魔法少女リリカルなのは ~悪を断つ剣~   作:ダラダラ@ジュデッカ

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うーん、今回も微妙な話に……。親分、ほとんど出てきませんし。

更に、今回は原作に出てこなかった暴走体も。ということで、今回は話としてはオリジナルです。

少し酷い出来ではありますが、それでも宜しければ↓をどうぞ。


第六話 頼らない

「はぁ……はぁ、はぁ……」

 

 夜。人々が寝静まり、静寂だけが支配する筈の情景に、一人の少女の声が微かに響き渡る。

 周囲に人の気配は全くと言っていいほど感じない。それは、なのはが文字通り一人という事。いや、正確に数えれば一人と一匹か。

 

「なのは、来るよ!」

 

「……っ。レイジングハート、お願い!」

 

『protection.』

 

 レイジングハートを掲げると、このデバイスは主の願いに忠実に答えた。

 なのはの周囲に防御フィールドのようなものを展開させ、主を攻撃から守る。ある程度固いそのフィールドは、敵の攻撃を一切通さない。

 しかし、所詮は防御フィールドを張っただけであり、攻撃に転じている訳ではない。更に言えば、今回のジュエルシード暴走体は今までと一味違った。

 

『―――――!』

 

 初めて出会ったジュエルシード暴走体―――あの、黒っぽい化け物の事である―――と同じか、それ以上の奇声を発した後、暴走体は腕につけてある鋭い針を持ってなのはに何度も突き刺してくるのだ。

 一発一発の攻撃力が高く、それでいて攻撃が中々止まない。なのはも歯を食いしばって耐えているが、耐える事しか出来ない現状に業を煮やしていた。

 

「うぅっ……」

 

「なのは、頑張れ! もう少し耐えれば必ず勝機はある筈だ!」

 

「う、うん……っ!」

 

 根拠のない発言ではあったが、なのははユーノに対して頷くと、レイジングハートを掴む手に力を込めた。

 

 

 

 

 ここで、少し時を遡る。

 

 時間は夕方。丁度、ゼンガーの後ろ姿を見送った後の事であろうか。なのはは、足取り重く帰路についていた。

 彼女の肩には、心配そうな面持ちをしながらなのはを見つめてくる小動物―――ユーノがいる。しかし、彼としても今のなのはになんと話かけていいのか分からずにいた。

 ユーノもゼンガーとなのはの会話は間近で聞いている。なのはの想いは痛いほど伝わってくるが、かといってゼンガーはなのはの手を借りまいとしている。

 ―――常識的に考えれば、それは当たり前の事だ。大人の事情に、子供が気安く入れるわけはない。

それに、ゼンガーの様子を見ている限り、どうも彼の事情というのはただ事ではないらしい。

 

「ねえ、ユーノ君……。私、間違っていたのかな?」

 

「なのは……」

 

 なのはのか細く、気弱な声がユーノの耳に届く。

 周りからすれば全くといっていいほど聞こえないような、そんな小さな声。しかし、彼女の一番近くにいたユーノにはしっかりと聞こえた。

 気が付けば、なのははまた泣いている。ポロポロと涙を流し、それを両手で拭っているのだが、どうしようもなく流れ落ちる雫は止むことはない。

 

「私、ゼンガーさんの力になりたかった……。でも、関係ないって……。私、いつも助けて…ぐすっ、貰ってるから……。だから……」

 

「…………」

 

 困っている時は、頼って欲しい。なのはが言いたいのはその事に尽きるだろう。

 しかし、ゼンガーにも頼れない事情がある。勿論、それは彼なりの考えがあっての事だろうが。

 だが、ゼンガーの言い方はなのはにとって相当響いたようだ。何も事情を話さずに行ってしまったゼンガー。事情を知ったところで、果たしてどうにも出来はしない事は分かっている。

 それでも――――。そんな事は、悲しい事だ。

 

「えっぐ……ぐすっ」

 

「なのは……」

 

