ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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遅れてすみません!

別作品の執筆が思っていたよりも進んでしまって…。

と、言い訳はここまでにして今回は絵里ちゃん特別編です。

インスパイア曲はいきものがかりさんの『ありがとう』です。


絢瀬 絵里編 ありがとう

Side 絢瀬 絵里

 

「ねぇ、絵里?」

 

大学で出来た友達とキャンパス内のカフェテリアにて駄弁っていると、紅茶が入ったティーカップを置いて急に話を切り出してきた。

 

「なにかしら?」

 

「最近どうなの?」

 

「どう……って?」

 

主語が抜けているので何の事を言っているのかサッパリ分からず、質問を返すと『またまたぁ、惚けちゃって~』と返ってきた。

 

……もしかして今学期のテストの事かしら?

 

「……まさか本気で分かってないの?」

 

まさしくその通りなので頷いておく。

 

するとこれ見よがしに溜め息をつきながら、本題を話してくれた。

 

「絵里がその話題になるといつも楽しそうに話してくれる『壮大くん』の事よ。最近どうなの?」

 

どうって言われても…。

 

「別に私たち付き合ってる訳じゃないのよ?ただ壮大の家にご両親が帰ってきたから近所に引っ越してきたってことだけよ」

 

「……とは言ってるけどいつもヘトヘトで帰ってくる彼の為にご飯作ってあげてるんでしょ?」

 

「そ、そうだけど……」

 

「だけど……何よ?なにか問題でも起きてるの?」

 

テーブルの反対側からズイ、と身を寄り出して徹底的に問い詰めようとしてきた。

 

私は友達のおでこに手を押し当ててイスに座らせる。

 

「これは根掘り葉掘り聞く必要があるわね……」

 

友達はスマートフォンを取り出し、他の友達に向かってメッセージを飛ばす。

 

あっ…、これ不味いパターンになっちゃった……かも。

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

「壮大!今日みんなでどこか飲みに行くんだけどお前も来ないか?」

 

「あぁ…、すみません。まだ消化できてないメニュー残ってるので…」

 

「……そうか。じゃあまた今度な」

 

「お疲れさまっす」

 

練習終了直後、実業団の先輩が飲み会に誘われたがまだノルマが残っているので丁重にお断りしておいた。

 

聞いてきた先輩が合流した1つの塊になっている団体が『あいつ今日も行かないって~…』だったり『そう言えば今日ってあそこ割引やってなかったっけ?』と言った会話を繰り広げながら練習場から引き上げていくのを聞く。

 

そしてタイム取りに協力してくれるマネージャーさんに合図を送り、力強くスターティングブロックを蹴る。

 

「ラスト!ファイトですっ!!」

 

マネージャーさんの声援を置き去りにするように走り抜け、自然に減速しながらやがて立ち止まる。

 

そしてマネージャーさんの元に歩み寄って手の中に握られているストップウォッチが表示されているタイムを確認する

 

「……うん、設定タイム切れてるな」

 

「どうしますか?もう1本やりますか?」

 

「いや、今日の練習はこれで終わりにするよ」

 

「じゃあ、私監督に報告してから帰りますね。お疲れさまでした」

 

「お疲れ様」

 

マネージャーさんがトテトテと少し危なっかしい足取りで監督に電話しながら更衣室がある建物に向かって走っていく。

 

オレもそろそろ帰るか…。

 

ランニングシューズやウィンドブレーカーが入っているバッグを持ち、スマートフォンを取り出すと1件の着信が入っていた。

 

ディスプレイに表示されている名前を見て、無視するわけにいかない相手だったから少し溜め息が出る。

 

スマートフォンを握ったらまま、トラックの隅に置かれているベンチに座る。

 

電話の主の名前をもう一度見て間違いが無いことを確認してから、通話のボタンを押した。

 

「はい?」

 

『壮大?もしかして……今練習中だったかしら?』

 

相手は自宅マンションのお隣さんである絵里ちゃんこと絢瀬 絵里さんだった。

 

「いえ、今練習が終わったところです」

 

『よかったぁ……』

 

安堵の声色で話す絵里ちゃん。

 

自宅に戻ってきた両親に替わる形で都内のマンションに引っ越したら、お隣さんはまさかの絢瀬姉妹だったの事は衝撃的過ぎだったために2年経った今でも鮮明に覚えている。

 

いつもハードな練習でヘトヘトになってまともな食事が作れずにいたところ、絵里ちゃんがお裾分けとして持ってきてくれたロシア料理を期に無理を言って絢瀬姉妹と一緒にメシを食べている。

 

……ホントに絵里ちゃんには頭が上がらないな。

 

「どうかされましたか?」

 

『突然で悪いんだけど今日急に友達と飲みに行くことになっちゃったのよ。だから今日は亜里沙と2人で食べててくれるかしら?』

 

「分かりました。あまり遅くならない時間に帰ってきてくださいね?」

 

『分かってるわよ。亜里沙も受験生だからそこまで遅くなく帰るつもりでいるわ』

 

その後、軽い会話をしてから電話が切れる。

 

