原作のプラウダ高校の皆さんがすごく可愛かったので描いてみようと思いました。
日常パート的な話しになると思いますが、楽しくやっていこうと思います。
設定は原作に準じながらも、学校の中身に付いては創作の部分が多々あります。
「同志KV-2、明日は存分に吠えるっぺや!!」
その日、プラウダ高校学校艦戦車格納庫で作業着を着た四人は武勲を頂く機会に恵まれたことに気を上げていた。
四つ子のマトリョーシカ姉妹は自分達が担当し丹精込めて磨き上げた白亜の頭でっかちKV-2に頬ずりしていた。
氷結混じりの雪が、倉庫の隙間から舞い込む中で。
明日は無名ながらもサンダースをやぶり、アンティオを撃破した大洗女子との試合。
持ち出し車両15両を聞いた時、このチャンスを逃す事ならずと、癖毛を引っ詰めてはみたが、短い過ぎるためにポニーテールというよりもコーギーの尻尾のようになっている黒髪、リンゴの頬と丸っこい愛嬌の良い顔の長女ベスナは出場車両発表の場で手を挙げていた。
「同志カチューシャ!! KV-2と我ら姉妹を隊列におくわいくだせぇ!!」
標準語で頑張ろうとした口に舌が空を回り、百姓の直訴のような上申に対して、プラウダの暴君であるカチューシャは背丈低いながらも高く上げた顎先で「良し」と一声をくれていた。
「カチューシャ隊長の期待に応えるためにも、プラウダの栄誉のためにも頑張るべさ!!」
姉の高く上がった拳に、妹三人も声を挙げて試合に出られる喜びを声高く叫んでいた。
全国大会、三回戦。
プラウダ高校では大会出場選手はもとより車両にも勝利の栄光と勲章が与えられる。
去年は黒森峰女学園の連勝記録をぶった切って優勝した。
その時に活躍した隊員・戦車達総べてが勝利勲章を頂いた。
16カラットのプラチナを頂く勲章はプラウダ高校の名を大いに高めたという誉れの証であり、激戦の夜を駆け抜け明星を身に宿した勇士の魂そのものだった。
そのうえ出場が決まったメンバーには文化服飾科一の術達者カチューシャお手製のベストが貰える。
それだけでも手を上げたかいがあったというもの。
「おめーも、わたすらと一緒に煌星がごとく輝だわさー!!」
気合いを溜めるのには可愛すぎる口をへの字に曲げたベスナは、隣に並ぶ同じ顔の妹達に号令していた。
「リエタ、オセニ、ジマー、武勲たってぺよ、勝利に貢献するぺよ!!」
全員黒髪日本人だが、ロシア名。
ソビエト・ロシアに学ぶ学校艦を住処にした魂の名前で姉妹達を統率する春子事ベスナ。
その意気込みが思わぬ革命を巻き起こすなど、この時のマトリョーシカ四姉妹には思い浮かびもしなかった。
「頼れる同志の前に引きずり出したっていいのだから!!」
「頼ってぇぇぇぇくだっせぇ!!」
吹雪の試合会場。
プラウダが得意とする引き込みに嵌った大洗は三時間の休戦の後、思わぬ反撃の爆進を開始していた。
前面分厚く展開させていた戦車群に真っ直ぐ突っ込んでくるという、恐れを知らぬ攻撃にプラウダ高校の戦車隊は一時的に隊列をくずしていた。
一旗駈けで二両に白旗を揚げさせた38tの後、献身的攻撃を追い風に窮地の場から逃げるため一気に罠の窪地から丘を這い上がった大洗。
それを追うカチューシャ隊長率いる本隊。
大洗女子との試合終盤戦。
逃げ回るフラッグ車の守護神として前にでたKV-2は力の入った一撃を空振りしていた。
カチューシャの大きな期待、最後の砦として大洗Ⅳ号と三号突撃砲を仕留めようとした砲弾はあっさり避けられていた。
それは気負った大リーガーのフルスイングへたり込みのようなあっけない停止。
そのうえ、冷徹な指示を守るように目の前の大砲に怯えることなく停車した二両の姿。
中で次弾装填に四苦八苦するマトリョーシカ姉妹の焦りは絶頂だった。
何せ弾が重い、この日のために姉妹そろってこれを装填する練習を続けてきたが、いざ目の前に敵戦車が二両も止まりトドメの一発を撃とうと動く砲塔を見れば焦って装填など進むわけもない。
「ぎゃあああああ、早く早くすっぺ!!!」
「そっち持って持って!!!」
「来てるよぉ、でかいー、来てるぅ!!」
「春姉ちゃん!! やばいよぉ!!」
「春姉言うな!!」
声は出るが上がらない砲弾。
それ自体も重いが、装薬もまた重い、しかも砲塔の中が狭い。
