インフィニット・ストラトス~人形遣いは夢見るか?~   作:ラグ0109

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お嬢とアクマとちょっとした事件

「いいか、武器持ったからってそればっかに頼ったら駄目だ」

「っ!でいっ!!」

 

俺が織斑家に厄介になってから向かえた最初の秋…木々は色付き、天は高く馬肥ゆる豊穣の季節だ。

今学校は秋休みなるものに入っているらしく、一夏は屈する事無く毎日俺に挑んでは返り討ちにあっている。

まだまだガキんちょで戦場にも立った事がねぇ半端者…だが、あの日俺の殺気に耐えて貪欲なまでに知識と技術を吸収してきている。

外道にさえならなきゃ輝くものは持っている事を確信すると同時に、教師役って奴に向いてない事も確信する。

どうにも…口で詳しく説明するってのが苦手みてぇで、時折不思議そうな顔をされる。

そう言うときは人形を使って実演したりするんだけどよ…あ~あ、酔狂にも受けるんじゃなかったぜ。

一夏は俺に向かって鋭い突きを幾度も放つが、俺は人差し指だけで木刀の腹を叩いて軌道を逸らして避け続ける。

 

「くっ!これなら!!」

「あい、残念。そうやって焦らせるのが目的で焦らされてる事を理解しろよ」

 

焦れた一夏は大振りで横薙ぎを放つが、俺にはソレすらお見通し。

喧嘩キックで強かに腹を蹴り飛ばし距離を開けさせる。

 

「がっは!」

「応、一夏…今ので上半身と下半身サヨナラしてたぜ?」

「くっそ!もう一回だ!」

「おうおう、元気だねぇ」

 

一夏は体のバネを使って跳ね起きて木刀を構える。

その構えは…モンド・グロッソで千冬がやっていた構えか。

無意識の内に同じ構えを取ってんのかもな。

姉弟揃って本当にそっくりなこった。

 

「行くぞ!!」

「殺る相手に宣言する馬鹿がいるかい!」

 

再び猪武者のように突っ込んできた一夏にラリアットを華麗に決めて地に沈める。

良い子の皆は真似しないように。

アモンのおっさんとの約束だぞ。

 

「がっは!!」

「ったくよぅ…気合充分でも真っ直ぐすぎんだろ…」

「だ、だけど…さぁ…」

「言い訳すんな…とりあえず休憩入れんぞ」

 

家の縁側に腰掛けて煙草に火を点ける。

ゆっくりと肺に煙を満たし、ゆっくりと時間をかけて吐き出していく。

一夏はよろよろと立ち上がれば、ほうほうの体で俺の隣に座り込む。

 

「いいか、一夏…守るってのは奪うって事なんだ。難しい事なんだけどよ…誰かを守るためにゃ、誰かを脅かす奴から奪っていかなきゃならねぇ」

「でも…それじゃ同じ事が続くんじゃないのか?終わりが無いじゃないか…」

「悲しい事にそれが世の中ってやつだ。この世界で戦争が起きて、もうコリゴリだって思ってもどこかで戦争は起きている。繰り返しちまうのさ、人間は」

 

進歩がないわけじゃねぇ…反省できるのも人間の美点だ。

だが、悲しいかな…掲げる正義が相反すれば殴り合いをせずにはいられない。

ヒトもアクマも。

 

「なんか、嫌だな…」

「繰り返されてもへこたれないように強くならなきゃならねぇ…お前の進む道ってのは修羅の道なんだよ」

「わかってる…まずはアモン兄から一本取れる様にならなきゃな」

「はっ!一生こねぇよ」

 

一緒に暮らしている内に、何でだか知らないが一夏から兄貴呼びされるようになっちまった。

まぁ、悪い気はしねぇんでそのまま放置してるんだけどな。

 

「いいや、追い抜いてみせる!」

「根性だきゃぁ一人前だからなぁ…ま、いいや」

 

煙草を灰皿に捨て、立ち上がれば背伸びをする。

もうちっとばかし特訓に付き合ってやっかな…。

 

「うら、始めるぞ~」

「おう!」

 

体力が回復したのか一夏もやる気は充分みてぇだな。

若いってーのはいいねぇ…。

向き合うなり、一夏は刺突と切り払いや足技でこちらを攻め立ててくる。

それなりに反省して、体全体を使って俺に立ち向かってくる。

 

