インフィニット・ストラトス~人形遣いは夢見るか?~   作:ラグ0109

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火蓋は斬って落とされる

何とももどかしい一夏の勘違い発言と鈴の恋の終わりを聞いて、俺と千冬は深いため息を吐きながら酒を煽る。

寧ろ俺なんかより、千冬の方がダメージがでけぇ…。

愚弟のせいで鈴を傷つける+自分はつい先日恋仲になった相手がいるっつー状況だ。

胸中察するに余りあるってところだ。

飲まないとやってられねぇだろうから、俺は千冬を引きずるようにして葵のばーさんの屋台へと連行したわけで…。

 

「元気出せよ、鈴だって立ち直ってるわけだしな」

「そうは言うがな…複雑なものは複雑なんだ。一体どうしてこんな事になってしまったのやら…」

「千冬の嬢ちゃん、レモンの味のする青春なんだからあまり気にするもんじゃないよ」

 

まぁ、当人同士で解決するのが一番ベストだ。

『人生の先輩』気取りで先導したって仕方がねぇしな…人生に道標なんぞ邪魔なだけだ。

特にガキの内は無軌道に無秩序に色々やる方が自分の為になる…と、思う。

 

「葵のばーさん、砂肝とレバーな」

「よく食うね、クソガキ」

「頭を必死に回してっからなぁ…色々あんのさ」

 

後は魔力回復の為ってのもある。

なんせ、相性の悪い世界…備えあれば何とやら。

桜花の方も身の回りの世話を新入りに任せてダウンしてるっつー話だ。

何でも、ロボん所にちょっかいかけようとした蛇と一戦交えたとかなんとか…。

あのおっさんも、もう少しどうにかならねぇもんかねぇ?

とは言え、バックアップが希薄なのは確かだ…油断なく生きなきゃな。

 

「はん、お嬢ちゃんモノにしたのは良いけどね…あんたみたいなクソガキは教師ってタマじゃないね」

「そりゃ、俺も同意見だ。根無し草稼業が恋しいぜ」

「だ、駄目だぞ!アモン、お前はな…どこにも行くな」

「お、おう…」

 

酒を煽りつつテーブルに突っ伏していた千冬が、いきなり上半身を起こして此方を睨み付けてくる。

結構なペースで飲んでたからな…酔っぱらっている所為か目が据わっている。

 

「お前はな、私が漸く捕まえたんだ…逃げられては、困る」

「恋しいって言っただけだろうが…ったく、世界最強とか言われてもやっぱ女だねぇ…」

「勇ましいお嬢ちゃんがこうも変わるか…あんた、どんな魔法使ったんだい?」

 

葵のばーさんはニヤニヤと此方を見つめながら、自分用のグラスに酒を注いで飲んでいる。

このばーさん自営業だからって自由に生きてるよな…仕事中に商品飲んでんじゃねぇよ…。

いや、自営業だからこそなんだろうが。

 

「砂肝とレバーお待ち。千冬のお嬢ちゃんがまるで恋する小娘みたいじゃぁないか…いや、喜ばしい事なんだけどね?」

「葵さんに比べれば、小娘でしょう…」

「ちげぇねぇ、こん中じゃ一番歳喰ってる人間葵ばーさんだけだもんな!」

「おう、ちぃっと面かしなクソガキ」

 

実際は俺が一番歳喰ってるんだがな…まぁ、嘘はついてねぇよ?

人間じゃねぇもん…酒を飲む合間にレバーを口にする。

丁寧に下処理されているお蔭か、独特の臭みがなく舌触りも滑らかで美味だ。

タレも継ぎ足して使ってるって話だからな…甘辛く醤油の香りが鼻を抜けていく。

結論、うめぇ。

 

「ち~ふ~ゆ~、そんな顔してねぇでお前も食え」

「第一、お前が私を不安にさせるのが悪いんだ…昼間は中々捕まらないし…んむ」

 

俺が食っていたレバーを差し出し食いつかせて、とりあえず黙らせる。

こいつ、酔いが最高潮になると言ってることの前後が可笑しくなるからな…。

酒好きなのは良いが癖がなぁ…。

 

「んむ…私だって、小娘どもの様に恋していたいんだ」

「公私は分けるって言ったろ…」

「くっくっく…これ、朝起きたら全部覚えているパターンだねぇ…」

 

それだけは止めて欲しいんだよな…起こすのに苦労する。

こいつ、朝起きた時に全部思い出しちまうもんだから布団ツムリ化しちまうんだよ…まぁ、俺が目の前にいる所為なんだろうがな。

そうなると布団引っぺがすのがマジで苦労する。

飯食う時間が無くなりかねねぇくらいだ。

 

「勘弁してくれよばーさん…主夫かりゃすりゃ面倒くせぇんだからよ?」

「なっ…わ、私は面倒くさくなんて無いっ」

「へーへー、そうですねー」

 

ムッとした顔で下から睨み付けられたので、適当に返答しながら頭を抱き寄せて撫でる。

千冬は少しだけ鬱憤が晴れたのか満足そうに笑みを浮かべているな…ちょろい。

 

