ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
先程の1年生組のインタビューの動画を確認中に、東條さんが何気なく呟いた『そう言えばリーダーって誰なん?』という一言が事の発端でオレたちは重い雰囲気のなか、アイドル研究部の部室に並べられたイスに座っていた。
ホワイトボードには…、
『誰よりも熱い情熱を持って、みんなを引っ張っていけること』
『精神的支柱になれるだけの懐の大きい人間であること』
『メンバーから尊敬される存在であること』
という簡潔ながらも的確に捉えられたリーダー論が書かれている。
確かに思い返してみれば、結成当初からμ'sのリーダーは誰なのかということを明確にはしていなかった。
「リーダーには誰が相応しいか…。だいたいにこが部長になった時点で一旦考え直すべきだったのよ。」
にこさんが平べったくてお世辞にも慎ましいとも言えない胸を張っている。
それにしても…。
「リーダーねぇ…。」
「ことりは穂乃果ちゃんでいいと思うけど…。」
オレの呟きを拾うようにしてことりが切り出した。
「ダメよ。今回の取材でハッキリしたでしょ?この子はリーダーにはまるで向いていないわ。」
「それは、そうね。」
にこさんはことりの意見を真っ向から否定し、真姫が便乗する。
そうか?意外と穂乃果にはリーダー気質があると思うけど…。
「それなら海未先輩はどうかにゃ?」
「わ、私ですか!?」
海未か…。向いてないってことは無いだろうけど…。
あ、ダメだ。海未にリーダーは向いてない。
「私には……無理です」
まぁそう答えるわな。
下2つの条件は兼ね備えているが、恥ずかしがり屋の性格からしてみんなを引っ張っていくリーダーには向いているなんて言えないだろう。
「じゃあ、ことり先輩?」
「え?ことり?」
ことりは…、
「リーダーってより、リーダーやメンバーを支える縁の下の力持ちって感じがしないか?」
ことりは熱血と言うよりおっとりとしている娘だ。
ことりの脳トロボイスで『みんな~♪気合い入れて行こ~♪』なんて言われたら気合いなんて入らねぇだろ。
むしろ力が抜けていくわ。
「確かにそうですね…」
これで残るは1年生組とにこさん。
1年生がリーダーってのは、ちと荷が重すぎる気がする。
そうなると残りは…にこさん?
もしかしてにこさん、自分がリーダーになりたいだけという節があるし…。
ちょこっとだけからかってみるか。
「……いなくね?」
「ちょっ!!にこがいるんですけど!?」
「いやだって、にこさんは部長でしょ?」
「それはそうだけど…!ほ、ほら!にこは3年生でしょ?」
「…………え?」
オレは戦慄した。
「なん…だと……!?にこさんが3年生だったなんて…!!」
「あんた…、にこをからかってるでしょ?」
「バレました?」
「またバカにしてー!!」
だってにこさんからかうと反応が面白いんだもん。
でも分かったこともある。
どうやらにこさんはリーダーをやりたいようだ。
でもにこさんも真姫と同じで素直に言葉に出せるようなタイプじゃないから、「やってください!」という言葉を待っているのだろう。
でもそうやってリーダーを決めるのはよろしくないし、わざわざ分かっていて「じゃあお願いします」と言うほどオレもお人好しではない。
「……やっぱ穂乃果なんじゃないか?」
「ちょっと!!にこの話聞いてた!?」
「えっ?穂乃果?」
にこさんがやいのやいの言ってるけど、オレにそんなことは知らん。
「スクールアイドル始めようって言い出したのは穂乃果だろ?」
「にこが一番始めにやり始めてたんだけどなぁ~」
「にこさん、露骨なアピール乙」
よくよく考えたら廃校を阻止するためにスクールアイドルを提唱したのは紛れもなく、穂乃果だ。
それにことりと海未を加え、花陽ちゃんの心に火をつけた。
それに反応するかのように真姫と凛ちゃんも加入した。
にこさんだってどういうやり方で引き込んだかは分からないが、最終的には加入させた実績を持っている。
だったら難しく考えなくてもいいんじゃないか?
