インフィニット・ストラトス~人形遣いは夢見るか?~   作:ラグ0109

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月と花と女と酒と

簪を見送って数時間、時刻は夕方…午後の授業は既に終わり、部活の時間だな。

今は部活の勧誘で外は騒がしいんだろう…まぁ、俺にゃ関係のねぇ話だな。

兎に角、パーツの組付けを急ぐ…少しでも時間を稼いで起動テストを行わねぇと、とてもじゃねぇが危なっかしくて使えねぇからな。

勿論自分が仕上げた作品には自信がある。

だが、神様でも人間でも物事に完璧と言うものはねぇ…だからこそ、石橋を叩くような真似をしなくちゃならねぇ。

慢心は身を滅ぼすからな。

 

「あ!いたいた!アモン兄!」

「おーう、どした?」

 

一夏と箒が二人揃って整備室にやって来る。

一夏だけってんならまだしも、箒も一緒ってーのはどう言うこった?

内心首を傾げつつも一切の手を抜かずに人形を操り、組立作業を進めていく。

内装系統の六十%は終わっている…今日中に何とか終わらせてぇところだが…。

 

「ミュラー先生、この方達は先生の専属スタッフですか?」

「いや、人形だけど?」

「あぁ、アモン兄の本職は大道芸人だからな…何時見ても凄いな」

 

俺と一夏の言葉に箒は目を丸くして呆けた後、馬鹿にされたのかと思ったのか見る見るうちに顔を赤くさせる。

…まぁ、うん…千冬も似た様な反応を示していたな…。

 

「なっ…からかっているのか!?」

「そんなわけないだろう、箒。本当なんだって!」

 

ずっと作業をし続けていたし、少しばかり息抜き入れようか…俺は人形を動かす手を止めて一体だけ箒の目の前に移動させる。

見た目は箒と同じ年齢くらいのウルフカットの髪型をした少女だ。

少女…と言うには少し大人びてるけどな。

箒は訝しがるような目で人形を見つめ、触れる。

 

「つめ…たい…?だが、質感は人間の肌では…」

「だから人形だっつってるだろ?少しは大人を信用しなきゃ駄目だぜ?」

 

パチンと指を鳴らすと、千冬の時と同様に人形が関節毎にバラバラになり床に散らばっていく。

箒は、短く悲鳴を上げた後にヨロヨロと後ずさって、バラバラになった人形を見つめる。

何が起きたのか分からないのか、些か挙動不審だ。

こう言うのはからかい甲斐があるねぇ…。

 

「アモン兄…いたいけな幼馴染にトラウマ刻み付けるのはやめよう?な?」

「お、おう…なんか怖いぞ、一夏」

 

一夏は能面の様な表情で俺を見つめ、優しい声で諭してくる。

つーか、幼馴染だったのか…。

俺は素早く人形を人型に組み立てなおし、丁寧にお辞儀させる。

 

「これで信用できたな?」

「あ、あぁ…心臓が止まるかと…」

「アモン兄!もうやめてくれよな?」

 

箒は胸を押さえて深く深呼吸しながら心を落ち着け、一夏は眉根を寄せて俺を注意する。

今度からは気をつけるかね…まぁ、またやるがな。

 

「で、此処に来たって事は俺に何か用があるんだろ?」

「おう!一年ぶりに手合わせしてくれよ」

「一夏からミュラー先生が本当に強いと言う事は聞いています。私も一緒に手合わせしてほしいのですが…」

 

一夏は目をキラキラとさせ、箒は箒で話が真実かどうか未だ懐疑的な感じか。

さて、どうしたもんかね…俺としちゃ開発を最優先していきてぇ所だが…。

かといって一夏の事をほっぽりだしちまった負い目がねぇわけでもねぇ…。

仕方ねぇ…付き合ってやるかね?

