ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
と言うわけで今回はこの物語の主役である壮大編です。
もしこれが恋愛映画や小説に出てくる主人公とヒロインのような純愛なストーリーだったらこんな切ない想いをしなくても済んでたのかな…。
私は今日も鳴らないスマホを見つめ1つ溜息をついた。
~Side 高坂 穂乃果~
「穂乃果。壮大とはもう仲直りしましたか?」
「そーちゃんあれから会ってくれるどころか電話にもメッセージにも反応してくれなくて…」
海未ちゃんの問い掛けに黙って首を振る。
高校2年の終わり頃から正式に交際をスタートさせてから4年の月日が流れた。
物心がつく前からずっと一緒にいた彼と生まれて初めてのケンカ。
今までケンカらしいケンカをしたことが無くて赤点取りそうになって家に押し掛けて勉強を教えて貰った時も食器やグラスを落として割ってしまった時も叱りはするものの最後は必ずと言ってもいいほど笑って許してくれた。
こうなってしまった原因は自分が痛いほど分かっているだけに。
『壮大は社会人であると同時に大きな大会を目指すアスリートの一方で私たちはまだ学生です。お互い今までの時のようにはいかないのは当然です。あの優しい壮大でも穂乃果の一言はよほど堪えたのでしょう…』
「はぁ……」
学校からの帰り道。
これで何度目か数えるのも億劫になってきた溜め息をつく。
海未ちゃんが言ってた事は正しくて
気分転換にウィンドウショッピングをしても高校の時からたまに食べてるクレープを食べても脳裏や記憶にはケンカしたあの日の事がこびり付いて離れてくれない。
『え……?急にチーム練習が入った!?その日は前からデートするって約束だったじゃん!!!』
『久々のデートって聞いてたから楽しみにしてたのに……!!』
『そーちゃんのバカ!走ることが恋人のそーちゃんなんてもう知らないっ!!!』
『そーちゃんなんて……大っ嫌い!!』
今となってはだけどあまり会ってくれないイライラやフラストレーションがつもりに積もってつい感情的になったとはいえ言ってはいけない事を言ってしまった。
それで返ってきた言葉は……。
『お前それ本気で言ってんのか?もし本気で言ってんなら今すぐここから出ていけ』
悲しみの感情が混じった拒絶の言葉だった。
その時はすぐ彼の元から立ち去ったが、時間が経つにつれて謝りたくても謝れない罪悪感で押し潰される感覚に嵌まっていった。
「今日どこに行こっか?」
「水族館に行きたい!!」
「また?そんなにペンギンにハマったのか?」
「違うよ?そこの水族館でイカ踊りとタコの躍り食いととナマコの掴み取りやってるの!私ナマコ掴んでみたいの!」
「…なんでナマコの掴み取り?」
特に興味があるわけでも無い少し高そうなドレスのショーケースを見ていたら1組のカップルが後ろを通り過ぎていった。
楽しそうな会話を聞いて、もしあの時ケンカなんてしなかったら…なんてIFの想像をしてしまい涙が出て来そうになった。
「そーちゃん……お願いだから返事してよ」
チクチク痛む胸の痛みを抑えながら彼の名を呼び、私の心とは正反対の夕焼け空を見上げた。
「監督。ちょっと風に当たってきます」
「またか……」
チームの監督に少し休憩したいことをお願いすると手を額に当て、呆れるような表情に変わる。
「最近口酸っぱく言ってるが体調悪いんなら無理に練習なんかしなくてもいいんだぞ?」
「大丈夫です。別に体調も悪くないしどこか痛めてるって訳でもないんで」
首からぶら下げるようにタオルをかけ、中の氷が溶けて結露したマイボトルを片手にトレーニングルームから近くの緑地を目指して逃げるように外へ出る。
「今より気分がよかったらいい風……なんだろうな」
外に出ると渇いた風が吹いていて、トレーニングで火照った身体と滲み出る汗を拭い去るように通り過ぎて行くが今のオレにとってそんなことは些細な事でしかなかった。
穂乃果とケンカし、すれ違いの生活を送るようになってから早くも10日が過ぎた。
売り言葉に買い言葉……って訳じゃ無いけど何であんな事を言ってしまったのか考えても答えは見つからない。
これまで穂乃果とはここまで長引いたケンカをしたことはなく、このままじゃいけないってのは分かり切ってるし毎日毎日送られてくるメッセージや留守番電話に反応してない訳ではない。
メッセージを返そうとしたり電話を掛けてみようと思った事は何度もあるが、その直前で変なプライドが邪魔をする。
「いつからこんなに女々しくなっちまったんだろ……」