姉妹揃ってダルマ落としにでもなったように転げ回った後に来たのは、車体命中の横揺れ、そして悲しくも上がった白旗と、通り過ぎていく大洗の戦車の姿。
車内に溢れる煙に慌てて開けたハッチ。
終焉の声を聞くのはそれから数分後の事だった。
「勝者大洗女子学園……」
四姉妹の全国大会は終わった。
吹雪の中KV-2から湯気立つ顔を出したベスナはただ呆然としていた。
次女のリエタは同志KV-2をさすって泣き、三女のオセニはハッチを上げて中に篭もった煙を出していた。
末っ子のジマーは車内に座り込んで呟いていた。
「ははははは……シベリア送り決定だー」
この日から続く25日間の極寒の補修授業に遠い目をしていた。
「……何度も言わさないでよ」
「同じ事を申し上げているのですから、しかたありませんよ」
プラウダ高校、赤地に黄色の刺繍で彩られた校旗をタペストリーにした文化服飾科委員長室で、カチューシャは不機嫌な目をいつも以上に尖らせて、自分より少し背丈のある生徒会副会長マリーニャをきつく睨んでいる。
細い針金細工のような黒の丸めがね、その下の糸目に短く刈り込んだ赤色のショートボブ、不敵な物言いにカチューシャの青い眼は嫌気を覚えていた。
「プラウダ高校戦車道隊長にして風紀委員長カチューシャ、生徒会長カザリンは顔を合わせてお話し合いをしたいと所望しております。どうぞ気負わずに入らしてくださいませ」
「気負ってないわよ、試合の負けた事については書面で送ったわ。カザリンに会う必要はないでしょ」
「負けてしまったのですから、会わないといけないのでは?」
「負けについて後悔はないわ!!」
「そうは言われましてもこちらには色々と有りますので、無駄に大砲車両を持ち出したりとか……」
負けた。
全国大会準決勝、まったく無名にしてノーマークだった高校、大洗女子にプラウダ高校は惜敗した。
負けた事についての気持ちの整理は、相手を認め決勝へ送った事をたたえるという形でカチューシャもプラウダ高校戦車道も悔しいながらも納得していた。
今年の全国大会はこれで終わったと。
たが納得しない者もいた。
それがプラウダ高校生徒会長カザリンだった。
目の前の副会長であるマリーニャがこうして会見を促しに来たのは、試合から向こう今日で二回目だった。
会見督促の理由は、この大会にかかった費用の話しだ。
戦車道とは正直金のかかる嗜みだ。だが学生の内に履行しなければ社会人に成ってからではなかなか入る事の出来ない道でもある。
そういう経緯から戦車道を持つ学校には国からの補助がある。
勝てばなおさらにという機運は国際大会の名の元にさらなる補助が入るチャンスだった。
だがプラウダは負けた。
世界大会が近づく中で、去年王者となったのがマグレ扱いされるような試合の末に、無名校に負けた。
これは痛恨だった。
プラウダは最初から最大の敵は黒森峰と決めて試合に臨んでいた。
だから王者の戦いになれば、そう決勝戦にいけば都合形として補助増額のラインに立てたのだが、望みどおりにはいかず。
準決勝敗退に。
そこまでにかかった費用は補助額を超えてしまっていた。
そして問題はそれだけではなかった。
思い出す談判、積み重なった問題に頭を悩ませ、薄い金糸の髪を乱すカチューシャ。
「勝って倍にして返してやるわ!!」
大会前、持ち出し15両の枠いっぱいの戦車の出動を認めさせるために、大口叩いて生徒会執行部に戦車道の予算増額を押し通した。
全て戦車にチャンスを与え、試合を楽しみたかったカチューシャの思いは、裏目に出ていた。
生徒会長が望む会見とその結論は、カチューシャの公的謝罪と……その責任における懲罰。
受け入れがたい事態に苦肉の策として親書で負けを詫びたのだが、カザリンはそれだけではお気に召さなかったようで現在その参謀ともいえる副会長マリーニャの柔らかくも喉を絞める言葉に責め立てられていた。
「どうか良い答えを……でないと……」
「今日はここまでにしてください。夜も近いですし」
困り果てて喚きそうになったカチューシャの口を閉ざし、柔らかな笑みで間に入ったのはノンナだった。
黒髪に薄い青を埋め込んだ氷河の瞳が、糸目の副会長マリーニャの前に立っていた。
