ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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たまにはノスタルジックに。

では、どうぞ。


『UA15万感謝御礼企画』 帰り道の駄菓子屋さん

「ほな、また明日な~」

 

「明日の練習遅れるんじゃないわよーっ」

 

「かよちーん!一緒に帰るにゃーっ!」

 

「凛ちゃん待ってよぉ……」

 

今日の練習を終え、みんなそれぞれの家に帰っていく。

 

帰る方向が同じ方向……というよりお向かいさん同士なので小・中の9年間とスクールアイドルを始めてから音ノ木坂学院に顔を出した時は必ずと言ってもいいくらい一緒に帰る穂乃果は家業の手伝いをしなければいけないらしく急いで帰ってしまった。

 

……たまには1人で帰るのも悪くないかもな。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、そうだ」

 

久々に1人で帰ってる途中であることを思い出し、家がある方向よりも少し西側に歩みを進めていく。

 

通りを抜けて道路を何本か跨ぐと細い路地に入った。

 

「ここってこんなに狭かったか……?」

 

道は記憶よりもずっと狭くて2人並んで歩けるかどうかくらい狭かった。

 

記憶を辿って細い路地を歩くと植木の枝に頭をぶつかる。

 

こんなとこ穂乃果に見られたらきっと笑われるだろうな……。

 

細い路地を抜けてからまた2人並んで話しながら進んでいくと小学校が見えてきた。

 

「小学生の時から春になったら先生たちが『今年こそダメかな……』って言ってたっけ」

 

学校の敷地外からでも見える桜の大木を見ながら当時を懐かしむ。

 

他にも当時の給食で好きだった献立や海未が小学4年生になるまで移動教室になる度にホームシック……?みたいになって半泣きになっていた事を思い出しながら小学校の前を通り、しばらく歩みを進めていくと今日の寄り道の目的地についた。

 

学校の帰り道で必ずと言ってもいいくらい寄っていた駄菓子屋さんだ。

 

「…………」

 

無言で駄菓子屋さんに入ってしまった。

 

わざわざ大きな声をかける必要はないけど、足が遠のいたことがなんとなく後ろめたい感じがあった。

 

恥ずかしい話をすると共通の友達や親に話すときにここのお店の事を『帰り道の駄菓子屋さん』って言っていたし実際それで通じてたからここのお店の正式名称は知らない。

 

それでも最後に来たときと雰囲気は全然変わっていなくて、今だけ小学生の時に戻ったような気分だ。

 

強いて変わったとすれば取り扱ってる商品が少し少なくなっていて照明が豆電球から蛍光灯に変わっているくらいだ。

 

「……懐かしいな、ここ」

 

思わず呟く。

 

お菓子やスーパーボールや小さな編み物が出来るおもちゃ。

 

外にはここで買ったお菓子をすぐに食べられるように設置したベンチにゴミ箱。

 

鉛筆や消しゴム、ノートに下敷きといった文房具。

 

ホントに変わっていない。

 

手抜きなんかじゃなく、この形がここの駄菓子屋さんの完成形なんだと思う。

 

ここのお菓子を買っては穂乃果と一緒に食べ比べしてるうちに全部食べてしまってその日の夜ご飯が食べ切れなくて親に怒られた時もあれば、数少ない小銭を握り締めて穂乃果やことりたちとどれを買おうか真剣に悩んで遊ぶ時間が無くなった時もあったっけ……。

 

そんな時代もあったなぁ……。

 

小学校を卒業してからはこの和菓子屋さんに寄ることも無くなり、今日こうして思い出すまで記憶の片隅のホント隅っこに行ってしまっていた。

 

あの頃のようにはいかないかもしれないけどここは1つあの時やろうとも思いもしなかった大人買いというのをしてみようか……?

