インフィニット・ストラトス~人形遣いは夢見るか?~   作:ラグ0109

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人形遣いと一つの終わり

放課後、俺はアリーナでアプリストスを展開して訓練に一人勤しんでいる。

いくら上手く動かせるからって言っても、動かさない期間があればそれだけコアの成長が遅くなっちまうからな。

操縦者とコアの相互理解の果てにある単一仕様能力と第二次形態移行。

すぐには無理でも千里の道は一歩から…何事もコツコツとやっていかなくっちゃな。

アリーナに設定された訓練コースを一通り終えた俺は、ピット脇にあるエネルギー供給機と機体をケーブルで繋いでエネルギーの補給を行う。

次は新機能の方の試しをやってみなくちゃな…。

視界に映る空間投影ディスプレイのコンソールを弄って標的のデータを入力をしていると、俺の元に鈴の奴がやってくる。

 

「シショー、お疲れ様。ズブの素人って話だけど全然そんな風に感じなかったわよ?」

「そらまぁ…それなりの努力ってのが俺にもあるからな。それで、どうした?」

「ん~、シショーと闘ってみたい…じゃ、駄目かな?」

 

…昨日から思ってたんだが、こいつ…一夏を避けてねぇか?

俺が居ない間に何があったのやらな…まぁ、一夏の事だから何が起きているのかは何となく分かるんだが。

だが、だからと言って放置っつーのも夢見が悪い気がするんだよなぁ…。

 

「今、一夏達が別のアリーナで訓練してっけど…良いのか?」

「良いわよ…クラス対抗戦で張り合う形になるだろうし…あの二人、一夏にお熱みたいだしね」

「…お前…風邪ひいてるんじゃねぇのか?」

 

右腕だけ部分的に解除して、鈴の額に手で触れて熱を計る。

平熱っちゃ平熱だが…鈴は此方を真っ直ぐに見つめてくる。

心なしか頬を赤らめてんな…。

 

「シショー…あたしね、中国に引っ越す時、一夏に告白(プロポーズ)したのよ」

「随分と思い切った事したな…聞くまでもねぇと思うが結果は?」

 

鈴は静かに首を横に振り、苦笑いを浮かべる。

だろうなぁ…あいつにゃそう言った言葉は絶対に響かねぇ…精々がLike止まりだ。

Loveともなると難聴の様になっちまうのが…トラウマになっちまってるのが一番デカいんだろうが…。

 

「鈴、一夏はフったんじゃなくて理解してなかったってだけじゃねぇのか?一緒に居続けてたってんなら、それくらい理解してただろ?」

「そうだけど…小学校からの付き合いで、軽く流されたらたまったものじゃないわよ…。良いの、あたしの一夏への恋心は其処で終わったの。今はただの友達よ」

「傷抉る様で悪いんだけどよ…一夏にゃなんて言って告白したんだ?」

「そ、それは…」

 

少しだけ、こいつの告白した時の言葉が気になっちまった…。

此奴の事だからドストレートな告白だったんだろうが…。

何にしたって、スルー出来るような言葉は使っていねぇはず…と思いてぇ。

鈴は変なところで恥ずかしがるところがあっからなぁ…。

 

「あ、あたしと闘ってくれたらシショーに教えてあげるわよ!」

「んだよ、別に今喋っても良いだろ?」

「よくない!あたし、準備してくるから逃げるんじゃないわよ!?」

 

それだけ言うと鈴は小走りでピットから更衣室のある方角へと走っていく。

一体、どんな言葉で伝えたんだか余計に気になるじゃねぇかよ…。

軽くため息を吐きつつ、補給を終えるまでの間に煙草を吸っていると今度は千冬が此方へとやってくる。

千客万来ってやつか…さっきから『こっちを覗いている奴」も居る事だしな。

 

「アモン、訓練はどうした?」

「飛行訓練終わって、今から鈴を軽く絞ってやるとこだ」

「派手に壊すなよ…あっちは対抗戦があるんだからな?」

 

世界最強からそう言う忠告もらえるってぇのはむず痒いもんがあるな…。

千冬は暗に、実力差が俺と鈴の間にありすぎるって言ってるんだからな。

とは言え、俺だって手加減出来ねぇ訳でもねぇしなぁ…。

 

