ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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第10話 襲来と怪我と逆鱗

μ'sに1年生組が加入してから早くも2週間が経とうとしている。

 

オレも朝練にはちょくちょく参加しているのだが1年生…、特に凛ちゃんの身体能力には色んな高校生アスリートを見てきた中でも目を見張るものがあった。

 

しなやかな身体のバネから生まれるスプリント力は高いレベルを誇り、そんじょそこらの女子高生はおろか下手すりゃ並の男子でも勝てるかどうかと言ったところだ。

 

「そーた先輩!勝負だにゃ!今日こそ凛が勝つにゃー!!」

 

おかげでオレもレベルの高いスピード練習が出来ている。

 

「そう言ってオレに一度も勝ててないのはどこのにゃーにゃー言ってる子なのかにゃー?」

 

「あー!凛の真似ー!!」

 

穂乃果と似た空気があるのか意外と親しみやすいし、何よりからかい甲斐がある。

 

「凛、壮大?準備はできましたか?」

 

「凛はいつでもおっけーだにゃ!」

 

海未がスタート準備を整えたかという問いにオレはまだ答えない。

 

スタート前に行う願掛け…、ルーティーンがある。

 

目を閉じて自分が深く暗い水のなかにいるイメージをしたあと、1本の光の筋が差し込む。

 

その光を求め、水の中で思いっきり蹴って水面へと向かっていく。

 

そして水面まで辿り着くと、1本だった光の筋がドンドン増えていきオレの身体を包み込むイメージをし終えたら目を開く。

 

「……あぁ、オレも準備完了だ。」

 

「では、スタートです!」

 

オレと凛ちゃんはほぼ同時に固いアスファルトを蹴って、階段を登り始めた。

 

 

 

 

 

 

「うにゃー!また勝てなかったにゃー……。」

 

「お疲れさま。凛ちゃん、そーくん。」

 

「ああ、ありがとうことり。」

 

「ことり先輩ありがとうだにゃ!」

 

ダッシュし終えたオレと凛ちゃんはことりからスポーツドリンクのボトルを受け取り、適量口に含んだ。

 

凛ちゃんは玉のような汗を大量にかき、ゴクゴクと喉を動かしながら汗をタオルで拭く。

 

「凛とほとんどタイムが変わらないとはいえ、何だか壮大には余裕があるように見受けられますが…。」

 

「んなことないよ。部活の時はスパイクが殆どだからランニングシューズだとそこまで早くないんだ。」

 

「じゃあこのまま行けば凛、そーた先輩に勝てる!?」

 

オレと海未の話を聞いてた凛はキラキラしながら、海未とオレの間に入り込んできた。

 

「凛ちゃんそーくんホントはすごく速いんだよー?」

 

「そうですよ、凛。壮大、この前の大会の100M何秒でしたか?」

 

「確か10秒64だ。」

 

「速いにゃー…。」

 

凛ちゃんはオレのタイムを聞いて戦意喪失してしまった。

 

「んじゃオレはそろそろ学校に……!?」

 

オレはすっかり落ち込んでしまった凛ちゃんの頭を撫でてから学校に行こうとしたが、後ろの方向から視線を感じたので振り返った。

 

「そーくん(そーた先輩)?」

 

「………。」

 

ことりと凛ちゃんは気付かなかったようだが、海未は視線に気付いたようだ。

 

「(海未、話がある。学校帰りオレん家に来れるか?)」

 

「(奇遇ですね。私もたった今壮大に聞きたいことができました…。)」

 

「(じゃあ、また放課後に。)………何でもない。汗の管理とクールダウンよろしくな?」

 

「はい、ではまた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーピンポーン!

