【主人公】戦場起動【喋らない】外伝 作:アルファるふぁ/保利滝良
シリーズ化させます(迫真)
クロノスインダストリ㈲の日常
ここはとある会社のオフィスの一角 ある男が数字や文字を入力されたパソコンとにらめっこしていた
HMMAS 人型機動兵器とも呼称されるこの新時代の戦争道具は、新しすぎて尚且つ特殊なために様々な運用法が常に模索されていた
何パターンもの戦闘シミュレーションやテストが行われ、その度に莫大な金が費やされた 成功したものはあったが、失敗したものも当然あった
今の彼は、死ぬほど徹夜をして本当にHMMASを有効活用できる戦法をイメージしている途中だったのだ
「あー、ダメだ!全く思い付かない!」
ついに痺れを切らした男が、デスクに倒れかかる
それを見た上司は、肩を竦めながらその男に近付いた
もたれかかる男の顔の真ん前にノンシュガーコーヒーを置いて、上司が聞いた
「ウィルソン、一体どうした?」
「あ、センパイ!」
ウィルソンと呼ばれた男は、コーヒーカップをひっつかんだ
そして、半分喚き散らすように吐露した
「人型機動兵器ってのは、効率的な運用がわからない訳でしょう?それを考えてたんですよぉー・・・わざわざ三徹もして!もう探しても探してもいいのが浮かばなくって・・・」
そのまま黒い液体を一気飲みする
話を聞いた上司は、かなり呆れ果てたような表情で部下を睨んだ そして、さも当たり前のように言った
「人型機動兵器の効率的な運用だぁ?んなもんどんな作戦でも遂行できる機体を作れば考えなくてもいーじゃねーか 我が社の最高傑作がそうだった」
ウィルソンはコーヒーを吹き出した
パソコンが茶色に染まる
「あああっ!そうですよね!なんで気付かなかったんだろー!」
「な?簡単なことだったろ」
「センパイ流石です!」
そして二人は、タナトスを讃えながら笑い合った
ウィルソンはパソコンの画面をじっと見つめていた まるでメイク中のマダムが鏡を覗くかのように
マウスでシークバーを弄りまわし、停止ボタンを押したり巻き戻しボタンを押したりスロー再生ボタンを押したり、とんでもなく必死に動画を見ていた
「お前、今度はどうした?」
「あ、センパイ」
振り向いたウィルソンの目の前には、上司がコーヒーを片手に立っていた 立ち上る湯気に、眼鏡が曇る
「パイロットってよく死にそうッスよね」
「なら自分で戦うHMMAS作ればいいだろ、アホか」
「そう思ったんスよ で、これ」
ウィルソンは指で画面を指差した
「なんだこれは」
「実戦データッスね」
「やっとデータ採れたのか」
「開発に一週間掛かるとは思ってなかったもんで・・・」
部下のダメダメっぷりに心底呆れつつ、上司は呟いた
「俺だったら三日でできる そんなんだからお前は・・・」
「私なら2時間で出来上がるわね」
デスクの下から、長い髪の美少女が現れた
それに驚いて椅子から転げ落ちるウィルソン コーヒーを落としかける上司
「ワシは十分で作り上げられる」
今度は白髪の老人がダッシュで突っ込んできた 名札には『代表取締役』とプリントしてあった
「じゃあ皆でもっといいの開発しましょうよ!」
「いいなそれ」
「さんせーい」
「社全体で支援しよう」
そして、ウィルソンの一言でその場の誰もが沸き立った
「あー、くそー」
「どうしたのウィルソン君?」
「あ、セリアさん」
ウィルソンが呻いた いつも通りある難題を解決しようとしていて、そして行き詰まったのだ
そこへ、先日机の下から生えてきた美少女な先輩が訪れた
「いえ、タナトスを完成させるプロジェクトで、色んな問題をなんとかしようとしたんですがね・・・」
「それで?」
自販機で買ってきた炭酸飲料の蓋を開けながら、セリアが相槌を打つ
興味を持ってくれたようだ
「質量保存の法則は捩じ伏せられましたが、慣性の法則が上手く突破できないんですよぉ」
「情けないわね、もうちょっとなんとかならないの?」
首を横に振りながら、セリアが言った その手に握られたペットボトルの中身が、白い泡を発生させている
若干涙目になりながら、ウィルソンはノートにペンを走らせる
「そう言われたって・・・」
「じゃあ賭けをしましょう」
弱音を吐きかけたウィルソンの唇を人差し指で抑え、セリアは優しく宣言する
「ジェノサイドタナトスを完成させることができたら、貴方のお願いを何でも聞いてあげるわ」
瞬間、ウィルソンの目が血走った
立ち上がり、興奮ぎみに捲し立てる
「本当ですか!?」
「本当よ?」
「会社の今までの開発商品の超詳細データとか、他社の機体のありったけの情報とか、オーストラリアHMMAS視察の旅とか用意してくれますか!?!?」
「もちろん」
「大陸の謎のこととか死神の傭兵の戦闘記録の全てとか細かく教えてくれますよね!!!???」
「お安い御用だわ」
「よーし、がーんばーるぞおおおおおお!」
セリアのペットボトルを奪い取って中身を二秒で飲み干した後、ウィルソンは再びパソコンに食らい付いた
続きます(震え声)