 

そう思ったオレは改めて店内を歩き回ってみる。

 

おもちゃはもうそんな歳をしていないので無いし、文房具は間に合っている。

 

と、なれば必然的に買うものは決まってくるけどやっぱり悩んでしまって結局あの時と変わってねぇじゃんって1人で笑いそうになっているとあるものを見つけた。

 

「……ラムネ発見」

 

当時は炭酸が強すぎてあまり飲もうとも思わなかった1本70円のラムネ。

 

穂乃果やことりがラムネを飲んでいるところを見て『炭酸飲んで口とか喉とか痛くないの?』って真剣に聞いた事を覚えてる。

 

クーラーが聞いた冷蔵庫からラムネを2本取り出していると扇風機が回りだした音が聞こえてきた。

 

「いらっしゃい」

 

「……どうも」

 

冷蔵庫が開く音を聞き付けたのかおばあちゃんがお店の奥から出てきた。

 

お店は自宅の一部を利用しているので、ガラス戸を開けるとそこでおじいちゃんが缶ビールを煽りながら野球中継をしている事が何回かあった。

 

おじいちゃんは物知りでよく話を聞かせてもらってその次の日学校であたかも自分で仕入れた知識として友達にドヤ顔で話してた記憶もある。

 

けど、どっちにしろ久しぶりすぎてなにを話せばいいのかよく分からん……。

 

悪いことをしてるわけじゃないのになんとなく気まずくなりオレは無言でラムネのビンをおばあちゃんに手渡す。

 

何も言わないけどオレのこと覚えてないのかな? と……自分からは言い出せないのに勝手なことを思ってしまう。

 

「合わせて140円です」

 

「はい」

 

生憎財布の中に10円玉が無かったので100円玉2枚を取り出しておばあちゃんの手の上に乗せる。

 

「はい、60円のお釣り」

 

「ありがとうございます」

 

今の短いやりとりの中にも懐かしい思い出は一杯だ。

 

お金が足りなくて泣き出してしまったことりを優しく宥めたりはしゃぎすぎてお店のものを壊してしまったオレを叱ったり、 天気がよくて暑い日には麦茶を出してくれたり……。

 

お店と同じくらいおばあちゃんには思い出がある。

 

だけど中途半端に大人になってしまったオレと穂乃果はそういう話をすることがすごく難しくてお釣りを貰ってすぐ財布の中に入れてお店を出てしまった。

 

……久し振りにビンのラムネ、飲んでみるか。

 

ささくれの少ない場所を選んでベンチに座ってラムネを飲む。

 

飲んでいる途中でふと気付いたがお店にはオレたち以外のお客さんは来ていない。

 

半分趣味でやってるようなものなんだろうけど『これでやっていけてるのだろうか?』と心配になってくる。

 

「やった!1番乗りぃー!」

 

「何が1番乗りだよ!お前横断歩道でも自転車乗ってたじゃねーか!」

「そうだそうだ!」

 

ラムネを飲み終えると小さめの自転車に乗った小学生くらいの男の子が3人やって来た。

 

自転車のカゴには少し痛んだサッカーボールやバスケットボールが入っていて、着ている服は砂塵を浴びたのかところどころ汚れている。

 

その少年たちを眺めていたらその視線に気付いたらしく、少年3人を代表して1番大きい少年が話しかけてきた。

 

「お兄ちゃん……誰?」

 

「オレか?……オレもあの小学校に通ってたんだ」

 

「ふーん……」

 

分かりやすいと言うべきか素直すぎると言うべきか興味がないことをこれっぽっちも隠さずに生返事されてしまった。

 

「それでここもよく来ててちょっと懐かしくなったもんだから寄ってみたっていうか……」

 

「へぇ……」

 

何とか話を広げようとしても少年は生返事1つだけしか返ってこないので物凄く気まずい。

 

「そうだ。こういうの知ってるか?」

 

あまりにも気まず過ぎるのでついとっさにここのおじいちゃんが話していたことや小学校時代に培ってきた知識を披露した。

 

今は禁止されているけどカードが入ったパックからレアカードを見つけ出す方法やドリンクバーでの美味しい組み合わせや意外な組み合わせなどなど脳をフル回転させて少年たちに伝授していく。

 

