ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

112 / 121
だいぶ前の話になりますがこの小説のUAが10万を超えました。

これもみなさんのおかげです。

長らく執筆していなかったのでリハビリ的な感じで書きました。

それでは……どうぞ!


『UA10万感謝御礼企画』 風邪引き壮大

ベッドの上で横になっていたオレは脇に差していた体温計を抜き取ってから視界に入るところまで持ち上げる。

 

体温計の先端や体温を表示する画面を見ていたら何だか頭がガンガンしてきたし、寒気とかいろんなものがドンとやって来た。

 

けれど咳や鼻水がほとんど出てないのは救いなのかもしれない。

 

「39.1℃…か……」

 

霞む視界の中でようやく見えたデジタル数字は平熱よりも2℃以上も高い温度だった。

 

きっと今のオレの病状は風邪だ。

 

それもかなり重いやつだ。

 

だからみんなに『風邪ひいたから休みます』って連絡しなきゃ……。

 

あぁ、そうだ。

 

昨日寝る時に下に置きっぱなしだったっけ……。

 

携帯電話を取りに手摺に捕まりながら階段を降りていくとまた視界が霞み、手摺に捕まっているのにも関わらずバランスを崩してしまい倒れ込む。

 

意識を手放す直前に見えたのは眼前に迫った階段だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと首の後ろあたりから冷たい何かを感じたので目を覚まし、首だけを動かして確認する。

 

「氷枕……?」

 

氷枕なんて用意したっけ……?

 

確か携帯電話を取りに階段を降りようとして……。

 

「あっ。やっと起きたわね」

 

「にこ……ちゃん………?」

 

タオルケットを持って自室のドアを開けながらやって来たのは音ノ木坂学院の校舎で練習しているはずのにこちゃんだった。

 

「どうして…ここに……?」

 

「話せば長くなるんだけど……」

 

横になっているオレにタオルケットをかけつつそう前置きしてからにこちゃんがオレの家に理由を話してくれた。

 

第1発見者はたまたま朝早く起きてことりと海未と一緒に学校へ行こうとしていて穂乃果だったらしい。

 

オレの家から大きな音が聞こえたから玄関を開けると熱を出した状態で階段から転落して意識が朦朧としているオレを発見。

 

穂乃果の親父さんがオレの部屋まで運んでくれてその間にμ'sメンバー全員に報告したらしい。

 

『みんなで看病しよう!』と穂乃果が提案し『大勢で押し掛けても壮大が困るでしょ?』と絵里ちゃんに止められるも、『だったら代表で誰か看病してあげればいいんじゃない?』と言うことで話が纏まったらしい。

 

看病する人はじゃんけんで最後まで勝ち残った人がする、というルールだったみたい。

 

「……それでにこがみんなを代表して壮大の看病しに来たってわけ。それにしても意外だったわ」

 

「……?」

 

「今日ここに来るまであんたみたいな人は風邪ひかないと思ってたし、もし風邪をひいても平気そうだと思ってたのよ」

 

「オレだって……人間です……よ?」

 

にこちゃんと話していてまたしんどくなってきたので目を閉じる。

 

かといってさっきまで寝ていたので眠れる気配は全然なくてかなりキツい。

 

すると額にひんやりと冷たい感触が感じ取れた。

 

うっすら目を開けると、にこちゃんの手がオレの額に向かって伸びていた。

 

「にこちゃんの手……冷たい………」

 

「あんたが熱すぎるのよ。……少し待ってなさい」

 

そう言ってにこちゃんは立ち上がって視界から消えるが、 生憎それを追う気力は残っていない。

 

オレは目を瞑り、暑くなってきたのでさっきにこちゃんがかけてくれたタオルケットを払いのける。

 

そしたらすぐに寒気が増したので再びタオルケットを頭から被る。

 

このタオルケットにこちゃんの匂いがする……。

 

こんな普通なら考えないようなことが脳裏に浮かんでくるのも風邪のせいだ。

 

にこちゃんがかけてくれたタオルケットを被りながら悶々としているとにこちゃんがいろんな物を持って戻ってきた。

まずは洗面器に張られてた水でタオルを絞ってくれた。

 

「……これ、雑巾じゃ……ないですよね?」

 

「あんたにはこれが雑巾に見えるの?」

 

返答の代わりに首を横に振り、にこちゃんが額にタオルを置いてくれた。

 

冷たく感じたのは一瞬であまり冷たくないなぁ……って思ってたけど、その上に更に氷が詰まったビニール袋を載せてくれた。

 

「あと、これも」

 

にこちゃんが氷をつまんでオレの口元へ持ってくる。

 

「にこちゃんの指……?」

 

ちょっと絵面的にエロくなるんじゃないかな……。

 

それにこのお話R-18指定になってないぞ……?