さて…、食材買って帰りますか…。

 

財布の中身を確認しながら近所のスーパーに向かって歩みを進めた。

 

 

 

 

一旦自分の部屋に練習で使ったバッグを置き、練習着を洗濯機に放り込んでからお隣の部屋のインターホンを押す。

 

しばらくすると扉の向こうからトタトタと足音が聞こえてくる。

 

「はーい、あっ!壮大さん!」

 

「やぁ、亜里沙ちゃん」

 

音ノ木坂学院の制服を着ている亜里沙ちゃんがドアを開けてくれた。

 

相変わらず幼さは残しているが、身体はスクスク成長していて今では高校時代のことり並みのスタイルを誇っている。

 

ってそんな解説してる場合じゃねぇやな。

 

「どうしたんですか?お姉ちゃんならまだ帰ってきてないですよ?」

 

「絵里ちゃんなら大学の友達と一緒に飲みに行くから亜里沙ちゃんと2人で食べててって言ってたよ?」

 

「え!?そうなんですか!?」

 

連絡を受けていなかったみたいで亜里沙ちゃんは凄く驚いていた。

 

「って言うわけで今日はオレが作るよ」

 

「手伝います!」

 

キッチンがあるところに行こうとすると亜里沙ちゃんもついてきた。

 

オレは亜里沙ちゃんを片手で制し、その手で亜里沙ちゃんのふわふわな髪の上に置く。

 

「いいよいいよ、亜里沙ちゃんは準備出来るまでゆっくりしてなよ」

 

「はーい」

 

亜里沙ちゃんはリビングに向かってトテトテと歩いていった。

 

「ぃよっし!」

 

久し振りに包丁を握り、気合いを1つ入れる。

 

いっちょ気合い入れて作ってみますかぁ!!

 

 

 

 

 

「お姉ちゃんのご飯も美味しいですけど、壮大さんが作るご飯も美味しいです!」

 

およそ1時間ほどの戦いの末に出来たミネストローネと棒々鶏を愛くるしい笑顔と一緒にもっきゅもっきゅと食べていく亜里沙ちゃん。

 

こうも喜んで食べてくれると作り甲斐があるってもんだ。

 

「ところで、壮大さん」

 

「ん?おかわりか?」

 

「あはは…、違いますよ。そろそろお姉ちゃんの誕生日なんですけど……何かプレゼントとか考えてますか?」

 

何気無い話題提供のつもりで話したのだろうが、その不変の事実を聞いたオレの回りだけ時間が止まった。

 

絵里ちゃんの…、誕生日?

 

「ああああああ!!やっべぇぇぇぇぇえっ!!!」

 

「わぁっ!?壮大さんどうしたんですか!?」

 

オレは近くの柱まで行き、頭をガンガン打ち付ける。

 

「ウッソォ!?あと何日!?絵里ちゃんが一番欲しいものってなに!?」

 

「お願いですからそれ以上頭を打ち付けないでください~!」

 

オレは亜里沙ちゃんに止められ、ある程度頭を打ち付けてからテーブルに戻る。

 

「すまない…、少し取り乱してしまった」

 

「……何だか視点が定まってないんですけど大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「その発言をしている時点で大丈夫じゃないと思いますけど……」

 

少し回復してきてから亜里沙ちゃんから相談して決める。

 

 

 

その日の夜から絵里ちゃんに秘密で数々の準備を重ね、そして絵里ちゃんの誕生日当日を迎えた。

 

 

 

 

 

Side 絢瀬 絵里

 

 

今日…、10/21は私の誕生日。

 

大学の友達から主に私の好物であるチョコレートを貰った。

 

学校が終わり、夜になってから久し振りにμ'sのメンバー会うために指定されたお店に向かった。

 

そしてそこで盛大に祝ってもらい、みんなからそれぞれのプレゼントを受け取った。

 

ことりは海外にいるため今回の集まりには来られなかったが、穂乃果や海未の話によると後日私のために選んでくれたとっておきの誕生日プレゼントを送ってくれるのだそうだ。

 

でも、今回の集まりでことりの他に欠席者がもう1人。

 

「ねぇ、絵里ちゃん」

 

「どうしたの?」

 

「……やっぱりそーちゃんは来てくれないの?」

 

こっそり聞いてきた穂乃果の問い掛けに私は目を伏せながら無言で頷く。

 

さっきから何度も電話しても『只今電話に出ることが出来ません』という機械的な音声しか聞こえてこない。

 

……もぅ。私の誕生日くらい覚えてくれていたっていいじゃない。

 

っと、いけないいけない。

 

折角私のためにお祝いしてくれてるんだから楽しまないと!

