インフィニット・ストラトス~人形遣いは夢見るか?~   作:ラグ0109

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人形遣いと運命の日
旅立ち


神も悪魔も人も綯い交ぜに、気儘に生きている。

世界はそれこそ星の数より多く、様々な法が敷かれている。

俺が今向かっている庵に住む魔法使い…と言っていいのか分かんねぇけど、魔法使いはそう言った世界に契約者を送り込んで調査をする仕事をメインに行っている。

契約者ってーのは、様々な条件を元に互いにギヴアンドテイクの関係を組む関係者の事を指している。

まー此処の仕事は突拍子も無きゃ情報もねぇから面倒くせぇ仕事ばっかなんだが…それなりに待遇は良いんで、俺みたいな物好きなんかも置いてもらえている。

ダチが亡くなって暫く、仕事もなく気儘に暮らしてりゃいきなりお仕事のお呼びが掛かった。

冷たくもねぇ雪が常に降る魔法使いの心象風景を歩き、庵にたどり着けば靴を適当に脱ぎ散らかして上がり目的の部屋の障子をスッパーンと乱暴に開ける。

 

「応、来たぞ桜花~」

「お~、悪いねぇ…いきなりお仕事呼んじゃって」

「何時もの事だろうが…またロンジェんとこのお仕事か?」

 

ロンジェってのは目の前の黒髪黒瞳に桜をあしらった黒い和服を着た男、桜花…よそ様じゃ模倣の魔法使いとか呼ばれてる…のホの字の女の事だ。

利用されてるって分かってて仕事をしてやるんだからバカだよなぁ…。

因みに突拍子も情報もねぇ仕事はこのロンジェん所の仕事が殆どだ。

この庵に呼ばれて仕事の話をするって事はロンジェんところじゃねぇのは薄々分かってたが…。

 

「随分前にロボさん亡くなったじゃん?」

「応…おっ死ぬようなタマだとは思わなかったんだがなぁ…」

「いやいや、創世から存在してる悪魔と一緒にせんといて…話戻すけど、マルデ・ダメナ・オトコ、略してマダオの白蛇がさー、ロボさん転生させたんだよね」

 

白蛇…こいつはロボってやつの女の旦那だった蛇神だ。

これがガキみたいなオッサンでな…自分で女が遊郭に居るの知っていて放置していて、寝取られたらいきなり旦那だから返せだのなんだのと…まぁ、今はそんな話はどうでも良いか。

しかし、白蛇がねぇ…地獄に送り込むもんかと思ってたが。

 

「で、俺も興味湧いちゃってさー…転生先追ってみたんだよね」

「またテメェは…テメェも大概マダオじゃねぇかよ」

「引き篭もりだからね、仕方ないね」

「開き直んな…んで?」

 

羽織っていたボロコートの内ポケットから煙草を取り出し、口に咥える。

火は点けねぇ…此処禁煙なんだよ…クソが。

 

「いや、結構楽しく暮らしてたよ?美人三人に迫られてたけど」

「スミに置けねぇなぁ…ロボのやつ嫁さん一筋だったろ」

「それは生前の話しだし、切り替えてるんでしょ…と、話逸れたね」

 

ロボは此処で一番世界を駆け回っていた。

桜花と一番相性の良い契約者だったからなぁ…。

他のメンバーは下手すると世界をパンクさせかねねぇパワー馬鹿ばっかだから仕方ねぇっちゃ仕方ねぇんだが…。

 

「まぁ、そのロボさんのいる世界…結構面白そうだしさ、休暇がてら行ってみない?」

「おいおい…今も休暇みてぇなもんじゃねぇか」

「互いに引き篭もってるよか良いでしょ?吸血鬼の方は仕事させると幼女怖いし」

「あー…典型的なメンヘラヤンデレだもんな…あの小娘…」

 

はぁ、と二人して深く溜息を吐く。

いや、こえぇんだよ…ホントに。

 

「ま、キミに行ってもらうところはロボさんの居ない極めて近く限りなく遠い世界だからね…本音はキミが関わったらどうなるのか見て見たいってやつさ」

「探究心旺盛じゃねぇか…で、期間は?」

「好きなだけ…飽きたら帰ってくれば良いし、気に入ったならそのままその世界に住めば良い」

 

…は?