 彼女の名前を呼ぶことしか出来ず、ユーノも下を向く。

 なのはを励ますにはどうしたらいいだろうか。言葉をかける? その言葉が見つからない。何か面白い事でもするか? それはいけない。それこそ、空気が読めない奴の典型的例だ。

 ユーノは、結局なのはが家に帰りつくまで、慰めの言葉すらかけることが出来なかった。

 

 なのはは帰りつくなり、桃子の声も聴かずに自室に閉じこもり、再び泣いた。声が響かないように、枕をギュッと掴み、顔を押し付けた。

 泣き止め、泣き止めと心で願う。だが、それよりもゼンガーの後姿と何も答えてくれない彼の姿が脳裏に思い出され、余計に悲しくなってしまう。

 酷い悪循環だと自分でも思う。だが、まだまだ子供なのか、その事を払拭する術を持たなかった。いや、知らなかったといった方がいいのかもしれない。

 まだ、彼女は純粋だ。純粋で、いい子で。我慢する事を知っていても、やはりまだ無垢で。そんな子が、高町なのはという少女だった。

 

 それから、どれぐらいの時間が経っただろうか。ようやく落ちついたであろうなのはにユーノが近づき、ようやく彼女に声をかける。

 

「なのは……。君の想いは、十分あの人に伝わっていたと思うよ」

 

「本当に? 本当に……そう、かな?」

 

「うん、きっとそうだよ。でも、なのはや他人を巻き込むわけにはいかない事情が……多分、彼も僕と同じような事情を抱えているのかもしれない」

 

「事情…?」

 

「うん。―――なんとなくだけど、分かるんだ」

 

 なんとなく、とはいったが、それは自分と似たようなものではないのか、とユーノは考えていた。

 ユーノ自身、誰にも迷惑をかけないように、一人でジュエルシードを探していた。

 結果的にこの様ではあるが、今でもなのはに迷惑をかけまいと一人で探す気はある。いや、本当ならばそうしなければならないはずだったのだ。

 

「確かに、僕とあの人は違う。でも、誰かに―――人様に迷惑をかけたくはないんだよ。これは自分の問題だから、自分で解決しなくちゃって……意地になっているんだ」

 

「でも……! だからって、何も話してくれないのは悲しすぎるよ……」

 

「……そうだね。だけど……それしか出来ないんだよ。僕も、少し前はそうだったから……」

 

 特に、このような少女の力は借りてはならなかった。

 何の問題もなしに、今まで通りの生活を送らなければならないのに。当人は何も思わずとも、それを良く思わない人もいる。

 ゼンガーもユーノも、比較的に不器用な部類に入る。人間、器用に生きられる方が少ないのだから致しかがないが、この二人も中々極度の不器用さだ。

 だから、ユーノもなんとなくであるがゼンガーの気持ちが理解できた。無論、彼の本心を理解するとなればそれこそ至難の技に近いが。

 

「…………ゼンガーさん、大丈夫かな……?」

 

「きっと大丈夫さ。あの人は、強い。僕たちが思っている以上に」

 

「…………うん」

 

 枕を抱えながら彼の事を思うなのは。

 ああ、これは重症だなと思いながらも、ユーノは彼女を励まし続けた。いや、わりと本音で彼ならばなんとかするであろうと考えていたのだが。

 そうこうしているうちに時間はどんどんと経過していく。大体、一時間程経った頃だろうか、ようやくなのはも泣き止み、時折笑顔を見せるようになっていた。

 

「ごめんね、ユーノ君。私、自分でもこんなに泣き虫だなんて思ってなかったよ」

 

「別にいいんだよ、なのは、思っている事を思ったままにしておくと、それは悪い方向に行ってしまう事もあるんだ。素直に吐きだした方がいい時もあるからね」

 

「うん……」

 

 彼の言葉に頷き、少し目を伏せる。

 泣いたこと、そして色々話をしたこともあってか、なんだかスッキリした気がする。確かに、ユーノの言った通りたまには自分の思いを吐き出すというのも悪くはない選択肢ではある。

