ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
まきちゃん(楽曲はCHERRY BLOSSOMさんの『CYCLE』です!)
まきちゃん(それでは、どうぞ!)
~Side 西木野 真姫~
「はぁ……」
これで何度目かなんて思い出すだけでも億劫なくらいの数え切れないくらい多くの溜め息を吐き、音楽室のグランドピアノの鍵盤の蓋を閉めてから天井を見上げた。
第2回ラブライブ!を終え、にこちゃんを始めとした3年生がここ音ノ木坂学院を卒業して早くも1ヶ月半が過ぎた。
ラブライブ優勝で少しくすぐったかった学校内の空気も落ち着きを取り戻し、私はというと新学期に入ってからは真面目に勉強に取り組んでいるつもりではいるがどうも集中出来ずにいた。
……今日はもう家に帰ろう。
グランドピアノに備え付けられたイスから立ち上がりバッグを持って音楽室のカギを閉め、職員室に音楽室の鍵を返して学校を後にした。
Side out
~Side 星空 凛~
「かよち~ん!お待たせしたにゃ!」
「凛ちゃん。今日もお疲れさま」
2年生に上がったタイミングで陸上部に入部した凛はいつものようにかよちんと一緒にあれこれ話しながら家に帰ってるにゃ。
でも、話す内容はいつも決まっていて……。
「真姫ちゃん今日も元気無かったにゃ……」
「心配だよね……。この前どうしたの?って聞いても『何でもない』の一点張りだったし」
「かよちんが聞いてその返答なら凛が聞いても同じだよね……」
今となってはかよちんと同じくらい大切な友達である真姫ちゃんの事で凛たちの中では持ちきりにゃ。
最初はただ単に体調がよくないだけかと思ってたけど体育の授業もきちんと受けている。
でも、凛たちと一緒にいても心ここにあらずって感じだにゃ。
凛たちじゃどうしようもできないってのが……ちょっと悔しい。
「……そーくんに相談してみない?」
「壮大くん?」
「うん……。悔しいけど凛たちじゃ真姫ちゃんの力になれないから」
「でも……」
かよちんが言いたいことは凛にも分かる。
高校3年生で陸上も最後の年だし就職か進学かはまだ分からないけど、今年はそーくんの人生にとって大きな分岐点に立っている。
そんな大事な時期に真姫ちゃんの事を頼んでも受け入れてくれるかどうか……。
「やっぱり壮大くんに悪いよ。壮大くんも今忙しいだろうし……」
「ん?オレがなんだって?」
Side out
「ぴゃあっ!?」
「にゃっ!?」
学校帰りにたまたま凛ちゃんと花陽ちゃんの後ろ姿を見掛け、声を掛けようとする前にオレの名前が出てきたので何の事を話しているのか聞こうと後ろから声を掛けてみたら物凄く驚かれた。
「壮大くん!?いつからここに!?」
「『でも……やっぱり壮大くんに悪いよ』あたりから?」
「もう!凛たちの会話を盗み聞きするなんてそーくんも趣味悪いにゃ~!!」
胸の辺りをポカポカ叩いてくる凛ちゃんにごめんごめん、と謝りながらも改めて凛ちゃんたちに向かって今一度聞いてみた。
「でもさ……さっきまでしてたその会話もう少し詳しく聞かせてもらってもいいかな?」
「……なるほどねぇ」
場所を移して神田駅の高架下にあったカフェにてさっきまで凛ちゃんが繰り広げていた会話の内容を聞いた。
「真姫ちゃんに元気がないと私たちも心配だし……」
「そーくんが忙しいってことは分かるけど……どうか凛たちのお願い事聞いてくれないかにゃ?」
「いいぞ」
「「即答!?」」
そんなに驚くことか?
