インフィニット・ストラトス~人形遣いは夢見るか?~   作:ラグ0109

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子兎のジレンマ

千冬の号令と共に動きだした鈴とセシリアは、セシリアが突出すっつー戦術理論もへったくれもない身勝手な行動から戦端が開かれた。

自信とプライドと乙女心…そんなんで勝負になるわきゃねぇだろうが…。

鈴は仕方なく衝撃砲による援護で山田の牽制をしていくが、山田はさっきのドジからは想像が出来ないほど鋭い動きで衝撃砲を避け、BT兵器を逸らしていく。

このBT兵器の逸らし方ってぇのが…

 

『ハッ!!』

『セシリア、スイッチ!』

『まだ行けます!!』

『あぁもう!!』

 

山田は手に持ったIS用の大口径ハンドガンでBT兵器の発射タイミングに合わせて弾丸を撃ち込み、僅かに軌道を逸らしている。

そうして無駄にエネルギーを喰ったBT兵器は、親機からエネルギーを供給してもらう為にブルー・ティアーズに戻っていく。

そうなると、連射の効かないエネルギーライフルしかないブルー・ティアーズでは弾幕が張れなくなり…。

 

『オルコットさん、意気込みは買いますが前に出すぎですね』

『っ!きゃぁ!!』

 

瞬時加速を用いて接近した山田は、ハンドガンからワイヤーガンに持ち替えてセシリアをワイヤーで拘束し、引き寄せながらショットガンで穴あきチーズにしちまうのかと疑う程に連射してシールドエネルギーを削っていく。

衝撃砲で諸共にする訳にはいかない鈴は、双天牙月を両手に持って背後から山田に接近するもののハンマー投げの要領で投げ飛ばされたセシリアに直撃してしまい鈴と一緒に地面に落下してくる。

 

「そこまで!」

「なんつーか…情けねぇなぁ…おい…」

「まぁ、山田先生は私と代表争いをしていたくらいだからな…無理もない」

 

唖然としていたクラスの女子共は、千冬とマトモに戦り合っていたと言う経歴を聞かされて驚きを隠せねぇでいる。

普段のドジっ娘先生何処へやら…『銃央矛塵』伊達では無しか。

恐らく、山田が得意なのはワイヤーガンによる距離を選ばない近接銃撃戦って所か?

距離を選ばない近接ってなんだよって話だが…要は巧みなワイヤー捌きで自分の距離を保つことに特化してる。

そして、近接機にとっても厄介なのは攻撃プロセスが速い事。

引き金を弾くだけで簡単に弾が出るからな…それも腕や足を動かすよりも早く。

牽制と攻撃を兼ねた縦横無尽…ラファール使ってるのも豊富な拡張領域に多数の火器と弾丸を突っ込んでおく為だろう。

 

「結局代表候補生止まりでしたけどね…。セシリアさんのBT兵器の動きが織斑君との決闘の時より動きが良くなってましたが…だからと言ってむやみやたらに突出するものではありませんよ?」

「はい…」

 

セシリアは恥ずかしそうにブルー・ティアーズを身に纏ったまま正座をして、頬を赤らめている。

良い所見せようとして失敗すりゃこうもなるわな…。

鈴は上には上が居る事を再認識してより気を引き締めてるみてぇだな…。

 

「鈴さんは、多少強引でも前に出るべきでしたね。甲龍は装甲が厚めに作られていますし、一発が重いですから。もちろん、敵の攻撃に注意を払う事は大切ですからね!」

「わっかりました~。次、手合わせする機会があれば今度は一対一でお願いします!」

「良い返事ですね。いつでも受けて立ちますよ」

 

鈴は次への挑戦に闘志をギラギラと燃やして、不敵に笑みを浮かべる。

こいつは向上心の塊みてぇになってっからな…吸収できるものは何でも吸収しちまうだろうな。

…なんでぇ、山田のやつ教師やれてるじゃねぇか…。

やっぱ、普段の行動でドジっちまうから其処でナメられちまうんだろう…。

まぁ、でも今日の動きで山田に対する認識を全員改めるだろう…つってもラウラはそんな素振りを見せず、むしろ嘲るかのような視線で見てるけどな。

ラウラのISには資料に書いてあった慣性停止結界…要は何でもかんでも動きを止めちまうエネルギー・フィールドを搭載してあるらしい。

まだ実験段階だって話なんで、どの程度の効果範囲かは分からねぇが…あの様子だと随分と自信があるみてぇだ。

おそらく…本人が気付かないうちに慢心と化す程に…。

まぁ、これは本人が気付かなきゃならねぇ事だ…大きなポカをやらない限りは放置しておくか。

流石にそこまで馬鹿でもねぇだろうしな。

 

「さて、これで諸君にもIS学園の教員の優秀さが良く分かっただろう。以後、敬意を払う様に。さて、デュノア…山田先生が今回使用したISについて簡単に説明してみせろ」

「はい。山田先生の使用されているISはデュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。第二世代開発最後期の機体ではありますが、初期第三世代機に劣らない性能と安定性、そして日本の第二世代IS『打鉄』に勝るとも劣らない豊富な後付武装が特徴の機体です。量産型ISとっしては最後発ながら操縦の簡易性と多様性役割切り替え(マルチロール・チェンジ)を可能にしている事もあり、七ヵ国でライセンス生産十二ヵ国で正式採用されていて、世界シェアで第三位を誇っています」

 

シャルルはお家の事と言う事もあってか、スラスラとラファール・リヴァイヴの事に関する情報を口にする。

さってと、俺はこの授業の準備でもしますかね?