それってぶっちゃけ…。

 

「実質的なクビ宣告じゃねーか!?」

「んなわけないでしょ?これはキミ…アモンの為でもあるんだよ」

「いらねぇ気遣いだよ馬鹿が」

 

ついイラっとしてしまい、煙草の先端に指から出した火で点火してゆっくりと肺に煙を入れていく。

イライラするとどうしても煙草吸っちまうな…。

 

「一応ね…キミに迷惑かけているのも理解してるしさ…彼女の件だって俺が…」

「そりゃ、テメェの思い違いだ桜花…成るべくして成るもんがあんのさ…遅かれ早かれな」

 

…かなり前に俺は女を亡くしている…ロンジェの仕事でな。

俺がヘマ打って、桜花がヘマ打ってどうにもなんねぇ状況に追い込まれちまって…見捨てた。

案外ドライに生きてるんでね。

 

「そ…キミがそう言うならそう言う事にしておくよ…表向きは。話し戻すけど、世界がどう変化するのか見たいって言うのは本当。つまり決定事項なんで、休暇楽しんできてよ」

「テメェ…ロンジェん時と変わらねぇじゃねぇかよ…」

「フーハハハハー、あきらめたまへー…兎に角行って来てよ、アモン・ミュラー」

 

俺は煙と共に溜息を吐き出し、桜花の額で煙草の火を消す。

ったく、いつも面倒くせぇ野郎だ…。

 

「あっつ!!いけど、痛くない~」

「ざってぇ…」

「いや、普通に傷害事件だからね?訴えて勝つからね?」

「この世界司法ねぇじゃねぇかよ…まぁ、いいや。出発は?」

 

今、俺…アモン・ミュラーと桜花が居るこの世界は、桜花が俺の知らねぇ何かを模倣して作り上げた紛い物の世界だ。

出入り自由だが、この世界では決して桜花に勝つことは無い…桜花はこの世界に引き篭もっている限り絶対に死なねぇからだ。

 

「今だよ?」

「は?」

「では、ボッシ○ートでございます。でれっでれっでれ~ん♪」

 

桜花がパチンと指を鳴らすと、俺の足元の床がパカッと割れて得体の知れない奈落が広がるのと同時に浮遊感が俺を襲い体が落下していく。

 

「テメェエエエエエエエ!!!」

「はっはっは~、俺の額を灰皿代わりにするからだよ!じゃ、楽しんできてね…」

 

――インフィニット・ストラトスで歪みつつある世界を――

 

そう聞こえた瞬間、俺は身体に力を入れることすら出来ずに世界を飛び越えた。

 

 

 

 

 

「っと…あっぶね…」

 

世界を飛び越えて俺が現れた…もとい落ちてきた場所は、何やら祭りに浮かれている大都市だ。

街灯に吊るされている垂れ幕を見ると…あーっと…もんど・ぐろっそ…?

モンド・グロッソか…なんかそんな感じの祭りをやっているらしい。

一緒に落ちてきた『仕事道具』が入ったボロトランクを拾って中身を確認する。

 

「武器、あるな…金は…通帳?まぁ、何とかなるか…こりゃパスポートか…自由国籍ねぇ…まぁ、旅すんだからこう言うのがあった方が便利か」

 

一通り確認してトランクを閉じれば、裏通りから表通りへと移動する。

どうも文明レベルは結構高めみてぇだな…車走ってるし、電気点いてるし。

言語の自動翻訳機能もキッチリ働いてる。

この分なら野宿でもそれなりに何とかなるかもな…。

一先ず何が起んのかわからねぇし、桜花が言っていたインフィニット・ストラトスだったか…それの情報も得なきゃなんねぇ。

いつも口酸っぱく言ってんのに肝心な情報寄越す気配がまるでありやがらねぇ…今度あったら木にくくりつけて丸焼きにしてやる…。

暫く歩いていると馬鹿でかいコロッセオのようなデザインのアリーナが見えてくる。

どうもモンド・グロッソってのは此処でやってるみてぇだな。

アリーナ外壁の巨大スクリーンにアリーナ内で行われている催し物が映る。

そこには女性が鎧の様な機械を身に纏って戦っている姿が映っている。

 