「これはこれは、同志ノンナ。もうそんな時間でしたか、それは失礼をいたしました。でも夜間戦闘も好む貴女達が、夜が早いなどと言われるとは……」
「私達戦車道を嗜む生徒は皆真面目なのです。ですから遅い時間までを部外者に入られるのは良く無い事と感じています、申し訳ありませんが今日はお引き取りください」
頭二つ、マリーニャより身の丈を持つノンナの威圧は、静かにして冷たく分厚い氷の壁のようにカチューシャを守っていた。
「わかりました。真面目な生徒のいるところで夜を長く問答するのはよろしくありませんから……今日は引かせて頂きます」
唇に浮かぶ薄い笑み、マリーニャは俯いたまま光らせた眼鏡でカチューシャに糸目を向けていた。
「真面目な生徒さん達の上に立つ者として、良い答えを出すことをお待ちしております」
実に年期の入った口達者な嫌味を述べるとそのまま部屋を後にした。
「……はーああああ、遅いじゃないのノンナ!!」
「すいません、ご飯の仕度をしてましたので」
「……あったかいのがいいわ」
「ガルブツィーを作りました、早くお家に帰りましょう」
自分の側近でもあり友であるノンナを怒鳴ったカチューシャだったが、すぐに気落ちした声で俯いた。
「このままじゃいつまでたっても、あの子達をシベリアから連れ戻せないじゃない……」
誰かが責任をとる。
小難しくなった敗戦処理に頭を悩ますカチューシャ。
それを支えるように立つノンナ。
「あの子達は貴女の事をわかってくれています。大丈夫ですよ」
「わかってるわよ!! そんな事!!」
そうは言っても、陽も届かない麦畑で罰を受ける四姉妹達の事は気になっている。
強気に言い飛ばしても、唇を噛むカチューシャをノンナは静かな目で見つめ、背中を守るように歩き出した。
「マジ寒い……」
「シベリアマジ寒い……」
マトリョーシカの四つ子姉妹達はプラウダ高校学校艦の下部層にある「シベリ屋」という実験農園で麦を踏んでいた。
ここには陽が届かないという事はないが、箱庭になった下層部分に太陽が顔を上げるのは昼間のほんの一瞬。
灰色鉄扉と鉄戸井で囲まれちょっとした懲罰房の気分は満点である。
ただ上は空が見えるように開いているため陽が少しでも入るのは良いのだが、この隙間から風が吹き込み閉鎖された空間で氷結の舞を踊るのがとてつもなく寒い。
さすがに制服姿のミニスカートで生足出すのは自殺行為で、下にはジャージを重ね着し革の長靴に頭には校章入りのウシャンカを被った中で、姉妹達は白い息を魚のようにパクパク吐き続けていた。
「お姉ちゃん!! もっと早く踏んでよ!!」
先頭で麦踏みをしているベスナの背中を、末っ子のジマーが叩く。
念入りの踏み込みをするのが基本なので、大胆に動いて体を温めるというのも効かないこの作業にジマーは泣きそうだった。
自分の体を抱くように両手を組んで抗議するジマーに、ベスナはすっかり諦めた顔でこたえた。
「仕方ないべや、きちんとやんねーと、罰を軽んじてるて思われるさぁ、今度は粛正されちゃうよ。へなまずるいことしょたらどもこもならんべや」
「姉ちゃんめっちゃ方言でてるよ、はよなおさんと怒られるよ」
「いげね……なおさねーと」
ここは学校艦では統一言語として一応標準語を使う事が推奨されている。
というか、プラウダは東北地方の子女にとって最上級の教育課程を持つ学舎にして、文化服飾科と建築工学科を持つ高校。
その名も高き真紅のプラウダ。
しかし南の方から入学や編入でしてくる生徒は少なく、基本的に北国の女の子達の頂点の学校である事から方言や訛りは普通に溢れている。
「田舎者と呼ばれるのはプラウダの恥」
これは鉄の掟のようにしかれた指導の一つだった。
プラウダ高校は戦車道を持つ有名高でもある。
外に出て行くときに恥ずかしくないように標準語をロシア語と並んで深く学ぶことが義務付けられている。
それは解っていても姉妹だけの空間では、訛りもナチュラルに出てしまうというもの。
ベスナは口ビルを小さく感じ顔をしかめると、後ろに並んでいる二人の妹を見た。
「あんだ達といると緩む……つい方言でしゃべってまうわ」
「まだ出てるよ」
姉のベスナと末っ子のジマーの後ろで麦踏みをしていた三女オセニは、同じ顔なのにこんなにも方言癖の抜けない姉を心配だと見つめていた。