 

「あんま長くは付き合えねぇぞ?今日はアリーナ使ってる奴いねぇはずだから、アリーナで簡単に済ませるか」

「ありがとう、アモン兄!」

「よろしくお願いします」

 

簡単に身支度だけ済ませて、二人を連れて整備室からアリーナへと移動する。

案の定今日は誰も使用しておらず、アリーナ内には誰も居ない状態だ。

俺はスタスタと歩いてアリーナの中心に向かい、立ち止まって二人に向き合う。

 

「あんまり時間を無駄にしたくねぇ…まとめてかかってきな。アモンおじさんがどれだけ強いのか教えてやんよ」

「ほえ面かかせてやるぜ!」

「二対一は卑怯では!?」

「あん?甘っちょろいこと言う奴から戦場じゃ死んでいくんだぜ?」

 

箒はどうも武士道精神を身につけているみたいで、二人係で俺に襲い掛かる事に躊躇を覚えているみてぇだな。

甘ぇな…あんまりにも甘すぎて菓子が何個できるか想像もつかねぇよ。

一夏は箒に構わず素早く踏み込み、手に持っていた木刀を横薙ぎに放つと見せかけて素早く回りこみながら背に向かって叩きつけてくる。

随分とフェイントがサマになったもんだな。

だが、まだ遅ぇ。

俺は木刀の刃部分をがっしりと後ろ手に掴み、一夏ごと思いっきり投げ飛ばす。

 

「うわあああぁぁぁぁぁ…」

 

哀れ一夏、顔面からアリーナの地面に着地し、ゴロゴロと転がっていく。

ちぃっと加減すべきだったかね?

ちょっとだけ反省しつつ箒へと向き直る。

 

「おら、篠ノ之…此処に居るのはテメェの意志にしろそうでないにしろ…覚悟を決めな。戦場じゃ男も女も関係ねぇ…勝つか負けるか生きるか死ぬか、だ」

「くっ…!行きます!!」

 

箒はたしか剣道の全国大会優勝者だったか…よって剣道の型に嵌った綺麗な踏み込みと剣戟で俺に立ち向かってくる。

これが剣道っつールールに縛られたもんだったらまだ勝ち目があったかもしれねぇな。

一夏の時と同じように箒の振るう木刀を掴んで、俺にしては優しく箒の脇腹に添えるように足を当て押し出す(蹴り飛ばす)

 

「がぁっ!」

「手ぬるいぞテメェら!殺す気でかかって来い!」

 

吹っ飛んだ箒は受身を取りながらアリーナの地面を転がり、止まれば脇腹を押さえながらよろよろと立ち上がる。

一夏は…へぇ…?

 

「でええええやあああ!!!」

「四十点だ」

 

一夏は俺が箒に意識を向けている隙に駆け寄り、側面から袈裟切りで切りかかってくる。

俺はステップを踏むように後退して木刀を紙一重で避け、踏み込んでくる一夏の足を軽く蹴って前のめりになったところで腹を軽く蹴り上げるとその場で蹲る。

 

「さっきのは中々悪くなかったけどよ…言っただろ…気取られちゃならねぇ時は静かに迅速に斬れって」

「ゲホッ!ゲホッ!くっそ…まだだ!」

「はあああ!!!」

 

箒は俺の強さをよく認識したのか、背後から箒自身の持てる最速の突きを叩き込んでくる。

だが、悲しいかな…型通りってのは何処を突いてくるのかってのが分かりやすい。

今回箒は俺の体を狙った…まぁ、当てやすいところを突くのは何も悪い事じゃねぇ。

むしろ正道だ。

俺相手じゃなかったらな。

 

「なっ…!?」

「篠ノ之…剣術使え剣術。そんなんじゃ、俺に傷一つ負わせられねぇぞ?」

 

少しだけ身体を横にずらし、脇を通すように箒に突かせて思い切り脇を締めて木刀の動きをピタリと止める。

思い切り締め上げているから、箒程度の膂力じゃ木刀を抜く事は叶わねぇ。

 

「まさか…ここまで…」

「あークソっ…今度は一太刀浴びせられると思ったんだけどなぁ…」

「へっ…ガキ共に傷つけられるようじゃ、俺も落ちぶれたってもんだぜ。まだまだテメェらにゃ負けねぇよ」

 

ゆっくりと木刀を解放して、一夏と箒の頭を両手で同時にワシャワシャと撫でる。

一夏は少し嬉しそうに、箒は恥ずかしそうに俺から逃れて髪を整える。

 

「こっこれでも女子なんだ…髪には気を使ってもらいたい!」

「へっへっへ、敬語が抜けたな。その方が堅っ苦しくなくて良いや」

「あ…こ、これはその…!」

 

箒はハッとなって首をブンブンと振って否定しようと必死になる。

その様子はお澄まし顔で接してくるよりかは歳相応で可愛らしく思えるってもんだ。

 

「アモン兄は気にしないよ、大雑把だから」

「ちったぁオブラートに包めってんだよ」

 

俺は深く溜息を吐きながら一夏と箒を見つめる。

幼馴染、ねぇ…箒の一夏を見る視線ってぇのは、幼馴染以上の関係を求めているように見えんだがな。

…おチビ二人に強力なライバル発生か…そういや、鈴の奴どうしてんだろう?

