ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
なのでバレンタイン特別編、書きました。
では、どうぞ!
日本全国の高校生にとって2月とは特別な意味合いを持つ1ヶ月間だとオレ個人ではそう思っている。
また2月は28日間……4年に1度の閏年だと29日間しかないことも考えるとあっという間に感じてしまう人も少なくはないだろう。
そんなあっという間な2月にあっという間にやって来たバレンタインデー前日。
立華高校陸上部短距離ブロックの部室では……、
「今年も……、この季節が来てしまったな」
「おっ、そうだな」
何が?と突っ込んだら負けなのだろうか…。
重い雰囲気を漂わせつつ、某人類補完計画の総責任者よろしく両肘をテーブルの上に乗せて口元で両手を組みながら話し込む前陸上部副部長とあっけらかんとする部長……そしてこの重たい雰囲気についていけないオレの3人は陸上部の部室の中にいた。
何でもこの2人は無事に志望校に合格したらしい。
そんで2人とも大学でも競技を続ける意向を示していて、その練習をするために久し振りに陸上部の練習に来た。
練習中はまだまともだったのにみんなそれぞれの用事があるため帰宅し、オレも帰ろうとしたときに呼び止められて今に至る。
「そろそろサングラス外しましょうよ……」
「……それもそうだな」
副部長はかけていたサングラスを外し、改めて話し出す。
「なぁお前ら……ぶっちゃけ今年はどうなんだ?」
「まず妹から貰えるのは確定してるから貰えないという未来は今のところ無いな」
「ケッ!これだから妹や姉がいる男は困るんだよ!!」
部長に質問し、返答を聞いた副部長はやさぐれてしまった。
なら、聞かなければよかったじゃないですか……。
「まぁそういうな。お前だってブサメンじゃねぇんだからきっと貰えるさ」
「『きっと今年こそ貰えるんじゃないか?』……そんな淡い期待を持った事がないからそんなことが言えるんだよ!!」
副部長はやさぐれて身も蓋もない事を言い出す。
「そうだ松宮!お前はどうなんだ!?」
「今日1つ貰いました」
「……ちっきしょう!!」
水溜まりが出来るほどの熱い情熱が部室の床を濡らし、悔しそうに何度も何度も拳を床に打ち付ける副部長。
「……こうなったら『近所のスーパー全店のチョコというチョコを買い込んでバレンタインで使わせないゾ☆』募金に参加してやらぁ!!」
ゆらり、と立ち上がった副部長は血涙を流しながら財布を持って募金活動が行われている立華高校の正門に向かって走り出していった。
「……アイツももう少し精神的な余裕があれば彼女の1人や2人出来そうなんだけどな」
「そうですね」
少なくとも『近所のスーパー全店のチョコというチョコを買い込んでバレンタインで使わせないゾ☆』募金に参加しているようじゃダメだと思う。
「おはよ、壮にぃ」
バレンタインデー当日。
朝起きた時何故か口に甘味を感じたが、特に気にすることもなく寝起きの服装のまま朝メシを作っていると朝だというのにインターホンが家の中に鳴り響いた。
誰だろう?と思いながら玄関のドアを開けると、寒さのせいなのかはたまた別の原因があるのか頬を少しだけ赤くしつつもモジモジとした様子の雪穂が立っていた。
「はい、これ」
「おっ、今年もくれるのか。いつもありがとな」
「……別にっ」
後ろ手に隠された透明な袋に入れられたチョコレートを受け取り、そのお礼として雪穂の頭を撫でる。
雪穂はお礼を言われた照れ隠しで素っ気ない態度を取るが、チョコレートを渡す前よりも顔が赤くなった。
「うぅ…、寒いっ!お返し待ってるからね!!」
どうやら部屋着の上に防寒具を羽織っただけだったようで、用が済むと寒さから逃れるためにスタコラサッサと自分の部屋へと逃げていった。
「寒っ……」
そういえばオレも寝起きの格好のままだった。
「そーくん、おはよ~」
「壮大、おはようございます」
「ことり、海未。おはよ」
雪穂のバレンタインチョコを自室の机の上に置き、朝メシを食べてから制服に着替えて学校に行こうと家に出たらちょうどことりと海未に出会った。
「また穂乃果を待ってるのか……」
「えぇ…。冬になると待たされる時間が長くなるんですよね……」
海未との会話を聞いてあはは…、と同調するように苦笑いすることり。
穂乃果も寒いから学校へ行くギリギリの時間まで布団にくるまっていたい気持ちは分からなくはないが、少しはことりと海未の苦労も……分かってたら2人も苦労はしないか。
「ねぇ、そーくん」
「ん?」
「今日は何の日でしょーかっ!」
「バレンタインデーだろ?」
「せいか~いっ!そんなそーくんには……」
手袋を外してゴソゴソと何かを探し出そうとカバンの中に手を突っ込んだ。
そしてバッグの中からキレイにラッピングされた少し大きめの箱が出てきた。