 というのも、なのはは比較的にため込むタイプだ。嫌な事も然り、疲労も然り。無理をしてでも成すべきことをなそうというタイプである。

 だから、ユーノの言った事を当たり前のように行える性格ではない。いや、全ての人間が彼の言葉通りに出来ると言えば無理な事であるが。

 

 と、その時だった。急に、この前の違和感―――奇妙な感覚とやらが全身を駆け巡る。

 

「これって……」

 

「……うん、ジュエルシードだ。それも、今回のパターンは今までと少し違う……」

 

 険しい表情を見せながら、考え込むユーノ。というのも、狗の様な暴走体の時に感じた違和感とは違い、妙に力が強いのがはっきり分かるのだ。

 ジュエルシード単体の力が強いのか? いや、それとも―――。なんにせよ、嫌な予感がする。

 だが、現場に向かわない訳にはいかない。考え込むユーノを余所に、なのははベッドから立ち上がり、赤くなった目をごしごしと擦る。

 そして、気合を入れる為か、パンパンと頬を二回叩いた。少し痛そうに見えたが、どうやら気合は入ったようで、さっきまでとは違う目付きでユーノに目を送る。

 

「ユーノ君、行こう!」

 

「うん……。でも、今回のジュエルシードには十分注意した方がいいと思う。それに、嫌な予感がするんだ……」

 

「分かった。うまく……出来るようにするから」

 

 ゼンガーさんがいなくても、と彼女は心の中で思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 再び、話を現在に戻す。

 なのはとユーノが相手にしているのは、巨大な蜂のような生命体だった。これも狗の時と同じく、現地の動物―――姿形を見る限り、蜂で間違いはないだろうが――を取り込んで出来た暴走体だとユーノから説明を受けている。

 しかし、今までと違うところはもう一点。この暴走体、なんとジュエルシードが複合しているのだ。言わば、ジュエルシードが二つ同時に発現しているということ。

 こういった件は特例ではなく、当然予想できたことである。しかし、まだ経験不足であるなのはにとっては限りなくキツイ相手に違いないのだが。

 

バリアを張りながら、なのははちらと横の方を見る。

 いつもなら、隣にいる筈の“あの男”が、今日はいない。当然のように剣を振りかざし、化け物共を圧倒していた、あの男が。

 その事を思いだした時、なのははぶんぶんと首を振る。違う、もうゼンガーさんに頼りっぱなしの自分は嫌なのだ、と。

 いつも、迷惑をかけてきた。だから、今度こそは自分の力で―――。

 

 そう、思った時。

 

「なのは、危ない!」

 

「え?」

 

 ユーノの声が聞こえた時、なのはは宙を舞っていた。

 物凄い痛みが、自身を襲う。今にも倒れそうで、強烈な痛みが。感じたことのない痛みが。

 

「あ……ぐっ……」

 

 痛みが襲ったかと思えば、今度は地上に投げ出されるように打ち付けられる。

 痛い。凄く、痛い。もはや言葉にならないほどの激痛がなのはを襲っていた。

足に力が入らないし、レイジングハートを持つ手にも全く力が入らなかった。

 

『――――――!!!』

 

 暴走体は雄たけびのような奇声をあげ、まるで勝ち鬨でも上げているかのようだった。蜂のくせに雄たけびなんぞ上げるか、というツッコミはなしだ。

 それもそうかもしれない。あの暴走体は、硬いはずのなのはの防御フィールドを打ち破ったのだ。

 なのは自身も戦闘に集中していなかったという原因もあったが、それにしても物凄いパワーがあるのだと再認識させられる。

 

「う……ううっ……」

 

「なのは、なのは!」

 

 必死に呼びかけてくるユーノ。だが、彼に返事を返そうにも、あまりの痛さになのはは声すら出す事が出来ない。

 改めて立とうと全身に力を入れるが、いくら魔法の力を頼っていても、所詮は小学生だ。この激痛に耐えられるなど、どうかしている。

 本来ならば気絶していてもおかしくない状況で、意識を保っている方がおかしいのだ。更に、この状況でまだ戦闘を続行しようなどと。

 

「なのは! くそっ、僕の力が完全に回復していたら……」

 