「そうなの!?俺初めて知った!!」

 

「すっげー!今度それやってみるよ!」

 

「おい!お兄ちゃんが言ったこと他のやつには言うなよ!」

 

すると少年たちは驚いたりしてとてもいい反応を見せた。

 

「ねぇ、お兄ちゃん」

 

「ん?どうした?」

 

一番小柄な少年が自転車のカゴに入っていたバスケットボールを持ってきてオレに手渡してきた。

 

「指先でボール回すことって出来る?」

 

受け取ってすぐにボールに強烈な横回転を加え、右人差し指に乗せる。

 

「「「おぉーっ!!」」」

 

あまりに素直な反応が返ってきたので様々な技をやってみた。

 

「すげぇ!マンガみてぇ!!」

 

「それどうやんの!?教えて教えて!」

 

「練習すれば出来るようになるさ」

 

「次これでヒールリフトやってみて!!」

 

「へいへい……」

 

 

 

 

駄菓子屋さんの前だと言うのに少年たちと遊んでいたら辺りはうっすらと暗くなり始めていた。

 

「もうこんな時間か……兄ちゃんそろそろ帰るわ」

 

「「「えーっ!?」」」

 

別れを惜しまれるのは素直に嬉しかったけど、少年たちにとってもオレにとってもそろそろ帰らないといけない時間帯に差し掛かっていた。

 

「はいはい。あんたらお兄ちゃんにお礼を言ったのかい?」

 

おばあちゃんがいつの間にか外に出ていた。

 

ずいぶん小さくなっちゃったな……と感じるのは背が伸びたのかおばあちゃんの腰が曲がってしまったのかはたまたその両方なのかは分からない。

 

「「「お兄ちゃん。いろいろ教えてくれてありがとう」」」

 

給食の挨拶みたいに声をそろえてお辞儀してから乗ってきた自転車に跨がり、話しながらペダルを漕いで行ってしまった。

 

「ありがとうね」

 

「えっ?あっ、いや……」

 

今しがた少年たちに教えた知識も基本おじいちゃんの受け売りでしかなかったので、こんなに感謝されては照れくさくてしょうがない。

 

何て反応していいか分からず愛想笑いを浮かべてるとおばあちゃんはさっき買ったラムネのビンを今度は4つ冷蔵庫から出して手渡しながら言った。

 

___今度はほのかちゃんたちも連れておいで、そうたくん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日後。

 

また駄菓子屋さんに行きたくなったので駄菓子屋さんへと向かっていた。

 

だが、今回駄菓子屋さんに行くのはオレだけじゃない。

 

「『帰り道の駄菓子屋さん』かぁ……。懐かしいね~」

 

「そうですね。あそこのおばあさまは元気なのでしょうか……?」

 

「でも『帰り道の駄菓子屋さん』って聞くと何だかほっこりするよね!」

 

「その気持ち、分かります」

 

「あそこのおばあちゃんもおじいちゃんも優しいもんね~」

 

帰り際におばあちゃんが言っていた通り穂乃果たちを連れて。

 

前回来たときは無言で入っておばあちゃんが来るまで無言だったけど今回は入ってからおばあちゃんに向かって声を掛ける。

 

「おばあちゃん。穂乃果たちも連れてきたよ」

 

「「「こんにちは!」」」

 

「あらあら、3人ともキレイになったわねぇ……」

 

店の奥から出てきたおばあちゃんは3人を見て笑顔で感慨深呟き、やがておばあちゃんとの話に花を咲かせ始めた。

 

昔ながらの建物から新しくて大きなビルが次々と建てられていく中、ここの駄菓子屋さんはいつの時代になっても変わらずに大人になっていく子どもたちを温かく迎えてくれる事を切に願うばかりだ。

 

 




どうでしょう?

1人暮らしの方は実家に帰りたくなり、実家暮らしの方は小さい頃よく行ってた場所に行きたくなったのではないでしょうか?

話は変わりますがエクストラエピソードの準備も目下進行中であります。

それまでは特別編で我慢してください……

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