インフィニット・ストラトス~人形遣いは夢見るか?~   作:ラグ0109

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ラブコメと人形遣い

「いや、確かに今日は午後のこいつらの授業しかないから暇なんだけどよ…」

「なんだ、文句があるのか?」

「いや、横暴も良いとこだろ…」

 

SHR終了後に千冬から、ISスーツを着てグラウンドに来るように通達が来た。

学年主任の通達って事もあって、仕方なく整備室での作業を止めてISスーツに着替えてグラウンドへと向かう。

校舎から黄色い悲鳴が彼方此方から響いてらぁ…。

女だけどシャルルの容姿ってのは、まさしく貴公子って言葉がピッタリくる。

爽やかで柔和な笑みは、母性本能を刺激して仕方ねぇだろうな。

で、女って事を伝えられてねぇ一夏は、そんなシャルルと仲良く手を繋いで逃避行やってんだろうな…。

基本的に着替えは教室で行ってるからな…女子は。

で、今日は実習授業なので下着の着用厳禁のISスーツに着替える。

弾にとっちゃ天国の様な風景が其処には広がってんだろうな…。

量子化していた煙草を吸って、ため息と共に煙を吐き出す。

 

「…その、ラウラがすまなかったな」

「ありゃ、ブリュンヒルデ教狂信者って所だろ。崇拝している対象に勝った奴とデキてるってなりゃ、ああも憎悪の対象になるだろうさ」

「指導していた時は子犬の様に後をついてきていたものなんだが…一年経って何があったのやら…」

 

恐らくなにも無かったんだろ…千冬が居なくなったって所以外は。

子犬の様にって事は、本当に懐かれてたんだろうな…。

軍人だっつっても、やっぱガキだねぇ…。

小娘に割り切りを覚えろって言うのも酷な話なんだけどな?

 

「ま、お前が気にする事でもないだろ…出て来いよ、ボーデヴィッヒ。俺と遊びてぇんだろ?」

「……」

 

ゆっくりとした動作で煙草を携帯灰皿に捨てて、携帯灰皿を量子化して格納。

敵意を感じる建物の陰に声をかければ、大人しくラウラがやってくる。

ISスーツはあらかじめ着てたのか、一番乗りか…。

 

「ボーデヴィッヒ、教師に敵意を向けるなとは言わん、抑えろ」

「失礼しました」

「敬礼もいらない…ここは軍ではなく学園だ」

 

ラウラは千冬から咎められると整然とした動作で敬礼をするものの、千冬は頭痛がするかのように眉間を揉み肩を落とす。

千冬が言う様に規律ガチガチの軍隊に比べて、この学園は緩い…色々と。

それはもう、俺×一夏のウ・ス異本が出るくらいには。

発禁にしてやったがな。

話を戻して、ラウラはそういう緩い空気に飲まれまいと抵抗している気がするな。

エリート思考っつーか…悪い言い方をすりゃ、見下してるわけだ。

経歴に書いてあった、シュヴァルツェア・ハーゼって部隊の隊長をやってた人間からすりゃさもありなん…。

まぁ、見下してる時点で俺からすりゃ隊長失格だけどな。

 

「で、授業開始まで時間あるわけだが…やるかい、お嬢ちゃん?」

「…教官、この男とやらせてください」

「だから、織斑先生だと…まぁ、良い。アモン、本気は出すなよ?」

「子犬と戯れる様なもんだ」

 

千冬から離れる様に歩き、ラウラからは背中を向ける。

勿論、隙丸出し…どうぞ煮るなり焼くなり好きにしてくださいと言わんばかりのポーズもつけてだ。

案の定、ラウラは此方に駆け出して鋭い回し蹴りを叩き込んでくるが、俺はそれを掴んで背負い投げの要領で前方に投げ飛ばす。

ラウラは素早く受け身を取って着地し、此方の様子を伺っている。

 