「あんたら、そろそろ帰らなくても良いのかい?」

「っと…もうこんな時間かよ…葵のばーさん、勘定頼むわ」

「あいよ、二人でしめて一万だ…まぁ、端数は良いもの見れたからまけてやるよ」

 

葵のばーさんに忠告されて時計を見れば十一時を過ぎてやがる…ちぃっと盛り上がったからな…。

明日もまた早いからな…クラス対抗戦のトーナメント表の発表もあるしな…。

葵のばーさんにありがたく金を支払って、千冬を引っ張るようにして立たせる。

 

「うら、帰るぞ…明日も早いんだからよ」

「あぁ、分かっている…だが、少しだけ良いか?」

 

そう言うなり千冬は俺の手に指を絡ませるようにして繋ぎ、腕に抱き付いてくる。

アルコールの匂いに混じってこう…色々刺激するような匂いが…。

こいつ、本当はサキュバスとかそう言った類の血族じゃねぇだろうな?

惚れた腫れたの弱みにしちゃ…ったく…。

 

「ふふん…こういうのも悪くはないだろう?」

「酔っぱらってんな…素面じゃ絶対やらねぇだろ…」

 

千冬を腕に抱き付かせたまま歩き公園を出ると、やや強引気味に遠回りの道を選択させられる。

今更道を修正すんのも面倒なんで、仕方なく人通りのない道を歩いていく。

千冬は素直に従ってくれたのが嬉しいのかご満悦だ。

 

「その…だな…お前は、気付いているのか?」

「何の話だよ?」

「…いや、気付いていないと言うのであればそれで良い」

 

多分、鈴のこったろうな…俺も馬鹿じゃないんで、気付いてるっちゃ気付いてる。

ただ、あいつの場合恋心と憧れとの半々ってとこだろう。

第一だ…スタイルが良かろうが悪かろうが、ガキに興味はねぇよ。

 

「こっちでも綺麗に見えるもんだ…」

「ビルも照明も少ないからな…天体観測にはうってつけだろう?」

 

IS学園の周辺には建物がない…あってもモノレール駅のターミナル周辺にあるくらいだ。

学園の性質上仕方ねぇっちゃ仕方ねぇ…。

で、だ…学園の外周にある道路ってのは結構殺風景で街灯が一定間隔であるだけ…薄暗いから月や星が良く見えるわけだな。

千冬は此方を見上げて笑みを浮かべる。

 

「お前の顔が間近でないと分からないのが難点、か…まぁ、傍にいるから良いがな」

「酔っぱらってんのか素面なのか…顏が真っ赤っかなのは分かるけどな」

 

酒で羞恥を吹き飛ばしたお蔭か、千冬はこれでもかと言うくらい俺に甘えてくる。

昼間は授業でしか一緒に居ねぇし、個人的な会話ってのも少ねぇ…もどかしい思いをさせちまってたのかもしれねぇな…。

とは言え、公私を分けておかねぇと何かあったときに責められちまうからな…千冬が。

それはすげぇ面白くねぇ…特に、千冬は他人が敵に回っても問題ねぇと思ってる節があっからな…。

こいつは強いだろうさ…けど、強かろうが弱かろうが守ってやれねぇで何が男だ。

 

「っ…そういうことは言うもんじゃない」

「可愛いから、からかっちまうのさ」

「お前は悪魔だな」

「昔っから言ってるだろうが…」

 

じっくり時間をかけて学園の周りを歩いて裏門から中に入る。

正門の方まで回ってたら時間がいくらあっても足りねぇよ…マジで。

そこら辺の大学よりも広い敷地だからな…。

流石に学園の敷地ともなると千冬は俺から離れる…んだが、やっぱり酔っぱらっているのかフラフラと千鳥足で歩いている。

 

「あぶねぇよ…ったく、飲ませすぎたな」

「大丈夫だ…あぁ、そうだ、私は大丈夫なんだ」

 

キリッとした顔で千冬は言うものの、若干呂律が回っていない上にフラフラとしている。

仕方がないので、千冬の腰を抱いて引き寄せて寄り添う様に寮まで歩いていく。

 

「酒飲んだやつで大丈夫だっつー奴は大体駄目な奴なんだからよ…」

「む…大丈夫だ…フフフ…」

 

…ぜってぇ、こいつサキュバスかなんかだろ。

俺が支えた瞬間、結構しっかりと歩き始めやがる…女って怖ぇ…。

 

 

 

翌朝、やっぱり布団ツムリと化した千冬を必死の思いで叩き起こして朝礼に出席する。

クラス代表対抗戦のトーナメント表が配られれば、俺と千冬揃って顔が曇る。

理由…?

