インフィニット・ストラトス~人形遣いは夢見るか?~   作:ラグ0109

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Archenemy manifestation~魔王顕現~

洋上を高速で飛行していると、目の前に二体…あのズングリムックリな、恐らく無人機が俺の前に立ちはだかる。

フランマ達と離れた為にアイスブランドとフランマ・トクソは使えねぇ…この辺も改良して良いんだが、やり過ぎると面倒な事になるからな。

二体とも俺を補足した瞬間に両腕を此方に向けて、高出力のエネルギーカノンを撃ち込んでくる。

余波でダメージを受けない程度に回避しつつ一気に肉薄し、出力をあげたエネルギー・ストリングスですれ違いざまに二機の両腕を寸刻みにしようとするが、シールドエネルギーに遮られて両断には至らねぇ…クソが。

 

「連れていくわけにゃいかねぇな…此処で潰すぜ」

「……」

 

無人機は絶えず此方を補足し続け、壊れかかった両腕からエネルギーカノンを拡散状にして撃ち込んでくる。

流石に濃密な弾幕ともなれば、全てを避けきる事はできねぇ。

ショウケースを前面に展開して避けられない攻撃を受け止めていくが、一撃一撃が重いのか受け止めるたびに動きが止まっちまう。

動き自体は単調なんで大した事はねぇんだが…一撃が重すぎんな…。

フランマとスティーリアなら問題はねぇだろうけどな。

この程度で攻撃を避けきれねぇ様な教育は施しちゃいねぇ。

 

「だったら、マスターがこんな奴に手古摺っちゃならねぇよなぁ…!!」

 

両手にエネルギーストリングスで覆い鉤爪状にする。

これでこの手自体がエネルギーの塊みてぇになる…高密度のエネルギー体はバチバチと帯電している。

プラズマ化の一歩手前ってところだな…もうちょい出力を上げると機体がもたねぇ…。

恐らくこの無人機はデータ取りに使われてやがる。

と、なると本来の姿で戦うわけにも…制限ばっかだなこの世界!!

 

「だが、まぁ問題があるって言えばそうでもねぇからなぁ…」

 

大きく円周軌道を描きながら、無人機の横合いに回り込み瞬時加速。

此方に体を向けた瞬間に体に取りついて、まずは出来の悪い頭部を一気に引き裂く。

高密度のエネルギー体と化した両手はシールドエネルギーすら容易く紙の様に引き裂き、装甲をドロリと融解させる。

こんなもん人間に使ったら、あっという間に蒸発するな。

 

「オラァッ!!」

 

此方に伸びてくるもう一機の両腕を無人機を蹴った反動で跳躍する事でひらりと避け、背中を思い切り引き裂きつつ広がった傷口をさらに広げる様に両手で開いて上半身を縦に真っ二つにする。

フレームにかろうじてくっついているISコアであろう部分を引き抜き、量子化して格納しつつ逃げ惑う様に後退する無人機に残骸を思い切り投げつける。

…なんつーか、ちっとあいつは確保して解体(バラ)す必要があるな。

瞬時加速を二連続で行い、ゲ○ター軌道を描きながら回り込んで素早く四肢を握りつぶし叩き潰し引きちぎる。

胴体部分と繋がってるコアを見るだけで十分だからな。

まるで芋虫の様に身体をじたばたと動かすしかない無人機を抱えて、再び学園へと向かう。

 

『マスター、鉄人形の破壊終わったニャー』

『少し、派手に壊してしまいました…コアの回収だけでよろしいでしょうか?』

「ご苦労、コア回収後学園に来い。千冬から送られてくる情報に目を通したが、かなり劣勢みてぇだ」

『『イエス・マスター(ニャ)』』

 

