ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
では、どうぞ。
ここは都内某所にある学生寮。
女子9名、男子(管理人兼学生)1名が入居している少し変わった学生寮……その名も『音ノ木荘』。
そんな音ノ木荘の1日の始まりは早い。
【AM5:00】
「おはようございます。壮大」
オレは軽く欠伸をしながら練習用のランニングシューズを胴着に着替えた海未が向こうから歩いてきた。
「おはよう海未。今日も朝稽古か?」
「はい。弓道の大会が近いので少しでも弓を握っていたいので」
「そっか。いつ稽古が終わってもいいようにシャワーは浴びれるようにしてあるから」
ありがとうございます、と軽く一礼をしてから寮内に備え付けられた弓道場に向かっていった海未を見送っていると今度は紫紺の長い髪をを左右に分けてシュシュで結びつけているのんちゃんが歩いてきた。
「壮くんおはよ~」
「おはようございます。今日もお散歩ですか?」
「うん。今朝は神田明神まで行こうかなって」
『朝方の空気はスピリチュアルなパワーに満ち溢れてるから』という理由で朝の散歩が大好きなんだとか。
「それじゃ朝ご飯の時間までには戻ってくるから~」
手を軽く振って朝のお散歩へと行ってしまった。
……あれで入居人の胸をわしわししたがるクセがなければなぁ。
っと、オレもそろそろ走り始めないと。
ミュージックプレーヤーの電源を入れてからイヤホンを耳に挿し、のんちゃんが歩いていった方向とは逆の道を走り始めた。
【AM6:30】
シャワーを浴び終えてから昨日の夜から仕込んでいた朝メシを暖め直そうと厨房に行ったら、制服の上からエプロンを着て大きな鍋に入っていたスープの味見をしているにこちゃんとみんなの分の弁当を詰めていることりがいた。
「おかえり。このスープに少し手を加えちゃったけどいいわよね?」
「にこちゃんがいいっていうなら文句は無いですよ」
ここ音ノ木荘で出しているメシはにこちゃんとオレとことりで管理してるけど、ことりやにこちゃんの方が料理が上手いので基本的には2人に任せている。
「そーく~ん。お弁当のご飯の量はいつもと同じでいい?」
「ん。お願い」
「は~い」
ことりはオレの弁当箱と杓文字を持って炊飯器のところへトテトテと歩いていき、ご飯を詰め始める。
「そろそろ6時45分か……。希と海未も戻ってくるだろうし起きてるメンバーだけでも先に朝ご飯食べちゃいましょ?」
「そうですね。じゃあ食器の準備してきます」
「ことりも手伝うよ!」
【AM6:45】
ことりと一緒に食器を準備している間に朝稽古していた海未とお散歩に行ってたのんちゃんが、食堂のテーブルを拭いたり醤油などの調味料を出したりしていると絵里ちゃんと真姫と花陽ちゃんが食堂にやって来て食堂の中が一気に賑やかになった。
「それじゃ、いただきまーす」
「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」
オレの号令でみんなは一斉に朝メシを食べ始め、それぞれ和気藹々とした空気の中が食堂に広がる。
「ところで今日は放課後に予定とかあるかしら?」
みんな朝メシを食べ終えたところでこの場にいる人を代表として絵里ちゃんがみんなの今日の予定を聞き始めた。
「私は今日も弓道部の練習があるので帰りが少し遅くなります」
「オレも部活で遅くなります」
「私も今日はアルバイトが……」
海未とオレは部活が、ことりはメイド喫茶のアルバイトが入っている事を絵里ちゃんに報告する。
「分かったわ。他に予定がある人はいるかしら?」
「予定ってほとじゃないんですけど今日の夕方辺りに親戚から新米がいくつか届く予定なので誰か受け取ってくれるとありがたいんですけど……」
「私がやります!!!」
『新米』という単語を聞いて花陽ちゃんが茶碗を片手にビシィッ!!と力強く挙手をして役目を受け持ちたいと願い出てきてくれた。
「それじゃ花陽ちゃんよろしく。部屋のカギは開けとくから判子は机の上に乗ってるのを使ってくれ」
「分かりました!はぁ~……白いご飯はいいですよねぇ……」
白米が大好きな花陽ちゃんは既に送られてくる新米の事で頭が一杯になってトリップしてしまった。
「それじゃ食べ終わった事だし……例の2人を起こしに行ってきます」
