インフィニット・ストラトス~人形遣いは夢見るか?~   作:ラグ0109

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事後処理するまおーさま

徹夜でクラス代表対抗戦の後始末をし、俺は朝礼をパスさせてもらってアプリストスの修復作業に入る。

治ったばっかだってーのによくもまぁ…全身の装甲が融解し、まるでマグマから這い出てきた化け物みてぇな見た目になってんな…。

トランクの中から代えの装甲板を出しながら、これからの身の振り方を考える。

と、言うのも原因はBTドール…。

匿名のタレこみで――っつーか恐らく束なんだろうが――IS委員会にBTドールが完全な自律機能を有している事が露見しちまっている。

無人機との戦闘が計二回…その内最初の一回は、BTドールのみでの戦闘だ。

BT兵器を扱うにはあまりにも距離が開きすぎていたし、どうも多彩な方法で攻撃を行っていたようだ…親の見てない所だからって

ハシャいじゃったんかねぇ…?

ともあれ、今後の俺の扱いと言うのが非常に微妙な物になるのは間違いない。

世界で初めて完全自律稼働の人形を制作した男…千冬の話じゃ、早速あらゆる研究機関から御呼びの声が来ているそうだが全て

拒否しているそうだ。

IS学園に帰属するものは、あらゆる国家、団体の干渉を受けない。

この一点張りで凌いでるって訳だな。

千冬としても…俺としても、離れ離れになるのは本意じゃねぇしな。

 

「居たわねダーマ…いえ、『魔王(アーク・エネミー)』…!!」

「ダーマ…いや、それよりも『魔王(アーク・エネミー)』ってなんだよ…?」

 

楯無が息を切らせながら整備室の扉を文字通り蹴破って、中にズカズカと入ってくる。

…その扉修理すんの誰だと思ってんだよ?

 

「あら、知らないの?貴方の二つ名よ?」

「…物騒過ぎんだろ。なんだよ魔王って…」

「強ち間違いじゃないニャ」

「悪魔で我らの王ですし…」

 

ショウケースがぶっ壊れたせいで出ずっぱりのフランマとスティーリアが真理をついてくるが、無視だ無視。

どうも、昨日の戦闘が広まってかなり怯えさせたらしい。

一番怯えさせたのはスティーリアだろうけどな…バカでかいアイスハンマーで滅多打ち…。

しかも歓喜の笑みを浮かべながらだから余計に質がワリィ…。

だが、スティーリアにしろフランマにしろBTドールだ。

つまり、操ってる俺がそういう風に見せてるって言う風に思っちまうわけだわな。

 

「良いじゃない、ダーマなんかより随分素敵な響きだと思うけど?」

「否定はしねぇけどよ…俺は人形遣いなんだ…ドール・マスターとかあったろうが」

「貴方のその機体状況で、凶悪な攻撃の数々を見せられたら魔王だと思うわよ…」

 

楯無はグロテスクな見た目となってしまっているアプリストスを指差して、深いため息をつく。

どうも、俺もスティーリアをとがめる事が出来ねぇ程度には、凶悪な笑みを浮かべていたらしい。

…これ、ガキ共ビビッてマトモに話を聞いてくれねぇフラグなんじゃ…。

胸元から煙草を取り出し、フランマに火を点けさせる。

こいつ、良いタイミングで火を点けてくれるな…見計らってんのか…?

 

「まぁ、そんな事は些事よ些事。それよりも、貴方…身の振り方決めてるのかしら?」

「それなんだよな…今は千冬とかがカットしてくれてるらしいが…下手すっと、厄介な事になりかねねぇし」

 

兎に角、BTドールが自律兵器だった件がバレちまったせいで、俺の扱いを学園側が持て余しはじめるのは目に見えている。

なんせ、機密が集まるとは言え一教育機関には代わりがねぇ…現状束についで重要な人物扱いされちまってるからな。

『人類』初の自律機動兵器開発者…その内博士とか呼ばれちまいそうだ。

んで、今後の身の振り方は三つくらいある。

一つ、自分の世界に帰る。

何時でも帰還して良いって話だからな…帰ろうと思えば今すぐ帰れる。

だが、千冬を置いて行っちまうし、一度帰還したら暫くはこの世界に戻れねぇ。

時間の流れがどう違うのか分からねぇ以上、この案は無し。

二つ、根無し草稼業に戻る。

この世界に留まるのは問題ねぇが、千冬が以下略。

よって却下。

三つ、それは―――

 