「ハッピーバレンタイン!!」
「おぉ……今年もありがとな、ことり」
「うんっ♪」
両手で持っている箱を喜んで受け取った。
実は毎年凝ったチョコレートをくれることりのバレンタインを少し楽しみにしているのだ。
ちなみに去年は厚さ30センチくらいのチョコレートチーズケーキを貰い、4日ほどかかったけど1人で全部食べきった。
今年はどんな仕上がりになっているのか今から非常に楽しみだ。
「海未ちゃんも渡そうよ!」
「えぇ!?今ここでですか!?」
「うん!だってことりはもう渡したよ?」
ですが……、と言葉を濁らせている。
「何か都合でも悪いのか?まさか何も用意してない……とか?」
「そういうわけではないんです。作ったには作ったのですが今は自宅の冷蔵庫に寝かせてて……すみません」
スカートの裾をキュッと握って顔を真っ赤にしながら早口で説明する。
つまり、今は渡せないけど今日中に渡しに来ると勝手に解釈する。
「そっか。それなら仕方ないな」
「それはそうとそーくん時間大丈夫なの?」
「へ?……もうこんな時間!?」
ことりに唆されて時計代わりのスマートフォンで時間を確認すると、陸上部の朝練の時間に間に合うか間に合わないかの瀬戸際の時間帯だった。
歩いていくと到底間に合わないから急いでロードバイクの鍵を解除し、ヘルメットとサングラスを装着してからサドルに跨がる。
「そろそろ時間だから行くわ!それじゃ、またな!」
海未とことりに向かって別れの挨拶を済ませてからペダルを一気に踏み込み、スピードを上げながら急いで学校へ向かった。
思いっきりペダルを踏んだので朝練には間に合い、朝練をしてから教室へ入るとやはりと言うべきなのか教室内がソワソワした空気になっていた。
そして遠くからは……、
「いたぞ!『近所のスーパー全店のチョコというチョコを買い込んでバレンタインで使わせないゾ☆』募金に参加しておきながらバレンタインチョコを貰った不届きものが!!」
「ちぃっ!見つかっちまった!!」
「待てやゴルァ!!!」
「待てと言われて待つのはエサを貰うときのペットくらいしかいねぇよ……ってお前ら!バレーボールとかダーツの矢を使うのは反則だろ!?」
「うるせぇ!『目には目を、歯には歯を、裏切り者には怒りの鉄槌を』ってのがこの世の摂理なんだよ!!」
「理不尽すぎる!?」
校舎の至るところからありとあらゆる罵倒や怒号が聞こえてくる。
__バーン!!!!!
「見つけたぞ松宮ァ!!」
大きな音を立ててドアを開け放ちながらターゲットを定めに来たのは昨日『近所のスーパー全店のチョコというチョコを買い込んでバレンタインで使わせないゾ☆』募金に大枚叩き、一躍募金活動の名誉会長に就任したらしい副部長とその他の取り巻き数人。
「みんな!アイツは今朝音ノ木坂学院に通うメッチャ可愛い女の子からバレンタインチョコを貰った俺たちの敵だ!すぐに拷問室へ連行せよ!!」
「覚悟してください松宮センパイ!全てはバレンタインという忌まわしき風潮があるからいけないんです!!」
「なんと羨ま……けしからん!!」
「ガンホー!ガンホー!!」
「我、同胞と大地の力を得て最速の王者を打ちのめさん!!」
「■■■■■■■■■■■――っ!!」
最後の取り巻き2人……せめて日本語を話せ。
オレは熊本弁はサッパリだし狂戦士語に関しては何1つ分かんねぇし副部長を始めとしたここにいる数人は嫉妬や憎しみなどの感情がバーストして目覚めたのか某戦闘民族のような金色のオーラを纏っている。
あぁもう……めんどくせぇ。
オレはブレザーを脱ぎ捨ててから憎しみの感情をバーストしている連中に向き合い、手招きをする。
「来いよお前ら!つまらねぇプライドや精神的負荷なんか捨ててかかってこいやぁぁぁぁあっ!!!」
「はー…。疲れた……」
学校帰りゆっくりペダルを漕ぎながら1人呟く。
副部長たちとのバトルは他の部隊への見せしめも兼ねてグラウンドや学校の花壇に背筋が大地や土に対して垂直になるよう姿勢を正した状態で頭から突き刺して無事に終結させた。
その光景を見てからは暴徒による暴動はピタリと止み、バレンタインチョコを渡したくても渡せない恐怖でカチコチに固まっていた女の子は無事に想い人へ渡せられるようになったとか。
しかしダメージは凄まじくまともに授業を受けることが出来ず、何度も出席簿の角やチョーク投げのターゲットにされた。
いろんなダメージを受けた時は家に帰ってことりや雪穂からバレンタインチョコを食べてから速攻寝るに限る。
「お~い!そーく~ん!!」
どんなチョコを作ってきたのかワクワクしながら帰っていると後ろからオレを呼ぶ声が聞こえたので一旦ペダルから足を放してから後ろを振り向く。
「やーっと追い付いたにゃ!」
「凛…、あなた……速すぎ……」
凛ちゃんと凛ちゃんに引っ張られて走ってきたのか息も絶え絶えな真姫がやって来た。
……あれ?
