ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
今話はタイトルからもはやネタバレ臭がしますが、ラブコメでは定番(?)ネタです。
それでは、どうぞ!
朝。
オレは目覚ましよりも先に起きる。
ここ最近早く寝ているせいなのか分からないが、スッキリ起きることができている。
さらに言えば身体の調子も非常にいい。
「さぁ、今日も一日頑張るぜ!」
朝からキレッキレの身体を使って勢いよくドアを開けて廊下に飛び出そうとした瞬間に…、
「そーちゃーん!!今日も練習見に……んぎゃっ!?」
「んがっ!?」
ものすごい勢いで穂乃果と激突し、お互い後頭部から床に向かって落ちた。
ぐおお…、超痛ぇ……。
~Side 高坂 穂乃果(?)~
「痛たた……」
もう!そーちゃんったら!!
なんて勢いで飛び出してくるかなぁ。
せっかく朝早く起きてそーちゃんを起こしてあげようと思ったのに…。
「ちょっとそーちゃ……ん?」
あれ?なんだかいつもの声よりも低いような……?
そして目の前にはよく鏡で見ている顔をした人間がいるような気が……?
「いってぇなぁ…。いつも勢いよく部屋に入ってくるなってあれほど言ってるだ……ろ?」
口調こそそーちゃんのものなんだけど、そーちゃんの声にしてはかなり高い声だ。
「……なんでオレがそこにいるんだよ?」
「そっちこそ…、なんで私がそこにいるの?」
「「え?……うぇぇぇぇえっ!?」」
なんと!そーちゃんと私が入れ替わってしまっていたのだ。
「どどど、どうしよう!?」
「落ち着け穂乃果!こういう時は素数を数えるんだ!!」
素数って……なんだろう?
そーちゃんが提案してきた落ち着かせる方法は私がおバカだから『素数』という単語をを理解できず、取り敢えず深呼吸をして心を落ち着かせる。
「……落ち着いたか?」
「う…、うん」
私が深呼吸し終えると、初めから割と冷静さを保っていたそーちゃんが問いかけてきたので返事をして首を縦に動かした。
「いいか?起きてしまったことを今さら言い争っていても仕方ない。今日は1日ごまかして過ごすしか無いだろう……」
「何だかそーちゃん適応早くない?」
「立華の古典の授業で今の状況のような題材を使って授業したからな」
そ…、そうなの?
何だか立華高校の授業って難しい題材を取り扱うんだね…、と心の中で苦笑いを浮かべる。
「でも問題なのは穂乃果じゃなくてオレの方なんだよなぁ……」
そう言ってそーちゃんは困ったときのクセとして後頭部を掻こうとしたけど、自分の身体じゃないと思い出したのかガックリ頭を項垂れた。
「海未ちゃんとことりちゃん。それに希ちゃんにも気を付けないとね……」
2人とも幼い頃からの付き合いだし、希ちゃんに至ってはスピリチュアルな力があるのでどのくらい長く私の演技が出来るのか…、そしてそれがいつバレるのか想像しただけで緊張の汗が伝ってくる。
「ま、バレた時は説明すれば何とかなるだろ。あとオレの身体使って変なことするなよ?」
「それは私のセリフだよ!入れ替わったのを機会にして…、その……下着とか私の身体とか見ないでよ?」
「……善処しよう」
「返事をする前に何秒か間が空いたのが気になるんだけど…」
Side out
オレは入れ替わった穂乃果の身体を操って穂乃果の部屋に戻り、寝間着を脱いでから音ノ木坂学院の制服に袖を通す。
ふむ…、穂乃果は思っていたよりも着痩せするタイプなのか。
いつも制服とか練習着やらで見慣れているので正確なプロポーションが分からなかったが、思っていたよりもいいプロポーションを持っていたことに感心する。
「っと…、穂乃果にあまりまじまじと見るなって言われてたんだったっけ。それに穂乃果の喋り方か…」
『オレは穂乃果になったんだ』という一見変わった暗示をかけ、松宮 壮大から高坂 穂乃果に人格をスイッチさせる。
……よし。
じゃあ…音ノ木坂学院に行きますか。
「いってきまーす」
オレはいつも穂乃果が登下校で履いているローファーを履き、海未とことりが来るのを待っていた。
…それにしても穂乃果は無事に立華に着いたのだろうか?
『松宮 壮大』としてしっかり演技出来るのだろうか…?