 苦虫を潰したような、そんな険しい顔を浮かべるユーノ。こんな時でも、まだ自らの力が戻っていないのがもどかしい。

 ユーノも攻撃らしい魔法は得意とはしていないが、彼の専門はサポート――つまりは補助魔法だ。それがないのと有るのとでは、やはり大きな差は出来る。

 しかし、今回もそれが使えない。ユーノの想定以上にジュエルシードの発現が多いのと、更に理由をいえば、今回の暴走体はある程度予想はしていたとはいえ、出てくるのが早すぎると思ったものだ。

 

『――――――!!』

 

 暴走体が、なのはに迫る。

 もはや防御フィールド―—―正確にいえば、バリアだが―——も張れないほど疲弊しているなのはを潰す事なんて、この暴走体にとっては朝飯前なのかもしれない。

 暴走体が迫ってくるにも関わらず、それはなのはにとって酷く遅いもののように思えた。まるで、世界がスローモーションになっているかの如く、全ての動きが遅い。

 

――――ああ、私、死んじゃうのかな。

 

 今度こそ、自分は助からない。

 もう、誰も助けてはくれない。敵はあまりにも強く、今の実力では到底適わない。初めて一人で相手にするには荷が重すぎる相手ではあるが、それでも、負けたくはなかった。

 

 でも、身体が動いてくれない。まるで―――あの時と同じように。

 

 怖い。そして、不安だ。

 これまでも危ない目にあってきた。それでも、助けて貰えた。何故か? あの男がいたからだ。

 あの男は、どんな時でもなのはを見捨てない。自分が怪我をしても、なのはを護り通した。

 そんな男がかっこよかった。そして―――この人の、力になりたかった。

 その男は、もういない。頼るんじゃない。自分の力で――――。

 

「う……うううっ! レイジングハートッ!」

 

「なのは……!?」

 

『protection.』

 

 なのはは、持てる力を振り絞って立ち上がると、もう一度正面にバリアを張った。

 レイジングハートもよく応えてくれたといっていいほどで、彼女を護り通す為に最大限の力を使い、フィールドを張る。

 想定外だったのは、暴走体の方だ。暴走体に意思こそないが、簡単に捻りつぶせると思っていた者が、立ち上がりフィールドを張ってきた。

 思いっきりフィールドにぶつかり、弾き飛ばされる暴走体。しかし、複合している事もあってか、頑丈さも増しているようであり、全くダメージが与えられている気がしない。

 

「はぁ、はぁ……はぁ」

 

「なのは、大丈夫なのかい!?」

 

「はぁ……はぁ」

 

「なのは……?」

 

「はぁ……はぁ、はぁ……」

 

(まさか……気力で立っているのか、この子は!?)

 

 ユーノの問いに何も答えない様子から、そう察するしかなかった。

 息は絶え絶えで、見ているユーノからしてみても痛々しい。服装―――現在の服装を、俗に“バリアジャケット”と呼んでいる―――も所々が破れている。

 今回の相手は、なのはにとって荷が重い。ユーノはそう感じていた。いや、それよりもゼンガーという存在がいない事によってこうまでなのはに影響がもたらされるという事も想定外だったのだ。

 何処か、ユーノも安心していたのかもしれない。あんな規格外の行動を見せられていうのもなんだが、彼がいればどうにかなりそうだという事が。

 それが今になって甘えだと気付く。今頃気付いたところで遅すぎなのは分かっているが、それほどまでゼンガーの存在がなのはの中で大きくなっていたという証拠。

 

(僕も、似たようなものだけど……)

 

 考えているうちに、なのはの張ったバリアは消え失せる。

 既に暴走体も体勢を立て直し、構えを見せていた。知性がないのは相変わらずで、どれもこれも突撃馬鹿のように見えるが、それは恐ろしい。

 なのはに、これ以上の力は残されていない。立っているのがやっとの状態であり、魔法を使うなんてとんでもない。

 

「……なのは、ここは退こう。これ以上の戦闘は……」

 

「逃げる……? 嫌だよ、ユーノ君。私、まだ……戦えるから」

 