2人同時にこちらに向かって身を寄り出してきたのでビックリした拍子にカフェで注文した飲み物を落としそうになったが、何とかキャッチして話を続ける。
「凛ちゃんと花陽ちゃんが藁にもすがる思いでオレに頼んできたんだろ?」
他の誰よりも優しい癖にその優しさを表現するのが苦手な幼馴染が苦しんでいるのをアイツにとって初めて出来たであろう親友たちが心を痛めてるんだ。
そんな心を痛めてる親友が頼んでいるのにそれに答えないなんてそんなの男として人として答えないわけにはいかない。
「だから後は……オレに任せろ」
その夜、オレは久々に真姫のスマホに電話をかけていた。
無機質な呼び出し音が3回4回、と繰り返しても一向に出る気配がない。
また時間を空けて電話し直そうと思いスマホを耳元から離した瞬間、通話が繋がった。
「もしもし、真姫か?」
『……何?』
一声しか聞いていないけどその声には力が無く、『元気か?』って聞く前から元気がないことは容易に想像がつく。
『用がないなら切るわよ?』
「今度の土曜日オレに付き合え」
『何で壮大の用事に付き合わなきゃいけないのよ?』
「そう言うな。いいところに連れてってやるから運動しやすい格好でオレん家の前に来い。んじゃ、また土曜の朝にな~」
『ちょっと待って!まだ私行くって決めてな……』
真姫がまだ話している途中だけど通話モードを終了させる。
他の人ならこんな一方的な約束をされたら十中八九来ないけど、真姫なら何だかんだ文句を言いながら来てくれるはずだ。
土曜日に向けてもう1人電話しないとな。
きっと協力してくれるであろう人物に電話を掛ける。
……何て言って貸して貰おうか。
~Side 西木野 真姫~
土曜日の朝……それもまだ太陽が昇っておらず少し薄暗い時間帯。
私は久々にμ'sの練習の時に着ていた運動しやすい服装で壮大の家の前に来ていた。
「まったく……、いつだって急に言うんだから」
いきなり電話かけてきたと思ったらオレに付き合え、なんて言ってたけど何で壮大の用事に付き合わなきゃならないのよ……。
つまらない用事だったら許さないんだから!
表札のすぐ下に付けられていたインターホンのボタンを押して壮大を呼び出す。
家の中から駆け足でこちらにやって来てガチャッとドアが開いた。
「よっ、おはよ」
「おはよ、じゃないわよ。こんな朝早くから呼び出さないでよ」
ごめんごめん、と全然心が籠ってない謝罪を聞きながらまた家の中へと戻っていく。
「真姫、ホイ」
「きゃっ……!?」
家の中からこちらへ何かを持って戻ってきた壮大は私に向かって手に持っていた何かを放り投げたのでビックリしながらも両手で何とかキャッチし、放り投げて来たものを確認する。
「……ヘルメット?」
渡されたのは自転車に乗る時に被るいくつもの穴が空いたヘルメットで、庭の片隅からはいつも壮大が乗っているような細いタイヤの自転車が用意されていた。
「もしかして自転車乗れなかった?」
「バカにしてるの?自転車くらい乗れるわよ!」
「それならよかった。じゃあ早速だけどそろそろ行くぞ」
いつの間にかヘルメットとサングラスを装着し、サドルに腰掛けている壮大を見て急いで私もヘルメットを被りながら聞く。
「何処に行くって言うのよ?」
「この間も言っただろ?……いいところだって」
自転車に乗り始めてだいたい1時間。
私と壮大は都心から少し離れた景色が一望できる丘の上までやって来た。
朝早い時間帯だったから車通りが少なく、思っていたよりも早くついたのが幸いして太陽はまだ見えていない。
「はぁっ……はぁっ……!」
普段自転車に乗っていない上にμ'sが解散してからまともな運動をしていなかった私は震える脚を奮い立たせ息を切らしつつも壮大の後を追ってここまでやって来た。
「だいぶ体力落ちたな」
「そんなことない……って言いたいけど……、壮大の言う通りね」
μ'sとして活動していた頃は雨の日以外はほぼ毎日かなりの量を練習していたとはいえ体力っていうのは案外早く落ちるものね。
それは自分でも薄々分かっていたので最初は否定しようとしたけど、最終的には体力が落ちていることを認めた。
ある程度息も整ってきたところで壮大の真意を知りたくて質問を投げ掛けてみた。
「……聞かないの?」