なんて考えてると海未とことりがやって来た。
「海未ちゃん!ことりちゃん!おっはよー!!」
~Side 園田 海未~
なんなのでしょう…、この違和感は。
何だか今日の穂乃果は少しおかしい気がする。
いつもなら慌てて出てくる穂乃果が珍しく私たちが来るよりも前に準備を終え、私たちを待っていた。
それを見た時最初こそ『ようやく私の言うことを聞いてくれた』と思っていたのだが、何だかいつものそそっかしさというか慌ただしさが微塵も感じられない。
「そう言えば穂乃果ちゃん。今日の英語の宿題やった?」
「ぅええっ!?英語の宿題今日までだっけ!?……ことりちゃん英語の宿題見せて~!!」
「うんっ、いいよ~。でも今度はちゃんとやらないとダメだよ?」
「ことりぢゃんありがどぉ~!!」
「よしよし……」
なんだか嫌な予感がしますね。
私が朝から嫌な予感がしたときに限ってろくなことにならない事が多いので気を付けなくてはいけないですね……。
Side out
~Side 高坂 穂乃果~
そーちゃんと入れ替わった私なのだが、脳がオーバーヒートを迎えようとしている。
そーちゃんのクラスでは数学と日本史が練習問題として渡されているプリントの問題がとても厄介なのだ。
『正三角形ABCにおいて3つの辺上の点全体の集合をEとおく。Eを2つに分割するとき、どちらか一方は直角三角形をなす3点を含むことを示せ』だったり『仏教が伝来してきたのが西暦538年である根拠となっている書物を2つ答えろ』なんて分かる訳ないよ!!
ううう…、こんなことになるならきちんと勉強しておけばよかったよぅ…。
それに板書を取っているノートの字がとてもキレイで心底驚いた。
これに予習や復習をやったり陸上の練習をやったりしてるんだからホントにそーちゃんってすごいんだなぁ…。
私もそーちゃんに見習って元の身体に戻ったら少し勉強したり走ったりしようかな。
Side out
「穂乃果」
お昼休み。
普通ならここで弁当を食べるのだが今日は作ってきていない。
我慢するというのも手なのだが穂乃果ならこうするだろう、という推測を元にして購買部に行ってパンを買いにいこうと教室から出ようとしたところで海未に止められた。
「海未ちゃん?どうしたの?」
「少し話したいことがあるのですが、よろしいですか?」
「いいけど…、長くなりそう?」
「そうですね…。少し長くなるかもしれませんね」
「じゃあ先にパン買ってきてもいいかな?」
「分かりました。一足先に生徒会室に向かってますね」
そう言い残して海未は自分の昼メシを持って生徒会室へと歩いていった。
「海未ちゃん、お待たせ」
危なくあんパンを買いそうになったけど、メロンパンとジャムパンと牛乳を買って生徒会室へ行くと海未だけがイスに座って静かに弁当を食べていた。
「えぇ、お待ちしておりました」
「……ことりちゃんは?」
いつも3人で行動しているのを見ているからなのかことりがいないことに少し違和感を覚える。
「ことりなら保健委員の仕事があるってさっき言っていたじゃないですか……」
そ、そうだったっけ?
海未やことりにバレないように穂乃果の演技をするのに必死だったので、ことりが保健委員の仕事がある事を聞き逃していたようだった。
「別にことりに対して疚しい話ではないので関係ないと言えば関係ないのですが、私が話したい用件はこれからです」
あまりにもの迫力とプレッシャーで思わずゴクリ…、と生唾を飲み込んで海未の続きの言葉を待った。
「わっ!?」
すると海未はいきなりテニスボールを投げてきたので、思わず左手で掴んだ。
「……やっぱり思った通りでしたね」
「えっ?」
「普通ならいきなりボールを投げられて咄嗟に反応できる女子高生なんて限られますからね。それに穂乃果ならボールを両手で掴みにいくか、もし片手で掴みにいったとしても完璧にキャッチできる事はないですからね。……貴女は誰なんですか?」
一旦言葉を切り、思い切り睨み付けながら手首を掴んでから思いっきり握り締めてきた。
「海未……ちゃん、痛いよ……」
「それによく見てみれば身体の使い方も違います。それは流石に演技できなかったようですね。整形で顔を変えたのか何なのか知りませんけど、私の目をごまかせると思わないでください!」
カッコいい!
今の海未カッコいいんだけど痛い!!
こいつ下手したらオレよりも握力強いんじゃねぇか!?
