ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
間に合わなかったぁぁぁあ!!
と、言うわけで今回の特別編は前回とはテイストを変えてみました。
強いてイメージソングを挙げるとするならば大塚 愛さんの『恋愛写真』です。
あくまでもイメージなのであしからず。
何気なくテレビをつける。
すると20代も後半に差し掛かるであろう女性が髪をツインテールにしてリボンで留めて大御所の司会者に突っ込まれているシーンが映し出されていた。
『そんなこと言ってホントは彼氏の1人や2人いるんじゃないのー?』
『やだぁー!青空はぁ、応援してくれるみーんなが彼氏なんですぅー!!』
『いや別に今はネコ被らんでええんやで?』
『ちょっ!!何でよぉ!』
自分のことを『青空』と呼んだ彼女は芸名で、本名は矢澤 にこ。
活動期間は1年と短かったがスクールアイドルの頂点を決める大会、ラブライブにて当時最強と誰もが信じて疑わなかったアイドルグループ『A-RISE』を破り、優勝をかっさらったアイドルグループ『μ's』のメンバーの一人だ。
そしてそれと同時にオレの大切な彼女でもある。
にこちゃんは高校卒業後、プロのアイドルを夢見て芸能界へと足を踏み入れた。
そしてここ3年ほど前にブレイクしたドラマで主演を務め、高い演技力を買われて女優に転身。
芸人並みにイジりやすい演技派女優として華々しい芸能生活を送っている。
そんなにこちゃんだが、今日から3日間オフを貰ったのだそうで朝からオレの家に入り浸っていた。
「はぁー…、やっぱあんたの家は落ち着くわねぇ……」
ソファーに寝そべり女優としてファンのみなさまに見せてはいけない体勢になっていた。
「お腹出てるよ?」
「別にいいじゃない。ここんとこ撮影とか映画の舞台挨拶とかでてんてこ舞いだったんだから」
「いやその理屈はおかしい」
今やテレビをつければにこちゃんを見ない日なんて珍しいくらい有名になっているけど、オフだからってここまで落差があるものなのか?
「にこちゃん、準備出来たしそろそろ出発したいんだけど?」
「分かってるわよ。それじゃそろそろ行きましょうか?」
にこちゃんとオレは家にカギをかけ、車庫に停めてある車に乗り込んだ。
オレのバッグに1つのケースを忍び込ませながら……。
オレの運転でやって来たのは東京都から遥か北に位置する小さな都市の温泉村。
何でも近くに活火山があり、その地熱を利用した温泉が有名なんだとか。
にこちゃんがオフと言うこともあり、『それなら思いっきり羽根を伸ばそうよ』って事でやって来たわけだ。
「すみません、予約していた松宮と言うものです」
「はい、松宮様2名でございますね?お部屋の方に案内致します」
宿の女将さんにやって来たことを伝え、女将さんの後についていくオレたち。
「にこちゃん、荷物持つよ」
「いいわよ。荷物くらい自分で持つわよ」
「まぁまぁ、そんなこと言わずに」
2人で堂々巡りしていたのだが、やがてにこちゃんが折れたのかズイッとにこちゃんの荷物をオレに渡してきた。
「では、こちらになりますのでごゆっくり寛ぎ下さい」
女将さんに案内された部屋に入ると、2人で使うには少し広めで窓の外からは青々とした木々や雄大に落ちる滝などが見える。
一通り部屋の中を確認したオレは2人分の荷物を置くと、にこちゃんは窓際に設置されたテーブルの上に置かれていた湯呑みに手を伸ばした。
「ここまで一人で運転して疲れたでしょ?今お茶入れてあげるから待ってなさい」