パチンと指を鳴らしてスティーリアとフランマを呼び出す。

 

「御用ですか、マスター」

「はりきってお仕事するニャ」

「雑用手伝え…流石に山田と二人でやるにゃしんどいからな」

 

授業の最初に行うのは、生徒のISを用いての歩行訓練だ。

その為に、専用の台車に乗せられた訓練用のISを持ってこなきゃならねぇんだが…この台車、人力で動かさなきゃならねぇ。

電動とかそういうものは一切使用していねぇ…せめて電動アシストくらいはいれとけっての。

今回出すISは打鉄が三機にラファールが二機だ。

スティーリア達にラファールを運ばせつつ、俺と山田で打鉄を運んでいく。

 

「山田、やるじゃねぇか…アレでちったぁ生徒の見る目も変わるんじゃねぇか?」

「そ、そうですかね?そうだと、うれしいですね…!」

 

山田は台車を押しながら、はにかむ様に笑みを浮かべて照れる。

褒められ慣れてねぇのかね…?

あぁ、いや…まだ自信が足りねぇってだけだな。

…案外、千冬がベッキベキに自信をへし折ってたりしてな…。

 

「間違いねぇって、かっこよかったぜ山田」

「はぅっ!?ほ、本当ですか!?」

「応、だから自信持てよ?」

 

山田は俺が褒めてやると、頭から煙を出して顔を真っ赤にする。

やっぱ、褒められ慣れてねぇんだな…ドジってばっかいた所為なんだろうが。

 

「千冬、マスターが山田をたらし込んでます」

「ほう?」

「あれは天然ニャ、許してやって欲しいニャ」

「ふむ?」

 

スティーリアとフランマが、千冬と何やら恐ろし気な話をしている

あいつら何吹き込んでやがる…千冬から黒いオーラが見えるじゃねぇかよ…恐ぇ…。

 

「え、えーっと…良いですか、みなさん。これから訓練機を一班一機取りに来てください。打鉄が三機、ラファールが二機ありますよー」

「早い者勝ちニャ、皆急いで選ぶと良いニャ~」

 

フランマがそそくさと千冬から離れて、訓練機の隣まで行けば補足説明を始める。

打鉄とラファール…どちらも扱いやすさの点で言えば同じだ。

強いて言えばラファールの方が、女性受けの良いデザインをしている気がするってくらいか。

打鉄はむしろ男受けが良い気がするんだよな…結構がっしりした体形だし。

各班にISの受け渡しを終えたところで、千冬の傍に移動して訓練風景を眺める。

早速一夏んところで盛り上がってるな…セシリアが凄い羨ましそうな目で一夏を見つめている。

 

「スティーリア」

「イエス・マスター」

 

スティーリアはセシリアの頭上に雪玉を作り出して、そのまま落とす。

いきなり冷たいものが頭にぶつかったので、悲鳴を上げて驚いてるな…。

 

「な、何をしますの!?」

「オルコット、訓練中はキチンとやれ。ISに不慣れな奴らが多いんだからな」

「す、すみません!」

 

メガホンでセシリアを注意してやると、皆注意された事の意味を理解したのか顔を引き締める。

たかが歩行訓練、されど歩行訓練だ。

仮に転倒して、ISを身に着けていねぇ奴の上に転んだら?

ISから降りる時にバランスを崩してしまったら?

自分が怪我するんなら良いが、他人を怪我させたら大変な事になっからな…。

 

「お前も教師、できているな」

「ガラじゃねぇよ…誰かだけを見つめてるってんならまだしもな」

「そう謙遜なさる事は無いと思いますけどね」

 

千冬から褒められると、なんともむず痒くなって頬を指先で掻く。

俺が物教える時ってのは大体一人…多くても二人くらいだったからな。

生徒一人一人の状態に目を向けてやることが出来ねぇ…努力はしてるつもりだけどな。

そう言った意味じゃ…山田の方が数倍マシな教師だろう。

 

「で、山田君から見てオルコットと凰は伸び代あるか?」

「お二人とも向上心がありますし、問題ないでしょう。織斑君が関わるとオルコットさんの方が精神的に不安定になってしまうのは…アハハ」

「まぁ、命短し恋せよ乙女と…切り替えはその内出来る様になるはずだけどな」

 

一々男に認めてもらいたいからって、あんなに張り切られてたら伸びるものも伸びねぇからな。

俺の訓練メニューもまだまだこなし切れてねぇし…暫くは経過を見る必要があるだろう。

あんまり酷ぇようなら俺直々に地獄の特訓送りだけどな…ケッケッケ。

 