「はぁっ!!」

「いいぞ、刀持ったときにイメージすんのは相手を斬り伏せ続ける自分だ。誰よりも強い自分をイメージし続けな。どんなに相手が強くても気持ちで負けたら本当に負けちまうからな」

 

一夏は強く踏み込み片手で刀を袈裟斬りに叩き付けて来る。

俺はそれを一歩下がって紙一重で避け、次の一夏の行動を見て口角を吊り上げる。

一夏は木刀を振り下ろした力をそのままに前宙しながら踵落としを叩き込んでくる。

随分とまぁ…みっちりと毎日鍛えてやってたけど、アクロバティックな技編み出しやがったな。

受け止めると同時に足を掴み上空に放り投げる。

 

「う、うわあああ!」

「たかいたかーいってな。なるべく足つけて戦え…跳躍して攻撃なんぞ受けられたら煮るなり焼くなりしてくれって言ってるもんだからよ?」

 

落ちてきた一夏を肩に担いで思い切りケツを叩く。

まぁ、でも今のは今日やりあった中でも中々の一撃だったな。

 

「いってぇっ!」

「ハッハー、まぁお前にしちゃ良い攻撃だったよ」

「マジか!?」

「応、マジマジ」

 

一夏を降ろして笑みを浮かべると、やられているのにも関わらず一夏は満足そうに笑みを浮かべている。

なんだかちっとばかし腹が立ったので、此方を見上げる顔面を踏みつける。

 

「なに、満足そうな顔してんだ。今ので満足してんじゃねーよ」

「ま、満足してね「ああん!?」…いえ、ないです。はい」

 

ちぃっと上手く行くとすぐに調子に乗るのがなぁ…それさえ無きゃ良いんだが…。

足を退けて再び煙草に手を伸ばすと玄関前から庭に一人の少女がやってくる。

…うげぇ…。

 

「一夏!それにシショー!」

「鈴…そのシショーっての止めろよ、マジで」

「いや、だって…あたしの料理の師匠じゃん」

 

やってきた少女はツインテールの髪型がトレードマークの中国人、凰 鈴音だ。

一夏がコイツとは別のダチ公と一緒に遊びに来たときに出したお菓子を矢鱈と気に入られてしまい、何故か料理の面倒を見ることになっちまった…。

何やってんだ俺ェ…。

ちなみにその時に出したお菓子ってのは胡麻団子…久々に食いてぇと思って作ったんだったな…。

 

「普通に名前呼べよ、名前」

「あたしがそうしたいんだから良いじゃない、減るもんでもなし」

「鈴さ、すっかりアモン兄に懐いたよな」

「だってこの人、あたしんちの親より料理上手じゃない!大雑把だけど!大雑把だけど!!」

 

大事な事だから二回言ったのかこのちんちくりんは…。

俺は不景気な顔をしながら煙を明後日の方向へと吐き出す…ったく。

っと…煙草切れちまってるな…追加買いに行くか。

 

「鈴、一夏に用があるんなら持っていっていいぞ?」

「俺は物じゃない!」

「ありがと!シショー!!一夏、買い物行くからシャワー浴びたらついてきなさい!」

 

いいねぇ…青春だねぇ…一夏は気付いてないけど。

ちんちくりんは一夏の事が好きだ…だけど、一夏は目標を見定めてるせいかそう言った行為にやたら鈍感になっちまってる。

自分の事で手一杯な証拠かもな。

俺は見てて面白いから良いけど。

 

「じゃ、俺は俺で買い物行ってくるから戸締り頼むわ」

「「いってらっしゃい」」

 

今日はおばちゃんの所休みだから街に出なきゃなんねぇな…面倒くさ…。

俺が今居る世界はISの登場で価値観が狂い始めている。

女尊男卑…女性が優遇され、男性が貶められる。

ISは女性しか扱えない超兵器だ…数機ありゃ小国を制圧できるってんだから驚きだな。

んで、そんな超兵器を扱える操縦者は優秀な人間であればあるほど良い…だから必然と女性を優遇する政策を世界各国で打ち出し始める。

そうなりゃ後は一部のお馬鹿さん達が騒ぎ立てて、権利がどーたらこーたらといい始めたわけだ。

乗らない人間が権利騒ぎ立ててんじゃねぇよって話だわな。

街に出て、目当ての煙草を無事に入手する事はできた…んだが…。

ここで、街に出なきゃ良かったと俺は後悔しちゃったわけで…。

 

「おい、早く連れ込め!」

「た、たすっ…!!」

 

誘拐事件その二に遭遇してしまったのである。

なんでだ!?