「海未……ちゃん、放して…。ちゃんと話すから……」
「偽物の癖に穂乃果の顔で私の名前を呼ばないでください!」
「海未……!オレだ!!壮大だ!穂乃果と入れ替わってしまったんだ!」
「ハハハ……ふざけたことを言わないでください!!」
自分の素性と要因を明かしたのだが、それを聞いた海未の逆鱗に触れてしまったのか余計に力を込めてきて手の感覚が無くなってきた。
「いいから話を聞けッ!!!」
掴まれていた方の腕を振り上げ、強引に海未の拘束から解放される。
「小さい頃お前の事を『みーちゃん』と呼んでいて!夏の時にオレたち4人で山に行った時に海未と一緒に同じテントで寝たことがある立華高校2年の松宮 壮大だ!」
「どうやら本物の壮大のようですね…。それにしてもどうして穂乃果と…?」
「はぁ…、そう言うことだったんですか……」
オレは朝起きてすぐのことを海未に説明すると、溜め息をついて頭を項垂れた。
「そういうことだ。悪いんだけど他のメンバーには黙っていてくれると助かるんだが……」
「言いませんよ…。取り敢えずフォローはしますからダンスとか何とかついてきてくださいね?」
「……申し訳ない」
話がまとまったところで、昼休みの終わりを告げるチャイムがなったので生徒会室から教室へと向かった。
「1!2!3!4!5!6!7!8!」
海未の手拍子のもと、オレはダンスのステップを踏む。
今日のダンスレッスンは前に小さいライブで披露した『Wonderful rush』。
「穂乃果!ステップが逆ですよ!!」
「うんっ!」
手拍子を送りながらダンスのステップが逆になっていること指摘してくれる海未に返事をしながら踊り続ける。
「はいっ!ラストの決めポーズ!」
キュッ!とスキール音が8つ一斉に鳴り、みんなが最後の決めポーズが決まった。
「では今日はこれで終わりにしましょう。では各自ペアを組んでクールダウンのストレッチをやりましょうか」
「ことりちゃーん!一緒にストレッチするにゃ~!」
「花陽。一緒にやりましょ?」
「……。にこっち~、えりち~。一緒にストレッチやらへん?」
みんな思い思いのようにペアもしくはトリオを組んでストレッチを開始する。
何だかのんちゃんがこっちを見ていたような気がしたけど、オレは海未と一緒にストレッチをやり始める。
「壮大、いつもは見ている私たちの練習を実際にやってみてどうでしたか?」
「めっちゃ疲れた…」
足を伸ばすために背中を押してもらっているときに小声で話しかけてきたので、こっちも小声で返す。
いつも部活では走ることを中心にやっているのだが踊る時に使う筋肉と走る時に使う筋肉が違うし、慣れないことをやったので非常に疲れた。
「けど、案外こういうのも悪くはない……かも」
「明日以降も穂乃果と入れ替わってるつもりですか?」
「そういう意味で言ったんじゃないんだけど……?」
「ふふっ、冗談ですよ」
お前の冗談は冗談に聞こえないんだよ……、まったく。
海未に対抗して嫌味を言ってやろうかと思ったけど、これ以上会話を続けていると誰かが会話に入ってきそうなので大人しく海未に押されながらストレッチを再開させることにした。
夜、本来のオレの部屋で中身が入れ替わったことの感想を穂乃果に聞いてみた。
「入れ替わって1日どうだった?」
「やっぱりそーちゃんって凄いんだね」
「……へっ?」
「部活でも勉強でもそーちゃんのものすごい努力を見れた気がしたから」
「……うっせ」
いきなり褒められたので少し照れ臭くなるので、思わず照れ隠しの言葉を返してしまった。
「そう言ってるそーちゃんはどうだったの?」
「そうだな……」
オレは視線を外し、窓から見える住宅街に目を向けながら呟く。
「いい経験にはなった……かな?」
穂乃果の思い付きで始まったアイドル活動。
光輝くステージで歌ったり踊ったりするその舞台裏では血が滲むような基礎トレーニングを積み重ねていて、それを笑顔でこなしていく穂乃果たちのことを改めて凄いと実感した経験だったと思う。
翌日、目を開けると無事に元に戻っていて『自分の身体って素晴らしい……』と感傷に浸っているとスマートフォンに着信が入っていて内容を確認すると…。
『無事に元に戻れたん?』
と、のんちゃんからのメッセージが入っていて朝から戦慄したのは言うまでもないだろう。
次回以降ですが記念ストーリーを2話ほど更新し、最終章へ繋げていくサイドストーリーを投稿してからいよいよ最終章に入っていきたいと思います。
記念ストーリーのネタはある程度決まってるので、早ければ今月中旬には入れるんじゃないかと思ってます。
それまでは記念ストーリーやサイドストーリーにお付き合いください!
最後まで読んでいただきありがとうございました!