「ミュラー先生、笑顔が恐いですよ?」

「放っておけ…こいつは悪い事を考えていると大体こう言う顔をしているからな」

「…なぁ、千冬よ…お前、ボーデヴィッヒにどんな訓練したんだ?」

 

訓練を眺めていると、とある班だけ妙に動きが悪い事に気付く。

良く見るとラウラが指導している班だ。

ラウラは腕を組んで仁王立ちになり、厳しい罵声を浴びせながらクラスメイト達に訓練を促していく。

訓練を終えたやつも居るが、結構酷い事言われたのか涙目だ…フランマが抱きしめて慰めてらぁ…。

 

「どうって…軍隊式の厳しい訓練としか言いようが無いんだが」

「千冬、ちっとラウラと話して良いか?」

「…分かった。ボーデヴィッヒ、此方に来い。他の専用機持ちは手の空いた者からボーデヴィッヒ班の訓練を手伝う様に」

「「「「はい!」」」」

 

千冬に指示をしてもらい、こっちに歩いてきたラウラと向き合う。

ラウラは何か間違えていたか?と言わんばかりの不遜さを漂わせている。

 

「教…織斑先生、御用ですか?」

「私ではなくミュラー先生がな」

「戻ってよろしいですか?」

「ダメだ」

 

こりゃ、素直に聞くって雰囲気でもねぇな…ラウラは俺が話したい旨を知った途端にムッとした表情になり、戻ろうとするが千冬に引き留められる。

頑なに過ぎるだろ…いくらなんでも…。

 

「ボーデヴィッヒ、此処は軍隊じゃねぇ…なんであんな指導した?」

「私は兵器を扱うものとしての矜持を叩き込んだだけです。何か、問題が?」

「あるだろ…軍隊じゃねぇって言っただろうが」

 

俺はラウラと視線を合わせる為に屈み、真っ直ぐにラウラを見つめる。

俺と同じ赤い瞳は、あからさまなまでに嫌悪の色を浮かべている。

 

「良いか、お前は確かに部隊長の少佐殿だ。エリートだ、誇って良い。むしろ、そんな若さで佐官に就いてるなんて凄い事だ」

「で、あれば何も問題ないように思えますが」

「ここは学園で、お前の肩書なんざゴミだって言ってんだよ」

「っ…!私を愚弄するのか!!??」

 

ラウラの怒声に、訓練中の生徒たちが一斉に此方を見るが手を振って訓練を続ける様に促す。

…確定したな。

ラウラは軍隊の中にしか居場所がねぇと思っている。

佐官と言う地位、部隊長と言う地位、一流のIS乗りと言う矜持…それらがなけりゃ、きっと此奴は自分を保っていられねぇ。

どうしてそこまで固執するのかは、千冬に聞かなきゃわからねぇだろうが…まぁ、此奴の容姿と若さを考えりゃ嫌でも想像がつくってもんだがな。

 

「アモン、流石に言い過ぎだろう」

「かもな、けれどボーデヴィッヒは軍属ではなく今は学園の生徒だ。あいつらよりもISが上手いってだけの」

「私が教官に指導され、私が努力して手に入れた地位だ!誇って何が悪い!」

「そりゃ誇りじゃなくて驕りって言うんだ…ちっと頭冷やして、今の境遇を考えてみるんだな。そんな様子じゃお前…部隊の仲間とも上手くいってねぇだろ?」

 

千冬が仲裁に入ろうとするが、あえてそれを制して話を続ける。

高すぎるプライドは…言ってしまえば虚勢の裏返しだろうな。

そうやって自分を鼓舞し、孤高で居る事で強くあろうと見せかける。

それも無意識で。

手間のかかるガキだな…ったく!

 

「貴様には関係が無い!見透かしたように物を言う悪魔め!」

「悪魔だからな…反論できねぇわ」

 

軽く肩を竦めて苦笑すると、ラウラは走って何処かへと立ち去ってしまう。

ラウラは逐一監視しねぇと危ねぇ気がするな…多分、ここに来た『本当の目的』にも気付いてんだろう。

ラウラ・ボーデヴィッヒはコミュニケーション能力に難がある。

恐らく、上司が少しでもコミュニケーション能力が改善できるように同年代の多い学園に放り込んだんだろうな。

良い手だが悪い手でもあるな…ラウラにゃ逆効果かもしれねぇ。

何か劇的な変化がなきゃな…。

 

「アモン、やはり言い過ぎだと思うのだが…」

「まぁな…けれど、この先ああやって仲間泣かされちまってたんじゃ先が思いやられるってもんだぜ…」

「私、ボーデヴィッヒさん探して…」

「いや、放っておけよ…アレで真面目だろうから次の授業には出て来るだろ…」

 

探そうとする山田の肩を掴んで止めて、軽く溜息をつく。

がっちがちの規律に縛られた軍隊出身の人間なら、恐らくキチンと出て来るだろ…。

漸く終わったボーデヴィッヒ班の訓練を見ながら、俺は次の一手をどうしたものかと悩むのだった。




最近作業用BGMが悪魔城ドラキュラBGMメドレーに…

『AQUARIUS』と『見上げよ、闇を』『悲境の貴公子』辺りがお気に入りです。
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