それは――

 

「わー、織斑先生の弟さんがお相手ですかー」

「えぇ、お手柔らかに…いえ、厳しくぶつかる様に凰に伝えてください」

「愛の鞭ですねぇ…わかりましたー」

 

二組担任の緒方と千冬がパッと見ほのぼのと会話している。

千冬だけ剣呑だけどな。

まぁ、会話から察する通り、初戦の…それも第一回戦のカードが一夏対鈴っつー誰か弄ったんじゃねっぇかっていう組み合わせだ。

…クソウサ辺りが調整してたら相当だけどな。

表面上つつがなく朝礼が終わり皆職員室を出ていく中、俺と千冬だけ頭を軽く抱えている。

 

「あのー、お二人とも…?」

「あ、あぁ…すまない、行こうか」

「んだな…一夏にゃ俺から話聞いておくわ…」

 

山田に促されれば二人そろってため息をついて立ち上がり、先に俺は教室へと向かう。

ちっと、気になる事もあるからな…時間にして大してある訳でもねぇから聞ける話もねぇだろうが…。

教室に着いて扉から顔を出し一夏を呼び出す。

一夏も何を聞かれるのか分かっているようで、素直に此方にやってくる。

 

「時間もねぇし、ちっと聞かせてもらうぜ…?」

「鈴の事だろ…?…アモン兄、俺…」

 

どうも、後になって気付いたみてぇだな。

一夏は困ったように軽く頭を抱えて、ため息を吐く。

困るような事でもあるめぇし…ったく、ガキだねぇ…?

 

「告白の内容も聞いてるし、お前がどういう受け答えしたのかも知ってる。お前…謝ったのか?」

「まだ…鈴にその話しようとすると避けられてたし、大体他に人が居る時でしか接触してこなかったからさ」

「お前なぁ…それで良いと思ってんのか?」

 

一夏は力なく首を横に振る。

こいつもそれなりに考えてはいたんだろうが…一年連絡が取れなかったとはいえな…。

俺はどうしたものか軽く頭を抱えていると、二組から鈴が飛び出してくる。

 

「シショー、また遅いわよ!?」

「あのなぁ…教師は朝礼とか準備とか色々やる事あんだよ」

「り、鈴、あのさ…!」

 

こいつはこいつで俺にしか目が行ってないのか、一夏を無視して俺に話しかけてくる。

鈴も本当なら再び向き合わなきゃならねぇ…今後の人間関係の構築において重要な事だしな。

だが…改めて話をされて思い出したくもない事だろうし、恐らく一夏が言う言葉も理解している。

よくねぇな…本当に。

一夏は思い切って声をかけるが、鈴は顔を背ける。

 

「…一夏、昔の話はしたくないし聞きたくもない。それに、あんたは今あたしの敵よ?」

「お、おう…それは分かってる。けどな、俺はさ!」

「どうしても話がしたいってぇの!?」

 

二人が大声を出して言い合いをするもんだから、一学年の教室の扉から一斉に頭が出てくる。

年頃の娘っ子にゃ、美味そうな修羅場だからなぁ…。

俺?

今回に限っては大好物とは言えねぇわ…弟子二人がいがみ合うのは、ちっとな…。

 

「そりゃそうだろ!?俺はおまえに酷いことを!!」

「うっさいうっさいうっさい!!あたしは聞きたくない!!!」

「聞けよ!」

「やだ!!」

 

鈴は完全に拒絶したのか、俺の後ろに回り込んでしがみ付いてガルル、と一夏に威嚇している。

…子犬じゃねぇんだからよ。

一夏は一夏で困り果てたかの様にがっくりと項垂れてしまう。

よもや、此処まで拒絶されるとは思ってもなかったんだろうな…正直、俺もちっとばかし驚いてる。

 

「ああー、なら…ならだ…師匠の俺から提案があるんだけど、いいか?」

「なによ、内容によっては背中に噛みつくわよ!?」

「やめれ…いいか?」

 

一夏と鈴の顏をそれぞれ見れば静かに頷く。

鈴の方が若干落ち着いて話聞いてくれるってのが意外だったが。

 

「第一回戦はお前らで戦り合うんだ…だから、勝った方が負けた方の言う事を聞くってのはどうだ?」

「…俺は、それで良い。少しでも鈴と話をする機会が得られるんなら」

「…良いじゃない、ぐうの音も出ないくらいコテンパンに叩きのめしてやるんだから!!」

 

二人とも納得したようで、鈴は一方的に宣戦布告まで行い二組に戻っていく。

一先ずは、これでキッカケになるが…問題はだ…。

 

「一夏よぅ…ああは言ったが勝ち目ねぇぞ?」

「いや、勝ってみせる…俺は勝って、謝らなくちゃならないんだから」

「だってよ、千冬」

 

一夏の背後を見ると、千冬が軽い頭痛がするのか片手で頭を抑えて立ち尽くしている。

先ほどまで大声で言い合ってたから、話の内容までは聞こえていたんだろうな。

 

「…織斑、放課後私の所に来るように。アモンは同伴しなくていい」

「わかった…姉ちゃんに、こってり絞られてきな」

「あぁ、分かったぜ」

 

こりゃ、週末の対抗戦…荒れるかもわかんねぇなぁ…。




遅筆…圧倒的遅筆ッ…!(6時間かかってる)
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