「なぁ、あんた…アレ何なんだ?」

「おいおい、冗談はやめてくれよ!?あんた、IS知らないのか?」

「IS?…あぁ、アレがインフィニット・ストラトスか…」

 

魔法のように武器を出したり消したり…あまつさえ、物理法則ガン無視で空を駆け巡るソレを眺める…どうもモンド・グロッソってーのはこのISを用いた武闘大会らしいな。

なんか日の丸のマークの所のISだけ無闇矢鱈に強ぇな…赤子の手を捻るみてぇに一撃で決めていきやがる。

 

「やっぱブリュンヒルデは強いなぁ…」

「これじゃ、今年もチフユがブリュンヒルデか?」

 

第二回が今の大会だから、前回の第一回大会がチフユって奴が優勝したってことか…?

すげぇ、強いんだな…ああ言うのは敵に回したくねぇ…あしらうのが面倒くさそうだ。

ぼけーっとスクリーンを眺めていると準決勝が終わり、三十分ほどインターバルがあるみたいだ。

中々見ごたえがあって非常に宜しい…女性ばかりなのも野郎的には非常にグッドだ。

この辺何か裏がありそうだけどな。

いくらなんでも女性しか動かせねぇってこたねぇだろ…。

一先ず会場内を見て回ろうとアリーナ内へと向かおうとすると、視界の端に不穏なものを見つける。

あー…ったく…やっぱりトラブル遭遇しやがったよ…そう言う仕事なんだけどよ…。

黒服の男達がモゾモゾと動く麻袋を乱暴に車に乗せて会場を後にするのが見える。

誘拐事件かよ…どうしたもんかね…?

 

「つっても…見たからにゃ追っかけて助けてやるか…情報も欲しいし」

 

トランクを少しだけ開くと、様々なパーツが飛び出して見目麗しい緋色の着物に身を包んだ銀髪の女性へと姿を変える。

その様子を見ていた周囲の野次馬達が驚きに声を上げ、または賞賛を送ってくる。

 

「すっげぇ!どうやったんだよそれ!?」

「この人形、人間みたい…それに凄い綺麗」

「へーへー、ありがとよ。ちっと離れててくれよ?」

 

俺は人形を操作して俺の体を抱えさせれば一気に跳躍させ、空高く舞い上がる。

自慢の仕事道具…普段は見せ物で使っているが、その真価は戦闘において効果を発揮するキル・マシーンだ。

ISの様に自在に空を舞える訳じゃねぇけど、その身体能力は超人とかそう言った部類に分類される。

俺が暴れると何もかも巻き込みかねねぇ…しな…。

家屋の屋根を緋の人形『スカーレット』が獣もかくやと言わんばかりのしなやかさで走り、誘拐犯の車を追いかけていく。

車は次第に都市から離れて郊外の森の中へと入っていく。

 

「麻袋の中身がバラされる前になんとかしねぇとな…」

 

ぼそりと呟きながら、木の枝から枝へと飛び移らせて森の奥にある廃墟にたどり着く。

停まっている車も見るに終点はここらしい…さってどうしたもんかな…?

いいや、面倒だし…真正面からお邪魔するか。

スカーレットをトランクの中に戻し、黒い革製のグローブを両手に嵌める。

 

「よっこらせと…オッサンくさくて嫌んなるな…」

 

木から飛び降りて地面に着地すれば、ボロコートを翻しながら廃墟へと足を踏み入れる。

どうも元々は教会だったみたいで、ぼろっぼろの十字架とステンドグラスが退廃的な空気を漂わせてやがる。

 

「止まれ、何者だ?」

「何者って…旅人だろ、ボロ着てんだからよ」

 

教会内を歩いていると背後から銃を突きつけられて俺は動きを止める。

最初は穏便に行く…暴れてもいいけど平和的解決もオツなもんだろ?