「助け舟、出してあげようかしら?」

「…まぁ、大体お見通しだわな…」

 

何てことはない、此処の教師になっちまうことだ。

俺の現在の扱いは…まぁ、言っちまえば契約社員みてぇなもんで学園としても守る理由が本来はねぇ。

学園が今庇っているのも『篠ノ之 束がねじ込んできた』からだ。

俺自身の価値は、この世界でも稀に見る技術者にして男性操縦者。

技術者って言うのもこの学園じゃ大して役に立たないからな…。

 

「妹が貴方に救われたと言うのは聞いている…借りの一つや二つはポンと返さないと楯無ではないわ」

「お前のそう言う所は好感持ててカッコいいって思えるんだがねぇ…」

「もーっと褒めてくれたっていいのよ?」

 

楯無はドヤ顔で、胸を張り此方を見上げてくる。

なーんで、ドシスコンになっちまったかねぇ…コイツ。

 

「織斑先生と付き合ってるって話も出てるくらいだし、もう形振り構ってられないんじゃない?」

「…こないだの覗き、テメェの差し金か?」

「さぁねぇ~♪」

「悪い顔してるニャ、悪魔よりも小狡い顔ニャ」

「そう言う言葉は口に出すものではありません」

 

数日前にピットで視線を感じていたし、何かアクション起こるとは思っていたが…まぁ、カミングアウトするタイミングを逃していた

俺としちゃ有難い話ではある。

狙っていたいたかどうかって聞かれれば…まぁ、想像に任せておくか。

これから、沢山カミソリレターが来ると思うとゲンナリしちまいそうだ。

 

「まぁ、何であれ私が口添えしてあげれば何とかなるわよ?」

「まぁ、そうなんだけどな…」

 

この学園における生徒会長ってのは、生徒側の顔役ってだけじゃねぇ。

なんせ、学園運営における内政を担っているからな。

生徒の自主性を重んじるって方針のおかげなんだがな…。

普通の学園ならいざ知らず、こんな兵器取り扱う学園の内政をガキに任せるかね…?

いや、そうすることで認識を改めさせてんのかもしれねぇがな…。

 

「まぁ、考えても仕方ねえし、ちったぁ釣り合いの取れる男にならねぇとな」

「そう、なら『色々と期待する』わ」

「仕事くらいはキッチリこなしてやらぁな」

 

教師になるって事は、俺にそう言った仕事を求めるだけじゃねぇ。

学園に対する技術供与、及び昨日見せつけた戦闘能力による学園の防衛…まぁ、そんな所だろ。

んなわけで、俺は教師って言うよりも便利屋になるわけだな…。

技術供与に関しちゃ適当な事を教えてやりゃ良い…下手な干渉はこっちの首を絞めるだけだしな。

時間を見ればそろそろ作業を止めなきゃならねぇ時間だ。

職員室の朝礼をパスさせてもらったってだけで、SHRに出なくて良いとは言われてねぇしな。

 

「んじゃま、俺はそろそろ教室に行くわ…スティーリア、フランマ、修理頼んだぞ」

「「イエスマスター(ニャ)」」

「忠犬と忠猫ねぇ…」

 

楯無は呆れたようにして肩を竦めて俺と一緒に立ち去ろうとするが、フランマとスティーリアに脇をがっちりと抑えられる。

…直してもらわなきゃならねぇもんがあったなぁ…。

 

「ちょっと待つニャ」

「何よ…私、これからあなた達のご主人の為に働きに行くんだけど」

「その前に、働いていただきます」

 

スティーリアは工具箱を楯無に渡し、にっこりと冷たい微笑みを浮かべる。

昨日に比べれば幾分親しげではあるけどな。

楯無は意味が分からないと言わんばかりに首を傾げる。

 

「何をしろって言うのかしら?」

「簡単な話ニャ、扉をちょいちょいっと直すだけニャ」

「立つ鳥後を濁さず、と申しますから…直しなさい」

「アッハイ」

 

