インフィニット・ストラトス~人形遣いは夢見るか?~   作:ラグ0109

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聖夜、ドイツにて

俺がこの世界にやってきて始めて迎える冬…千冬とはちょくちょく連絡を取ってはいるんだが、どうにもこっちに帰ってくるだけの暇は作れねぇとボヤかれていた。

両親は蒸発しちまって行方不明…俺がついてるとは言え、一夏は千冬に依存してるところがあっからな…時折寂しそうにしていやがる。

まぁ、それもそうよな…俺とアイツにゃ家族の繋がりなんてねぇわけだし…ここに居るのも千冬の依頼があるからにすぎねぇ。

一応仕事の期限はあるらしく、来年の春にはこっちに戻ってくるそうだ。

とは言え…なんて思いながらカレンダーを眺めていると、ある事に気づく。

十二月の赤い数字の日…そうクリスマスってやつだな。

この日は俺たちの世界にも存在してる…サンタ、一体何モノなんだ…?

 

「って言うわけで、ドイツに来たんだぜ!」

「誰に言ってるんだよ、アモン兄?」

「まぁ、色々あんだよ…」

「お、おう…」

 

クリスマスのある週からは、一夏も冬休みに入るってんであまり良い思いでも無いだろうがドイツへと俺たちはやってきた。

金は何故か無尽蔵にあるし、ビザもサクサク手に入るしで楽なもんだったぜ。

千冬の住んでいるアパートは把握しているんで、道中で食材と酒を購入し家を目指す。

事前にスケジュールを聞いていて、今日も今日とてヒヨッ子共の訓練やってるはずだ。

 

「いきなり押しかけて大丈夫かなぁ?」

「何か言われても俺が怒られてやっから気にすんじゃねぇよ」

 

思ったよりも多くなった荷物を、二人でへーこら言いながら運ぶ。

一夏にはあえて重いものを持たせた…どれだけ体力ついてんのか見ねぇとな。

決して、楽する為じゃねぇ…決してな!

千冬の借りているアパートを見つければ、階段を上り部屋を目指す。

階段を上っているとアパートの住人らしき老婆と出くわし、軽く挨拶をする。

 

『あらあら、荷物がいっぱいね…日本人の子が居ると言う事はチフユの家族かしら?』

「こっちのガキがそうだ。離れ離れに暮らしてるから連れてきてやったんだよ」

『まぁ、見た目に反して優しいのねぇ…あ、でも今日はチフユお仕事に行ってるわよ?』

「サプライズで来てるからな…大丈夫だ。ありがとよ、お姉さん」

『お上手だこと。坊や、ようこそドイツへ』

 

俺と老婆がにこやかに会話していると、一夏は目を白黒させて首を傾げている。

あぁ…しくったな…普通に日本語で会話してた…。

俺には桜花からのサポートとして、言語が自動的に翻訳される魔術がかけられている。

俺が話した言葉は、相手の国の言葉に聞こえるようになっている。

ただし、相手が知っている言語にしか翻訳されねぇっていう弱点がある。

一夏はドイツ語が喋れねぇ…つまり、今の会話は日本語なのにドイツ人と世間話しているようにしか見えてなかった訳だ。

もし、相手の言語に合わせて喋るなら…ちぃっとばかし意識して喋らねぇとならねぇってのが面倒だな。

 

「ようこそ、ドイツへだってよ。会釈くらいしてやれよ」

「お、おう…ど、どうも…」

『緊張してるのかしらね?それじゃぁ、良いクリスマスを』

『良いクリスマスを』

 

終始和やかなムードで老婆と会話し、別れれば早速一夏は俺に疑問を投げかけてくる。

いや、まぁ不思議に思うわな…俺でも聞くわ。

 

「アモン兄、最後はドイツ語だったけど…なんで日本語で会話できたんだよ?」

「大真面目な話、悪魔だからって事で片付けとけ。俺にゃそう言うまじないがかかってんのさ」

「あんま納得できねぇ…アモン兄って事あるごとにそう言うだろ?」

「言っとくが、嘘は吐いてねぇからな?」

 

いや、本当に嘘吐いてねぇよ?