「お前が最近元気が無いってことを教えてくれた人がいたんだ」
「……そう」
きっと凛と花陽がμ'sの時のよしみで教えたのね……。
「最近胸の奥がポッカリと白くて中身が何もない穴があるような気がするの……」
お互いに沈黙を貫いていたけどその沈黙に耐えきれなくなった私は壮大に自分の心をそっくりそのまま伝えた。
最初は針で指して空いたような小さい物で、その穴は時間が経つにつれて少しずつ大きくなっていった。
穴が大きくなるにつれて『μ'sのみんなとバカやって笑ったりしていたあの頃に戻りたい』という心の迷いが生まれ始めた。
心の隙間を埋めようとペンを握っても苦手な体育の授業で身体を動かしてみてもいっこうに埋まることはなく、逆に穴は大きくなるばかり。
やがて私はどうすることも出来なくなり、放課後になると音ノ木坂学院に入学したての時みたいに決まって1人きりで音楽室のグランドピアノに向かい続けている。
「私はいったいどうすればいいのかしら……」
「さぁ?」
返ってきたのは無責任とも取れる何の感情も無い返事だけだった。
Side out
「さぁ?って……私の話ちゃんと聞いてたの?」
「もちろん聞いてたさ」
ムッとした表情で非難した
真姫の話を余す事無く全て聞いた上での感想がそれだ。
ほぼ自分で答えを言っているような物だから。
「どうすればいいか、なんて今さっき自分で言ったようなモンだろう」
「どうすればいいか分からないからこんなに悩んでるんじゃない!!」
今にも泣き出してしまいそうな顔で悲痛の叫びを上げる。
仕方ない……ホントは自分で気付いて貰いたかったんだけど。
「真姫、1曲だけ歌わないか?」
「……歌?」
「そっ、歌」
言葉で伝わらないなら歌で伝える。
そうやってμ'sは日本一にまで上り詰めてきた。
「そうだな……『僕たちはひとつの光』でいいか?」
こくこく、と無言で頷いてるのを見てからポケットに忍ばせていたミュージックプレーヤーに手を伸ばす。
「歌の詞を感じながら歌えよ?」
イヤホンを外して少し大きめのボリュームで『僕たちはひとつの光』のイントロを再生する。
『~♪』
『僕たちはひとつの光』はメンバーそれぞれの名前を捩った歌詞が言葉遊びのようにところどころ散りばめられたμ'sにとって最後とも言える至極の1曲。
その曲の中に真姫がどうすればいいかの答えが埋まっている。
「…………」
詞を噛み締めながら歌い切り、歌い始める前よりも少しだけ晴れやかな表情をしながらこちらを見た。
……ようやく気付いたようだな。
人生はゲームやカセットテープとは違ってセーブや巻き戻しなんて出来やしないが、いつ如何なる時でもその思い出に浸ることは出来る。
μ'sというグループは解散したとは言え絵里ちゃんたち卒業生とは生き別れた訳じゃないし、昔と違って電話1本メッセージ1通でいつでも特定の人物と繋がることが出来る。
人生の中でもかなり短い高校生活というかけがえのない
「……分かったか?」
「えぇ。壮大に気付かされるのが少し癪だけどっ」
今日会ってから初めて見せた笑顔と共に衣着せぬ発言が戻ってきた。
……ついさっきまで泣きそうなツラしてたくせによ。
と、話し込んだり歌ってりしている内にいつの間にか顔を覗かせ始めた朝陽がオレたちを力強く照らす。
「ねぇ、壮大」
「ん?」
「ありがとう」
真姫は素直じゃない。
「……別に。お礼を言われる事なんかしてねぇよ」
そう思っていたけど、どうやらオレも真姫と同じ部類の人間だったようだ。
~Side 西木野 真姫~
「~♪」
「やっぱり真姫ちゃんの歌は上手だにゃ~!」
「そうだね。それに懐かしいね、その歌」
「真姫ちゃん真姫ちゃん!今度は凛たちが歌うから真姫ちゃんピアノ弾いてよ!!」
「はいはい……」
凛と花陽と私だけしかいない放課後の音楽室。
私がピアノを弾き、凛と花陽が時間を空けて歌い出した。
もう迷わない。
もう囚われない。
う~ん、やっぱり小説は難しい。
執筆活動に力が入らなくて苦しんでます。
まだまだ勉強が足りないですね……。
あっ、そうだ。(唐突)
この度5/26を持ちまして活動1周年を迎えました。
まだまだ至らないところが沢山ありますが、これからもどうか私K-Matsuをよろしくお願いします!
2016/5/30 23:26 ラスト1文変更しました。