艦隊これくしょん ~拝啓、鬼畜兄貴殿。恙無きや云々~ 作:ハロー=アドルフ
人類に制海権がなくなった世界
海は突如現れた『深海棲艦』にうばわれた
これは人類にとって由々しき事態であった
海上のルートは、石油、自動車など、航空機では運べないものを輸送していたからだ
また、その航空機すら敵艦の戦闘機により追撃されるようになり
島国日本は世界と隔離された
しかし、人間が突然の危機に右往左往しているなか
支配されたはず海は変わらずに青い
海にとっては、自分を誰が支配しようと関係ないのだろう
相手が誰であろうと気まぐれで波を立てて、いたずらに船を揺らす
この馬鹿でかい水たまりにとって、俺たちの奮闘なんざあってないようなもんなんだ
そう思うと、責任が少し軽くなる気がする
提督なんて、自分には大きい肩書きを背負う責任が………
弟「おい、兄貴…………やっぱり喫煙所にいた」
兄「うぁ?なんだ、お前か……………教習寮で唯一寄り付かなかったところが喫煙所じゃなかったのか?」
寮の裏側、小さな灰落しが備え付けられた吹き晒しの喫煙所
禁煙化の昨今を表したような場所でも、愛煙家の俺にとっては聖域だ
そこで紫煙をくゆらせてた俺をたずねてきたのは、海軍では先輩にあたる弟だった
弟「寄り付かないとは言ったけど、行かないとは言ってないよ……………ほら、着任祝い!わざわざ持ってきてやったぞ!」
兄「ほいほい、ありがとさん」
手に持ってたタバコを口にくわえ、丁寧に梱包されてる細長い箱を受け取る
その丁寧な梱包を破るようにして、中身を取り出す
中に入っていたのは、俺が愛煙してる煙草『七つ星』1カートンだった
兄「けっ、色気のねぇプレゼントだな」
弟「それが一番喜ぶだろ?」
兄「ははは!違いねぇ」
弟「このヘビースモーカーが…………荷物の用意は終わった?」
兄「昨日のうちに発送まで済ませてる。今日の夕方には俺の赴任先につくはずだ」
弟「なんで部屋で吸ってなかったんだよ、実家だといつも自分の部屋ですってるじゃないか」
兄「あぁ……………ここなら海がみえるからな」
俺は海へと視線を向ける
弟も同じように水平線へと目をやった
暁の水平線だ
弟「朝の海か……………」
兄「お前はもう一年間も提督やってるもんな、こんな景色見慣れたもんだろう?」
弟「いや、いつ見てもいいものだとおもうよ…………この静けさは独特だとおもう」
兄「…………………そろそろ、ここを発つ時間だ。荷物でもとってくるか……………はぁー………………」
弟「なに?まだ責任がどうとか思ってるの?」
兄「いや、女だらけ職場なんだろ?なんかネチョネチョしてそう」
弟「すごい偏見だよね!?それに、最初は駆逐艦が一人だけだから、大丈夫だよ!?」
兄「じゃあ、数が増えてもネチョネチョしないのか?」
弟「……………………」
兄「そこでだまるなよっ!」
この物語は
俺達が提督になった話
俺達が海の支配権を取り戻さんと戦う話
俺達が艦娘という兵器を指揮する話
俺達が艦娘という人格と向かい合う話
そして、このなんとも尊大に気まぐれな海の上で、俺達が艦娘たちと手を取り合う話
兄:本名『淵脇康一《ふちわきこういち》』今日から提督になる28歳の男性。好きなものはタバコ、嫌いなものは努力
弟:本名『淵脇哲二《ふちわきてつじ》』提督歴一年の日本海軍大佐。年齢は25歳。好きなものは唐揚げと麺類、嫌いなものは父親から送られてくる見合い写真(自分のところの艦娘に見つかる度に、殺されそうになるから)
海:広くて大きい
七つ星:NT(Nippon Tobacco)が販売してる煙草。奥行きのある確かな味わいが売り。兄提督が愛飲してる。