「貴様…何をしている?」

「ハンデだハンデ…IS使っても良いから、俺をこの円の中から出してみな」

 

俺は足で直径二メートル程の円を作りつつ、両手に量子化していた革手袋を嵌める。

以前使っていた鋼線よりも頑丈かつ見えにくい、金属の化け物蜘蛛製の糸を用いている。

流石にIS相手じゃ…な…。

だが、馬鹿にされたと思ったのかラウラは殺気の籠った瞳で此方を睨み付けてくる。

 

「その驕り、後悔させてやる」

「御託は良いから…来いよ子犬(パピー)ちゃん」

 

器用にも煙草一本だけ拡張領域から呼び出して咥えつつ、ISを纏わず突っ込んでくるラウラを迎え撃つ。

生身で来てくれるってぇんなら生身で応えてやんなきゃな…ラウラは鋭い手刀で突いてくるが、俺に触れる瞬間に部分展開してくる。

おぉ、恐い恐い…俺は糸で部分展開された腕を雁字搦めに後ろ手に拘束し、軽く足を払って転倒させる。

 

「なっ…!?貴様、何を!?」

「さぁって、なんでしょーねぇ…?」

「うわぁ…あの転校生…シショーに戦い挑んでる…」

「ダーマと言うのも伊達ではありませんね…」

 

鈴とセシリアがやってきたのか、ラウラに大して合掌するような声色で会話しているのが聞こえてくる。

ダーマはやめろっつーんだよ、セシリア…。

転倒したラウラをポイっと糸で放り投げて、俺は円から出ていく。

思ってたより時間が無かったな…まばらながら、他の生徒達も来ちまってる。

一方的に嬲ってるところを見られるのも外聞に悪いんで、切り上げる事にする。

 

「時間切れだ…良い教訓ができたろ?『他人に敬意を払え』ってな」

「織斑 一夏もそうだが、貴様を私は認めない…認めてなるものか!」

「オルコットー、何か懐かしい事言われたぞ?」

「や、やめてくださいまし!今は尊敬していますわ!!」

 

セシリアに昔認めない発言喰らったことを思い出して、早速セシリアを弄ろうとすると後頭部をスパーンと出席簿で叩かれる。

なんでだ…スキンシップじゃねぇかよ…。

 

「生徒をからかうんじゃない」

「っ!そうですわ!からかわないでくださいまし!」

「水を得た魚みたいに反撃に移るわね…」

「鈴さん、叩けるときに叩くと言うのは当然の事ですわ」

 

ひりひりと痛む頭を撫でながら、軽く肩を竦める。

セシリア達と和気藹々と会話をしていれば、遠くから朗らかな声が響いてくる。

どう見ても走ってるのに、歩いてる速度と変わらないあの姿は…。

 

「まおーさまー、今日はじゅぎょ~一緒なの~?」

「だから、まおーさまは止めろっつーに…。お前らの担任が来いっつーから来たんだよ」

「織斑せんせー、こ~しこんど~ですな~。らぶらぶですな~」

「っな、何を言うか!これから実践訓練をするにあたってトラブルが起きては困るからだ!」

 

こっちに駆け寄って――歩み寄って?――来た本音に事情を説明すれば、本音はニヤニヤと笑みを浮かべながら千冬の事を見つめている。

千冬は耳まで顔を赤らめて動揺すれば、本音から顔を背けてしまう。

こーなっから、呼ばなきゃ良いのによ…まぁ、ラウラの事があるからってのもあったんだろうが。

 

「くっ…千冬様にあんな顔をさせるなんて…一体どんな魔法を使ったって言うのよ、魔王!」

「そうよ!私たちの千冬様を誑かすんじゃないわよ、魔王!」

「だから、魔王呼びはやめろっつーに」

「「きゃー、魔王に襲われる~♪」」

「てめぇら、印象悪くなること言うんじゃねぇ!?」

 

ニヤニヤとした笑みで本音と一緒に行動している生徒の二人が、俺をからかう様に円陣を組んでくるくると回っている。

こいつら…楽しんでやがる…。

軽く眉間を揉みつつ気持ちを鎮めて煙草に火を点ける愚行だけは阻止する。

一応、女子だしな…匂いには気を使ってやりてぇし?