約一名納得行ってない人もいるみたいだけど…。
「うーん、あっ!そうだよ!!いるよ!リーダーに向いてる人!!」
穂乃果がずっと考え込んだ顔から急にスッキリした表情で言いはなった。
「……誰だ?」
「そーちゃん!!」
「はっ?」
「確かにそうです!壮大ならいいリーダーになること間違いありません!」
「凛もそーた先輩がリーダーに向いてると思うにゃ!」
「そーくんの女装姿…、ねぇそーくんおねがぁい♪」
海未と凛ちゃんが穂乃果の提案に便乗し、ことりにいたってはヤバいスイッチとレバーが入ってしまってオレを陥落させようと『ことりのお願い』を使ってきている。
「待て待て待て待て!お前ら少し落ち着け!!」
きゃっきゃと騒ぎ出したメンバーを落ち着かせるためにバンバンとホワイトボードを叩き、静かになったことを確認してから口を開く。
「いいか?オレはあくまで君らのサポート役にすぎないし、実際にステージに立つのは君たちだ。そもそもオレは音ノ木坂の生徒じゃないんだぞ?」
「はぁ…、分かったわよ。なら手っ取り早く歌とダンスで総合点が高かった人がリーダー!これでどう!?」
「「「「「「異議なし!!!」」」」」」
こうしてにこさんの提案でリーダー決定戦が開幕した。
~1st Round カラオケ~
「くっくっく…。こんなこともあろうかと高得点が出やすい曲は既にピックアップ済み…。これでリーダーの座は確実に…」
「にこさん?」
オレは黒くなりかけてるにこさんの肩を叩いて、得点が表示されている画面を指差した。
そこには『98.975』と表示されている。
「んなぁっ!?」
その得点を叩き出したのは…、
「ふぅ…、やっぱ人前で歌うのは慣れないわね…」
真姫だった。
しかも歌ったのは自分の得意…、いわゆる勝負曲だった。
この負けず嫌いなお嬢様め…。
「真姫ちゃんすごいにゃー!!」
「ちょっと…!くっつかないでってば……!!」
ソファーに座ったのを見計らってすかさず凛ちゃんが引っ付くが、真姫がそれを振り払った。
そして一通り歌い終えた得点はというと…、
穂乃果 92.549
海未 93.874
ことり 90.874
真姫 98.975
花陽ちゃん 96.720
凛ちゃん 91.284
にこさん 94.071
とみんながみんな90点を越えていた。
「すげぇ…、みんな90点代だ…」
「毎日のレッスンの効果が出てるね」
「そーちゃんも何か歌いなよ!」
穂乃果が曲を転送する機械をオレに渡してきた。
「いや、いいよオレは…。」
けどオレは丁重に断ろうとするのだが、みんなオレを見てきた。
え?何その『え?歌わないの?』っていう目線?
「凛、そーた先輩の歌声聞きたいなぁ…。」
「そうね、私も久々に壮大の歌声聞きたくなったわ。」
凛ちゃんと真姫がオレの逃げ場を塞ぎにきた。
花陽ちゃんも何も言わないけどチラチラとマイクとオレを交互に見ていた。
「うみぃ…、うみぃ……」
我ながら情けない声を出して海未に助けを求めた。
「壮大、諦めてください」
しかし、キレイな笑顔でオレの助けを不意にした。
ちぃっ!海未がダメなら…!
「ことり……」
「そーくん…」
ことりはいつもの柔らかい笑顔でオレに向いてくれた。
「ことりぃ……」
ことりなら…、ことりなら何とかしてくれる…!
オレは藁にもすがる思いでことりに助けを求めた。
「ことりもそーくんの歌聞きたいなぁ…。そーくん、お願い♪」
ここにオレを味方する人なんていなかった…。
どうやらここにいるメンバーはどうしても歌ってほしいらしい。
観念したオレは穂乃果から機械を受け取り、歌う曲の登録番号を入力した。
「いいか?1回だけだぞ?」
「「「やったー!!!」」」
「はい、マイク。」
「どうも。」
オレは最後に歌ったにこさんからマイクを受け取り、スイッチを入れる。
実はというとオレはバラード調の曲の方が好きだったりする。
おっと、そろそろ歌い出しだ。
オレはカラオケのBGMに乗せて歌い出した。
「~♪っと、こんなもんか…。」
歌い終わり、マイクを置いたところでみんなを見てみると唖然としていたり顔を少し赤くしていたりと様々なリアクションがあった。
「どうしたんだよ、みんな?」
みんな何も喋らなかったので慌てて問いかける。
まさかあまりにも下手だったから反応できない…とか?
「そーちゃんってこんなに歌が上手かったんだね…」
「そーた先輩ってやっぱり凄い人だったんだにゃ…」
「そーくん、カッコいい…」
「壮大さんの意外な一面が見られました…」
「何でしょうか?この負けたような気分は…」
「生意気ね。壮大のくせに…」
穂乃果と凛ちゃんはオレに感心していて、ことりと花陽ちゃんは表情が何故か蕩けてて、海未は少し落ち込んでいて、真姫に至っては生意気とまで言われた。
何でさ…。
「ぐぬぬぬぬぬ……」
んでにこさんはというと、ぐぬぬってた。
あ?点数?90点だとだけ言っておこう。