スティーリアは氷のつぶてを浮かべて、楯無を威嚇するようにして修理を促す。

…後で説教しておかなきゃなぁ…そんなこと思いながら、俺は整備室から逃げる様に出ていくのだった。

 

 

 

SHR開始十五分前に教室にやってきた俺は、何とも気まずい顔で扉の前に立ち尽くしている。

なんつーか、ほら…昨日はやり過ぎたんだがな…んな事がどうでも良くなる様な張り紙がされていたのだ。

 

『ブリュンヒルデ禁断の職場恋愛』

 

でかでかと何時かのキスの時の写真が載った校内新聞が、掲示板に貼られていたのだ。

いや、正直此処まで正攻法に書いてくるとは俺も思わなかったな…っつーか、あの写真ピットの時のじゃねぇし…。

マジであの時人除けの呪いかけていて良かった…大問題になる所だったわ。

ともあれ、こんな新聞が貼られていたらデカい騒動になるはずなんだが、廊下はシーンと静まり返っている。

逆にこれが恐ぇ…一体何が起きているんだ…?

第三次大戦が起きてるわけでもねぇので、俺は意を決して扉を開く。

 

「あー、まおーさまだー、みんなひれふせー」

「本音よぅ…お前は平常運転だな…」

 

扉を開けるなり第一声を上げたのは布仏 本音…このクラスにおける日常代表だ。

こいつはかなりトロいが、気配りができる上に機械整備の知識がかなり豊富だ。

所謂、見た目に騙されるなってやつだな…寝首をかくのが得意かもしれねぇ…。

 

「まおーさま、しつれーな事考えたでしょ?」

「んなこたねぇよ、っつーか魔王様は止めろ、マジで」

 

あんまりにも物騒過ぎる上に核心突きすぎてて嫌な感じがする。

本当、誰が一番最初に言い出したんだか…。

本音と普通に会話しているのを見たのか、少しだけ教室の空気が軽くなる。

クラスを見渡すと箒の姿がねぇな…懲罰室にぶち込まれてるから、出られるのは早くて今日の放課後くらいか…。

 

「あの…篠ノ之さんは…」

「あー、まぁ、千冬が説教したって言うし、大丈夫だろ」

「け、怪我とかは…」

「生徒に怪我させるほど間抜けでもねぇよ…大丈夫だ」

 

箒と仲が良かったであろう生徒が何人か此方に詰め寄って来て、箒の安否を聞いてくる。

いや、本当に無傷で守れて良かったとは思う。

あれで守れなかったら確実に面倒な事になってたからな。

例えばクソウサとか…。

 

 

「アモン兄…」

「シケた面してんじゃねぇよ…まさか、びびっちまったのかぁ?」

「っ!そんなわけないだろ!?」

 

一夏が不景気そうな面構えで此方にやってくるんで、あえて煽る様にして言うと顔を真っ赤にして怒り出す。

思ったよりも元気そうで良かったがな…第一、こいつにゃ幾度か殺気当てしてるから並大抵の事じゃビビらねぇだろうし。

わしわしと一夏の頭を撫でながら顔を近付ける。

 

「で、鈴とは有耶無耶なままかよ?」

「いや、きちんと謝ったし…鈴も謝ってきた。それに、俺なりに答えもした」

「へぇ…まぁ、それなら良いけどな」

 

一先ず、あいつらの仲には決着が着いたっちゃぁ着いたらしい。

詳しい話はまた別に聞くとしてだ…俺は何とも気まずい顔をしながらセシリアの方を見る。

 

「オルコット、ちっと面貸せ」

「な、ななななんでしょうか!?」

「ビビってんじゃねぇよ…ほら、これ」

 

セシリアはビクビクと怯えながら、此方へとやってきて不安そうな顔で此方を見つめてくる。

まぁ、散々俺の事ディスってたしな…で、昨日の事件を目の当りにしたら報復されるとでも思ったのかね?