スプーン一杯分のお茶のパウダーを湯呑みに入れ、お湯を注いでくれた。
「はい、お茶よ」
「ありがとう、にこちゃん」
にこちゃんに入れてもらったお茶を啜る。
ふわっとしたお茶の甘味が口の中に広がり、思わずほうっ…と息を吐いた。
それを見たにこちゃんは『何よ、おじいちゃんみたいなリアクション取らないでよね』と呆れていた。
「メシまでまだ時間はあるけどどうする?」
「そうね…、ここはのーんびりとお風呂に入るのも悪くないかもね」
お風呂に行くと決めたオレとにこちゃんはお風呂のセットが入ったカゴとタオルと着替えを持って部屋からお風呂場に向かう。
「ここって混浴あるのかな…?」
「何バカな事言ってるのよ…混浴なんてあるわけないじゃない。もしあったらにこにーのダイナマイトボディで壮大をメロメロにさせてあげるわよ?」
ダイナマイトボディ…ねぇ。
出来るだけ正面を向きつつ視線だけをにこちゃんのとある一部分を見る。
「……フッ」
そして思わず鼻で笑ってしまった。
「あんた今どこを見て鼻で笑ったのよ!?今なら怒らないから正直に言いなさい?」
ギャーギャーとヒステリックに取り乱すにこちゃんが手をブンブン振り回しながら突っ込んでくるが、にこちゃんの頭を抑える。
するとにこちゃんは腕をグルグル回しながら抗議の声をあげた。
「にこちゃん」
「何よ?」
「オレはそんなにこちゃんも好き……だよ?」
「疑問系で言うなっ!!」
温泉に浸かり身体を暖めたオレとにこちゃんは部屋に戻るとちょうど夜メシの準備ができていた。
「お風呂上がりですか?」
見た目よりも気さくな女将さんがにこやかに話し掛けてきた。
「えぇ。長旅だったものですから温泉に浸かるのもいいかなって思いまして」
「あらあら。それはそうと今日はこの近くで小さなお祭りがあるんですよ?夕食を食べ終えたら行ってみてはいかがでしょう?」
オレ一人なら行ってたかも知れないけど、にこちゃんはプライベートでここに来てるので人混みができてしまうお祭りに行くのは少し気が引けてしまう。
「あはは…、考えときます」
なので女将さんの気遣いを無駄にしないような返事をすると、女将さんは部屋から出ていった。
「いいじゃない、お祭り。ご飯食べ終わったら行きましょ?」
予想とは裏腹にお祭りに行く気のにこちゃん。
「でもいいの?もしかしたらバレるかも知れないよ?」
「大丈夫よ。普段から変装はいつもつけてるリボンを外すだけで案外バレないものなの。それとも何?にことお祭りに行きたくないって言うの?」
「まさか」
「決まりね。ほら、冷めないうちに早く頂きましょ?」
オレとにこちゃんはイスに座り、普段口にすることが無いくらい豪勢な夜メシを食べ始める。
結構量が多かったのでにこちゃんが食べ切れなかった分をオレが食べたので少し腹が苦しくなったのはにこちゃんには内緒だ。
そして部屋のカギをフロントに預けてから、宿から歩いて数分。
小さな商店街の道路の両端には屋台が何軒も出店していて、歩道の上にかけられているアーケードからは提灯や風鈴が下げられていた。
女将さんは小さなお祭りと言っていたが、予想よりも多くの人だかりができていた。
にこちゃんの手を繋ぎ、適当に歩いていると急ににこちゃんが立ち止まった。
「ねぇ、壮大」
「ん?」
「あの子…何だか様子がおかしくない?」
にこちゃんが言ったことが気になったオレは、にこちゃんが向いている方向を見た。
そこには人混みに紛れ泣きじゃくっている一人の女の子がいた。
親と一緒に来てはぐれちゃったのかな…?