三人は並んで麦踏みをする。
この敷地の隅にある古めかしいハーフテンバーの小屋では次女のリエタが鍋物を作っている。
食べ物は配給でやってくるから飢えることもないが、とにかく寒い一角で姉妹達は冬授業で半ドンになった生活を送っていた。
「あー、同志は治して貰えるのかな?」
姉妹の中でも髪を長くしているオセニは、試合終了から向こうKV-2の姿を見ていなかった。
狭い空を見上げ、あの日の試合を思い出して鼻を啜った。
試合終了で引き上げの時、傷ついた同志を見た時は涙が溢れた。
大事に磨いてきた頭でっかちは首の根っこを焼かれるという可哀想な姿になっており、白色迷彩のボディーを黒く酷く焦がしていた。
「治してもらえないかもね……、入れ替えで売られちゃうかもしれんし……」
先頭を踏み歩きしていたベスナは止まって足下の麦を見つめた。
今回試合に出たのは失敗だったのではという悔恨が彼女にはあった。
元々KV-2は戦車VS戦車という競技に向かない。
大洗を石造りの廃屋に押し込めたときに……あれを討ち崩す事が許されたのならばKV-2は大金星を上げただろうが、実際は逃げ回るフラッグ車との連携がうまく行かず、のろのろと俊足の敵の真ん前に現れてしまう形で討ち取られた。
機動力のない鈍足な同志。
機動力を使い攻撃を重ねるが今の戦車道の戦略トレンドからするとKV-2を入れるよりも、もう一両IS2を入れれば良かったかも知れない。
誰もが戻せない試合結果への後悔として口に上ぼらせた言い訳をベスナも白い息と共に零していた。
「やだよー、同志が捨てられるような事になったら私も学校辞める!!」
「自分達で治そうよ!! 同志を他の人に任せなきゃ良いんだよ!!」
姉が小声で落とした落ちの声に、背中に張り付くジマーとオセニ。
同じ顔で同じ身長、髪の長さや引っ詰め方で違いを見せるだけの姉妹だから自分に抱きつかれているようでおかしな感覚のベスナは、それでもKV-2を思って涙ぐむ妹達の頭を撫でた。
KV-2は実家にいる大型トラクターに良く似ている。
大砲は勿論ないけれど、そんじょそこらの畑にいる子とは違う。
タワーのように高い運転席、父の膝の上四姉妹を乗せて小麦色の穂が揺れる畑を走ったその子が大好きでプラウダ入学で初めて北海道を離れたとき寂しくて泣いた。
その姉妹達の前に待っていたのがKV-2だった。
KV-2がいたからこそ戦車道に入ったといっても良い、過言ではない程の入れ込み、恋した同志だった。
「大丈夫さぁ、きっとカチューシャ隊長が良くしてくれるさ」
ベスナは自分達と共にあった同志を思って俯いていた顔を上げた。
夜が近づき、星が良く見える箱庭に住む姉妹達を励まして、香ばしいスープの香りに走って行った。
授業以外の日をここで暮らすようになった四姉妹の心配は、まさに戦車道隊長であるカチューシャと、学校を代表する生徒会の間で火花を散らす原因にもなっていたが、そんな事は知りようもなかった。
氷雪の風はEマイナー音色を幾重も巻いてプラウダ高校学校艦の上を踊っている。
北緯45°サハリンを少し離れた海の上。
一昨日までは本島に停泊していた学校艦は、氷山とさざ波の間を走り小クリル列島を横に北海道近海に向かって走っている。
巨大過ぎる学校艦にあたる流氷の礫達が何度も押しては引くを繰り返す中に、身を切る寒さの風を生み出している。
その風は艦上に吹き上げると広がる町並みの中に滑り込む。
白壁に清浄の青を塗り飾った館の窓も、海から押し出される風に何度ものノックを受けていた。
寒々しい霜も美しく律した冬宮を飾るスターダストのごとく。
目の前に広がる巨大な庭園に草木は少ないが赤いレンガを細かく敷き詰めた大通りに面し、町への入り口を飾るにふさわしい建物と言える。
その一室、天井の高い琥珀の部屋と壁掛けのシャンデリアが映し出す黄昏色の光りの中で、肩を滑り降りる程きめ細かな銀色髪の少女は唇を噛んでいた。
淡く澄んだ瞳は、セリゲル湖の青に似て曇りの無い色だったが、心痛の濁色は白い頬を赤く染め、彼女が苛立ちの中にいる事を良く現していた。
「マリーニャ、良い返事はあったの?」
窓を叩く風に唇を凍らされ、足を引いて執務のデスクに戻る。