「まぁ、ちっとばかし手加減用の兵装の試験のしてもらうだけだしな」

「また何か積んだのか…お前は束みたいに気軽に積んでくるな…」

「悪魔だからねぇ…人間みてぇにチンタラできねぇのさ」

 

軽く肩を竦めて吸殻を拡張領域内に入れておいた灰皿に捨てる。

四次元○ケットみてぇで便利だよな…容量に空きがあれば何でも量子化してしまうことが出来る…『何でも』な。

現状ISコアを介してのみでしか使えねぇ機能だが…それで良かったかもな。

誰もが善人って訳じゃねぇ…もし化学兵器なんか量子化して自由に持ち運びでもされたら堪ったもんじゃねぇよ。

 

「人情派悪魔が良く言う…そんなお前に惚れた私もどうかしているな」

「狂ってんのさ…そして、これからもな」

 

補給が完了したんで、ケーブルを機材から引っこ抜きつつ千冬の額にキスをする。

誰もって訳でもねぇが、額にキスするくらいは構いやしねぇだろ?

千冬は顔を背けながら、犬を追い払う様に手を払う。

 

「っ…早く行け!まったく…そういうのはだな…」

「可愛いねぇ…んじゃま、ちょっくら鈴を揉んでやりますかね」

 

少しだけ機体を浮かして床を滑るようにしてピットから飛び出すと、アリーナ中央付近で鈴がIS『甲龍』を展開して此方を睨み付けている。

ちっとばかし待たせちまったかね?

 

「遅いわよ、シショー!」

「千冬とちっとばかし打ち合わせしてたんでね…随分とゴッツイISだな」

「ふふん、かっこいいでしょ?」

 

鈴はドヤ顏で胸を張りつつ両手に一対の青龍刀『双天牙月』を展開して構える。

絶対の自信に、油断のない目…ガチだねぇ…そいじゃま…こっちも試験を始めるとしますかね。

シールド・バインダーであるショウケースの内、スティーリアが入っている方を前方に持ってきて手を翳す。

 

「アイスブランド『イーストシミター』」

 

宣誓と同時にショウケースの蓋がスライドして決して溶けねぇ氷でできた太刀が飛び出してくる。

俺はそれを掴み片手で軽く振るって具合を確かめる。

本来であればBTドールでのみ使用可能な機能をアプリストスのみで行使する…ショウケース内に入っているBTドールによって変わるんだけどな。

ともあれ…問答無用の三対一なんて状況になる事はこれで少なくならぁな。

俺でも、人間相手にゃえげつねぇと思っていたしな…。

 

「へぇ、シショーの得物って刀なの?」

「いんや?多少は心得があるってだけだ…来な、チンチク鈴」

「チンチク鈴じゃないって言ってるでしょ!?」

 

鈴は顔を真っ赤にしながら真っ直ぐに此方に突撃し、加速と重量の乗った双天牙月の一撃を上から振り下ろしてくる。

俺はそれを太刀の刃で受け止め、刃に沿って逸らしていく。

あんなバカでかい青龍刀をマトモに相手してらんねぇからな…ちぃっとばかし焦らしていくか。

此方からは一切攻めず、鈴の攻撃を太刀を舞わせる様にして受け流していく。

 

「何が多少よ!シショーの嘘つき!!」

「俺より上手い奴なんざ山ほどいるっつーの…この程度で攻めきれねぇんじゃ代表なんざ夢のまた夢だぜチンチク鈴?」

「うがー!アッタマ来た!!」

 

鈴は俺に斬撃を受け流された瞬間にバックブーストで後退して間合いを開ける。

俺は太刀を担いで鈴を眺める…確か甲龍に搭載されている第三世代兵器は…。

 

「シショーにこれが避けられるかしら!?」

「チッ…」

 

突如何か破裂音がした瞬間、無意識の内に俺はショウケースを前面に展開して攻撃を受け止める。

甲龍に搭載されている第三世代兵器『龍砲』は衝撃砲と呼ばれるものだ。

PICにより空間に圧力をかけて砲身を作り、衝撃を撃ちだす…簡単に言えば手で作る水鉄砲みたいなもんだ。

手が圧力の加わった砲身で、撃ちだされる水が衝撃…この龍砲の何が嫌な所かって言えば、砲身も弾丸も目には映らないってこった。

 

「受け止めた…?ううん、きっとまぐれよ!」

「ちっと、驚いたが…バカスカ俺相手に撃っていいのかねぇ?」

 

機体を左右上下に振りながらイーストシミターを鈴に向かって投げ飛ばすも、衝撃砲によって丁寧に弾かれる。

ただ、武器が弾かれる瞬間だけこっちの狙いが甘くなりやがったな…なるほど?