信じられない現象ばかりだから誰も信用しねぇってだけで。

部屋の前に立ち、二人して生唾を飲み込む。

 

「いいか…あの千冬の部屋だ…恐らくゴミ屋敷…」

「急いで片付けて、ごちそう作らなきゃ、だな」

 

ふぅ、と一息つき鍵穴を指で塞ぐようにして抑え、解除の魔法を行使する。

単純な鍵なら即効で開くんで便利な魔法だな…。

あんまり乱用してっとウサギに目ぇつけられるから、普段は使わねぇけど。

ガチャっと言う音共に扉を開け、二人して素早く中に入る。

予想していたよりも片付いている…だと?

パジャマとか新聞が散乱している位で、特に散らかってねぇ…。

 

「一夏、千冬の部屋だったよな?」

「ま、間違いない…俺と千冬姉の写真飾ってあるし…」

「いやいや、まさか…えぇ~…あんな酷い散らかしっぷりだったのに?」

 

…もしかすると、千冬も生活面で一夏に依存してたのかもしんねぇな…。

いきなり一人暮らしになって誰もやらなくなったから、一念発起して頑張るようになったとか…。

一応のチェックとしてクローゼットを開ける。

 

「どわぁっ!?」

「アモン兄!!」

 

クローゼットを開けた瞬間、出るわ出るわゴミやら洗濯前の服やら下着やら…。

数ヶ月じゃ変われなかったって事かよ、チクショーメェ!!

息も絶え絶えにゴミ山から抜け出し、一夏を指差す。

 

「おい、早急に片付けんぞ!あいつに真のお片付けという奴を教えてやらぁ!!」

「アイ!アイ!サー!!」

 

一夏は敬礼するなり、ゴミ山に踊りかかり主夫経験と千冬の性格を考慮している物いらない物に仕分けを始める。

俺は衣類を纏めて洗濯機に叩き込み、洗濯を始める。

一体どうしたらこんな風になるんだよ…おかしいだろ…。

いや、忙しいのも理解してんだけどよぅ…。

 

 

 

 

千冬の部屋の片付けは難航したものの無事に完遂し、収納も整えて見違えるようになった。

こりゃ、できりゃ定期的にチェックしてやんねぇと駄目だな…嫁に行けねぇんじゃ…。

 

「アモン兄、気持ちは分かるけど、千冬姉の目の前で考えないほうがいいぜ?」

「悟りか何かかかよ…こえぇ…」

 

オーブンに突っ込んでいたローストビーフを寝かし、あふれ出た肉汁と赤ワイン、玉ねぎ…隠し味に日本から持参した醤油を入れてソースを作る。

コレがまた美味い…肉の旨みと赤ワインの香りが…なんとも…。

一夏は一夏で酒の摘みになるものを大量に作っては保存容器に入れている。

帰った後に千冬が晩酌を楽しめるようにか…なんつー姉思いだよ…。

 

「そろそろ帰ってくる頃合かな?」

「偵察からの報告じゃ、基地出たっつーしそろそろ帰ってくんだろ」

「じゃ、電気消しておくか」

 

千冬には感づかれるだろうが、多少驚かせてやりたいと思うのが情ってもんで…部屋の電気を消して今か今かと千冬が帰ってくるのを待つ。

階段を上ってくる足音が聞こえてきて、部屋の前で立ち止まる。

すぐに鍵を開ける音がしたので、どうも警戒はしていないようだ。

ケケケ、どんな顔をするのか…。

パチン、と部屋の電気が点くと千冬は動きを止めて此方を凝視してくる。

…おぉ…意外にもそう言う顔をするんだな…。

 