すらりと伸びた長い手足に華奢な体、くんだ足に美しいラインが見える程の彼女にはイスは腰掛けると、自分の前に立つ小さな参謀である副会長マリーニャを睨んだ。
「明日明後日のうちにはいらっしゃると……お茶をいれましょうか?」
「そうして、熱いのをお願い」
執務室の壁、琥珀の壁に添って立つ赤髪の少女マリーニャは、糸目の控えめな顔立ちで手際よく仕度を始めた。
オレンジに近い室内灯に照らされ湯気をくゆらす熱湯の中に、ジンジャーの少しの刺激。
デスクで指を突く少女の気配にマリーニャは口元を緩める。
「生徒会長カザリン、そんなにイライラなさらない方がいいですよ。眠れなくなってしまいます」
「ふんっ、そんな事がなくたって眠れないわ……カチューシャ、大口叩いておきながら無名の学校に負けるなんて……その事を直に報告しないなんて!! 非常識だわ!! わたくし間違った事言っている?」
部屋の横、縦長の鉄枠までもが彫刻で彩られた窓の向こう、大通りを挟公園という一区画をまたいだ果てに見える校舎。
プラウダ高校生徒会がある建築工学科校舎の冬宮と、対成る形で作られた無骨な共産様式を持つ建物、プラウダ高校文化服飾科の校舎、優雅さのない縦縞形成のデザインその中央にそびえる聖四角形を重ね、天を打つ三角錐の塔に鎮座するだろうカチューシャをカザリンは睨んでいた。
つい先日、太陽の見えない夜半を舞台に戦車道の全国大会準決勝が行われた。
舞台は我らプラウダにとって痛くも痒くもない極寒の大地。
慣れ親しんだ気候を味方に付けて決勝戦へと難なく進むはずだった。
そう勝つことは当然と思われていた試合を、事もあろうにプラウダは取りこぼし無名校大洗に敗北を喫したのだ。
「今年も優勝できる……そういったから戦車道に予算を割いて、風紀委員会の仕事を生徒会が肩代わりまでしたのに……おめおめと負けて帰って来るなんて……それをわたくしに直接報告にしにこないなんて!!」
プラウダ高校生徒会長カザリンの苛立ち、それは生徒会と並ぶ組織しして学校艦を取り仕切る風紀委員会、その委員長であり戦車道隊長であるカチューシャの慇懃無礼な態度にあった。
「チビのくせに……」
歯がみしてそういう、背丈ならば頭一つ大きくスタイルも並の高校生と比べられない美貌のカザリンは首を振った。
「戦車道なんて……もっと予算削って縮小してやればよかったわ……」
「それは国の方から指導を受ける事になります、良い考えとはいえませんよ」
「わかってるわよ!!」
「ではご再考を、貴女は生徒会長です。自治権限の代表者ですから」
鼈甲を引き延ばした平盆に、ティーカップを仕度したマリーニャの冷静な意見に、一度は声を荒げたカザリンだったが、ピークを越えた怒りのテンションはストンと落ちてある考えに至っていた。
戦車道の縮小は確かに学校運営の鬼門に成りかねない、上手く運営する事が必要。
長い銀色の睫毛がマリーニャの自治権限者という言葉に止まり、星の瞬きを感じたように跳ねて顔を上げる。
「そうね、敗北主義者に戦車道は任せられないわ。そうよね、わたくし間違ってた事いってる?」
「いいえ、そのとうりです生徒会長カザリン。まったくもっておっしゃる通りです」
糸目のマリーニャはお湯を注いだポットを片手にカップを差し出した。
「カザリン、貴女の言う事は正しいに決まってます。どうか私にお任せを」
「よろしいわ、マリーニャ。戦車道を生徒会が統括してしまえばいいのよね、そうすればカチューシャに余計な負担がなくなるし……予算でもめる事もないわ」
薫り高い刺激を楽しむ生徒会長、麗しの姿に薄く開いた糸目は唇をペロリと舐めた。
「良い答えです。そういたしましょう」
「そうね、そうしましょう。待ってなさいよ……カチューシャ……ドゥラーチカ・マヤー」
策士は回り始めた思考の中で、自分の主に笑みが戻った事を喜んでいた。
これが雪革命の嵐を呼ぶことになるなど、この時は誰にもわからなかった。
11話を三ヶ月待つ間……どうやって暮らそうか。
今日BDが来るから色々楽しみにしつつこの小説を書きました。
前作みたいにダラダラ長くなってしまわないように、短く纏めて生きたいと思う。
北海道弁を友達に効いて勉強したけど間違っている所もあると思う、優しく許して欲しい。
生徒会長カザリンの最後の言葉はロシア語です。