 

「フランマ・トクソ…ちったぁ、第三世代っぽい事もやってやんなきゃな」

 

宣誓と同時にフランマの入るショウケースから火球が放たれ、俺は右腕を突っ込んで弓を形成する。

鈴の『視線』を確認しながら機体を動かし衝撃砲を紙一重で避けていく。

砲身も弾丸も見えない…なら射線を見極めてやりゃぁ良い。

龍砲に限らず第三世代兵器ってのは、イメージインターフェースシステムを用いて制御している。

つまり思考する必要があるんだが…鈴の場合、射線を決定するのに対象を見る必要がある。

ハイパーセンサーを使えば目を使わずに射線を決定は出来る。

だが、人間ってぇのはどうしても目で物を見たがるからな…結果として、鈴は俺の方を見て龍砲を撃ち込んできているってわけだ。

それさえ分かっちまえば、良く見えるハイパーセンサーで鈴の視線を見て衝撃砲の弾道を予測しちまえば良いって寸法だ。

 

「っく!見えないはずなのに!!」

「バカスカ撃ってるからそうなんのさ…そら、こいつらは避けられるか!?」

 

俺は炎でできた弓を引いて一気に五本撃ち込む。

真っ直ぐに鈴に向かって飛んだ矢が突如大きく孤を描き、鈴を取り囲むようにして襲い掛かる。

鈴は驚きのあまり目を丸くして矢から逃れる様に機体を振り回していくが、まるで猟犬の様に矢は鈴を負い続ける。

 

「ブルーティアーズ最大稼働時限定の特殊射撃のお味はどうだ?」

「この、しつこいのよ!!」

 

鈴は遅いかかる矢を双天牙月や龍砲で撃ち落としていくが、俺は御代わりとばかりに十本の矢を撃ちだす。

BT兵器最大稼働時にのみ許される偏向制御射撃…これはBT兵器から放たれるエネルギー弾を自分の思うがままに曲げる事ができるって言う能力だ。

言ってしまえば、エネルギー自体をBT兵器化させるってところだな。

そんなわけで、自身の情報処理能力が許す限りは偏向制御射撃に際限はねぇ。

だから…

 

「じゃぁ、次は五十本行ってみっか?」

「し、し…」

 

俺がニコヤカに次の矢をつがえると、鈴はサーっと顔を青褪めさせてワナワナと震えている。

ハッハッハ、嬉しいねぇ悦んでくれるなんざ…撃ち甲斐がある。

 

「シショーの鬼ーー!!!!」

 

この後滅茶苦茶蜂の巣にした。

 

 

 

 

「悪かったって、ちーっとばかし調子に乗っただけだろ?」

「知らない!シショーのヴァカ!!」

「こればっかりは凰を擁護せざるを得ないな…反省しろ、アモン」

 

試合終了後のピットにて、俺は正座をして鈴と千冬に説教を食らっていた。

甲龍自体は装甲表面が焦げ付いた程度で終わっている…出力自体は落としていたから、シールドエネルギーを削り切る形で試合は終了した。

スティーリアのアイスブランドは指定された形に生成する事ができたし、フランマ・トクソもBT兵器として十分に能力を発揮した。

弓の形をしているのは完全に俺の趣味だ…こっちもやろうと思えばマシンガンなりスナイパーライフルなり…近代兵器じみた形状で生成する事ができる。

 

「まっ、戦ってやったんだ…鈴はそれで良いだろうが?」

「いくらなんでも一方的すぎるわよ!何なのあれ!!」

「偏向制御射撃だ。BT兵器最大稼働状態で使用できる奥の手みてぇなもんだな。使えるのは俺くらいなんじゃね?」

 

セシリアはまだBT兵器をフルに使いこなせていねぇ…取れてるデータを見る限りじゃ、一夏とヤり合った日を境に徐々にだが改善していっているんだけどな。

それでも、まだ五十%超えたくらいだ…まだまだ、精進あるのみ。

そもそもが机上の空論だって言うんだからな…後でデータ纏めてセシリア用の教材作っておくか…?

