インフィニット・ストラトス~人形遣いは夢見るか?~   作:ラグ0109

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人形遣いと弟子
やってきた『嵐』


桜も散り、葉桜へと姿を変える四月下旬…機体の修復と武装の仕掛けも無事に終えることができた。

ちぃっとばかしBTドールは卑怯だかんな…必要な時は使うが、そうでねぇ時の為の準備位は必要だろ?

エネルギー・ストリングスがあるってか?

まぁ、その通りなんだが…あれじゃ一部の生徒以外は完封しちまうからなぁ…。

教師は生徒が成長しやすいように相手をしてやんなきゃならねぇ。

完封しちまうような状況じゃ反省するどころか、心を折りかねねぇ。

教師ってのは面倒な仕事だぜ…まったく…。

今は、千冬の授業風景を見学する形で一夏達の訓練風景を眺めなつつ右手薬指に嵌められた黒曜石っぽい材質のスカルリングを見ている。

これがアプリストスの待機形態だ。

結構禍々しい風貌の骸骨が、瞳の様な紅玉石っぽい材質の玉を咥えている。

見た目はどうでもアクセサリーっぽくはあるので俺は構わねぇが、問題は一夏の白式。

何故か白いガントレットが待機状態だ。

騎士の着けるものであろうデザインのソレはアクセサリーっつーには無理があると思う。

飛行訓練を行うようだが、一夏は展開に手間取ってやがるな…。

 

「どうした、織斑。熟練の操縦者は展開に一秒もかからないぞ?」

「……」

 

セシリアは既に展開を終えている…流石は代表候補生、慣れてんのか千冬の言う通り展開に一秒もかかってねぇ。

一夏はそんなセシリアを尻目にゆっくりと深呼吸をして気合を入れると白式を展開する。

アプリストスとは正反対な印象の白い騎士を思わせるデザインのISだ。

刀ってーのが何だかミスマッチ感もあるが…まぁ、一夏は俺との訓練で木刀を振り回していた訳だし逆に良かったかもしれねぇ。

有名な話だろうが、日本刀と西洋の剣とでは斬るプロセスが違う。

日本刀で西洋剣の様な扱い方をすれば折れるし、逆の場合は斬ることができねぇ。

まぁ、ISだから関係ねぇっちゃねぇな…。

 

「もっと早く展開できるようにしろ」

「はい…精進します」

「ミュラー先生、手本を」

「うぇ?!」

 

思考の海に溺れていたのを見抜かれていたのか、千冬はISスーツに着替えていねぇ俺に展開するように指示を出してくる。

しゃぁねぇなぁ…一斉に生徒が此方を見つめてくるんで、歩きながらISを緊急展開してISを装着する。

緊急展開ってぇのは、量子化して格納状態にあるISスーツへと着替えつつISを展開する機能の事だ。

一定量のエネルギーを食っちまうのが難点だな…この辺改良できりゃ、万が一に備える事ができんだが。

展開し終えれば少しだけ身体を浮遊させて腕を組む。

 

「まぁ、こんなもんよ。ISってーのはどうしてもイメージを頼りにするところがある…俺の場合は着替えるイメージだな。一夏、白式を服の様に思い込んでおけ。後はそれでなんとかならぁな」

「アモン兄…適当すぎだろ…」

「フィーリングだっつーに…」

 

どうにも、変に融通が利かないせいで手間取ってるみてぇだ…こればかりは何度も展開と待機を繰り返して慣れていくしかねぇだろ。

そうして一夏にアドバイスを施していると、脳天に出席簿が叩き込まれ少しだけ前のめりになる。

…絶対防御発動してんぞ、おい。

 

「時間を取るな。織斑、オルコット、飛べ!」

 

セシリアは指示が出た瞬間に静かに、しかし急加速をしてみせあっという間に上空まで舞い上がる。

打って変わって一夏はと言うと、セシリアよりも遅く上昇していくのが良く分かる。

 

「どうした、織斑。スペック上は白式の方が上なんだぞ?」

『そんなこと言われても…どうやって飛ぶイメージ掴めばいいんだ?』

『一夏さん、イメージは所詮イメージ…ご自身に合った方法で実践した方が建設的でしてよ?』

 

千冬の叱咤に困ったかの様な声を一夏が上げると、セシリアがサポートの為に一夏にアドバイスを送る。

因みに俺の場合は特にイメージするものは無い。

飛んで当たり前なんでねぇ…こっちじゃ生身で飛んでねぇけど。

あぁ、海の上は歩いたか。

 

「しっかしあれだねぇ…青春だねぇ…おっさんとしちゃ羨ましいよ」

「ミュラー先生はまだまだお若いじゃないですか!」

「まともな青春時代送ってねぇからな…ほら、浮浪者だったわけだし」

「山田先生、ミュラー先生…?」

「「っ!?」」

 

千冬がニッコリと笑みを浮かべながら此方を睨み付けてくる。

私語厳禁っつーより、ありゃ単純に嫉妬だな…千冬よぅ…。

で、なんだかんだとやっていたら箒が山田の持っていたインカムを奪い取って声を荒げる。

あー…ったく…こいつ、意外とアクティブっつーか、後先考えねぇみてぇなんだよな…。

 

