに目を通し、ジュエルシードを発現させた者の場所を探っていた。
無数の情報がなのはの脳内を駆け巡る。レイジングハートが殆どの情報を処理してくれるおかげでなのはにはあまり負担を掛けずに探すことが出来る。
よく出来たデバイスに感謝しながらも、今は探す事に夢中だった。もしかすると、今回は本当に自分の手で解決したいと思っていたのかもしれないが。
そして、遂に見つけた。光り輝く繭のようなものに包まれている何かを。―――あの時の少年と、もう一人の女の子。
(やっぱり……。…………)
見つけた事はいい。だが、発現者の正体があの時の少年だと気付いた時、またしても罪悪感がなのはを襲う。
私がもっとしっかりしていれば、こんな事にはならなかったのに、と。起こってしまった事は、仕方ないでは済ませられない。そう、なのはは思ってしまうのだ。
「見つけたよ、ユーノ君、ゼンガーさん」
「ホント?」
「うん。すぐに封印するから」
なのはの言葉に、ユーノは慌てて顔を向ける。
「な、何を言っているんだよ!? ここからじゃ無理だから、近づかないと……」
「出来るよ、大丈夫だから!」
いますぐに封印する? その意図を読めないユーノはなのはを窘めるが、なのはは聞く耳持たず。
「……そうだよね、レイジングハート」
『Shooting Mode. Set up』
なのはの問いに、レイジングハートは応えるかのように形態を変形する。
杖が更に伸び、球体を包むように形成されていたパーツは瞬時に分解し、半円月のような形をとった。更に、シーリングモードとは違うのか、桜色の翼は両翼が均等になっている。
通常形態、シーリングモードとは違う。新しい形態にレイジングハートを変形させたことに、ユーノは何かに気付いたかのようになのはを見る。
「なのは、まさか君は……」
「そのまさかかもしれない……。でも、絶対に大丈夫だから。私を信じて、ユーノ君」
もう、彼女に何を言っても無駄なのだろう。
複雑そうな表情を浮かべたユーノであるが、一回だけ静かに頷いただけでそれ以上は何も言わなかった。
続けて、なのははゼンガーの方を見る。その目は、しっかりとゼンガーを見ており、迷いなど見られない。それだけの決意ならば、口出しなど出来る筈がないではないか。
ゼンガーもまた、ユーノと同じように頷く。それを見たなのははすうと小さく息を吸うと、レイジングハートを握りしめながら言い放った。
「行って! 捕まえて!」
レイジングハートより、一筋の光が出現し、それが伸びていく。
その先には―——なのはが見つけたジュエルシードの大本。光の繭のような部分に一直線に向かい、包み込む。
光の繭を覆っていた大木は一筋の光によって消し飛ぶように消滅し、繭だけが残される。だが、これでいい。なのはの言う通り、“捕まえた”形となったのだ。
『Stand by Ready』
「リリカル、マジカル。ジュエルシード、シリアル10……封印!」
言い放つと、もう一度光が飛び出して一直線に進んでいく。
これまでの暴走体と同じように木々は修復を始めていたが、もはやそんな事など関係ないかのように伸びていき、直撃する。
その瞬間、海鳴市全体が光に包まれるのだった。
■
時刻は既に夕暮れだった。
海鳴市は再び平穏を取り戻した。しかし、ジュエルシードによりもたらされた爪痕まで綺麗サッパリ消えるという訳ではなく、その痛々しい光景が目に映る。
なのはは、やったのだ。だが、これだけの被害を―——人様に迷惑をかけたことを悔いていた。
「…………っ」
「なのは……」
変身を解いた後、建物の上から見た町内の景色になのはは奥歯を噛みしめ、スカートを力一杯握りしめた。
ユーノの心配する様な声も聞こえない。悔しくて、悲しくて―——立ち尽くす事しか出来なかった。
気付いてたのに、分かっていたのに。自分が悪いと己を責める。時間が巻き戻せたら、どんなにいいだろうか。よく確認すれば、こんなことには。
「……なのは」
「ゼンガー……さん」
彼女の隣にゼンガーが立つと、彼女もそちらに顔を向けた。
今にも泣きだしそうな少女。しかし、泣くまいと堪えているその顔は、一週間前よりも成長している証なのだろうか。
いや、それは寧ろやせ我慢か。そのような歳でそんな芸当を覚えたところで、なにもならないというのに。
「あの、私……本当は……!」
「それ以上何も言うな、なのは。お前はよくやった。今は、それだけでいい」
気付いていた、とでもいうつもりだったのだろう。表情を見ただけでなんとなく察したゼンガーは、なのはの言葉を遮った。
遮られた事になのは一瞬戸惑ったが、言われた通りにそれ以上何も口には出さず、黙っていた。恐らくは察してくれたのだろうが、それがなのはにとっては少し辛かった。
寧ろ、吐き出させた方が良かったのかもしれない。しかし、それをさせなかったのは、ゼンガーの―——いや、大人の“酷な所”か。
正直、今回の騒動に関してはゼンガーとしてはなのはの事を理解してやることしか出来ない。
不器用ながらも。口下手ながらも。高町なのはに必ずしも彼の真意が理解されまいと分かっていても。
彼にはそれしか、出来ないのだ―———。
さて、こんなところでやっていいのかも疑問ですが……アンケートです。
内容は、『この作品をどこまでやるか』ということ。リリカルなのはという作品は無印から現在はForceと作品内の時系列で十数年続く作品です。ということで、何処までやったほうがいいのか……という事に作者は悩んでいます。はい、とても。
正直、今のペースで進んでいたら無印が終るのがいつになるのか……といったレベル。いや、これから更新速度は上げる予定ではありますが。
とまあ、建前はともかく。本題に移ります。
①はあ? こんな小説無印で終わりでいいだろ?
②せめて2期までいこう。シグナムと戦わせようぜ!
③いやいや、3期まで行くだろ? ゼンガーおっさんになるけどどうにかして続けるだろ?
④4期いこう。突入する頃には4期も終わるでしょ。
―——はい、以上四点です。感想、あるいはメッセージにてお知らせいただけると嬉しいかと。ではでは、宜しくお願いいたします。
ちなみに期限は3月10日といたします。