 

「浮浪者か…此処は使えん、他をあたれ」

「はぁ…でも金も今はねぇし、今から寝床さがしても…此処ぐらいしかねぇからなぁ」

「いいから出て行け!」

 

後ろから服を掴まれ乱暴に投げ飛ばされる。

俺は素早く受身を取って立ち上がり、体についた埃を払いながら目の前の黒服の男を見つめる。

 

「なんか、居ちゃいけねぇ理由があんだろ…?例えば…運び込まれた麻袋の中身、とかな」

「き、貴様!!」

 

よっぽど訓練されていたんだろうな…男は敵と判断した瞬間に下げていた銃を此方に向けて引鉄を引こうとする。

だが、そんな事は俺は許さねぇ。

銃を差し向けた瞬間に腕を薙ぐ様に振り払い、男の腕の肘から先をズタズタに切り裂く。

俺の手に嵌められたグローブ…これには人の目に見えにくい頑丈な鋼線が付いている。

俺が薙いだ時に鋼線が男に襲いかかり、腕をズタズタにしたのだ。

 

「うああああ!!腕、腕がぁぁ!!」

「どうした!?」

「ドイツ軍が来るには早いぞ!!」

 

男の叫び声を聞いて、教会の奥の扉から三人ほど荒事慣れしてますと言わんばかりの男たちが飛び出してくる。

どうやら、残りの誘拐犯はこいつらだけ…かねぇ?

腕をズタズタにされている男の首を鋼線で跳ね飛ばしながら、俺は悠然と男たちへと歩み寄る。

 

「他にお仲間さんはいねぇのか?皆死んじまうぞ?」

 

俺はニヤァッと笑みを浮かべて姿勢を低くして駆け出す。

荒事慣れしていることだけあるのか、男達は慌てる事無く銃を取り出して此方に撃ちこんでくる。

鋼線の射程距離ってのは、そう大して長くねぇ…近づく必要がある。

放置されている長椅子を鋼線で複数持ち上げて男たちに投げ飛ばすと、向こうは慌てて散開する。

長椅子が壁に当たり粉砕音が響いたのと同時に、一番手近な男に近付き、腰に鋼線を絡ませて上半身と下半身に別れを告げさせる。

その勢いのまま、今しがた絶命してテケテケ状態になった男の上半身をこちらに向かって銃を構える男へと砲弾もかくやと言わんばかりの速度で投げ飛ばし、弾き飛ばす。

 

「ば、ばけもの!!」

「ったりめーよ、俺は悪魔なんだからな」

 

化け物だのなんだのは罵声にすらなりゃしねぇ…事実だからな。

未だ無傷の男は半ば半狂乱になって銃を乱射するが、狙いが定まってないのか一向に当たる気配が無い。

俺は軽く肩を竦めてゆっくりと歩いて男に近づく。

 

「あ、あああ、あぁぁ!!」

「弾切れだな…んじゃ、閻魔さんによろしくな」

 

弾切れを起こしてなお引鉄を引き続ける相手の頭を掴み、手早く首の骨をへし折って命を奪い取る。

歯ごたえねぇなぁ…床に転がってノびている男の首の骨も素早く踏み潰し、制圧を完了すれば男たちの出てきた扉の奥へと向かう。

さって、麻袋の中身はなんだったのかねぇ…?

 

この時、俺は自分から厄介事に首を突っ込んでいることに気付いてはいなかった。

 




オリ主設定

アモン・ミュラー

伸ばしっぱなしの黒髪にワインレッドの瞳で非常に目つきが悪い外見年齢20代後半の男

身長175センチ、体重80キロ。若干筋肉質な体つき。

フードつきの黒くてボロいコートを愛用し、常に羽織っている。

トランクの中身は四次元ポケット状態になっているが、所有者であるアモン以外の目からは空っぽのトランクにしか見えていない。

これは、もしトランクの中身を直視した場合SAN値がガリッと削られてしまう可能性があるためのアモンの配慮だったりする。

精神的にイライラしていると無意識の内に煙草を吸ってしまう癖がある。
愛煙家なので携帯灰皿等は持っているのだが…
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