「一夏!いつまでイチャついているはや!?」

「箒ちゃん、今は授業中だからおイタは駄目ニャ♪」

 

俺はフランマを自律モードでショウケースから出現させて、箒を後ろから羽交い絞めにしてインカムを奪わせる。

うむ、我ながらあざといキャラ付けになったものよ…。

フランマは、箒いじりが楽しくなったのか箒をからかって鬼ごっこを始める。

 

「ミュラー先生!あれって先生の武器ですよね?」

「応、セシリアのBT兵器の親戚みてぇなもんだ」

「なんで喋ってるんですか!?」

「あー…まぁ、音声入力ソフトでちゃちゃっと…おい、やめろよ…そんな目で見るなよ…」

 

自立思考型だからですとは口が裂けても言えねぇので適当な嘘をついたら、女生徒から白い目で見られる。

まぁ、フランマにしろスティーリアにしろプロポーションがモデル並みに良いからな…そう言う性癖持ちと見られても仕方ねぇか?

 

「ミュラー先生は此処に来る前は人形を使用しての大道芸で稼いでいた。プロ意識がそういう行動をさせているだけだ」

「奇行みてぇに言うんじゃねぇよ…」

 

千冬のフォローにがっくりと肩を落とすと、いつの間にかやってきたフランマが俺の肩を叩きフルフルと首を横に振る。

この野郎…。

フランマは活発かつ悪戯好きな性格をしたBTドール…否自動人形(オート・マタ)だ。

基本的に、魂を封じ込めると言う工程を組まない限りは自動人形たちの性格は外見に左右される。

フランマが俺をからかっているのを見ると、クラス中からクスクスと笑う声が響く。

まぁ、見世物としちゃ面白いもんだったろ…箒は顔を赤くして俺を睨んでるが。

フランマから受け取ったインカムを山田に返すと、千冬は授業を再開させる。

 

「授業を再開する!織斑、オルコット両名は急降下と完全停止を行え。目標は地表から十センチだ」

『畏まりました。では一夏さん、一足お先に』

 

そうセシリアが言うなり、ギュンッと加速して急降下して目標の地表十センチ丁度でピタリと止まってみせる。

ショウケースに腰掛ける様に座っていたフランマがパチパチと拍手をすると、生徒からも拍手が釣られる様に出てくる。

 

「流石セシリアちゃんニャ。皆もセシリアちゃんの動きを参考に実戦訓練の時頑張ると良いニャ」

「あっその…あんまり持ち上げないでくださいまし!」

 

セシリアは気恥ずかしくなってしまったのか、パタパタと顔を手で仰いで赤くなった顔を冷まそうとする。

一夏は、そんなセシリアを見て気合十分に急降下を行う。

 

「あー、オルコット…もうちょい、右移動な」

「へ?」

 

俺が呆れた顔で一夏を見上げながら、セシリアに忠告するが一足遅かったみてぇだ。

一夏はブレーキをかける事ができずにグラウンドに衝突、ちょっとしたクレーターを作り上げやがった。

 

「ニャハハハ!一夏君は間抜けニャー!!」

「いや、笑いすぎだろ…初心者相手に」

 

フランマに突っ込みを入れつつ、千冬と一緒に呆れたように一夏を見てしまう。

どうもセシリアと同じようにギリギリで止まりたかったみてぇだな…目標はあくまで目標だ、出来ねぇことにチャレンジするガッツは認めるけどな。

 

「大丈夫か、一夏!!」

「大丈夫ですか、一夏さん!!」

「「むっ…!」」

「マスター、悪い顔してるニャよ…?」

 

クックック、争え…争え…。

恋は戦争だかんなぁ…箒とセシリアはほぼ同時にクレーターの中心で顏を赤くして羞恥に耐えている一夏へと駆け寄るが、ライバル(恋敵)が傍にいるのが気に食わねぇのか互いににらみ合いを始める。

因みに一夏としたらこの行動はマイナス点だ。

アイツは皆と仲良く過ごしていたい奴だからな。

 

「オルコット、この間まで見下していた癖に随分と甲斐甲斐しいものだな?」

「同じクラスの仲間ですもの、心配は当然でしてよ?」

「「グヌヌ…」」

 

一夏…っつーか、もっとやばい奴の前で額と額が付くくらいの至近距離でにらみ合いを始める二人。

山田も二人の痴話喧嘩を止めようとするが、まるで聞こうとしない。

そんな人間の末路が此方になります。

 

「邪魔だ小娘ども」

「「ぴぎゃっ!!??」」

 

スパンッスパンッと凄まじい速度で出席簿が箒とセシリアの二人に叩き込まれ、二人は頭を抑えて蹲る。

相当痛かったみてぇだな…まぁ、授業妨害だし仕方あんめぇ…。

 

「応、お前らー、こいつ等みてぇになりたくなきゃ真面目に授業受けろよ~」

「「「はーい」」」

「ニャハハハ!箒ちゃんもセシリアちゃんも馬鹿だったニャー!!」

「アモンはそいつをとっとと仕舞え!!」

 

この後武器の出し入れの訓練もあったんだが、以外にもセシリアは近接武器の展開が苦手だったことが判明。

さっきの失態含めてすっかり意気消沈しちまった。

人間完璧なやつよりちっとばかし欠点があった方が可愛げがあるもんなんだぜ?