朝メシ後は決まってこの場にいない2人を起こしに行くことが最早朝の音ノ木荘のルーティンと化している。
「待って。私も行くわ」
「んじゃ、行くか」
「壮大と真姫の食器は下げておくわね」
「お願いします」
席から立ち上がろうとしたところで真姫も例の2人を起こしに行くと言ってくれたので、オレはグラスの中にあるものを入れてから真姫と共にまだ眠っているであろう寝坊助がいる居住スペースへと向かった。
【AM7:15】
「毎日毎日凛ちゃん起こしに行くけどみんなと一緒に学校に行きたいのか?」
「なっ!?ち、違うわよっ!私はただ少しでも早く学校に行って日直の仕事をしたいだけよ!!」
今日お前日直じゃないクセに……この間そう言ったら脇腹をつねられた。
『みんなと一緒に学校に行きたい』って言えば例の2人もきっと早起きすると思うんだけどなぁ……。
なんて考えているうちに例の2人がいる部屋に着き、まずは普通に起こす。
「穂乃果~、それ以上寝てると遅刻するぞ~」
「凛、起きなさい。また先生に叱られるわよ?」
だが、普通に起こしても穂乃果と凛ちゃんは寝返りをしながらも決まってこの言葉が返ってくる。
「「……あと5分」」
朝起こされた時の定番とも言える『あと5分』。
だが、この2人が起きるまでそんな悠長に待ってられるほど朝の時間は長くはない。
「もう!毎日毎日起こしてるこっちの身にもなってよ!!」
「……真姫、ちょっとこっちに」
凛ちゃんを起こそうと躍起になっている真姫をチョイチョイと手招きして一旦部屋の外に出てもらい、食堂から持ってきたグラスの中に入っているあるものを渡す。
「これで起こせって言うの?」
「あぁ。いつも寝坊しそうになってる2人にとっていいお灸にはなるだろう?」
「……そうね」
慎重な足取りで穂乃果たちに忍び寄り、起こされてもなお寝続けている2人の背中に向かって手にしていた物をポイッと投げ入れる。
「「……冷たっ!?」」
いきなり背中に冷たいものを入れられた2人はとんでもない早さで布団を蹴飛ばし、背中に入った物を大急ぎで取り除いた。
「もうっ!女の子の背中に氷を入れるなんてひどいよそーちゃん!」
「そうにゃそうにゃ!!」
起きて早々氷を入れられた事でぎゃーぎゃー文句を言う2人。
ほほぅ……?
手荒な真似だったとはいえ起こしてもらっといてそんな事を言うのか?
「だったら明日から2人だけ魚料理とピーマン料理縛りでもしてやろうか?」
「鬼!悪魔!!」
「そーちゃんの人でなし!!」
「だったら明日からみんなと一緒にメシ食えるように早く起きろ。あと、メシの準備は出来てるから早く食ってくれ」
「「……は~い」」
まだ文句ありそうな感じだった2人は力無い返事食堂へ向かうため階段を降りていった。
【AM7:45】
「……これでよし、っと」
つい2分くらい前にみんなは一緒に音ノ木坂学院へと登校していったのを確認してから音ノ木荘の玄関のカギを閉め、オレの郵便受けの中にカギを入れる。
住民の誰が先に帰ってきてもいいようにオレの郵便受けの中にカギを入れておくのが音ノ木荘の決まり事となっているからだ。
「さて、オレも学校行かなきゃな……」
ヘルメットを被ってから自転車に跨がり、学校に向かってゆっくりとだがペダルを踏んで徐々にスピードを上げていく。
ちなみにオレは女子校である音ノ木坂学院ではなく、この辺で最も近くて体育科がある立華高校に通っている。
……最も近いと言っても歩いて30分はかかる距離だけど。
【PM0:45】
午前の授業終了を知らせるチャイムが校内に響き、校舎は一気に騒がしくなる。
体育科に在籍している生徒のほとんどは燃費の悪い身体をしていて、寮や自宅から持ってきた弁当だけじゃ足りないので購買のパンやおにぎりなどを求め教室を出ていく。
「松宮。学食でメシ食べないか?」
教室で食べようかな?と思っていると、1学年上でオレが所属している陸上部の部長がやって来た。
特に断る理由も無かったのでご一緒させてもらうことに。
学食について部長は豚の生姜焼き定食を、オレは自販機で牛乳とコロリーメイトを買ってから席につく。
そしてことりが詰めてくれた弁当の包みを解く。
「今日も弁当か?」
「そうですね。大した物は入ってないとは思いますけど……」