 

「一夏、鈴は元気にしてんのか?」

「鈴か…鈴はアモン兄が居なくなった後に、ご両親の都合で中国に帰っていったんだ」

 

両親の都合で、か…。

俺に料理の師事を求めてきてたのもそこら辺が理由かもな。

例えば、親が不仲だった…とかな。

 

「そっか…元気にしてんのかねぇ?」

「手紙の一つも寄越してこないんだよなぁ…らしいと言えばらしいんだけどさ」

「鈴と言うのは…?」

 

箒は気になったのか、おずおずと言った感じで俺達に鈴のことを聞いてくる。

名前の響きから言って女と見たんだろ…早くもライバル視しているみてぇだな。

 

「箒が小学校の時に引っ越した後にやってきた、いわばセカンド幼馴染だよ。箒はファースト」

「チルドレンじゃねぇんだからよ…まぁ、良いや。んで、俺がコイツの面倒見てる時に料理の師匠をしてやってたんだよ。篠ノ之より全体的にチンチクリンだからな…並べば姉妹みてぇに見えるんじゃね?」

「箒はちょっと融通の利かないお姉さんで、鈴が手のかかりすぎる妹って感じか?」

 

…結構良い感じに似合ってるかもな。

で、周囲を引っ掻き回すトラブルメイカーな長女…あ、だめな奴だこれ。

俺は束の事を思い出してどんよりとした顔になる。

暫くアレの顔は見たくない、マジで。

 

「ちんちくりん…ふ、ふふ…そうか…まだ私に…」

「どうしたんだ?」

「な、なななんでもない!!」

 

箒は慌てた様に首をブンブンと横に振る。

まぁ、それなりに良い体してるんでその下のもブンブン揺れるわけだが。

親父臭い?

おいおい、俺はこの世界の誰よりも年寄りなんだぜ?

…言ってて悲しくなるな。

 

「さってと、俺は開発に戻るからお前らはとっとと帰れ」

「おう、アモン兄」

「ありがとうございました、ミュラー先生」

 

一夏達と別れた俺は遠隔操作で人形達を起動させ、先んじて開発作業を進めていく。

そろそろ名前も決めなきゃな…ネーミングセンスねぇんだよなぁ…。

 

 

 

 

学生達の寮の門限は午後八時。

寮内消灯時間は午後十一時。

消灯時間から二時間の間は、館内を見回ってまだ起きている生徒がいないかどうかを定期的に確認する。

んで、それが終わったら就寝。

これが寮長とその補佐の一日の終わりだ。

最後の見回りを終えた俺は、真っ直ぐに寮長室には戻らずに屋上へと向かう。

眠る前に一服と洒落込みたかったからな。

階段を上りきり、屋上に出ながら煙草を咥えて火を点け…ようとしたところで隣から火を差し出される。

 

「やはりな…ヘビースモーカーは分かりやすい」

「ん…さんきゅ」

 

火を差し出したのは千冬だ。

どうやら、俺の事を待っていたらしい。

俺はありがたく千冬の差し出した火で煙草に火を点けてゆっくりと煙を吸って吐き出していく。

千冬はタンクトップにジャージと言う出で立ちだが、妙に似合っていてサマになっている。

キリッとした顔立ちしてるからかね?

 

「どうした?吸ったらとっとと戻るつもりだったんだが」

「…一年だ」

 

…そういや、あの日もこんな風に桜が舞い散り、月明かりが夜を照らす日だったかな。

屋上に備え付けられたベンチに座って足を組むと、隣に寄り添うように千冬が腰掛けてくる。

手にはワンカップの酒が二つ…花見と月見で酒を一杯か…悪くねぇな。

 

「よく覚えていたな」

「私が格闘戦で完膚なきまでに敗れた日だったしな…忘れられるはずが無い」

 

少しだけ冗談めかすように千冬が言うと、酒の蓋を開けて俺に差し出してくる。

俺はありがたく受け取り、千冬が準備するのを待つ。

何だろうな…朝の様子もあって少し意識しちまうじゃねぇか…。

 