千冬からアリーナの情報が送られてくる。

どうも、アリーナ全体がロックされて生徒の避難も儘ならねぇ…しかもアリーナ内には三体ばかし無人機が居るみてぇだ。

今、一夏と鈴が応戦してるみてぇだが…一夏のシールド・エネルギーが底を尽きかけてやがる。

恐らく、試合の終盤で仕掛けられたんだろ…零落白夜はエネルギーを阿呆みてぇに喰っていくからな。

洗練された騎士モチーフの機体なのに、実情は大喰いの切り札持ち。

某騎士王が頭をよぎるな…。

頭にキてても余裕自体はあるみてぇだな、俺。

兎も角、先を急ぐに越したことはねぇ。

 

「千冬、もうすぐそっちに着く。途中無人機に襲われたけどな」

『大丈夫なのか!?』

「落ち着けよ、らしくねぇぞ…?」

 

…千冬は何故かISに乗らねぇ。

それが何を意味するのかは分からねぇ…もしかしたら、本人自体がISを無意識の内に忌避しちまっている可能性も。

それに…アイツを抱いた時に微かに感じる違和感もある。

俺は、まだ知らねぇ事があるな…ISにしろ千冬にしろ、な。

この世界に喰い込んでいく以上、いずれ分かるのだろうけどな。

 

『だ、だが…私は今何もできない…。ロックされたアリーナのシステムを内と外からクラッキングしているのだが、すぐに上書きされている』

「面倒な…わりぃが、アリーナぶっ壊して中に入るからな」

『許可する…すまない、ピットも閉鎖されて教員が介入できない状況…篠ノ之!?』

 

千冬が何かに気付いたのか箒の名前を口にする。

…まさか、箒のやつ何かやらかそうと…!?

 

『一夏ぁっ!!男なら…男ならそのくらいの敵に勝てなくてなんとする!!!』

 

オープンチャンネルで聞こえてくる箒の叫び。

ヤベェな…。

試合なら笑い話で済むだろう。

あぁ、恋する乙女が若さ故の過ちを犯してしまったのねと…だが、今は最早戦場だ。

オープンチャンネルで聞こえてきたと言う事は恐らく管制室。

この無人機共は外部からの刺激にやたらと敏感だ…オープンチャンネルって事は無人機も聞いてる。

もし、もしだ…箒を指揮官として誤認したら無人機共はどうすると思うよ。

俺はゴミを投げ捨ててアリーナ直上へ向かえば一気に急降下、シールドエネルギーを一瞬だけプラズマ化させた両手でアリーナ天井のシールドエネルギーを引き裂いて管制室の前に躍り出る。

 

「箒ぃっ!!!」

「なっ…シショー!?」

 

管制室に躍り出た瞬間に三方向から俺…っつーか箒目がけてエネルギーカノンが放たれる。

俺はそれをショウケースを盾にすることで全て受け止めるが、凄まじい熱量と衝撃の所為かショウケースが徐々に溶けていき俺自身も管制室の外壁に叩き付けられる。

チッ…流石にスティーリアが居れば防ぎきれたが…置いてきちまったからな…。

光の奔流が途切れた時にはショウケースは無残にも破壊され、俺は管制室の中にまでめり込んでいた。

すぐ傍には無傷の箒が立ち尽くしている。

 

「あ…あ…せ、先生…」

「…とっとと逃げな、説教は後だ」

 

箒は恐怖で竦んで動けねぇのか立ち尽くしている。

俺は深くため息をついて箒を睨み付ける。

 

「とっとと逃げろって言ってるだろうが!ぶっ殺されてぇのかクソガキ!!!」

「ひっ…!!!」

 

威嚇するように殺気を放ち、箒を管制室から追い出す様にして恫喝する。

後、やらなくちゃならねぇことは…。

装甲の表面が解けて、アプリストスが地獄から来た化け物みてぇになってるな…それでも普通に動くアプリストス、俺ナイス設計。

ゆっくりと管制室から這い出すと、一夏と鈴が激情に駆られて無人機たちに襲い掛かっている。

 

「よくもシショーをやってくれたわね!!!」

「お前らみたいのが居るから…!!!」

 

激情に駆られながらも連携自体は取れているのか、上手く撹乱しながら戦っているが…ジリ貧には違いねぇな。

俺が管制室から飛び出すのと同時に、フランマとスティーリアがアリーナのシールドエネルギーをぶち破って侵入してくる。

 

