魔法少女リリカルなのは ~悪を断つ剣~   作:ダラダラ@ジュデッカ

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……大変、お待たせしました。最近色々と忙しくて、全然投稿できなかったです……。

おまけに、今回の内容も非常に短いものとなっております。お許しを……。


第十一話 剣と魔法

「…………」

 

「…………」

 

 互いの間に言葉はない。しかし、異様な空気が彼等の間を渦巻いるのは明らかだった。

 漆黒の少女とゼンガー・ゾンボルト。少女は外見からすれば高町なのはと同年代程度の年齢であるが、その本質は魔法を扱う者。更に、なのはと違って魔法に関する知識や練度も高い様子。

 対するゼンガーは、魔法という不思議な力など持たない一般人に等しい。これまでの行動を顧みれば一般人と同じという評価はどうかと思われるのだが。

 しかし、不思議な男に違いない。少女が魔法を扱えると知っていながらも、あえて立ち向かってくる。動じる様子など微塵もなく、少女は若干表情を変化させた。

 

(……魔力を感じない点からして、この人は一般人。そんな人がどうして、私に立ち向かってくるの……?)

 

 なのはの時に感じた魔力など、この男からは皆無。ただ、手にした木刀を少女の方へと向け、臨戦態勢をとっている奇妙な光景。

 魔法を扱わないというだけで少女からしてみればやりにくいというのに。だが、少女もそれとなく感じ取っていた。この男、只者ではないと。

 

(油断したら、こっちがやられる……。でも)

 

 “今ここで邪魔されるわけにはいかない”。

 少女はデバイスであるバルディッシュを構え、地を勢いよく蹴った。

 素早い動作で体を動かし、この場からの逃走を図る。何も戦う事などなく、自分のスピードに追い付けるはずがないと高を括っていた。

 

 ――――が。ゼンガーを“少し雰囲気は違うが、所詮は一般人”と判断した少女の予想は、すぐに裏切られることになる。

 

「―――なっ……!?」

 

「通りたければ俺を倒して行けと言った筈だ!」

 

 これは一体どういう事なのか。少女の目は大きく見開かれ、驚愕の顔色を示した。

 何をそんなに驚くか? いや、当たり前の事だ。ゼンガーは、どうしたことか少女の前に躍り出ると、少女に向けて木刀を突き出したのだ。

 まさに問答無用。ただ、少女も反射神経はいい方のようで、すぐさまバルディッシュにて木刀を受け止める事で直撃は避ける事が出来た。

 

(判断能力はいい方のようだ。しかし……!)

 

 ゼンガーが一瞬だけ顔を顰めたが、少女には彼の顔の変化など気付く様子もない。

 木刀を受け止めた時にギインという鈍い音が己の耳にまで届き、衝撃は両腕にまで伝わってくる。なんて恐ろしい力なのか、と少女は息を吞んだ。

 

「ど、どうして……?」

 

「俺を甘く見たが故の結果よ。その程度の速さで、俺を撒けると思うな!」

 

「っ……!」

 

 ゼンガーを知る者ならば、この程度の動きが当然だろうと当たり前のようにと言い切るのだろう。曰く、「彼は人間を超越している」などと棒読みで言葉を発しながら。もしかすると、なのはにまでゼンガーさんになら出来るかも、と言われかねないのだ。この非常識な男は。

 だが、それは当然少女の知るところではない。彼女はゼンガーとは初対面であり、彼の今までを見てきたわけでもない少女が、彼の力の本質を判断するのは不可能なのだ。

 追いつかれた事だけでも十分に驚愕ものなのだが、少女を捉えたゼンガーは、容赦なく木刀を振るい、少女に次の行動を取らせない。

 

「くっ……!」

 

 戦い慣れている。少女は、ゼンガーの剣を受け止めていてそのように感じた。そして、少女に“容赦”、“情け”という言葉も通用しないという事も。

 それほどに迷いのない太刀筋。なのはを倒された事に対する怒りではない“何か”―――。この“何か”が、少女にとっては分からなかったが。

 

(何者なの、この人……!?)