「俺達の再会に」

「あぁ、再会に」

「「乾杯」」

 

軽く酒を掲げるだけの乾杯を行い、少しずつ酒を飲んでいく。

これだけしか酒がねぇからな…今は…時間をかけて飲んでいてぇ。

 

「なぁ、お前はまた何処かに行ってしまうのか…?」

「さぁねぇ…根無し草の渡り鳥…羽根を休める場所がありゃ其処に留まるだろうが」

「そうか…」

 

千冬は少しだけ寂しそうな顔をして酒を飲む。

…ったく、そう言う顔は似合うもんでもねぇだろ…。

それが正しいとは思わねぇ…でも、今は『こうする』べきだと思った。

 

「っ…どうした?」

「…そう言う顔すんな…月に桜に酒と来て、別嬪が寂しそうな顔をすんなよ」

 

優しく肩を抱き寄せた後、髪を梳く様に頭を撫でる。

ふわりとシャンプーの匂いが俺の鼻に届く。

年甲斐も無くドキドキしちまってるのが何とも情けねぇ。

 

「な、何を…?」

「いや、なんでもねぇ…少し酔っ払ってんのかもな」

 

らしくもねぇこと口にして、顔が熱くなっているのが分かる。

んにゃ…千冬が隣にいるからかもしれねぇが。

 

「そ、そうか…酔っているなら、仕方がないな」

「そうだな…ったく、らしくもねぇ」

 

千冬から手を離そうと動くと、その手を優しく掴まれる。

あー、いや、うん、酔っ払ってるんだ…千冬も。

 

「酔っ払っているんだ、私も…だ、だから…別に構わない…だろう?」

「お、おう…」

 

千冬はそれだけ言うと俺に身体を預けて、月を見上げながらチビチビと酒を飲んでいる。

時折身じろぎして俺に身体をこすり付けてくる。

…なんだ、この可愛い生き物は。

 

「アモン…お前は好きな奴が…いるのか?」

「いねぇなぁ…あー、でも、どうだろうな…?」

「い、いる…のか?」

 

具体的には目の前の生き物とかな。

千冬は不安そうな声で確認しようと聞き返し、此方を見上げてくる。

本当に酔っ払っているのか、顔が真っ赤な状態だ。

 

「…今、居るかもな」

「そ、そうか…そうか…」

 

普段の毅然とした態度とは裏腹な千冬の行動に、少しだけ戸惑いを覚える。

なんと言うか…これがギャップ萌と言うやつか…やべぇな…。

千冬は少しだけ機嫌が良くなったのか、ニヤニヤと笑みを浮かべて酒を飲み始める。

ふと、自分の酒を見るとカップの中に桜の花びらが二枚浮かんでいる。

何時の間に入ったのやらな…。

 

「なんだ、飲まないのか?」

「んなわきゃねぇだろ…飲むよ」

「飲ませてやろうか?」

「酔っ払ってんな…」

「あぁ、酔っ払っている…少し、大胆になれる気がしてな」

 

千冬はチロリと唇を舐めて口に酒を含み、俺の首に両腕を回してくる。

…拙いな…これ以上は。

酔った勢いでこう言うのはなんか、違う気が…。

 

「っ…」

「んぐ…」

 

千冬が獲物を見定めた様な目をすれば、そのまま俺の唇に自身の唇を重ね合わせて舌で無理矢理こじ開け酒を流し込んでくる。

止める暇すらねぇ…マジで酔ってんのか…俺は…?

…いや、期待してたな…千冬を食ってみてぇと。

 

「ふふん…お前にしては随分隙だらけだったな」

「いい女がいりゃ、神だろうが悪魔だろうが腑抜けになるもんだろ?」

「…アモン、私は…退かないぞ」

「……応」

 

俺と千冬は互いに見つめあい、ゆっくりと唇を重ね合わせる。

互いに酔っ払っているせいだと思い込むように。

互いにこれが本心なんだろうとさらけ出すように。




勢いのままに書いた、反省はしない。
さぁ、石を投げたまえよ


気付いたらなんかキスしてたんだ…本当なんだ…超展開とかそんなもんじゃ断じてねぇ…もっと恐ろしいものの片鱗を…(ry

ノリってこわいね!
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