ラウラはどうしたのかと思えば、落ち着いてきたのか離れたところでポツンと立っている。

背筋がしっかりしてるんで、綺麗なもんだが…あの近寄りがたい雰囲気どうにかならねぇかね?

 

「な、なんなんだ…この騒ぎは…」

「篠ノ之~、こいつらからかってくんだよ…」

「それは…自業自得ではないですか」

「シショー、あんたに救いは無いわ!」

「ひでぇ…」

 

箒に救いを求めようとするものの、鈴と一緒にばっさりと切り捨てられて見捨てられる。

まぁ…そうなるよな…普通は見捨てるわ…。

授業開始五分前になり、千冬の手を叩く音がグラウンドに響き渡る。

 

「お前たち、遊びは此処までだ。整列して待機しろ!」

「「「「はい!!」」」」

 

からかわれていても、其処は世界最強…カリスマの成せる技なのか、生徒たちは一斉にクラスの出席番号順に整列して待機する。

一糸乱れぬその動きは軍隊と遜色ねぇ程だ…なんだかんだで慕ってくれてるって事なんかねぇ?

咥えていた煙草を量子化して整列したクラスを眺めていると、未だに一夏とシャルルが来てねぇ事に気が付く。

大分手間取ってるみてぇだな…。

五分前行動ってのは社会の常識ってな…一夏とシャルルには鉄槌がくだされるだろうな…。

 

「な、なんとかマニアッ!?」

「い、一夏ーー!?」

「遅い!!」

「「南無南無…」」

 

一夏とシャルルが仲良く走ってくると、晴天に出席簿の重い打撃音が二度響き渡る。

そんな様子を眺めて、俺と鈴は同時に手を合わせて念仏を軽く唱える。

せめてえ成仏しろよ…一夏。

一夏とシャルルは頭を抑えながら列に加わり、授業開始の号令に倣って礼をする。

 

「では、射撃を含む格闘及び実戦訓練に入る…と、言いたいところだが…」

「そういや、山田はどうしたよ?」

「お色直しに手間取っていた様だ…すぐに来る」

 

軽く溜息をついて頭を抱える千冬…山田はやる時はやるんだが、どうにも抜ける時は抜けちまう…。

そう言う愛嬌があるから親しみを持たれちまうんだが…こればっかりはな…。

 

「今日は戦闘の実演をしてもらう…丁度良いことに代表候補生も居る事だしな。オルコット、凰、前に出ろ」

「わたくし、ですか…訓練の成果を見せて一夏さんに…フフフ」

「あんた、その程度じゃ駄目よ…一夏は鈍いから…」

 

セシリアの邪念を取っ払う様に、鈴はセシリアに警告を促す。

全ては被害者を増やさねぇ為の、鈴なりの優しさってところか…。

 

「織斑先生、あたし達で戦り合えばいいの?」

「いいや、お前たちの相手は…」

「わ~!!どいてどいて~~!!」

「あ~、お前ら散開しろ!!」

 

鈴とセシリアがISを展開した瞬間、空から空気を切り裂く音と悲鳴が響き渡る。

そうだな、山田 真耶だな。

山田は教員様にカスタムされたラファール・リヴァイヴを身に纏い、かっとんでくるが、どうにも制御を誤ったらしく止まれねぇみてぇだ。

俺は全員に逃げる様に促すが、一夏だけ反応が遅れて取り残される。

…ったく!なにやってんだか!?