 

「誰がにこの指を舐めろって言ったのよ。あまり冗談言ってると帰るわよ?」

 

「……すみません」

 

謝りながら口を開け、口の中に入れられた氷をコロコロと転がすように舐める。

 

もし味覚が正常だったらにこちゃんの指の味とかしたのかな……?

 

って、こんなこと考えとる時点で既に正常じゃない気もするけど。

 

「もっと氷食べられそう?」

 

「あと……1つだけ……」

 

氷をもう1つねだり、にこちゃんはオレの口に氷を入れる。

 

こうしてるとまるで餌付けされてるヒナ鳥みたいだ。

 

「ホントはこのまま真姫ちゃんから渡された薬を飲ませたいんだけど……この様子だと朝から何も食べてないわよね?」

 

今度の問いかけには首を縦に動かす。

 

「じゃあ食べ物持ってくるから大人しく布団被って待ってなさい。あと冷蔵庫だけど勝手に開けるわよ?」

 

「いい……ですよ……」

 

 

 

 

 

「壮大、起きなさい」

 

身体を揺さぶられながら声をかけられ、その反動で目を覚ます。

 

いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

 

でも、少し眠ったお陰で少しだけ身体を動かす力が戻ったのでヨロヨロと上半身だけベッドから起き上がる。

 

「桃缶……?」

 

「何故かシンクの所にあったのよ」

 

昨日までの買い物で桃缶を買った記憶はない。

 

きっと夏穂さんが置いていってくれたのだろう。

 

「でも、これなら食べられるんじゃない?」

「……たぶん」

 

「じゃあ、開けるからちょっと待ってなさい」

 

パカッと缶が鳴り、中身がにこちゃんの手によって手際良く皿に移し代えていく。

 

「はい。食べられるわよね?」

 

「んぁ……」

 

「何アホ面しながら口開けてんのよ……」

 

聞かれたことに何も答えずにヒナ鳥みたいに口をパクパクさせているとにこちゃんは観念したように溜め息をつきながら桃をフォークで丁寧に4等分にしている。

その内の一つを上手いことすくってから口へ持ってきてくれた。

 

「……うまい」

 

「そう?それならよかったけど……」

 

「それもですけど手際が慣れてると言いますか……」

 

「……チビたちがいるからよ。小さい子って直前まで元気に走り回ってたと思ったらすぐに体調が悪くなったりするでしょ?」

 

にこちゃんの言い分はとても説得力があったけどオレとしては何だか腑に落ちない。

 

「……つまり今のオレは弟くんたちと同レベルってことですか?」

 

「こんな弟いたらいくら身体があっても足りないわよ。食費とか大変なことになりそうだし」

 

酷い言いがかりだ……と思いながら再び口をパクパクさせる。

にこちゃんは『はいはい……』観念した様子でカットしてくれた桃を次々とオレの口の中へ運んでくれた。

 

そんなに食べられねぇだろうなぁ……と思っていた桃缶1つ丸々スパッと食べ切った。

 

そんで真姫から預かってきたという風邪薬を飲んだ。

 

粉末タイプの薬は少し苦手なのが分かっているのか錠剤タイプの薬だった。

 

たっぷりかいた汗を拭いてから着替え終わったら風邪薬が効いてきたのか段々と瞼が重くなってきた。

 

「……眠くなってきた」

 

「風邪薬が効いてきたのね。にこの事気にしなくていいから早く寝ちゃいなさい」

 

「……にこちゃん」

 

何よ、とジト目で見てくるにこちゃんに向かって手を伸ばす。

 

「オレが寝るまで手……繋いでてください」

 

「今日のあんたホントにどうしちゃったのよ……」

 

「ダメ……ですか?」

 

「……しょうがないわね」

 

