ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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まともに執筆する時間時間が取れず申し訳ないです。

今回は時間軸でいうとμ's夏合宿直後辺りのお話です。

では、どうぞ。


『お気に入り500記念』 Friend From Infancy

「ねぇそーちゃん」

 

オレの部屋のベッドを勝手に借りてうつ伏せになって足をパタパタさせながらマンガを読んでいた穂乃果はマンガを一旦閉じてベッドの近くのフローリングにウレタンマットを敷いて太ももの前の部分の筋肉を伸ばすオレの方向を向いた。

 

「どうした?」

 

「明日この近くで縁日があるらしいんだけど2人で一緒に行こうよ」

 

「別にいいけど……」

 

「ふふっ、ありがと」

 

いつもなら『わ~い!そーちゃんとお出掛け~!』ってくらい跳ねるように喜ぶけど今回は小さく笑って喜んだ。

 

「それじゃまた明日ね」

 

「あぁ……」

 

いつもと少し違う穂乃果に引っ掛かりを覚える。

 

しかも何で2人だけなんだろう……?

 

別にことりや海未も誘えばよかったのに……。

 

その答えは見つからずその日ずっと首を捻り続けた。

 

 

 

 

 

お昼頃に連絡があって午後6時に神田明神で落ち合うこととなった。

 

別に家が向かい同士なんだからわざわざ神田明神に待ち合わせしなくてもいい気がするけど穂乃果がそうしたいんなら従うしかない。

 

かといって家にいてうっかり寝てしまって寝坊なんかしたら元も子もない。

 

ってことでオレは一足先に出店の屋台が並ぶ道に来ていた。。

 

縁日と言えば型抜き。

 

夕方前から黙々と作業をし続け、今しがた出来上がった物の上に乗っている粉をフッと一息吹いて屋台のおっちゃんに手渡す。

 

「ほい、おっちゃん」

 

「また兄ちゃんか。……持ってけ泥棒」

 

「どうも」

 

苦虫を噛み潰したような表情をしたおっちゃんに手渡し、出来上がった物の完成度をくまなく見てから配当金が入った封筒と交換してもらう。

 

封筒の中身を開けて中に入っているお金の金額を数える。

 

うん、ピッタリだ。

 

どうやらこの型抜きの出店は一応正当に得た配当金を渡すくらいのお金はあるみたいだ。

 

もう一度やってもう少し搾り取ってやろうかと思ったが、思ったよりも長い時間格闘していたのもあって集合時間の15分前になっていた。

 

「そんじゃオレはこの辺で」

 

「もう来るんじゃねぇぞ……」

 

現地調達で財布の中身がかなり潤ったところで待ち合わせ場所となっている神田明神へと向かう。

 

「お待たせ」

 

しばらく待っていると穂乃果の声が聞こえてきたので振り返る。

 

「………」

 

「どうしたの?」

 

私服で来るものだと思い込んでいたのにまさかの浴衣で来たもんだからビックリしてしまったと同時にいつもの黄色のリボンを外し、頭の上でお団子で纏めているので思わぬギャップが……。

 

って、あれ?

 

「穂乃果1人か?」

 

「そうだよ?」

 

「海未とことり誘ってないのか?」

 

「………」

 

海未とことりの名前を出すと少しだけ表情が曇ったが、すぐにパッと明るくなりオレの手首を掴んだと思ったら抱き着くように身体の中心へと持っていかれた。

 

「そろそろ行こっ!穂乃果お腹空いちゃった!」

 

「おぉう……」

 

 

 

 

「そーちゃん型抜きやらないの?」

 

ブラブラ歩いているとついさっきまでやってた型抜きの出店を通り、素通りした事に疑問を感じた穂乃果が聞いてきた。

 

「ついさっきまで荒稼ぎしてたし『もう来るな』って言われたんだ」

 

「そーちゃん型抜き上手だからねぇ……。いつだったかそーちゃんの家と穂乃果の家でお祭りに来たとき1日中型抜きの屋台に籠ってそこのお金を全て貰ってそーちゃんのお母さんに怒られた事もあったよね?」

 

「あぁ~そんな事もあったな」

 