水色の髪をした気の弱そうな少女が、黒服のヤクザ染みたオッサンどもに無理矢理車に乗せられるシーンにバッタリ出会っちまった…。

あー…くそ…面倒事だけど無視できねぇじゃねぇかよ…目ぇ合ったし。

チッ…トランクは家だから今から追っかけねぇと拙いな…。

両手に手袋を嵌めて、鋼線を用意すれば某蜘蛛男の要領で鋼線を延ばし上空へと跳ね上がり走っていく車を追いかける。

日本って国は派手な事やると騒がれるが、四の五の言ってられねぇしな…。

あーあ…なんでこんな御人好しなんだか。

車は俺が追いかけていることに気付かないまま、工事中の立て看板の立っているビルへと入っていく。

 

「なんで、誘拐犯ってこう言う廃墟みたいなところ好むんだかな」

 

上空から落下して着地すれば辺りを見渡す。

人気は無い…とは言え殺人事件を起こすと千冬に迷惑かかっからなぁ…。

適当な紐で髪の毛をポニーテールに結わえて、魔力で作り上げた鉄仮面を顔に付ける。

 

「さて…行くか…」

 

夕飯までに帰らねぇと、ガキが腹空かせ…ても自分で作るか…。

ビル内部に入り込むと車に乗っていたヤクザ共がこちらに気付く。

 

「なんだ、てめぇ…」

「……」

 

悪党と語り合う時間ってのは本当に今は勿体無いので、素早く鋼線を延ばして声をかけてきた奴を捕縛して、近くに居たやつに叩き付ける。

骨が折れたような音がしたが生きてりゃ何とかなんだろ。

 

「ぎゃぁっ!」

「なにしやがった!?」

「ぶっ殺せ!!」

 

一斉に銃を構えられるが、遅すぎんだよな…。

ちっとばかし本気で動いている俺をそこいらのチンピラが捕まえられる訳も無く皆為すすべなく骨が折れる音と共に気絶していく。

あっさり過ぎてつまんねぇな…。

 

「さぁってと…さっきのお嬢ちゃんはどこだ?」

 

辺りを見渡し、ビルの中を探していると柱に縛り付けられている被害者のお嬢ちゃんを見つける。

俺の足音に気付いたのか、顔を上げた瞬間涙をポロポロ流してガタガタと震えている。

…鉄仮面つけてるし、仕方ないよな…溜息を押し殺して頭を優しく撫でてからお嬢ちゃんを拘束している縄を切る。

 

「だ、だれ…なの…?」

「……」

 

後々のトラブルは避けたいので、俺は一言も発さずお嬢ちゃんの体を抱きかかえる。

このまま此処に放置しておくわけにもいかねぇだろ…普通に考えて。

 

「い、いや!離して…!!」

 

お嬢ちゃんは怯えきっているのか、俺が抱きかかえると身を捩って暴れ出す。

安心させる様に優しく、優しく撫でて安心させていくと次第に抵抗が弱まり、味方と判断したのか俺の体にしがみ付いて泣きはじめる。

ガキの泣き声ってのは苦手なんだがなぁ…。

あやすように抱きかかえたままビルを出たところで、また別のヤクザ共に包囲される。

さっきの奴らの仲間か…?

面倒くせぇなぁ…

 

「お嬢を離しやがれ仮面野郎!!」

「簪ちゃん!!」

 

…どうやら、このお嬢ちゃん良いトコの娘らしいな…。

それに顔がそっくりな少女が此方をきつく睨んでいる…おーコワ。

俺はゆっくりと簪と呼ばれたお嬢ちゃんを降ろして頭を撫でる。

 

「次は誘拐されんじゃねーぞ…後できりゃ俺の目の前で誘拐されんな。面倒くせぇからな」

「え…?」

 

腕を払って鋼線を使って電柱のてっぺんまで登り、俺を包囲している連中を見下ろす。

皆魔法を見たかのように目を丸くしてざわついてらぁ…ケケケ。

俺はそのまま来たときと同じように鋼線を使って跳ね上がり、簪のお嬢ちゃん達から姿をくらませた。

厄介事は避けるに限るってな。




一夏「なぁ、アモン兄…ニュースの蜘蛛男ってまさか…」


アモン「どうだかねぇ…?」
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