1度イスから立ち上がったけどオレのわがままを叶えるべく再びイスに座り直し、布団から外へと伸びていた手ににこちゃんの小さな手が重なる。

 

にこちゃんの手は思っていたよりも小さくて肌触りがよかった。

 

「……放したりしませんよね?」

 

「そんな心配そうな顔しなくてもあんたが寝付くまで放さないわよ」

 

「……オレの風邪が治るまで放したりしませんよね?」

 

「そんなに握られてちゃ何処にも行けないわよ 」

 

「…………よかった」

 

意識がドンドン落ちていく。

 

にこちゃんの小さな手はいつの間にか冷たくなくなり、温かくなっていた。

 

薄れゆく意識のなか、にこちゃんの困っているようにもとれるし弟や妹を安心させるようにもとれる笑顔をしていた。

 

苦しいけどたまには風邪ひくのもいいかもしれないな……。

 

眠りにつく間際そんな事を思った。

 

にこちゃん……今日はありがとう。

 

 

 

 

~Side 矢澤 にこ~

 

 

「スー……、スー……」

 

壮大から規則的な寝息が聞こえてきた。

 

はぁ……、ようやく眠ったわね。

 

流石にもういいでしょ……。

 

そう思い、繋がれた手を放す。

 

昼くらいにここに来たと言うのに外を見ればもう夕方だ。

 

早いとこ家に帰ってチビたちの面倒も見なきゃいけないしね。

 

「ゆっくり休むのよ……?」

 

壮大の部屋のベッドの近くに置いた荷物を持ち直しながら呟く。

 

部屋から出る直前に壮大の顔を見ると呟いた事が聞こえたのか分からないけど心なしか顔が緩んだような気がした。

 

ぐっすり眠っている壮大を起こさないように静かに壮大の家を後にする。

 

それにしても手を繋いでてください…か。

 

何だかんだ言って壮大の根っこの部分は甘えん坊なところもあんじゃん。

 

きっとにこだけしか知らない壮大の意外な一面を思い出しながら歩いていると……、

 

「……くしっ!!」

 

…………ん?

 

 

Side out

 

 

 

 

 

数日後。

 

にこちゃんの献身的な看病のお陰ですっかり元気を取り戻したオレはこころちゃんの電話を貰い、何個かのレジ袋を持ってにこちゃんの家の前に立っていた。

 

インターホンを押すとトタトタと玄関に向かってくる足音が聞こえ、やがて足音が止むとドアが開く。

 

「お兄さん!こんにちは!!」

 

「こんにちはこころちゃん。……お姉ちゃんはいるかな?」

 

「こっちです!」

 

こころちゃんのお出迎えで矢澤家の敷地内に上がらせてもらい、そのままにこちゃんの部屋へと通された。

 

「お姉さま!お兄さんが看病しにきてくれました!」

 

「こころ。悪いんだけどすぐに帰らせて……」

 

ほぼノータイムで帰還命令を出されてしまった。

 

布団からひょこっと出ているにこちゃんの顔を見てみると頬は真っ赤で額には冷えピタが貼られ、トレードマークの赤いリボンは部屋のテーブルに置かれていた。

 

つまるところ……オレの風邪をにこちゃんにそっくりそのまま移してしまったのだ。

 

「……とんでもない顔してますね」

「好きでこんな顔してないわよ。それにこんな風になったのは誰のせいだと思ってるのよ?」

「オレのせいだから看病しに来たんじゃないですか……」

 

それくらい嫌ってほどわかってますよ……、もう。

 

「そんなわけで看病しますよ。オレにどうしてほしいですか?」

 

「それじゃあ今日はずっと一緒にいてくれる?」

「いいですよ。にこちゃんが嫌だって言うくらいいますよ。ずぅっとね?」

 

……にこちゃんには申し訳ないけどたまには風邪っていいもんだな。

 

こんな素直なにこちゃん……普段なら絶対見られないし。

 

さてと……、にこちゃんの看病頑張りますかぁ!!

 

気合いを入れるため制服のブレザーとネクタイを外し、長袖のYシャツの袖を捲ってからにこちゃん家の台所へと向かった。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます!

本編はまだ2割くらいしか出来てないので次回投稿はホワイトデー特別編か海未ちゃん特別編になるかもです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。