「こんなとこで何してんだお前?」
「……部長?」
緑地に生えてる芝生の上に寝転がり、答えなんてない呟きを漏らしたら立華高校の時から何かと縁がある部長に聞かれていた。
「もしかしてサボりか?」
「休憩がてらこの風に当たってたんです」
「それをサボりって言うんだよ」
小さく笑いながらオレの隣に腰掛けてから隣、座るぞと言ってきた。
「今日何やった?」
きっとトレーニングメニューの事を聞いているのだろう。
特に隠す理由も無いので今こうして休憩するまでのメニューを全部話した。
すると部長は一瞬だけ驚いた表情を見せた。
「無理しすぎて感覚がマヒしてんのかもな……」
「え?何か言いましたか?」
「いや…何でもない。ところでお前明日オフだろ?」
「……はい。オフって言ってもやること無いですけど」
「それなら尚更好都合だ。7時に駅前集合な。……たまにはいいだろ?」
そう言い残して部長は立ち上がり、オレの元から歩み去った。
そろそろオレも戻らないとな……。
重たい腰を上げ、我ながら鈍い足取りを辿りながらボトルの腹を強く押して水を口に含む。
水を飲み込んでからまだ監督がいるであろうトレーニングルームへと戻った。
~Side 高坂 穂乃果~
「……ただいま」
大学の近くに借りているアパートの自室の玄関で誰もいないことなんて百も承知だけど、ついつい言ってしまう。
最近の私の生活は目覚ましを適当に昨日の残り物を温めて食べる。
学校に行ってバイトに行って帰ってきて寝る。
そのサイクルが私の生活になっていた。
学校では今までと変わらない振る舞いが出来ているんじゃないかな?と思う。
思うだけでそう見られてるかどうかまでは分からないけど…。
海未ちゃんも海未ちゃんでお家でのお稽古や大学での弓道部の練習などがあるので、頻繁には会っていない。
でも私の中でそーちゃんの存在はかなり大きいものだったらしく、ノートとにらめっこしてもバイトに精を出してもやっぱりそーちゃんの事が頭から離れない。
最後に見たそーちゃんの姿はスポーツドキュメンタリー番組の次回予告の僅かな時間だけ。
寂しさを紛らわすためにバイトの時間を少し増やしてもらったり、他の大学に通ってる絵里ちゃんや希ちゃんに長電話してみたりしても寂しさは消えることはなかった。
「ダメだ…。気分が乗らないや」
今日は授業でレポート課題を課せられ、そのレポートを消化させようと思いノートパソコンを立ち上げてキーボードを叩いていくがどうにも集中できそうにない。
仕方ないから今日はもう寝てしまおうかな……。
そんなことを考えていたら唐突にインターホンが鳴った。
時計を見ればもう夜の11時を回っていた。
こんな時間に誰だろう…?と疑問を抱きながら応答する。
「はい。どちら様ですか?」
『あれ?ここで合ってるよな……?あぁいえ、すみません。高坂 穂乃果さんのご自宅で合ってますか?』
声で男の人だってのは分かるけどインターホンに近付き過ぎているためどんな人が来たのか分からない。
「えぇ、そうですけど……?」
『申し訳ないのですが少し下まで降りてきてもらえませんか?松宮 壮大くんを送ってここまで来たんですが……』
なんでそーちゃんが?と聞きそうになったけど、今はそーちゃんと一緒にいる人の話を聞いた方が早いと思い込み、すぐ行くことを相手に伝えてからエントランスへ向かう。
するとそこにはそーちゃんよりも大人びた雰囲気を放つスーツを着た男性が顔を真っ赤にして寝ているそーちゃんを背負っていた。
ずっと背負わせてる訳にも行かないので部屋に案内し、普段使ってるベッドの上にそーちゃんを寝かせ付けた。
「すみません、こちらです」
「ありがとうございます。えっと……」
「俺は○○と言ってコイツとは高校からの縁なんです。あとコイツからはその名残からか部長って呼ばれてます」
スーツの内ポケットからケースを取り出し、名詞を手渡されたので受け取る。
「どうしてこちらに?そーちゃんは確か別のマンションに暮らしてるはずじゃ……」
「コイツを飲みに誘ったんです。そしたらコイツ酔い潰れちゃって……。家に帰るぞって言ったら『嫌です』って言って聞かなかったから『じゃあ何処に行きたいんだ?』って聞いたらここを教えて貰ったのでやって来たって訳です」
「そうだったんですか……。それにしてもそーちゃん酔い潰れるとこ初めて見た……」
「えぇ。俺も珍しいモン見せて貰いました」
そーちゃんは滅多なことが無い限りお酒は飲まないし、飲んだとしてもここまで酔い潰れるまで飲むことは無かったのでにわかに信じられなかった。