「花陽ちゃんは?」
いつも一緒にいる花陽ちゃんの姿がどこにも見当たらない。
走ってきたから置き去りにしてきたのかと思っていたけど、花陽ちゃんの助けを呼ぶ声が一向に聞こえないので
「花陽なら……」
「飼育委員のお仕事で先生やいいんちょーさんに呼ばれちゃったから一緒に帰れなかったにゃ」
ありゃりゃ……花陽ちゃんもツイてないな。
委員会関係で先生にも呼ばれてるんじゃどうしようもない。
きっと引き継ぎとかの事だろうからかなり時間がかかると思うので、少し花陽ちゃんに同情する。
「だからかよちんの分も……そーくんハッピーバレンタイン!」
「はっ?」
「……さっさと受け取んなさいよ」
花陽ちゃんの不運に同情していたら凛ちゃんは元気一杯に箱2つを、真姫はツンとした態度でリボンで止められた箱1つを渡してきた。
「これ……オレに?」
「壮大以外誰がいるっていうのよ……」
「えへへ……、何だか少し恥ずかしいにゃ……」
呆れながらもそうだ、と肯定する真姫と照れ笑いする凛ちゃんを交互に見る。
「ありが……とう」
まさか凛ちゃんたちからも貰えるなんて全く思っていなかったら感激のあまり声が出ず、ようやく絞り出した声も詰まり詰まりになってしまい凛ちゃんも真姫も優しい目で笑っていた。
「じゃあそーくんまたね!かよちんにもよろしく言っとくにゃ!」
「しっかり味わって食べなさいよ?」
バレンタインチョコを渡すという用件が済んだ2人は仲良く来た道を帰っていった。
「にこにーはぁ、み~んなのアイドルだからモテてモテて困っちゃうの~」
「そうですか」
「ちょっと!まだ話は終わってないんだから帰らないでよ!!」
オレの腕を掴んで帰らせないように抗議しているのはそこでバッタリ出会ったにこちゃん。
仕方ないからもうちょっとだけにこちゃんに付き合うことにする。
次もこんな感じだったら容赦なく帰ることにしよう、と心に決めながら話の続きを促す。
「街中を歩いてても視線がにこに集まるっていうかぁ、バレンタインだからにこにチョコを渡したいって子が列を作ってるかもしれないなぁ」
「そうですか。では、オレはこれにて」
「だからまだ話は終わってないんだってば!お願いだからにこの話を最後まで聞いて!?」
「ぐぇっ!?」
今度こそ帰ろうとサドルに跨がろうとすると今度は襟首を掴まれ、カエルが押し潰された時のような声が喉から漏れる。
いきなり気道を塞がれてしまったので当然のごとく激しく噎せてしまう。
「ゲホッ!ゴホッ!!……何するんですか!?」
「あんたが帰ろうとするからでしょ!?」
だからと言って首根っこを掴まないでほしい。
お陰で視界が一瞬だけ真っ白になってしまったんだし。
「いいから最後まで聞いてよ!!そんなに時間はかけないから!」
「仕方ありませんね……ゴホッ!」
今度帰ろうとすると何されるか分からないので大人しくにこちゃんの話を最後まで聞くことにする。
「でね?そんなにこからチョコを貰えるなんてすっごくラッキーだと思わない?」
「そーっすね」
「ってなわけで……はい。バレンタインのチョコ」
「……へっ?」
さっきまでの寸劇の流れをぶった切るようにバレンタインチョコを手渡してきたので面食らってしまい、変な声を出してしまった。
「えっ?あっ、ありがとうございます……」
「フフッ…、変な顔。そんな壮大の顔を見れてにこもラッキーだったわ」
やられた……。
オレへのサプライズが成功したにこちゃんは白い歯を見せながらニシシ、と笑う。
「ホワイトデーのお返し!ちゃんっっっと待ってるからね?」
「壮くん、やっほ~」
「こんばんは、壮大」
「今度はしっかり持ってきましたよ?」
夜。
のんちゃんと絵里ちゃん、そして海未の3人がオレの家にやって来た。
もちろん3人とも箱や透明な袋を携えて。
