艦隊これくしょん ~拝啓、鬼畜兄貴殿。恙無きや云々~   作:ハロー=アドルフ

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ブリキノダンス~兄提督と弟提督の共同作戦~

兄提督before鎮守府

 

 

 

出撃中は無線に連絡が入らない限り俺のすることがない

 

無線が使われるのも戦闘があった場合のみ

 

さらに、この近海は深海棲艦の目撃情報も少ない

 

 

つまり、俺は現在めちゃくちゃ暇なのだ

 

 

兄「手持ち無沙汰になればなるほど、タバコがすすむのはなんでだろうな?」

 

 

水平線に向かって煙を吹きつけた

 

さすがに着任直後に執務室でタバコをふかすのは気が引けたので、鎮守府本館の前にて一服をつく

 

携帯灰皿の中身を増やしながら、叢雲と那珂の帰りを待つのだ

 

 

ブロロロロロロ…………

 

兄「んっ?」

 

 

鎮守府の門の前に軽トラックが一台みえる

 

 

兄「随分とお早い御着きだな……………」

 

 

火のついたタバコをくわえながら門の方へ

 

鉄製の門をひらき、軽トラックを鎮守府の敷地内にいれる

 

運転席に座ってるのは、今朝ぶりに見る我が弟だ

 

 

兄「おい哲次!確かに早めによろしくとは言ったが、べつに着任当日に運んでくれなくてもよかったんだぞ」

 

弟「明日から忙しくなるから運んできたんだよ!前もって言ってくれれば着任祝いも一緒に持ってきたのに!なんで、今朝に言うんだよ。こっちの都合も考えろよな!」

 

 

知ったことではないな

 

っと、口から溢れそうになったが、火に油を注ぎそうなので、とりあえず黙っとく

 

 

弟「あと階級的に俺の方が上なんだから、形だけでも敬語使ってよ!」

 

兄「えっ…………弟に敬語使うぐらいなら、海軍やめる……………」

 

弟「そんな真顔で答えなくても…………」

 

 

本来なら階級上の方にタメ口なんて厳禁なんだけど、兄弟だから大丈夫だ……………俺のルールブックではな

 

白い軽トラックの荷台には仕事机や棚など、執務に役立ちそうな家具が積まれている

 

 

兄「まさか、弟から『お下がり』をもらう日が来ようとはな…………」

 

弟「それなら、少しぐらい悔しそうな顔をしろよ。そんな、あくどい笑みをしながら言うセリフじゃないよ!」

 

兄「立てるものは弟でも使え、って言うだろ?」

 

弟「言わないよっ!本当にイイ性格してるよ、兄貴は!」

 

 

運転席でため息をつく弟

 

大変だな、我の強い兄貴を持つと

 

 

 

??「お義兄さん!お久しぶりです!」

 

兄「おっ!榛名もきてくれたのか!」

 

弟榛名「はい!御着任なさったと聞いたので、お祝いと家具の運び入れを手伝いに来ました!」

 

 

助手席からハキハキと答えてくれる榛名

 

『おにいさん』のイントネーションが少しおかしかった気もするが…………気のせいかな?

 

彼女は、金剛型三番艦の榛名

 

弟の鎮守府で働いてる戦艦だ

 

 

弟「力仕事があるから、戦艦を兄貴の鎮守府に1人連れていくって言ったら、戦艦達がクジ引きを始めてさ……」

 

兄「それで榛名が選ばれたわけか」

 

弟榛名「はい!お義兄さんに『挨拶』するチャンスですから!」

 

 

『挨拶』という言葉の響きに、意味深長さが伺えるのはなんでだろうな?

 

哲二は心なしかゲンナリとしている

 

 

弟「そういえば、兄貴の艦娘は?」

 

兄「初期艦と初建造した娘の2隻で、ここら周辺をパトロールさせてる」

 

弟榛名「その初期艦と初建造した艦娘は誰ですか?」

 

兄「猛反発性ウサギ耳と、バラエティ向けアイドル」

 

弟・弟榛名「「あぁ、叢雲と那珂か(ですか)」」

 

兄「あっ、やっぱり誰か伝わるんだ」

 

弟「叢雲と那珂はウチにもいるからな。遠征ばっかりだから、兄貴はあったことないと思うけど」

 

兄「まぁ、お前の鎮守府には数回しか行ってないもんな」

 

 

実は、ちょくちょく弟の鎮守府には足を運んでいたことが、あったりなかったり

 

 

兄「とりあえず、鎮守府の門が開きっぱなしはまずいから、本館の目の前に車をとめてくれるか?」

 

弟「りょーかい」

 

 

さてと、叢雲たちが帰ってくる前に運び込んどきますか

 

 

 

 

兄提督&弟提督in執務室

 

 