 

「山田!ちっとばかし痛ぇぞ!!」

「ひゃぁっ!!!」

 

ISを身に纏ってから受け止めるんじゃ、一夏を巻き込む。

最悪白式が緊急展開されるだろうが、訓練やるってぇのに燃費の悪い機体にエネルギー消耗させるわけにはいかねぇからな。

真っ直ぐに一夏に向かって突っ込んでくる山田の間に割って入り、両腕を振って鋼の糸で網を作り出して受け止める。

 

「だぁりゃぁぁぁっ!!!あっだめだこれ」

「アモン兄ぃぃぃっ!!??」

「キャーーー!!!」

 

思い切り踏ん張ったつもりだったんだが、なんせ向こうは質量がな….

速度の乗ったラファールの動きを一時的に止める事は出来たものの、身体が浮いちまった俺は一夏を巻き込んで山田と一緒にゴロゴロと転がって漸く停止する。

位置的には俺がラファールを纏った山田に下敷きにされ、その上に一夏が乗っかってる…。

重い…流石に鋼鉄の塊が乗ってると役得とかそんな府抜けた事を言えないレベルで重い…圧迫祭りなんか求めちゃいねぇんだよ!

さっきの衝撃で白式が緊急展開されたお蔭で相当やべぇ…命の危機とまではいかねぇけど。

 

「危なかった…白式がなかったら即死だった…ぜ…?」

「お、織斑く…ひゃんっ!?」

 

どうにかして抜け出そうともがいていると、山田の嬌声がグラウンドに響き渡る。

どうやら俺の上でラッキースケベが発動したらしい…すげぇな…ある意味神に愛されてるとしか思えねぇ…。

神は神でもエロス神だろうが。

普通この状況でラッキースケベとか…死ぬぜ、一夏…?

 

「そ、そのですね。あの…困ります…皆さんが見ている場所でこんな…。あぁでもでも、このまま最後まで縺れ込めれば織斑先生が義姉さんと言う事に…」

「わぁっ!?ごめんなさいっ!?」

「茶番それくらいにして、とっととどかんかい!」

 

戯けた事を言い始めた山田にうっかりイラついちまった俺は、一夏と山田を生身のままで弾き飛ばして立ち上がる。

再びごろごろと転がった山田と一夏は素早く立ち上がって俺を見る。

 

「ラブコメやってんじゃねぇんだぞ!?」

「ひぃっ!すみませんっ!!」

「あ、アモン兄、怪我は…?」

「ねぇよ!」

 

怒りのあまり一夏に攻撃しようとしたセシリアが冷静になるほどの怒声を発した俺は、やっぱりと言うかなんと言うか二連続で出席簿で頭を叩かれる。

痛みで我に返るってのもアレだな…。

俺は、ちょっとした羞恥心で頭を抱え俯く。

 

「授業が進まん、説教なら後でたっぷりとしようではないか…なぁ、山田君?」

「は、はひ…」

「ち、千冬姉…?」

「織斑先生だ!」

 

千冬の声には若干の殺気が混じっている所為か、山田は若干涙目でコクコクと壊れた人形の様に頷いている。

一夏は千冬を宥めようと声をかけるが、うっかりプライベート呼びしてしまった為に出席簿をその頭に叩き落とされてらぁ…。

 

「まったく…これから山田先生VSオルコット、凰ペアの試合を開始する。三人とも準備をしろ」

「はーい。シショー、ご愁傷さま」

「くっ…一夏さん、よぉくわたくしの活躍を見ている事ね!」

「ミュラー先生、申し訳ありませんでした…では、行きます!」

 

三人それぞれ言葉を発してから空へと舞い上がり、一定距離を保って停止する。

オルコットは憂さ晴らしと言った雰囲気を身に纏い、鈴は一切の油断なく山田を見つめている。

さぁって…試合はどうなるかね…?

 

「位置に着いたな…では、試合開始!」

 

千冬の掛け声と共に、青い空を三機のISが翔け始めた。

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