 

 隙を見せた瞬間、少女に木刀が命中するのは必然だろう。更に、拘束して動きを止めようと思っても、ゼンガーがその動作をさせない。

 後退して間を置く事も出来ないほどの怒涛の太刀が襲い掛かり、一瞬でも気を緩ますことが出来ない。

 息が詰まりそうになるくらい、必死にバルディッシュを振るった。しかし、それでもこの男から逃れる事すら出来ない。

 近接戦闘に関してはそれなりの自信を持っていた少女だが、この現実にはその微かに芽生えていた自信すら失いかける。

 まるで子供と遊ぶかのように、少女と太刀を合わせるゼンガー。普段ならば、最初の隙をついたところで一気に勝負を決める性質なのだが、まるで彼女の腕を確かめるかのように木刀を振るっていた。

 本気を出していないのは百も承知。しかし、少女もゼンガーの斬撃をよく防ぐ。ただでさえ恐ろしく速く繰り出される剣捌きである筈なのに、バルディッシュを駆使してどうにか防いでいた。

 

「なかなかやるようだ。……が、まだまだ足りん!」

 

 だったらどの程度になれば彼に認められるのだろうか、という疑問は尽きない。

 しかし、そのような事を考えている間にも状況は動き、ゼンガーが少しだけ力を込めて振るった木刀は、疲れ切った少女を弾き飛ばすのは造作もない事だった。

 

「うあっ!」

 

 簡単に飛ばされた少女。そのまま地面に倒れ込んだが、すぐに立ち上がって体勢を立て直そうとする。

 しかし、どうした事か足に力が入らない。それどころか片膝までつく羽目になり、息も酷く荒かった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……っ」

 

 ゼンガーの攻撃を受け止める事に必死だった少女だが、自分の体力がここまで奪われているとは思わなかった。

 いや。もしかすると、それが狙いだったのかもしれない。ゼンガーからすれば酷く手間のかかるやり方であるが、なのはと同じぐらいの少女を本気で痛めつける事など出来る筈もない。

 ならば、疲れさせて動けなくしてやろうという寸法か。だが、一瞬でも距離を置いたのならばこちらのものだと少女は思う。

 

「バイン—――」

 

「させぬ!」

 

 事は一瞬だった。少女がゼンガーを拘束して動けなくしようとした瞬間、ゼンガーは動いた。

 素早く彼女の首元に木刀を突きつけ、いつでもとどめをさせるという体勢を見せる。その動きがあまりにも早く、まさに鬼神の如く動きだし、少女はまたしても息を吞んだ。

 

「っ……!?」

 

 それがまずかった。ゼンガーの動きに恐怖を感じ取ってしまった少女は、固まってしまったのだ。いや、当然と言えばそうなるが。

 だが、自分がミスを犯してしてしまったというのは分かり切っていた。折角の好機をみすみす逃すとは。

 だが、本気を出して魔法を使ってしまう訳にもいかない。もしかすれば、ゼンガーが大怪我をしてしまうかもしれないし、何より少女自身が一般人相手に魔法を行使したくなかった。

 なのはの場合は、互いに魔法を行できるからやりやすかった。同業者相手ならば、手加減も効く。

 しかし、今目の前に立っている男は、どんなに強かろうが少女からしてみれば“一般人”。そう、普通の人間である。

 

(でも……)

 

 少女にも、果たさなければならない目的がある。

 こんなところで負ける訳にはいかない。そして、やられる訳にもいかないのだ。目的を果たして、そして―———。

 そう思った時、少女の周囲が金色に輝く。すると、彼女の周囲から黄金色の球体が出現した。

 

「む……! 魔法か!」

 

「私は……捕まる訳にはいかないんです。だから……!」

 

 意を決したのか、少女の瞳が変わったのをゼンガーは感じ取った。そして、彼女は魔法―——なのはに向けて使った、フォトンランサーだ―——を出現させた。

 詠唱もなしに行使した点を見るからにして、得意な部類なのだろう。そして、魔導士はあのような魔法を自由自在に動かす事が出来る。

 