 

 

 

 

「……はぁ」

 

急に現実に引き戻され、思わず溜め息をつく。

 

結局壮大はμ'sの集まりに顔を出すことは無く、楽しい一時も終わりを告げるかのように自宅へと帰ってきてしまった。

 

あ~あ…、壮大からのお祝い楽しみにしてたのになぁ…。

 

少しだけガックリと肩を落としながら自宅のドアを開ける。

 

「あっ!お姉ちゃんおかえり!!」

 

ドアが開く音を聞き付けた亜里沙が私の元にすり寄ってきた。

 

「亜里沙…、ただいま……って!!」

 

もう疲れたから先に寝るね、と言おうとしたら急に亜里沙が私の手を掴んでリビングに連れていかれた。

 

「亜里沙!この手を離しなさい!」

 

少し強めに言い聞かせるように言うが、亜里沙は聞く耳を持ってくれない。

 

「はいっ!あとは2人でごゆっくり!!」

 

亜里沙は私の背中を押し、リビングへ入れるとリビングのカギをかけた。

 

もう!一体なんなのよぉ……。

 

2人でごゆっくりって言われても私と亜里沙しかいないじゃない…。

 

そう思い、普段はご飯を食べるのに使っているテーブルまで歩みを進めると…、

 

「やぁ、絵里ちゃん。お帰りなさい」

 

そこには今私が一番会いたい人がイスに座っていた。

 

何て言おう…。

 

『今まで何してたの?』

 

そう言おうとしたのに…。

 

「……こんな時間に何の用なの?」

 

うぅ…、違う…。

 

 

Side out

 

 

 

「……こんな時間に何の用なの?」

 

あちゃ~…、絵里ちゃんかなり怒ってるなぁ…。

 

実はというとμ'sメンバーで絵里ちゃんの誕生日会には途中からだけど出席することができた。

 

しかし、この日のために用意したプレゼントの受け取りが今の今までズレ込んでしまったので参加できなかったのだ。

 

「実は…、絵里ちゃんにどうしてもこれを渡したくて……」

 

オレはつい先程届いたオレが用意したプレゼントを絵里ちゃんに手渡した。

 

絵里ちゃんは怪訝な顔付きをしながらラッピングを外していき、出てきた物を見て瞬く間に目を輝かせる。

 

「これ…、ネックレス?」

 

パールとアクアマリンをふんだんに使い、10月の誕生石でトレードマークだったアルファベットのRを反対にしたマークを中央にアクセントつけた1品だ。

 

「どう…、ですか?」

 

「ハラショー…!気に入ったわ……!」

 

恐る恐る感想を聞いてみると、絵里ちゃんは気に入ってくれたようで一安心する。

 

だけど、伝えたいのはこれからだ。

 

「絵里ちゃん……」

 

「何かしら?」

 

オレは高鳴る心臓を抑えつけるように深呼吸を繰り返してから絵里ちゃんに伝えたい言葉を言い始める。

 

「オレ…、絵里ちゃんには感謝しても感謝しきれないんですよ」

 

「いきなりどうしたのよ……?」

 

いきなり柄でも無いことを言い出したオレを見て困惑し始める絵里ちゃん。

 

それでも、オレは感謝の言葉を伝えるのを辞めない。

 

「高校の時とは違って実業団に所属して厳しい練習をしながら自炊とかなんて絶対できなかった。きっと厳しい練習に耐えきれなくなって身体を壊していたのかもしれない。でも、絵里ちゃんが作ってくれる食事があるから今こうやってここにいられるんだって思うといてもたってもいられなくなってさ……だから、」

 

オレは絵里ちゃんの後ろまで動き、優しく抱き締める。

 

 

 

 

 

「絵里ちゃん。いつもありがとう。そして……」

 

 

これからもよろしく……。

 

 

 

 

~♪BGM:ありがとう~

 

 

 

「……ぐすっ」

 

オレが自分の中で抱えていたありったけの感謝の言葉を伝えると、絵里ちゃんは静かに涙を流していた。

 

「もう…、泣かせないでよ……」

 

涙を人差し指で拭い、笑顔を見せる。

 

薄暗闇の中、オレと絵里ちゃんの影が1つに重なった。

 

 

 

 

 

 

 

「行ってきまーす」

 

「壮大!忘れ物よ!!」

 

「え?オレなんか忘れ物しましたか?」

 

「これ!今日1日練習なんでしょう!?」

 

「あぁ…、お弁当か」

 

「まったく…、お昼はどうするつもりだったのよ……?」

 

「うぐっ……」

 

「もう…、肝心なところは抜けてるんだから」

 

「……面目ないです」

 

「今日は練習終わったら早めに帰ってきてよ?」

 

「……分かってますって」

 

「ホントかしら…、今日は2人にとって大事な記念日だって言うこと覚えてるの?」

 

「だから覚えてますって…、うおっ!?もうこんな時間かよ!!それじゃ、いってきまーす!!」

 

フフッ…、いってらっしゃい…あなた。

 

私は慌てて練習へ向かう彼の逞しい背中が見えなくなるまで見送った。

 

そして、私の首元には彼が送ってくれたネックレスが静かに光っていた。

 

 




結構短い(5,000字ちょっと)話ですが、今回はこれが限界でした。

でも、この後すぐに凛ちゃん特別編なんですよねぇ…。

出来るだけ遅れないように投稿します。


最後まで読んでいただきありがとうございました!!


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