「千冬姉!おかえり!!」

「は…?一夏?どうしてここにいる!?」

「そら、俺が寂しそうなシスコンの為に連れて来たに決まってんだろ?」

 

エプロンを外しながら千冬の目の前に出ると、これまた驚いたような顔をされる。

そんなに金持ちに見えて…ねぇわな。

浮浪者の格好してんだし…当たり前だ。

 

「アモン…平気なのか?」

「愚問だろ…無理なら連れてこねぇよ」

「…すまんな」

「そこはありがとうって言うのがベストだな」

「そうだな…ありがとう」

 

千冬は綺麗な笑みを浮かべて、頷いて一先ず寝室へと引っ込む。

サプライズは何とか成功したと見て良いだろう…でなきゃ此処まで出張った甲斐がねぇってもんだ。

身支度を整えた千冬と食卓を囲み、一夏にとっては本当に久しぶりの家族の団欒を楽しむ。

一夏は今までにないくらい嬉しそうに喋っていたな…電話でも喋れるが、話すんなら顔をつき合わせて話していたほうが何倍も良い。

たった一人の家族だしな。

 

「で、アモン…お前から見てどれだけ見込みがあるんだ?」

「どうだかねぇ…まぁ、剣筋は悪かねぇよ。実戦向きの訓練ばっかやったせいで型のねぇ無作法な剣になっちまってるけどな」

「アモン兄…それ褒めてんの?」

「褒めてるんだよ」

「…っし!」

 

一夏は嬉しそうにガッツポーズをする。

褒めるべきところは褒めて、叱るべき所は叱る…大体の奴はそう言う風にやってりゃ伸びるもんだ。

一夏に限って言えば、向上心の塊みてぇなところがある。

へこたれる事無く訓練についてきてるんだ…ガキにしちゃガッツがあるもんだ。

 

「一夏、お前は直ぐに調子に乗る癖を直せ…で、なければ何時までも強くなれないからな」

「ぐ…それはアモン兄にも言われたな…」

「すーぐ調子に乗っから、即効で地に沈めてやってるけどな。懲りねぇんだよなぁ」

 

以前にも言ったとおり、一夏は上手く行くと調子に乗りやすい。

いつかヘマするんじゃねぇかと思って、お灸を据えているんだが…こればっかりは、実際に痛い目見ねぇと分かんねぇかもな。

夜も更けてきた…そろそろ俺はお暇すっかな…?

食器を片付け、コートを手に取る。

 

「アモン兄、どうしたんだ?」

「ん、後は家族で話したいことあるだろうしって思ってな?」

「アモン、気を使わなくても良いんだぞ?」

「あの一件以来マトモに会ってねぇんだ…一夏も言いたい事があるだろうよ。今日は聖夜、悪魔にゃ肩身が狭いのさ」

 

軽く肩を竦めて茶化したように言う。

まぁ、普通にクリスマスを過ごしていた身としては何言ってんだかって感じだがな。

一夏の頭を軽く撫でて、部屋を後にする。

…知ってるんだぜ、一夏が進路の事で悩んでんの。

アイツは千冬に負い目を感じて就職を考えてる…だけど、進学して見聞を広めるべきだって言う考えもまたある。

今は就職したいって気持ちが強いだろう…だからこそ、千冬に相談する機会がいる。

顔をつき合わせて話すべきことだ…。

コートを羽織ながらアパートの階段を降りると雪がちらついてくる。

 

「おー…寒い寒い…呑み直すとすっかねぇ…」

 

街をふらふらと歩き、以前千冬と呑んだバーを見つければ其処へ入っていく。

店員はどこかぶっきらぼうだが、必要以上に関わろうとしない…静かに呑める良い店だ。

適当にビールを注文し、時間を潰すようにチマチマと呑んでいく。

体質上決して酔わねぇ…酔った振りはできるけどな。

アルコールの刺激と酒特有の味、香りでしか楽しめねぇってのも辛いところだ。

日付が変わる頃になって、隣に客が座る。

 