俺は、苦笑しながらレポート用紙の束が入ったクリアファイルを差し出す。

 

「は、反省文を書け、と言う事でしょうか…?」

「悪いことやってねぇのに、どうしてそんなもん書かせなきゃならねぇんだよ…そうじゃなくて、お前の訓練メニューだ」

「ふぇ…?」

「BT兵器の稼働効率ちっとでもあげてぇんだろ?」

 

セシリアは俺の言葉を聞くなり、静かに頷く。

セシリアの弱点…BT兵器稼働中に足が止まるって言う弱点は、単純にBT兵器の稼働効率が低いからこそ起きる現象だ。

ここで言う稼働効率って言うのは、イメージインターフェースシステムによる命令を受け付けやすいか否かって部分だ。

この部分が低いと、どうしても強く意志をBT兵器に伝えなくてはならなくなるために他の事が考えられなくなる。

よって、様々な機動をしなきゃならねぇISを扱っている以上足を止めざるを得ねぇ…と。

このファイルに書かれているのは、どうしたらもっと単純に意志を伝えられるかっていう方法とBT兵器に関する事細かな知識。

それとイメージトレーニングから実機によるトレーニング方法を一週間のメニューとして書いてある。

これを素でこなせるようになったら次のステップ…偏向制御射撃へと移る予定だ。

 

「先ずはそれをこなしてみろ…騙されたと思ってな。それが簡単にこなせるようになったら次のステップを教えてやる」

「…お、怒ってませんの?」

「つまんねぇ事は忘れるタチなんでね…」

 

軽く肩を竦めて苦笑すると、セシリアはホッとしたように胸を撫で下ろす。

どっかの蛇じゃあるめぇし…俺は寛容なのさ、身内にはな。

少しばかり一夏とセシリアをイジってクラスの奴らを笑わせていると駆け込む足音が聞こえてくる。

 

「シショー!!!」

「ウボァー!!!!」

 

思い切り飛び蹴りを背中に喰らって、俺は教室をごろごろと転がって逆さまの状態で壁にぶつかる。

犯人は言うまでもなく鈴だ…こいつ、良い蹴りしやがるじゃねぇか…。

 

「これ!どういう事よ!!」

「いや、どうもこうも…事実だが?」

「モヤってするのよ!私に教えてくれても良いじゃない!」

 

鈴は俺の目の前で仁王立ちして、八重歯を見せながら此方を見下ろして怒声を浴びせてくる。

俺が認めたことで教室中が黄色い声やら落胆の声、嫉妬の声で騒がしくなる。

まぁ、そうなるな。

 

「ま、まぁまぁ…鈴、アモン兄も言い出しにくかっただけで…」

「うっさい、あんたは黙ってなさいよアホ一夏!」

「ゲフッ」

 

鈴は容赦なく喉突きを叩き込み、一夏を一撃の元に地に沈める。

…痙攣してっけど大丈夫か…アレ…?

 

「色々とな、大人は気を使わなきゃならねぇことがあるんだぜ?」

「シショーの弟子は私なのよ!?」

「それでもだ、秘密ってのは秘密にされてるから秘密であって、漏れた時は秘密でもなんでもねぇんだ…まぁ、悪かったな鈴」

 

素直に鈴に謝ってやれば、鈴は顔を真っ赤にして背けて唇を尖らせる。

その間に俺は体勢を整えて立ち上がり、体に付いた埃を払う。

 

「今度買い物に付き合ったら許してあげるわ!」

「残念、そりゃ無理だ」

「チィッ!」

「舌打ちすんなよ…」

 

流れで了承得られるとでも思ってんのか…一夏と一緒にすんじゃねぇっつーの。

俺は鈴の頭をポンポンと撫でてやり扉を指差す。

 

「千冬が来る前に帰れ」

「…ぐう…わかったわよ」

 

鈴はしょぼくれながら教室の扉を開く。

まったく、こいつは分かりやすい小型犬かっつーの…。

 

「あー、今度酢豚食いてぇなぁ…どっかの弟子が作ってくれねぇかなぁ…?」

「っ!見てなさい!胃袋掴んでやるんだから!!」

 

チョロい…圧倒的なチョロさ。

鈴は気を取り直したのか、捨て台詞を吐いて思い切り扉を閉める。

まぁ、その直後にスッパーンと凄まじい音が廊下から響いてきたのは言うまでもねぇな。




やっと…やっと…更新…(吐血

みなさんも熱中症には気を付けましょう…


頭痛なんかだいっきらいなんじゃー
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