 

「あぁ、開発元の英国でも前例がない…悪魔はお前みたいに皆イカサマじみているのか?」

「さぁねぇ…そうかもしれねぇなぁ…」

 

軽く肩を竦めて苦笑する。

そもそも、こんなISに乗らなくても強い個体の方が多い…むしろ足かせにしか思わねぇだろうな…。

さて…と呟きながら立ち上がり、鈴を見つめる。

 

「んじゃ、話してもらおうか…お前の苦い思い出話」

「どういうことだ、アモン?」

「あぁ…千冬も聞いとけ…お前の弟の鈍感っぷりを」

 

千冬と一緒になって鈴を見つめると、鈴は萎縮したように縮こまり困ったように俺を見つめてくる。

そんなに言いたくねぇのか…?

 

「そ、っそれは…千冬さんにも…?」

「織斑先生だ…っと言いたいところだが、今は教師としてではなく織斑の姉としてお前に接するとしよう。…何があったんだ?」

「っ…実は――」

 

遡る事一年前…鈴は引っ越しして会えなくなる前に自分の気持ちを素直に伝えようと、放課後学校の屋上前の踊り場に一夏を呼び出した。

女の子、人目の付かない所、放課後、更に女の子は引っ越しでいなくなる。

普通の男子だったらハネ満だと思うところだろう…誰だってそー思う、俺だってそー思う。

だが、相手はあの一夏…最初は他愛ない世間話から始めたそうだ。

鈴も緊張してたろーし、そりゃ仕方ないわな…で、下校時間もやばいってんで話を切り上げられそうになった時に言ったそうだ。

 

『料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?』

 

「おい、何で味噌汁じゃねぇんだよ!?」

「だっだって恥ずかしかったんだもん!」

「恥ずかしかったじゃねぇよ!ある意味こっちのが恥ずかしいわ!!」

 

こりゃ、スルーもするわ…あー、でもどうなんだ?

シチュエーション的には告白する雰囲気だったわけだし…でも、一夏だしなぁ…。

 

「凰…そ、それで一夏は何て答えたんだ…?」

 

千冬はワナワナと震え、頬を引くつかせながらも平静を取り繕い続きを促す。

俺は両手に革手袋を嵌めて千冬を止める準備を始める。

こりゃぁ、IS近接ブレード持って叩き斬りに行きかねねぇ…。

 

「おう!楽しみにしてるぜ!って言ってさっさと帰っちゃったんです…」

「一夏ぁぁぁあぁっ!!!!!」

「落ち着けって!!」

 

ダッと駆け出した千冬を素早く鋼線で捕縛して簀巻きにする。

千冬は芋虫の様にのたうち回って抜け出そうとするが、拘束が一向に解ける気配がねぇ…。

 

「くっ!アモン!私はあの愚弟をボコボコにしないと気が済まない!!」

「千冬さん、良いんです…あたしもその瞬間冷めちゃいましたし」

「あいつも何か様子が可笑しかったからな…」

 

こう…なんつーか…ギクシャクしてるっつーか…。

いや、まさかねぇ…?

 

「千冬さん、鈍感な男は止めた方が良いです…傷つくだけですから」

「凰…そんな顔をするな…」

 

鈴は死んだ魚の様な目をして千冬を見つめている。

苦い経験をして大人になったんだな鈴…。

千冬の拘束を上半身だけ解いて、鈴の頭をワシワシと撫でてやる。

千冬は千冬で鈴の体を優しく抱きしめている。

 

「すまなかったな…愚弟の代わりに詫びておこう」

「もう、一夏とは悪友みたいな感じで良いんですってば」

 

鈴は、またいつものように元気な笑みを浮かべて首を横に振る。

しっかし…告白も大概だが…一夏もどうにかしてやらにゃぁな…。




酷い難産でござった…いま再びのスランプ…
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