 

「はーい!」

 

帰宅してすぐインターホンが鳴ったので、オレは玄関のドアを開けた。

 

「すみません、弓道部でミーティングがあって遅れました。」

 

「いいや大丈夫だ。オレもついさっき帰ってきたところだ。」

 

矢筒を持った海未が申し訳なさそうにしながらやってきたので、フォローを入れてからリビングに通した。

 

テーブルを挟んでドカッと胡座をかくオレとは対照的でちょこんと座る海未。

 

大和撫子という言葉はこいつのためにあるのかと思いたくなるくらい、仕草が自然だ。

 

………和服とか似合いそうだよな、海未って…。

 

「壮大。朝の件についてなのですが…。」

 

「………。」

 

いや、逆にヒラヒラしたワンピースやミニスカートと言ったギャップを突くのもありかもしれん。

 

………まぁ何にせよ海未には何着せても似合いそうだ。

 

真姫やことりには及ばないが他のメンバーには小さい頃から武道を嗜んできたしなやかで強く、さらにスタイルのいいプロポーションもあるし…。

 

「………壮大?」

 

「!?……わりぃ、ボーッとしてた。…それよりも、()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「えぇ。ストーカーでは無い気がしますが、何やら嫌にねっとりとした……何かを見定めるような視線なら感じました。」

 

凛やことりは気付かなかったみたいですが…。と説明に付け加えられる。

 

やはりか。

 

きっと何処か物陰からオレたちのことを監視してるみたいな目線も感じたのだ。

 

「それに今日何気なく例のサイトを見てみたら、μ'sの掲示板にこんな書き込みがあったんです…。」

 

海未はスマートフォンを操作し、スクールアイドル専用のサイトをオレに見せてくれた。

 

えっと……?

 

『あんたたちがアイドルを語るなんて10年早いわ!とっとと解散しなさい!!』………?

 

……へぇ。

 

「くだらねぇな…。」

 

オレは海未のスマートフォンをアイドリング状態にしてから返した。

 

「……?、と言いますと?」

 

「μ'sは結成時に比べて徐々に人気が高まってきている。でもそれと同時に僻みやっかみを掲示板に書き込んだりする人もいるんだ。それが人気が高まるのに比例して……な。」

 

アイドルグループへの『口パク疑惑』だったり『整形疑惑』だとかがいい例だ。

 

「そうですか…。そして私なりに考えた上で頼みたいことがあるのです。」

 

「……ストーカーの正体の確認ってとこか?」

 

「話が早くて助かります。……お願いできますでしょうか?」

 

今はこのような無害で小さい規模の誹謗中傷の書き込みだけだが、もしかしたら悪事がエスカレートしてメンバーに何が危害が加わるのかもしれない。

 

穂乃果たち幼馴染や凛ちゃん花陽ちゃんと言った可愛い後輩たちを危険なことから守れるというのなら、返事は1つしかない。

 

「……分かった。」

 

「ありがとうございます。」

 

メンバーの安全の確保。

 

これもお手伝いのうちの1つだろ?

 

「………ところで弓道部のミーティングって?」

 

「今度のインターハイ予選でのメンバー発表のことでして…、今年も団体戦の代表と個人戦にエントリーとなりました。」

 

「……そっか、弓道もそろそろインターハイ予選か。」

 

「はい、ですので明日からは弓道部の方をメインに顔を出さないといけなくなりまして…。」

 

「オレじゃなく、先にメンバーに伝えときな?」

 

「こちらに来る前に既に伝えました。あとは壮大だけなんですよ?」

 

ありゃ、そうだったの?

 

確認してみたらμ'sのグループチャットにメッセージが飛んでいてメンバー各々が、祝福の言葉や励ましのメッセージがあった。

 

「………そうか。根を張り詰めすぎるなよ?」

 

「ふふっ…。そう言う壮大も、ですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝。

 

今日はオレが神田明神に着いたときには穂乃果とことりが先に来て、既にウォーミングアップを開始していた。

 

珍しいこともあるもんだ…。

 

それを海未がいるときにもやってほしいものだ。

 

「うぃっす。」

 

「あ!そーちゃんおはよー!」

 

「そーくんおはよー。…… ?」

 

穂乃果とことりに挨拶をし、穂乃果は相変わらず元気な挨拶だがことりは挨拶をしたあとなにやら後ろを振り向いた。

 

「ことりちゃん?」

 

穂乃果は何も感じなかったのかことりの行動に首を傾げた。

 

……今の時間からいるのか?