「無理だ! そんな体で……これ以上戦えるわけがない! 君が死んじゃうよ、なのは!」

 

 こんな時まで、なのはは笑顔を見せながら逃げる事を拒否する。

 笑顔、といっても、果たしてそれが笑顔と呼べるとは言い難い。そんな様子を見ていられないからこそ、ユーノはなのはに一時撤退を進めたのだ。

 しかし、なのはも退かない。震える手でレイジングハートを握りしめ、一歩も退かずに暴走体と対峙する。

 

「なのは!」

 

 ユーノが大きな声でなのはを諌めるが、なのはは聞く耳を持たないようであった。

 妙なところで強情な子だ、とここまでくれば感心してしまう。けれど、これ以上やれば、本当に彼女の身が持たない。それだけは、絶対に阻止しなくてはならない。

 

「なのは、この相手はまだ君が手に負える相手じゃない! だから…」

 

「……駄目だよ、ユーノ君……。ジュエルシードを見逃したら、他の人に迷惑がかかっちちゃうから……。私みたいに、怪我する人が大勢出てくるから……」

 

「でもっ! 君の身体が!」

 

「身体とか、関係ないよ……。私は……大丈夫。それに、いつまでも……ゼンガーさんに頼るなんて、出来ないから」

 

 必死に訴えるユーノを差し置き、なのははあろうことか前進していく。

 一歩一歩と、重い足を前に動かす。何処にそんな体力があるのか分からないまま、ユーノはその場を動く事すら出来なかった。

 

「いつも、いつもゼンガーさんが傍にいてくれた。いつも、私を護ってくれた。庇ってくれた。私は甘えていたんだよ、ゼンガーさんに。

 でも、それだけじゃ駄目だって、最初から気付いてた。だから……!」

 

 すうと息を吸い込み、深く息を吐き出す。

 そして、なのはは暴走体を見ながら、今自分がだせる最大限の声で言い放つ。

 

「だから、私は――――変わらなくちゃいけないのっ!」

 

 そんな事情なんて知るか、と言わんばかりに暴走体は突っ込んでくる。

 後ろでユーノが叫んだだろうか。でも、その声も聞こえなかった。

 立ち尽くすなのは。突っ込んでくる暴走体。結果は言わなくても分かるだろう。正面衝突。耐えられるはずもないなのはは、何処かに吹っ飛ばされて終わりか。

 

 

 お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん。ごめんなさい。でも、なのはは―――。

 

 

 

 なのはが“死”を強く覚悟した、その刹那であった。

 

 

 

『―――――!!!!!』

 

 暴走体が奇声を発し、真っ二つに斬り裂かれたのだ。

 覚悟を決めながらも、ギュッと目を瞑っていたなのはは暴走体の奇声に慌てて目を開け、状況を確認する。

 目を開けた時―――なのはは、また泣きそうになった。いや、もう既に泣いていたのかもしれない。

 真っ二つに斬り裂かれた暴走体のすぐ傍に、凛々しい背中が見える。

 あの時、何も話してくれなかった背中。寂しささえ覚えたあの背中の持ち主が、自分の目の前にいる。

 

「――――変わる必要など、ない」

 

「え…………?」

 

 彼の声に、なのはは文字通り彼を見た。

 相変わらず振り返る事すらしないその男は、尚も振り返らずになのはに向かって語り続ける。

 

「お前は――――高町なのはは、今のままでいい。無理に変わる必要など……ない」

 

「……………はい!」

 

 なのはにとって優しく語りかけているように聞こえた声に、なのははしっかりと返事する。

 男は、「それでいい」といって木刀を構え、再生活動を完了させた暴走体の眼前に立ち、悠然と構え、名乗る。

 

 

 

「我は、ゼンガー・ゾンボルト! 悪を断つ剣なり! これ以上の蛮行、決して許しはせぬぞ!」

 

 

 

 その名乗りを聞き、なのはは今度こそ自分でも分かるほどの涙を流した。

 

 さあ、反撃開始だ―——。

 

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