「んだよ…弟は良いのか?」

「構わないさ…疲れてたのかもう寝てしまっている」

 

まさか千冬が此処に来るとは思わなかったな…もうちっと弟を大切にすりゃ良いのによ。

そんな俺の心の中がお見通しなのか鼻で笑われる。

 

「国家代表になって、大会で優勝して…そんな事をしていたら、一夏を放っておく事が多くなってな。姉失格だよ、私は」

「んなこたねぇだろ…誘拐された時だって、いの一番でカッ飛んできただろうが」

 

千冬の好きな銘柄のビールを注文して、軽く乾杯をしながら飲み進める。

有名人ってのは大変だねぇ…俺はなりたかねぇや。

自由気儘に生きていくのが俺らしい…。

 

「自信持てよ…たった一人の家族だってんならよ。一夏の憧れは今でもお前なんだぜ?」

「私は…過ちを一度犯してしまっている…そのことを言い出せずに、黙り続けているんだぞ?」

「知らねぇよ…んなこと。少なくとも一夏にゃ関係ねぇ…それで幻滅するわけでもねぇだろうしな。アイツ、お前の事大好きだからな」

 

姉として純粋に好きだと言う気持ちがなければ、あそこまで料理上手になる事もねぇだろう。

きっと、千冬の食事管理をしていたのも愛する姉を思えばこそって所だろ。

気付けば互いに酒を空にしていた…話すのに夢中になってたな。

すぐさまお代わりを注文し、千冬に向き直る。

 

「お前も一夏の事大切に想ってるんなら…もう、それでいいだろ?」

「そういう、ものか?」

「そういうもんだ…ただ、あるがままで居りゃ良いのさ。片付けられねぇのは…まぁ、直せよ」

「余計なお世話だ」

 

互いに声を上げて笑い、酒を一気に飲み干していく。

俺も千冬もザルだ…二人がかりならバーの在庫を空に出来るかもな?

 

「一夏にな…就職したいと言われたんだが…殴って止めさせたよ」

「一夏…寝てるんじゃなくて気絶してるんじゃないのか?」

「そんな訳ないだろう?ただ、気負われているのが気に食わなくてな」

 

まだまだお姉ちゃんぶりたいって所か…こいつも大概ブラコンだねぇ…。

千冬は此方に背を向けて体を預けてくる。

別に悪い気もしねぇし、そのまま寄りかからせる。

 

「柄にも無く寂しくなったものさ…アモン、お前が鍛えてくれているお陰で多少は逞しくもなっているしな」

「ガキはいつか大人になんのさ…遅かれ早かれな」

「まだまだ子供で居てもらいたいものだ」

 

懐から煙草を取り出し、火を点けてゆっくりふかしていく。

ゆらゆらゆらと煙が煙草の先から伸びていく。

 

「案外、寂しかったんだろ」

「まあな…軍の方で子守はしているが、家族とは勝手も違うしな」

「来年の春にはお役ゴメンなんだろ?それまでの辛抱だろ」

「…お前と話していると女々しくなる」

 

千冬はいきなりブスッとした顔になり、酒を煽る。

照れ隠しの様に見えて、可愛く思えんな…。

 

「いいじゃねぇか…女なんだしな」

「矜持くらいはあるものさ」

 

千冬はフフッと笑いながら此方に向き直り見上げてくる。

煙草を灰皿に押し付けて消し、見上げてくる千冬を真っ向から見返す。

 

「お前と言う男からは危険な匂いしかしないのに、どうにも安心できるな」

「そいつぁ良かった…魂の刈り取りが楽でいいや」

「悪魔のジョークか?」

「ナンパかもしんねぇぞ?」

 

互いにニヤッと笑みを浮かべれば、再び酒を煽っていく。

こっちの世界じゃ始めてのクリスマス…いい女と飲む酒ってのは最高だな。

 




…漸くまともにヒロインと絡ませられた…
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