 

 

 

 

夕方、学園屋上の誰も居ない空中庭園で煙草を吸う。

放課後にある職員会議で中国代表候補生の名前を聞かされて、内心驚いた。

驚いて更に慄いた…まさか弟子が

一年で代表候補生にまで上り詰めてたとか…。

割と一意専心思ったら一直線っていう単純思考の持ち主だったこともあって、そう、不思議でもねぇのかなとも思うんだが。

 

「ふー…鈴がねぇ…」

 

凰 鈴音…俺をシショーと呼び、一夏に付きまとっていた一夏の幼馴染。

俺が行方をくらませた後に、中国に帰っていたっつー事だが…。

携帯灰皿に吸殻を入れて懐に戻して背伸びをする。

 

「校内の見回りして、帰るとしますかねぇ…」

「うそ…え…まさか…」

 

ゆっくりと出入り口へと振り返ると、見覚えのある少女が俺の方を見つめている。

トレードマークのツインテールに動きやすさ優先の改造制服…。

やべぇなぁ…できりゃ、授業中に再会を果たしたかったんだが…。

 

「シショー…?」

「応、久しぶり。よくわかったな」

「シショー!!!」

 

明日転入予定の筈の鈴が、目に涙を一杯に溜め込みながら此方へと駆け寄ってくる。

泣くほど嬉しがられるってのも…まぁ、悪い気はしねぇなぁ。

この後体当たりされるだろうと思って両腕を広げて待ち構える。

 

「シショー…シネェ!!!」

 

鈴は助走のついた飛び蹴りで殺気も露わに俺に襲い掛かってくる。

やっぱり完全にご立腹だったぜ…俺は避ける訳にもいかないので、鈴の飛び蹴りを手で掴んで受け止め逆さ吊りにする。

活発な鈴らしくスパッツは履いていたんで、パンモロは回避している。

 

「何でいきなりどっか行っちゃうのよ!!ふざけんじゃないわよ!?」

「応、わりぃなぁ。俺も依頼された仕事ってのがあるからよ」

 

逆さ吊りにされても鈴は俺の腹目がけて拳を何度も打ち込んでくる。

ガキの機嫌直すのは大変なんだよなぁ…。

 

「一言、くらい…挨拶してくれたって…っく…」

「泣くなよ…ったく、俺の弟子だろーが」

 

鈴を降ろして優しく頭を撫でてやる。

泣かれるほど懐いてるとは思いもしなかった…精々料理のイロハのイの字を教えてやったぐらいだったんだが…。

暫く泣き止むまで鈴の頭を撫でてやると、段々と落ち着いてくる。

 

「連絡…取れないって言うから…心配したし…都市伝説の『海を歩く男』の風貌そっくりだから死んじゃったかと思ったし…」

「んだよ…都市伝説って…確かに海の上歩いたけどよ…」

「歩いてたの!?」

 

なんだよ、都市伝説って…二個目じゃねーか。

鈴は割と俺の言う事を真っ直ぐに信じるので、俺が海の上を歩いていたことをすっかり信じ切っている。

純粋なのは良いんだがなぁ…悪魔の言う事信じ込むってのもどうなんだ?

 

「束の野郎から逃げるのにちっと色々あってな…ま、元気そうで何よりだ」

「そんな事より、二人目の名前明かされてなかったけど…まさかシショーだったなんて」

「ちっと言えない複雑かつ単純な理由があってな…こいつは言えねぇ」

 

鈴は腕を組んでフーン、と納得したように頷いて此方を見上げてくる。

一年じゃ大して変わんねぇなぁ…コイツ。

 

「ちったぁ背が伸びたかと思ったが…んな事なかったな!」

「す、少しは伸びたわよ!」

「チンチク鈴には変わんねぇだろ?」

「うがー!!!」

 

鈴は胸の事を含めて若干、コンプレックスに思っている。

まぁ、知り合いの殆どがデカけりゃコンプレックスに感じるのも無理はねぇわな。

鈴はひとしきり暴れた後、深呼吸をして落ち着きを見せる。

 

「はぁ…シショー、今度料理の腕を見てよ。あたし腕上げたんだから!」

「応よ…アイツの胃袋は掴めそうか?」

「い、一夏は…いいわよ…」

「んん…?何かあったのか?」

 

一夏の事を口にすると、鈴は深くため息をついて肩を落とす。

あの野郎…また何かやらかしたのか…?

 

「別に何でもないわよ!それより、今度は逃げないでよね!!」

「分かってらぁ…それよか、ガキ共は下校時間だ…とっとと寮に戻らねぇと寮長がうるせぇぞ~?」

「は~い、それじゃシショー…また明日」

「応。元気そうでよかったぜ」

 

去り際にもう一度頭を撫でると、鈴は嬉しそうに頬を赤らめて笑う。

 

「当り前よ!シショーの弟子なんだから!」

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