 

 

哲二と榛名の協力もあり、俺の執務室には、木製の棚と、アンティーク調の仕事机、革張りイスが運び込まれた

 

 

弟「はぁ、疲れた。これで、執務は滞りなくできるだろ?」

 

兄「いやいや、本当にありがとうな。殺風景な部屋から一新したよ。………………後は来客用の机とソファーがあったら完璧なのになぁー」

 

弟「そんな、チラチラこっち見ても、やらねぇからなぁ!!!本来なら自分で買うか、遠征で集めた宝物を妖精さんに渡して作ってもらうしか家具を手に入れる方法なんて無いんだぞ!」

 

兄「ジョーク、ジョーク!イッツァ、ブラザージョーク!」

 

 

hahahahaっと高笑いも混ぜつつ、肩をペシペシと叩きながら宥める

 

 

弟「畜生!家具あげたら、ストレスを返してきやがる!この三十路手前兄貴め!」

 

 

なお、俺は宥めるという行動を遂行できたことはない

 

何故か余計なイラつきを与えてしまうらしい

 

生きていくのって難儀だよな

 

 

弟榛名「やっぱり、二人とも仲良しさんですよね」

 

兄・弟「「そうか?」」

 

弟榛名「ほら、そういうところが仲良しの証拠ですよ」

 

 

俺らのやり取りを、微笑みながら見ていた榛名

 

ちなみに家具の半分は榛名が運んでくれた

 

やっぱり戦艦ってすげぇ

 

 

兄「さてと、第1艦隊が帰ってくるまで、まだ時間はあるな。食堂の方で一服するか………紅茶とコーヒーどっちがいい?」

 

弟「コーヒーで!」

 

弟榛名「榛名もコーヒーでお願いします!」

 

 

 

『ガーーガッー、こちら第1艦隊旗艦叢雲!アホ司令!緊急事態よ!応答してっ!』

 

 

 

運び込んだばかりの机の上においた無線が鳴った

 

スピーカーから焦った叢雲の声が聞こえる

 

 

兄「こちら鎮守府の天才指令、どうした?」

 

叢雲『今しがた鎮守府から北西10キロのところで敵影を確認したわ!』

 

兄「敵?それなら倒せばいいだろ?」

 

叢雲『その敵の強さが問題なのよ!敵影を見るに、おそらく戦艦ル級よ!それがまっすぐ私達の鎮守府の方へと向かってるわ!』

 

兄「はぁぁっ!?戦艦級なんて、ここらで確認情報なんてねぇぞ!」

 

叢雲『煙をあげてるところを見るに手負いね…………どこかでやられて、逃げ込んできたんじゃないかしら?』

 

弟「…………………雷、俺だ、今日練度を上げるために石油所まで出撃した第二艦隊の報告書はあるか?……………あぁそれだ!読み上げてくれ」

 

 

叢雲の連絡を聞き、哲二は部屋に備え付けられた電話をとった

 

自分の鎮守府に連絡しているようだ

 

 

叢雲『えっ?だれかそこにいるの?』

 

兄「叢雲、ちょっと待てくれ………………榛名!そこにある海図をとって!」

 

弟榛名「了解です!」

 

叢雲『榛名!?あんた戦艦も建造したの!?』

 

 

 

無線の向こうでテンパる叢雲は無視!

 

 

叢雲たちがいる場所を把握するため、榛名から地図を受け取って、机に広げる

 

なるほど、ここか…………

 

 

んんーん、おあつらえ向きの小島があるではあーりませんかー

 

 

叢雲『敵艦の射程範囲に入るまで、あと1分ほどよ』

 

弟「あぁ、わかった、ありがとう……………すまん、兄貴、ウチの取りこぼしだ!相手は中破状態で逃げたらしい」

 

 

情報はそろったな………………

 

 

兄「哲二!榛名の補給状態は?」

 

弟「燃料、弾薬ともに補給済み!人員借用させてやるから、自分の所の尻拭いさせてくれるか?」

 

兄「もとより、そのつもりだ!榛名、この『小島』までどれくらいでいける?」

 

弟榛名「………………出撃準備をして、フルスピードで渡航して5分ですかね?」

 

兄「充分だ!化物共に人間様の知恵を見せてやる!叢雲、那珂と代わってくれ!」

 

叢雲『わかったわ!那珂!司令が話したいって』

 

那珂『もしもし、代わりました、那珂ちゃんだよー?』

 

 

緊急事態だってのに、相変わらず間延びした声を聞く

 

そのおかげで、燻ってる焦りがいくつか消えた

 

俺はニヤリと笑いながら、那珂に作戦を告げる

 

 

兄「那珂ちゃんよ、アイドルとして初仕事だ。お客さんの前で華麗なステップかましてやれ」

 