どうやらそれは部長さんも同じみたいで楽しそうにケラケラ笑ってた。
だけどその直後、部長さんは妙に真剣な顔になる。
「実はコイツ相当無理してたみたいなんです」
「えっ?」
「オフシーズンでもないのに自分の事を追い込んでたんです。それで少し酒の力を借りて聞いてみたんです。そうしたら『一番応援していて欲しい人に寂しい思いをさせてしまった。オレがしっかりしなかったせいで嫌われた』ってずっと自分を責め始めて……」
「…………」
「それでお前はどうしたいんだ?って聞いたんです。そしたら『しっかり謝りたい。もう1度穂乃果に笑っていて欲しい』って言ったんです」
「…………」
「コイツは何ともない顔をしながら無理や無茶をする平気で奴なんです。って、それは高坂さんが1番分かってますよね……」
そうだ。
そーちゃんはいつもそうだった。
μ’s結成当初まだ敵対していた絵里ちゃんに啖呵切った事もあれば第2回ラブライブ最終予選直前に私を庇って生死の狭間を彷徨った事もあった。
「高坂さん。俺から言えるのは1つだけです」
___しっかり話し合ってください。
「幸いにもコイツ明日と明後日仕事も練習もオフらしいので……」
「……そうします。ありがとうございました」
「こちらこそ話を聞いてくださってありがとうございます」
そう言い残してそーちゃんの先輩は帰っていった。
次の日の朝。
そーちゃんは頭が痛むのかしかめっ面をしながら寝室から出てきた。
「おはよ、そーちゃん」
「……ん」
「何か飲む?」
「……水」
「氷は?」
「……いらない」
コップに水を注いでテーブルに置く。
ついでに私も最近ようやく飲めるようになったコーヒーのおかわりを飲む。
「…………」
「…………」
少し前までは普通に会話出来てたのに今は全く出来ない。
分かり切ってた事だけど私たちの間の溝は予想していたよりも深くなってしまったらしい。
その事に寂しさを感じてしまう。
「……そーちゃん」
「ん?」
「この前は……ごめんなさい」
「……なんでお前が謝るんだよ」
そーちゃんは悪くない。
悪いのは全部私だ…。
そーちゃんを苦しめていたのも……私だ。
「そーちゃんの先輩が教えてくれたの……。私そーちゃんがここまで苦しんでたなんて知らなかった……!それなのに私……!わたし……!!」
自分の身勝手さに不甲斐なさを感じ、涙が止めどなく溢れ出てくる。
するとそーちゃんはイスから立ち上がって優しく抱き締めてきた。
今まで何度もこうやって抱き締めてきた。
けど今腕の中にいる穂乃果は今までよりも華奢で力の込め具合を間違えば瞬く間に壊れてしまいそうだった。
「ごめんなさい…そーちゃんごめんなさい……」
「オレも悪かったよ。心のどこかできっと分かってくれるって思ってたんだと思う。でもそれが穂乃果を寂しがらせる結果になってしまったんだと思う。だからオレの方こそ……寂しい思いをさせてしまってごめんな?」
「うぅっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!!」
胸に顔を埋める穂乃果は大声を張り上げて泣き出し、泣き止むまでずっとあやすようにただただ頭を優しく撫で続けた。
ただもう一度笑って欲しくて……。
「……ぐすん」
それから何分経っただろうか……。
泣き止んだ穂乃果はゆっくりと離れた。
「……寂しかったんだからね?」
「返す言葉がございません……」
ケンカの原因もこうやって仲直りが長引いた原因はオレにあるのでこの扱いを素直に受け入れるしかない。
「今日と明日そーちゃん休みなんだよね?」
「そうだけど…?」
「仲直りの印として……どこか遊びに行こっ♪」
泣いた影響からか目の周りは少し赤いけどいつもの明るい笑顔でニカッ、と笑った。
やっぱりこいつに涙なんて似合わない。
「笑顔に勝る化粧なし……ってか」
「え?そーちゃん今何か言った?」
「何でもねぇよ。そんで?何処に行きたいんだ?」
「水族館!今その水族館でイカ踊りとタコの躍り食いとナマコの掴み取りやってるんだって!!」
「……なんでナマコの掴み取り?」
「いいから早く行こうよ!」
「その前に着替えさせてくれよ……」
A smile is the best make-up any girl can wear.
Don't ever need teardrops.
So……
インスパイア曲は……予想してみてください。
あっ、そうだ。(唐突)
話は変わりますが壮大の詳しいプロフィール書いてませんでしたね……。
どのタイミングで紹介したらいいのやら……迷ってます。