「……ファイア!」

 

「ぬう……!」

 

 勿論、当たればどうなるかも分からないような威力。当然、ゼンガーは後ろに下がって回避した。

 フォトンランサーの閃光はゼンガーのいた場所に突き刺さり、黒い跡が出来る。もし本当に当たっていたとなると、想像するのも恐ろしかった。

 ゼンガーの反射神経にも舌を巻くが、この行為は少女にとっては好機だ。彼女は地を蹴って飛び上がると、そのまま背を向けてこの場を離脱していく。

 

「逃がさぬ!」

 

 ゼンガーも少女をこのまま逃がす筈もない。

 飛び上がった少女に追いつこうと走り出すが、少女はまたしても黄金色の閃光を出現させてゼンガーに向かわせる。

 

「私に、関わらないでください……!」

 

「そうはいかぬ! その石をお前に渡すわけにはいかん!」

 

「私にはこれが―——ジュエルシードが必要だから……」

 

 少しだけ目を伏せた少女だったが、すぐにゼンガーに対して背を向け、月村家の敷地内から離脱していく。

 そのスピードは、ゼンガーですら追いつけないほど。追って行ったところで魔法を行使されればどうしようもない。

 

「……逃がしたか」

 

 深追いは無用と判断し、ゼンガーは木刀を収めた。

 なのはとは違う、新たな魔法少女。

 彼女もまたジュエルシードを狙う者なのだとしたら、今後は彼女との接触も増えるという事。

 だが、彼女に対抗できるのは、同じ魔法少女の高町なのはだけという事実。

 

(―――――魔法、か)

 

 自分にはない、力。行使できれば、どんなにいい事だろうか。

 ―――いや、ゼンガーは普通の人間だ。それに、この世界に深く干渉するつもりもない。

 

 だが、しかし。それでも―———。

 

(俺は―———)

 

 ゼンガーの拳を握る力が、少しだけ強くなるのだった―——。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

 あの場から全速力で離脱した少女は、海鳴市の外れにいた。

 息は戦闘中よりも荒れており、酷く周囲を気にしている。警戒しているといってもいいが、彼女の周りに人の気配はなく、それを彼女も感じ取ったのか、その場に力尽きたように倒れ込んだ。

 

(どうにか、あの場は凌げたけれど……)

 

 うつ伏せに倒れながら、彼女は思う。

 只者ではないと感じた一般人は、予想以上の動きを見せてきた。あの時、苦渋の決断とはいえ、一般人に魔法を使ったのは本来ならば得策ではない。

 怪我をさせてしまうかもしれない。魔法という存在を知っていたとしても、それは人として許されない行為だ。

 強大な力は、時として一方的な暴力へと変わる。あのまま少女とゼンガーが戦い続けていれば、どうなったか。―――答えは簡単だ。

 彼がいくら強かろうと、魔法という力を持った“人間”には勝てない。そう、少女が本気を出せば、ゼンガーですらどうなるか分からないのだ。

 

(でも、そんな事……出来る訳がない)

 

 それは甘い考えかもしれない。

 だが、本心でもあった。出来るだけ傷をつけたくない。あの子―——ゼンガーが言っていた、なのはという子に対してだって。

 

(でも、もう引き返せない。私には……それしか出来ないから)

 

 少しだけ顔を上げ、右手で草をギュッと掴む。

 

 

(母さん……)

 

 

 頭の中で、少女は母の笑顔を思い出し、目を瞑るのだった―———。

 






さて、ここでアンケートの結果―—は、いうまでもないですね。

え~、はい。かなりの意見が3期まで、ということで。頑張って3期まで続けていこうと思います。

構想は練っていますが、最近多忙な為にいつ完結できるか……。いや、きっとさせてみせますのでその時までお待ちを……。

ではでは、わざわざこんなアンケートに答えていただいた皆様方には本当に感謝しております。ありがとうございました!
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