と、言いつつ何だかんだ期待している自分がいる。
期待に胸を踊らせながら弁当箱の蓋を開けると、色とりどりのおかずたちと……海苔で作られたオレの似顔絵があった。
「これ作ったやつすげぇな。……お前の似顔絵、似すぎでしょ」
……さすがにこれは恥ずかしいぞ、ことり。
【PM5:00】
「……ふぅ」
部活の休憩時間。
スポーツドリンクが入ったボトルとスマホを持ち、タオルを首にかけて風通しのよい木陰に横たわる。
そろそろ米が届く頃だけど花陽ちゃんはしっかり受け取ってくれただろうか……。
心配しながらスマホのスリーブモードを解除するとメッセージが1件入っていた。
中身を確認すると花陽ちゃんからで、『ついさっきお米を受け取りました!でも量が多いので玄関の隅っこに寄せてもらいました。あと印鑑は壮大くんの部屋に戻しておきました』と状況が分かりやすく書かれていた。
米の袋は1袋30kgくらいあるので女の子の腕力では持ち上げるのは難しいので、こういった力仕事は基本的にはオレの役目だ。
玄関から米を保管する場所まで意外と距離があるのでいい筋トレにはなる。
「センパ~イ!そろそろ休憩終わりますよ~!!」
「分かった。すぐ行く」
休憩時間の終わりが近付いてきていることを後輩が知らせに来たので、花陽ちゃんのメッセージに『分かった。ありがとう』とだけ打って送信して急いで練習再開の準備を始めた。
【PM7:30】
自転車を漕いで音ノ木坂に向かっていると特徴的な髪形をした少女が1人買い物袋を持って歩いていた。
「ことり」
「そーくん!今日もお疲れさま~」
自転車から降りてからことりの学生カバンを預かり、それを背負って並んで歩いていると買い物袋が握られていた。
「その買い物袋は?」
「これ?にこちゃんに頼まれた焼肉のタレだよ」
「焼肉のタレ?」
「うん。音ノ木荘では希ちゃんが商店街のガラガラ抽選会で黒毛和牛を当ててきたから『今日は焼肉にしよう!』って話になってるみたい」
そういえばのんちゃんは摩訶不思議なパワーがあったんだった。
でも、部活でギリギリまで追い込んだ身体に黒毛和牛はありがたい。
「そっか。なら早く帰ろうか」
「うんっ♪ことり黒毛和牛なんて初めてだから楽しみ!」
黒毛和牛が待ってるってだけでオレたちの足取りはすごく軽くなった。
【PM10:05】
「ふぃ~……さすが黒毛和牛だな」
風呂道具をラックの上に乗せ、バスタオルをハンガーにかけてから物干し竿にかけて自然乾燥を促す。
のんちゃんが当ててきた黒毛和牛と親戚から届いた新米のコンビがみんなの腹を満たし、満足気にそれぞれの部屋に帰っていった。
オレはオレでその後みんなが使った食器やホットプレートを洗ったり、食堂のテーブルを拭いたり米の袋を運んだりしているうちにもう午後10時を回っていた。
でも、オレの1日はこれで終わらない。
「さて、と……」
バッグの中から英語と数学と物理の教科書と日本史の問題集とノートを取り出し、机の上に乗せる。
学校から物理と数学の宿題が出され、英語は予習と復習だ。
それらが明日オレが当てられるのでこうして机に向かおうとしているわけ……なのたが。
__凛ちゃん!これが最後の一撃だよ!
__にゃにゃにゃにゃにゃあ!……やった!穂乃果ちゃん撃ち取ったりィィィ!!
……まーたやってるよ。
穂乃果と凛ちゃんが朝起きるのが遅い理由が大乱闘して相手が操作するキャラをスマッシュするゲームをやってるからではあり、毎回毎回玉杓子を持って突貫するのだが今日ばかりは違った。
__穂乃果……?凛……?
__ゲェーッ!?海未ちゃ……うわぁぁぁぁあっ!?
__よくも穂乃果ちゃんを……にゃぁぁぁぁあっ!?
「…………」
さーて、気を取り直して勉強の続きでもすっか。
【AM1:00】
「……こんなもんか」
シャーペンを置き、机の上に広げていた日本史の問題集を閉じる。
……そろそろ寝るか。
そう決めたオレはベッドの上に横たわり、布団を被って目を閉じる。
こうして騒がしくも楽しい音ノ木荘の1日は終わりを告げたのであった。
【翌日 AM5:00】
「おはようございます。壮大」
「おはよう海未。今日も朝稽古か?」
学生寮の管理人も楽じゃ……ない?
こんな学生寮があったら……入寮してみたいですか?
私はことりちゃんか凛ちゃんと同部屋がいいですwww