「一夏、鈴、退け」

「シショー無事なの!?」

「アモン兄、こいつらは俺たちが!!」

「退け、てめぇらじゃ怪我するからな」

「王の御前である…跪け鉄人形」

 

スティーリアは俺が傷つけられたのが酷くご立腹なのか、聞いたものが底冷えする様な冷たい声色で無数の氷の槍を作り出し、回避機動を行っている無人機三機をまるで昆虫をピン止めするかのように串刺しにして地面に縫い付ける。

フランマはニコニコと笑みを浮かべながら、並んでいる一夏と鈴のISに触れる。

 

「王の御前ニャ、だからちょっと大人しくしてるニャ」

「「え?」」

 

フランマは一夏達を軽く押し出すだけで壁に叩き付け、炎の檻を形成っして閉じ込める。

動き回られると邪魔だからな…悪いが其処で大人しくしていてもらおうか。

 

「…心底頭にキてんだ。テメェ…次似たような事したらぶっ殺す」

 

無人機の頭を掴み、額と額をぶつけて間近で恫喝する。

この機械人形の持ち主に伝わる様に。

これを見ている奴らに、ちょっかいを出すとどうなるのか思い知らせるために。

 

「このような人形が、我らの模造品と言う事実が非常に不愉快です。マスター、撃滅の許可を」

「ニャー、私もぶっ壊したくてウズウズしてるニャ」

「ワリィな、もう一機ぶっ壊しちまった…残りは二人で仲良く分けな」

 

軽く頭を掴んだ手を下ろすと、無人機の頭がもげて地面に叩き付けられる。

更に、空いた手を握り込んでやれば、無人機に絡みついていたエネルギー・ストリングスが最大出力で輝きを放ち機体を細切れにしていく。

まだ、足りねぇが…それはフランマもスティーリアも同じことだろう。

 

「ニャハ♪最大火力で溶かしつくしてあ・げ・る♪」

 

フランマが人差し指を頭上高く掲げると、二メートルほどの炎の球体が周囲の大気を渦巻くように形成される。

その球体は…まるで太陽の様に高熱を発していて、炎の檻で守られている一夏達ですら熱気を感じるのか息を呑んでいる。

 

「消えろ、ゴミくず…お前は不愉快だ」

 

フランマが死刑宣告の様に冷たく言うと、ゆっくりと無人機に球体を落す。

球体が無人機に近づくとシールドエネルギーですら防ぎきれなかったのか地面ごと液体の様に溶けていき、マグマの様に沸き立つ。

一瞬だ…球体が地面に着弾した瞬間、球体は一瞬で消えるものの残ったのはクレーター状に抉られて未だ赤熱化しているアリーナの地面とISコアと思しき球体だけ。

 

「貴様しか潰せないのは非常に、残念ですが…溜飲くらいは下がるでしょう」

 

今まで見せたことが無いくらいの獰猛な笑みを浮かべて、氷山の様に大きい両手持ちのハンマーを作り出す。

ちろり、と唇を舌で舐めてスティーリアは氷の槍から抜け出そうともがく無人機に大してハンマーを大きく振りかぶる。

 

「慈悲無く、容赦無く、満遍無く、叩き潰す!!はああああ!!!」

 

スティーリアは、全力の一撃を持ってハンマーを打ち下ろし爆音と共に無人機を叩き潰す。

叩き潰した瞬間にハンマーの先端がミキサーの様に回転して地面ごと機体を粉微塵に変えていく。

…俺よりえげつねえな。

俺は量子化していた煙草を咥えてフランマに火を点けさせ、いまだ何度も何度もハンマーを打ち下ろしているスティーリアに声をかける。

 

「その辺にしとけ…子供じゃないだろう?」

「っ…失礼しました!」

 

スティーリアはハッとしたように我に返り、ハンマーを手放せば此方に向き直り跪く。

そうしていれば、北欧の戦乙女とかそう言った感じの高貴な雰囲気がするんだがな…なんつーか、こいつ好戦的なんだよな。

フランマに一夏達を解放させながら煙草の煙を吐き出す。

観客席を眺めると、逃げ切れなかった生徒が呆けた様に俺を見つめている。

…ちーっとばかし、やりすぎたかね?