「まずウチから渡させてもらおかな?壮くんハッピーバレンタイン!」
のんちゃんから渡された箱を受け取る。
みんなのと比べるとズシリ、と重量感がダイレクトに伝わってくる。
「ウチのスピリチュアルパワーもたーっぷり入れさせて貰ったからきっと美味いこと間違いなしやで?」
「あはは……」
スピリチュアルパワーたっぷりなら食べただけでいろんな事が起きそうだ……。
「次は私ね。壮大、ハッピーバレンタイン」
絵里ちゃんのバレンタインチョコは一風変わっていてキャンディーみたいな包装になっていた。
「亜里沙と2人でロシアチョコレートを初めて自分で作ってみたの」
「亜里沙ちゃんにありがとう。って伝えておいてください」
チョコレート好きの絵里ちゃんが作ったものなら美味いに決まっている。
それにロシアチョコレートには少し興味があったのでありがたく頂くことにしようと思う。
あと亜里沙ちゃんもありがとう。
「最後は私ですね。壮大、いつもありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いしますね?」
海未から手渡された箱を受け取る。
「生チョコですので早めに食べていただけると幸いです」
「いつもありがとな、海未。絵里ちゃんものんちゃんもありがとうございます!」
改めて絵里ちゃんたちにお礼の言葉を述べてから頭を下げた。
今年は例年よりも多く貰ったので自室のテーブル上はバレンタインチョコでいっぱいだ。
海未にことりに雪穂と言った幼馴染組に加えて今年は真姫、凛ちゃん、花陽ちゃん、絵里ちゃん、のんちゃん、にこちゃんの6人を加えて合計で9つ貰った。
1つ1つ確認していくと海未はさっきも言った通り生チョコ。
ことりはガトーショコラ1ホール。
雪穂とにこちゃんはそれぞれタイプは違うけど一口大のチョコトリュフ。
のんちゃんは縦8センチ、横17センチのチョコレートブラウニー。
花陽ちゃんはライスパフを使ったバータイプのチョコレート。
凛ちゃんはところどころ形が歪だけどハートを型どったスイートチョコレート。
絵里ちゃんは亜里沙ちゃんとの合作によるロシアチョコレート。
真姫だけは市販だったけどなかなか手が出せないような値を張るブランデー入りの高級チョコレートだった。
みんなそれぞれ違いはあるけれどみんなの気持ちが込められたチョコレートには変わりはない。
つくづくオレは幸せ者だと感じさせられた1日になった。
みんな、わざわざこんなオレのためにチョコレートを用意してくれてありがとな。
みんなへの感謝の気持ちを現しながらチョコレートを食べ始める。
食べ始めてから数分後。
みんなのチョコレートを少しずつ食べているときにふと気付いた。
穂乃果から貰ってなくね?、と。
気になったオレはチョコレートを食べるのを止め、穂乃果に電話してみた。
『そーちゃんハッピーバレンタイン!』
「ありがとう。みんなバレンタインくれたけど今年は用意してないのか?」
『ほぇ?私、そーちゃんにチョコレートあげたよ?』
「は?オレの記憶にはそんなこと覚えてないんだけど……?」
『日付が変わると同時にグッスリ寝てるそーちゃんに1つずつ食べさせたもん!』
……普通に渡せや。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
ところでみなさんはバレンタインデーの思い出はありますか?
私は高校2年の時に女の子2人から1つしか作っていない(本人談)義理チョコを貰ったことがあります。
1つは作中で言うと希ちゃんのようなチョコレートブラウニーを、もう1つはスイートとビターのチョコトリュフを貰いました。
今となってはいい思い出ですね。
え?今年はどうなのかって?
貰えるわけないじゃないですか……(震え声)