 

どんだけ暇なんだよ、なぁストーカーさん?

 

「穂乃果が早起きなんて…。明日はパンでも降るのか?」

 

「ひどいっ!穂乃果だって早起きするんだよ!?」

 

「あ、あはは………!?」

 

またしてもことりは後ろを振り向いた。

 

今度は穂乃果も気付いたようだ。

 

「そーちゃん…。」

 

「あぁ。…ことり、何処からだ?」

 

「あのあたりから…。」

 

ことりが指差したのは境内へ続く門を指差していた。

 

オレは確認しに行こうとした穂乃果を制し、指差された場所に向かう。

 

その場所に差し掛かった瞬間…、

 

 

ーーーブォンッ!!!

 

 

バールのような鉄の棒がオレの足元に襲いかかってきた!!

 

「ぅおっ!?」

 

オレはその場でジャンプして鉄の棒をかわそうとしたが、かわしきれず左の脛にぶつかった。

 

「ぐっ!?」

 

「そーちゃん(そーくん)!?」

 

オレは痛みでその場に蹲り、その一部始終見ていた穂乃果と救急セットを持ったことりがオレの元に駆け寄る。

 

痛みで顔を歪ませながら犯人を見上げる。

 

季節外れもいいとこのロングコートにマスクとサングラスを身に付けたツインテールのガキが立っていた。

 

そのガキは様子を気にするわけでもなく、言い放った。

 

「あんた達、とっとと解散しなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレは近くのハンバーガーショップに足を運んだ。

 

左足はことりの応急処置のお陰で打撲だけで済んだが、3日ほど安静にするようにと西木野先生に言われた。

 

あんのクソガキ…、次会ったらただじゃおかねぇからな……?

 

「そーた先輩!」

 

オレの姿にいち早く気付いた凛ちゃんが手を振っていた。

 

「よっ、みんな。……穂乃果は何でむくれてんだ?」

 

席につくと穂乃果はとても女の子がしてはいけないような表情でポテトを貪っていた。

 

「なんで雨止まないの!?」

 

どうやらこの天気に対して怒っているようだ。

 

しょうがねぇだろ?梅雨時期なんだし…。

 

「穂乃果、少し声のボリュームを落としてくれ。回りの人がビックリしてこっち見てんぞ?」

 

「それにそのストレスを食に当てると大変なことになりますよ?」

 

オレと海未で穂乃果を宥めようとするけど、穂乃果の機嫌は直らなかった。

 

窓の向こうを睨み付けながらポテトを食べようとした…

 

「あれ?」

 

が、穂乃果のトレーの上に乗っていたポテトがキレイサッパリ無くなっていた。

 

「そーちゃん…?」

 

穂乃果はオレが食べたものだと思い、問い詰めようとする。

 

「オレはポテトなんか食わないぞ。」

 

ファーストフードのポテトは身体を壊す成分が大量に含まれているので、どんなに進められてきても食べないようにしているのだ。

 

それを聞いた穂乃果だったが、今度は海未の方を見つめる。

 

「私ではありませんよ。自分で食べた分も忘れたのですか?」

 

自分が疑われていると悟った海未は身を寄り出して穂乃果を嗜める。

 

まったく…、と海未は自分の分のハンバーガーを食べようとしたのだが海未のトレーも穂乃果同様にキレイサッパリ無くなっていた。

 

「穂乃果こそ、私の分を食べないでください!」

 

「穂乃果じゃないもん!」

 

穂乃果と海未の口論がヒートアップしていくなか、オレは不意に隣を見た。

 

…なんだあれ?