 

 

 

 

IS学園には地下に広大な施設を隠し持っている。

これは、IS学園と言う特性上どうしても必要な防衛のための備えだ。

この場所に表には出せない各国の軍隊に匹敵する戦力を隠し持ってるって訳だな。

どうしてもIS学園は色んな国の機密が集まる…今回の襲撃の様な事が起きた時の為に備えてるわけだ。

…役に立たなかったけどな。

 

「ふー…原型を留めてるのは此奴だけだな…他は怒りに任せてぶっ壊しちまったし」

 

四肢と頭を破壊された無人機が、機能停止状態でハンガーに無理矢理かけられている。

無理矢理って言うのは、こいつが既存ISの共通規格で作られていない所為だ。

そのせいで、無理やりワイヤーで括りつけられている形になっている。

 

「ミュラー先生、凄かったですね…更識さんの時も手加減を?」

「そりゃオフレコだ…聞かれてたら困るからな」

 

隣で俺と一緒に無人機を弄っていた山田が朗らかに話しかけてくる。

今回の俺の撃墜スコアは全部で七機…フランマとスティーリアは俺の兵器扱いだからな。

実質あいつらが一番破壊してはいるんだが…。

 

「やっぱり、これISですね…それも無人機動の…」

「っって言っても、手元にあるコアは全てが機能停止状態…そんなことが出来る奴って言ったら…」

 

山田と顔を合わせ二人でため息をつく。

恐らく、山田も同じ結論に至ったんだろう…。

ここまでISコアを好き勝手にできる存在なんざ一人しかいねぇ…。

 

「「篠ノ之 束」」

「しかいませんよね…コアはどれも未登録の番号無し(ロスト・ナンバー)…コアを作ったとしか思えませんし」

「…箒の方を狙ったのもデモンストレーションかそれとも…」

 

無人機AIが完璧じゃねぇか…だ。

そもそも、ISの無人化はクソウサギでも出来なかったはずだが…やっぱ、持っていかれた人形を使われたって思うのが妥当かもな。

あの時とっとと生ごみとしてステーションに出しておけば良かった…ッ!!

 

「篠ノ之さん大丈夫でしょうか?」

「若さゆえの過ちなんだろうが…場合が悪かったな」

 

箒は、千冬が直々に懲罰室でお仕置きしている真っ最中だ。

避難できなかったとは言え、誘導には従わずあまつさえ危険に曝したんだ…仕方ねぇ。

これで反省してくれりゃ良いんだけどよ。

 

「二人ともご苦労だった…結果は?」

「コアは全部機能停止、いずれも未登録のコア…無人機ISだよ」

 

一先ず装甲をバラすのを止めて、手に着いた油を拭っていると千冬が此方にやってくる。

どうやら説教は終わったらしい…千冬は疲れた様に眉間を揉んでいる。

多分、千冬も同じ結論に至っているんだろうな…。

 

「…アモン、お前のBTドールも無人機だな?」

「公にすんなよ?」

「えぇ!?ミュラー先生のも無人機なんですか!?」

 

軽くため息を吐きながら肩を落とすと、山田は驚きに目を丸くしつつズレた眼鏡を直す。

今回の件の責任が確実に俺に回ってくるからな…少し派手にやり過ぎたが、それだけは避けてぇ。

 

「こんな出来損ないとあいつらを一緒にされたら困るんだけどな」

「恐らく、束はお前から技術を盗み出そうとしているんだろう…気を付けろよ?」

「篠ノ之博士はなんで、こんな襲撃事件を…?」

「さて、な…それはまだ分からん…」

 

 

千冬は睨み付ける様にして無人機を見つめる。

いつしかモニターで見たことがある、戦士の面構えになりながら。

俺はただ、黙りこくるしかできなかった。




アモンよりも付き人の方が恐かったでござるの巻
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