数秒目を離した隙に、にこちゃんは泣いている女の子のところに向かっていた。
オレは慌ててにこちゃんを追い掛けた。
「どうしたの?」
にこちゃんが女の子の目線と同じになるくらいまでしゃがみ、女の子の頭に手を乗せた。
「おかあさんと…、はぐれちゃったの」
泣きながらもしっかりと説明してくれる女の子。
「そっかぁ…、お母さんとはぐれちゃったのかぁ。でもお姉ちゃんがいるからもう大丈夫だよっ!ほら、手を出して真ん中の指とお姉さん指を折り曲げてみて?」
「こう?」
「そうそう、上手上手。そしてそれを頭のすぐ横に持って行ってみて?」
にこちゃんと女の子は中指と薬指を折り曲げ、こめかみの部分まで持っていく。
「にっこにっこにー♪はい、やってみて?」
「にっこにっこにー…?」
「もう一回やってみよっか?はいっ!にっこにっこにー♪」
「にっこにっこにー♪」
笑顔でにっこにっこにーをやるにこちゃんを見て、泣いていた女の子も真似してにっこにっこにーをやると次第に笑顔が出てきた。
「どう?元気出てきたでしょ?」
「うんっ!おねーちゃんまほーつかいみたい!」
「あ!ようやく見つけた!!」
遠くから女の子の母親らしき女性が走ってきて、水を掬うように女の子を抱き上げた。
「ゴメンね?知らない人ばかりで怖かったでしょう?」
「ううん。そこのおねーちゃんがえがおになるまほーをおしえてくれたからもうこわくないよ!」
「笑顔になる…魔法?」
女の子の母親は首を傾げるが、女の子の無邪気な笑顔を見てからこちらに目線を向けた。
「娘を助けて頂いてありがとうございます」
「いえいえ。私は泣いているその子を笑顔にさせたかっただけですから……」
女の子の母親の感謝を大人の対応でもって返すにこちゃん。
「ホントにありがとうございました!ほら、そろそろいこっか。お姉ちゃんにバイバイは?」
「おねーちゃんバイバーイ!」
「うんっ!バイバイ!」
にこちゃんは親子が見えなくなるまでずっと手を振り続け、見えなくなると静かに手を降ろす。
その時の表情はどこか切なさが入り交じっていたような気がした。
お祭りの屋台回りをそこそこに切り上げ、オレとにこちゃんは河川敷の芝生に腰を下ろしていた。
「あの子、無事に親御さんが見つかってよかったね」
「そうね…」
「でも、まさかあそこでにっこにっこにーが見れるとは思わなかったなぁ……」
「し…、仕方ないじゃない!あれしか方法が思い付かなかったんだから!」
「ちょっと寒くないかにゃー?」
「ぬぁんですってぇ!?」
普段はお互い多忙のため、こうして面と向かって話す機会がめっきり減ってしまっているのが現状。
それでも一度口を開くとまるで昨日まで会っていたかのように会話が展開されるようなこの関係が心地よかった。
「ねぇ、にこちゃん?」
「今度は何よ?」
「にこちゃんってさ、結婚とかって考えたりする?」
オレはにこちゃんに質問をぶっ込んだ。
「へっ!?けけけ…、結婚!?」
にこちゃんは物凄く慌てており、手に持っていた巾着袋をその場にポトリと落としてしまったことにすら気が付いていない。
「にこは仮にも芸能人よ!?そんな結婚だなんて……!!」
「にこちゃん」
この質問だけは真面目に答えて欲しい。
そう思ったオレは少し声のトーンを落とし、にこちゃんの名前を呼んだ。
それを感じ取ったにこちゃんはわたわたと手を動かしたりするのを止め、溜め息1つついてから真剣な表情になっていく。
「そうね。確かににこも結婚に対しては年頃になってきてるし、考えてないと言ったらウソになるわ」
「そっか…」
「でも何でそんなこと聞いたのよ?」
にこちゃんの答えを聞いて安心したのも束の間。
今度は逆ににこちゃんに質問されてしまった。
結婚について聞いておいて今さら隠しても意味なんてないよな…。
意を決したオレは着ている上着から1つのケースを取り出す。
「にこちゃん。いえ、矢澤 にこさん。オレと結婚してください」
ケースの蓋を開けたと同時に花火が打ち上がった。
「ただーいまー」
私は今自分が住んでいる家のドアを開け放った。
「あれっ?にこちゃん明日にならないとこっちに帰ってこないんじゃなかったっけ?」
驚く彼の薬指には私とお揃いの指輪がキラリと小さく輝く。
「思ったよりもロケが早く終わったからその日のうちに帰ってこれるようにマネージャーに脅h……頼み込んだのよ」
「いやいやいや、マネージャーさん困らせちゃダメでしょ」
「いいじゃない別に」
私は旅行用カバンを床に置き、彼に抱き付く。
だって……、今日は私とあなたの結婚記念日なんだからっ♪
次回からきちんと本編を更新していきたいと思います。
あ。でも、そろそろ穂乃果ちゃんの誕生日ですね。
特別編のインスパイア曲探さなきゃ。(使命感)