 

 

 

 

叢雲&那珂on鎮守府正面海域

 

 

 

 

私達は、あのアホ司令の作線に従い、ある場所に向かって逃げていた

 

後ろからは敵艦のけたたましい砲音が聞こえる

 

手負いでも、流石は戦艦級

 

私達の単装砲とは、ケタ違いの音を奏でている

 

先行しているのは、旗艦である私

 

とある理由でわざとスピードを抑えて走っている

 

そして、私の後ろでは………………

 

 

那珂「きゃーー、やめてー、アイドルだから顔だけはーーキャハ☆」

 

 

敵艦の射程範囲に入らないギリギリの距離を保ちながら、敵をおちょくりつつ砲弾を避ける那珂がいる

 

右へ左へ、後ろ向きに走ったり、華麗なターンを決めたり

 

さながら、ダンスをおどってるようね

 

 

ル級「待テッ!!沈メテヤル!!」

 

 

そんな那珂をみて、怒り狂った戦艦が追いかけてくる

 

別の海域で負けたことも含めて、そうとう頭に血が上ってるようね

 

ここまでは、作戦通り

 

むしろ、上手く行き過ぎてるぐらいだわ

 

 

 

叢雲「那珂!目的地が見えたわ!挑発はそれぐらいでいいから、私の後ろにぴったりついてきて!」

 

那珂「了解だよ!」

 

 

 

ここからは那珂も後ろにつけて走る

 

私達の進行方向の先には、海域にポッカリと浮かんだ小さな島

 

木が生い茂っていて、向こう側は見えないけど、採取目的地は、この島の裏側だ

 

 

 

ル級「逃ガサンゾ!小娘ドモガっ!!!」

 

 

敵も砲撃をやめて、全速力で私達についてくる

 

でも、この時点で私達の勝ちは決定した

 

 

 

 

島の裏側、そこに一隻の戦艦が艤装をかまえて待っている

 

 

叢雲「あなたが援軍ね!」

 

弟榛名「任務お疲れ様です!あとは榛名にお任せをっ!」

 

 

黒く綺麗な長い髪に、凛々しい顔立ち

 

赤と白を基調とした服を纏った彼女の名前は、榛名

 

日本海軍初の民間の造船所で造られた純国産戦艦の魂を受け継いだ艦娘だ

 

 

ル級「何ッ!!仲間ガイタノカッ!」

 

 

敵からして見れば、榛名は急に現れたに等しい

 

戦艦ル級は、すぐさま砲門を榛名に向けるが、最初から構えている榛名のほうに分がある

 

 

弟榛名「未来のお義兄さんの鎮守府を襲うなんて、そんな勝手は!榛名が許しません!主砲!砲撃開始!」

 

 

彼女の両側に展開された艤装から力強い砲撃音が響く

 

 

ル級「ガアアアアアアッ!??」

 

 

見事に全弾命中

 

この榛名、なかなかの練度ね!

 

 

もともと手負いだった戦艦ル級は、体のいたるところから火を上げる

 

そして、ゆっくりと海底へ沈んでいった

 

 

 

敵をおちょくって、伏兵がいるところまで誘導し、奇襲をしかける

 

たしか『釣り野伏』って言う戦術だ

 

なるほど、確かに大きさが小さい人間の形じゃなかったら成功しない作戦ね

 

 

弟榛名「こちら、援軍榛名です!『お義兄さん』の作戦が見事にハマって完全勝利しました!敵艦轟沈です!」

 

兄『こちら、君の提督の『お兄さん』。援軍感謝する!我が第1艦隊とともに帰投せよ!…………なぁ、哲二。やっぱり、榛名のお兄さんのイントネーションおかしくねブツッ────』

 

 

あっ、それ私も思った!

 

 

弟榛名「さぁ、帰りましょうか!貴方達の鎮守府へ!」

 

 

でも、榛名が怖い笑みを向けてるから、聞かないことにするわ………………




兄:好きな単位はkg。重さこそ戦闘の極意だとおもっている。
艦娘は一隻二隻と数える

弟:好きな単位はmm。細かいところまでキッチリしないと気が済まない。
艦娘は一人二人と数える

弟榛名:好きな単位はcm。最近、また大きくなったのでワンサイズ大きいのに買い替えるらしい。なんの大きさかって?言わせんな!

叢雲:好きな単位は秒。時計のカチカチって音が落ち着くらしい。

那珂:好きな単位は人。ファンの数が増えることを夢見て今日もダンスの練習に打ち込む。

戦艦ル級:好きな単位は…………………知らん。

釣り野伏:鬼島津さんとか、妖怪首おいてけとかが大好きな戦法。ちなみに島津さんたちは、とても戦上手で、敵3000人を300人で囲い殺したらしい…………えっ?

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