その時の親父は腹抱えて笑い、高坂家みんなは苦笑いしていた記憶がある。

 

「そんなわけで今日だけはいくらでも奢ってやってもいいぞ」

 

「いいの!?じゃあかき氷と焼きそばとお好み焼きとリンゴ飴と牛串焼き買って!2つずつ!!」

 

「いくらなんでも最初から飛ばしすぎじゃねぇ!?」

 

 

 

 

現地調達したお金でかき氷やたこ焼きやラムネといった定番中の定番の物を食べたり飲んだり、射的やヨーヨー釣りなどで遊んだりもした。

 

そうこうしているうちに通行人が多くなり、人波を掻き分けて歩くのにも苦労しそうなくらいになっていた。

 

「次はどこに行く?」

 

「そうだね……きゃっ!?」

 

「穂乃果っ!」

 

人波に入ろうとしたところ小さな悲鳴が聞こえてきたのでとっさに穂乃果の手を掴み、腕の中に抱き寄せる。

 

「あっ……」

 

「とりあえず固まってやり過ごすぞ」

 

「……うん」

 

しばらくの間オレの腕の中で守っていると人波は収まり余裕が出来てきたので穂乃果を解放して歩き出そうとしたその時、着ている上着の裾を掴まれた。

 

「そーちゃん……」

 

「どうした?」

 

「このまま手繋いだままでいい?」

 

「別にいいけど……どうして?」

 

どうしてこのままがいいのか理由を聞くと上目遣いで答えてくれた。

 

「またさっきみたいな人波が来たらはぐれちゃいそうだし……ダメ、かな?」

 

「……いいぞ」

 

上目遣いでお願いされてしまったら断れる訳がなく、穂乃果の小さくて暖かい手を繋いだまま歩き出した。

 

 

 

 

 

 

その後もいろんな屋台を回ったりしてるとアナウンスで花火が始まる時間をスピーカーを通してお知らせしていた。

 

「そろそろ花火が打ち上がる時間だとよ」

 

「そうなの?じゃあその近くまで行ってみようよ」

 

相変わらず手を繋いだまま花火が打ち上がるであろう河原の畔まで歩みを進めていくが、人が多すぎてなかなか前に進めない。

 

それでもどうにか前に進もうとするが、通り過ぎていく人の身体と穂乃果の肩がぶつかってしまった。

 

「きゃっ!?」

 

「穂乃果!?」

 

穂乃果の短い悲鳴と倒れるような音がしたので後ろを振り返ると、穂乃果が足を抑えながら地面に座り込んでいた。

 

「いったたた……」

 

「大丈夫か!?」

 

「足が……」

 

足の違和感を訴えてきたので足首に触れないように浴衣の裾を捲ってみると痛々しく腫れ上がっていた。

 

どうやらぶつかった拍子に足首を挫いてしまったようだ。

 

「立てるか?」

 

「うん……いたっ!?」

 

立とうとするが痛みで顔を歪め、目尻には涙が浮かんでいた。

 

仕方ない……。

 

意を決したオレは穂乃果に背を向けてしゃがみ込む。

 

穂乃果も察したのか何も言わずにオレの背中に身体を預け、腕を首回りに回したのを確認してからおんぶして立ちあがる。

 

「そーちゃん大丈夫?重くない?」

 

「全然。しっかり掴まってろよ?」

 

「……うん」

 

腫れ上がった足首に響かないように少しゆっくりめに歩き出す。

 

幸いにもここから神田明神までの道のりはそれほど遠くはないので、境内で応急処置を施すことにした。

 

境内の石段に座らせてから近くの屋台の人と交渉して氷を貰い、タオルを腫れ上がった足首の上に乗せて氷が入ったビニール袋を当てる。

 

冷やしてる合間を縫って近くのドラッグストアまで走っていってテーピング用のテープと包帯とハサミを買ってきて、戻ってくるとある程度腫れが引いたら残りの腫れを逃がすようなテーピングを施す。

 

ここでようやく背負ってから今までほとんど喋らなかった穂乃果の重たい口が開いた。

 

「そーちゃんごめん……」

 

「何の事だ?」

 