 

隣の座席から何やらピンク色の『う』から始まる物のような被り物をしている変質者を見つけた。

 

………。

 

「…真姫?」

 

「……何よ?」

 

ここまで凛ちゃんと花陽ちゃんの行動にツッコミを入れたり、ことりに弄ばれて疲れた表情をしていた真姫を呼ぶ。

 

相変わらずツンツンしてるなぁ…。

 

「ちょっとこれ買ってきてトッピングはこんくらいかけて貰える?一人だと歩き辛くてさ…。」

 

「はぁ……、今回だけよ?」

 

いつもなら『なんで私が買ってこなきゃいけないのよ!イミワカンナイ!!』って言うけど、怪我をしているということもあって素直に頼んだものを買うべくレジに並んだ。

 

ずっと怪我してれば真姫のデレ部分を見てられそう。

 

いやダメだ。走れなくなるのは勘弁願いたい。

 

「はい、コレ。あんたが食べるの?」

 

すると真姫はオレがオーダーしたハンバーガーを持ってきてくれた。

 

「そーちゃん?真姫ちゃんになに頼んだの?」

 

「まぁ、見たなって…。はい、海未。」

 

「えぇ!?私が食べるのですか!?」

 

「…(海未、穂乃果。オレに合わせてくれ。)まぁそう言うな。これはオレの驕りだ。」

 

オレは不審者を炙り出すために穂乃果と海未に演技して貰うことを小声で要求した。

 

「…(仕方ありませんね。)では、お言葉に甘えて…。」

 

「(分かった!)えー!海未ちゃんズルいよー!穂乃果もそーちゃんの奢りで何か食べたーい!!」

 

それを聞いて穂乃果も海未もノッてくれた。

 

オレの予想が正しければあと少しでこのハンバーガーは隣の席のやつに渡るだろう。

 

「オレん家に来るとき洋菓子食べてるだろ!?」

 

「いいじゃん!減るもんじゃないし!」

 

「オレの食費が減るわ!」

 

「なになに!?凛もその話混ぜてー!」

 

「り、凛ちゃ…「ぶっふうぅぅぅぅぅぅ!?」…ん?」

 

凛ちゃんというイレギュラーが乱入してくれたお陰で、海未のトレーの上に乗っていたオレがオーダーしたハンバーガーをパクって食べようとしたが、吹き出した。

 

……どうやら間抜けは釣れたようだな。

 

すると不審者は店から出ようとしたので、オレは痛みが出ないようなスピードで後を追いかける。

 

そして店を出た瞬間、全力で威圧させながら不審者に詰め寄る。

 

「よう、クソガキ。人のハンバーガーパクって食べたみたいだけどお気に召したかな?」

 

犯人は服装は違えども、今朝のクソガキだった。

 

あんはひっはひ(あんた一体)なひほはへはへほうほひはほほ(なに食べさせようとしたのよ)!?」

 

「うるせぇ。何喋ってんのかわかんねぇし。しっかりとした日本語話せよ。」

 

ちなみにオーダーしたのは、出来たて熱々のハバネロハンバーガーに世界一辛い唐辛子と言われているキャロライナ・リーパーのソースをかけたハンバーガーだ。

 

それよりもオレはこいつに物凄い怒りを感じている。

 

被害はオレだけだからよかったものの、もし穂乃果やことりがあんな力が籠った鉄の棒が脚にぶつかってたら最悪骨折していたかもしれない。

 

さらに穂乃果たちが買ったハンバーガーやポテトをパクって食べた。

 

この行為は傷害罪や窃盗罪に当たる。

 

「それにあんたは他人の買った物をパクって食った挙げ句、今朝オレに怪我をさせたよな?」

 

一歩間違えなくてもこいつがやったことは犯罪以外何者もない。

 

「ふんっ!あんたたちがさっさと解散しないからこう言うことになるのよ。それにあんたたちは歌も踊りも全然なってない!『プロ意識』が足りないわ!」

 

なのにそれを個人的な理由でしでかしたのだ。

 

「へぇ、そうか…。」

 

これ以上あいつらに迷惑行為を働かすと言うのなら…、

 

 

 

 

「そうよ!それに彼氏なんて…、「んじゃ、てめぇが言うその『プロ意識』ってやつを見せて貰おうか?今すぐに。」……っ!?」

 

 

 

 

 

 

オレはこいつを絶対に許さない。

 

 

 

 

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