「私が足を挫いちゃったせいで……」

 

自分を卑下する穂乃果の額を黙ってコツン、と突く。

 

「あうっ……」

 

「穂乃果は何も悪くない。それでも気が収まらないならぶつかってきた奴か穂乃果の事を考えないで人波に突っ込んでいったオレのせいにしとけ」

 

実際にその2つが原因で穂乃果は足を挫いてしまったんだしな。

 

「でも……」

 

穂乃果が何かを言いかけたその時、大きな花火が夜空を照らし始めたのでスマホで時間を確認してみると花火が打ち上げ始める時間になっていた。

 

「すごいな……」

 

「……キレイだね」

 

「そうだな。『花・火』とはよく言ったものだよな。一瞬で鮮やかに夜空を照らして儚く消える……。それをキレイだと思えることが花火のいいところだ」

 

鎮魂の意味もある日本の花火の事について自論を話していると穂乃果が急にクスクスと笑い始めた。

 

「なんか今のそーちゃん詩人みたい」

 

「そうか?」

 

「そうだよ。穂乃果なんてそんなこと考えて花火なんて見たこと無かったもん」

 

「まだまだオコサマってことだな」

 

「あーっ!そーちゃんひど~いっ!!」

 

穂乃果がわざとらしく頬をぷくっと膨らませるがすぐに吹き出し、それにつられてオレも笑って花火が打ち上がらなくなるまで2人でずっと花火を見ていた。

 

 

 

~Side 高坂 穂乃果~

 

「それにしてもさ。どういう風の吹き回しなんだ?穂乃果」

 

「なにが?」

 

帰り道。

 

足を挫いちゃった私を背負って歩くそーちゃんが問い掛けて来た。

 

「どうしてみんなを……ことりと海未も呼ばなかったんだ?」

 

あはは……やっぱり気付くよね。

 

「どうしてだと思う?」

 

でも、簡単には教えない。

 

頭の回転が速いそーちゃんならきっと答えに辿り着けそうな気がしたから。

 

「うーん……オレになにか奢って欲しかったとか?」

 

「違うよ?それも少しあるけど……」

 

「え~?じゃあなんだろうな」

 

そーちゃんは本気で考え始めるけど、うんうん唸るばかりで答えは一向に出てこなかった。

 

「降参?」

 

「あぁ降参だ。いくら考えてもサッパリ分からん」

 

そーちゃんの口から降参の声を聞いて少しだけ優越感に浸りながらも答えを教える。

 

「教えてあげるね」

 

「おう」

 

「寂しかったの」

 

「……寂しい?」

 

寂しかったと言いながらそーちゃんの筋肉質な身体に回している腕の力を少しだけ強める。

 

「何で寂しいんだ?最近はいつも一緒じゃだろ?むしろ前までより仲がいいとオレの中で勝手に思ってるけど……」

 

それについてはそーちゃんと同じ。

 

小さい頃から……ううん、私たちが物心つく前からずーっと一緒で住んでる家も向かい同士。

 

もはや家族同然に育ったと言っても過言じゃないと思う。

 

そーちゃんは相変わらず陸上で忙しいけど今年になってからはスクールアイドルを通じてそーちゃんとより一層関わりが出来た。

 

「そーちゃんを取られることが寂しいの」

 

それでも……寂しかった。

 

「オレを取られる?誰に?」

 

「みんなに、だよ」

 

「みんなって……ことりも海未も入ってるのか?」

 

「うん」

 

今まではそーちゃんの事を誰よりも知ってた自信があった。

 

言ってみればそーちゃんは私のものだった。

 

今ではμ'sみんなのそーちゃんだ。

 

「でも、今日だけ特別」

 

「今日は穂乃果だけのオレだったってことか?」

 

「うん。今日だけは昔からそーちゃんの事を知ってる私と私のことを知ってるそーちゃんだけの時間」

 

「……そっか。楽しかったか?」

 

「うんっ!」

 

私の返事を聞いたそーちゃんは頬を緩ませてからもう一度私を落とさないように背負い直してから2人仲良く家に帰った。

 

またお祭り行こうね……2人っきりで。

 

 




夏ももう終わりに近いですね……。

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