ラブライブ!~Miracle and Track~ 作:K-Matsu
では、どうぞ。
オレこと松宮 壮大は悩んでいた。
日曜日である明日は、午前中に練習をしてからの半日オフになっている。
そう。明日は凛ちゃんとお出かけする日だ。
だが…、
「……迷う。」
どの服を着ていけばいいのか必死に考えていた。
そもそもオレはあまり服を持っていない。
普段は学校と家の往復のみで今回みたいに遊びに行くことなんてあまりなかった。
だからいざ遊びに行くとなると、服が無さすぎてどうしようかというところから始まるのだ。
あぁ、こうなるなら普段から少しでも服にお金をかけていればよかった…。
と、今さらながら後悔しても遅いので明日考えて今日は寝ることにしよう…。
オレは電気を消して布団に潜り込んだ…。
(そーたせーんぱいっ、こっちこっち!早く早くー!!)
(そーたせーんぱいっ!はい、あーん♪)
(えへへ…、そーた先輩とお揃いだにゃ……)
(そーた先輩、あのね……今日、凛のお家に人がいないんだよ?)
うわぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!
バカ!バカ!!オレのバカ!!!
静まれ!静まれっつってんだろ!?オレの煩悩!!
こんなんだから彼女いない=何だよ!!!
いいか?凛ちゃんは大切な後輩、凛ちゃんは大切な後輩、凛ちゃんは……。
ここでオレの意識は途切れた。
「少し早く来すぎたかな…?」
待ち合わせ時刻の2時まで残り30分。
オレの今の服装は、紺のジーンズに白のカッターシャツを少し捲っている。
アクセサリーとしてシルバーネックレスを身に付けるというオレの少ない服のなかでは相当無難な服装に纏まった。
服装とか変じゃないよな…?とか思ってるとスマートフォンが鳴り始める。
着信相手は凛ちゃんだった。
……まさか今日来れなくなったとか!?
そんな一抹な不安が過る中、電話に応対した。
「はい、松宮です。」
しかし、通話はすぐに切れた。
何だったんだ…?と思いながらスマートフォンをポケットの中に入れようとしたその時…!
「だーれだっ♪」
「のわっ!?」
いきなり視界が小さな両手によって塞がれた。
背中には慎ましくも柔らかい2つの山が当たっている。
胸って小さくても柔らかいんだな……。
って何考えてんだ!?
昨夜から何か変だぞオレ!?
「えっと、その声は…凛ちゃん?」
「あったりー!!」
塞がれていた視界がパッと明るくなり、とてとてとオレの目の前に凛ちゃんが現れた。
凛ちゃんはフリルのショートパンツを選んでいて、スラリと伸びている素足がとても眩しい。
トップスには黒のブラウスに黄色のジャケットを羽織ってる。
「どお?似合うかにゃ?」
その場でくるりと回った凛ちゃんに見惚れてしまった。
やっべぇ。超可愛い…。
「……そーた先輩?」
「ああ、すっげぇ似合ってるよ。」
「にゃにゃっ!?」
素直に感想を述べると凛ちゃんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「凛ちゃん?」
「さ、さーて!凛、早速だけど行きたいところがあるんだにゃ!そーた先輩も早く行くにゃ!!」
「ちょっ、凛ちゃん!?引っ張るなっ……!!」
誤魔化すかのようにテンションを上げて、オレの手を掴んでグイグイと引っ張った。
「まずはここにゃ!」
凛ちゃんに引っ張られながら連れてこられたのはラーメン屋。
凛ちゃんによると、このお店は都内でも比較的に有名な店らしい。
そんな有名なお店も昼メシ時のピークが過ぎて、行列はほとんどできていなかった。
「へい、いらっしゃい!おっ!凛ちゃんいつもご贔屓ありがとよ!」
「こんにちは、おにーさん!いつものやつ2つお願いするにゃ!」
「あいよ!注文入りやしたー!!」
カウンターにいた若いお兄さんが厨房に向かって大きい声で注文する。
「ん?そこのキミ、どこかで…」
「そーた先輩は陸上の短距離選手なんだにゃ!!」
「あぁ。どっかで見たことあるなぁとは思ってたんだよ!」
オレを置いてけぼりにして話し込む凛ちゃんと店員のお兄さん。
えーっと…。話についていけないのですが…。
「このおにーさんは今でも現役の陸上選手なんだにゃ。」
「と入っても俺は
「出ないつもりです。今はインターハイに照準を絞ってますから。」
「ありゃ。まぁ身体が出来上がってない高校生のうちはインターハイが一番の大会だし、無理して出なくてもいい感じはするがな。はい、豚骨醤油ラーメンお待ち!」
「「ありがとにゃ!(ございます。)」」
お兄さんから来たのは豚骨醤油ラーメン。
凛ちゃんはいつもここに来てこのラーメンを食べてるんだな…。
箸を持ってラーメンを啜り始める。
うん、上手い。
時間とお金に余裕が出来たらここに来ることにしよう。
このお兄さんと陸上談義をして国内トップクラスの話を聞けたことに越したことは無いしな…。
するとお兄さんは唐突にこんな話を持ちかけてきた。
「それにしても意外だったな。」
「うん?意外って何のことだにゃ?」
「凛ちゃんが
「ブフォッ!?」
オレは思わず噎せてしまい、その拍子にラーメンの麺が鼻から飛び出してしまった。
直ぐ様近くのティッシュに手を伸ばし、鼻を咬む。
鼻を咬む時にチラッと凛ちゃんを見てみると、真っ赤になっていた。
「にゃ…、にゃに言ってるにゃ!?そーた先輩とは…!そーた先輩とは……、そう!仲のいい先輩後輩の関係にゃ!」
凛ちゃんはテンパって目をグルグルさせながらお兄さんに必死に弁解していた。
こんな凛ちゃんは初めて見るけど、何だか可愛いからそっとしておこう。
それにしてもやっぱこのラーメン、上手いな。
「うぅ…。酷い目に遭ったにゃ……」
「お疲れさま…?」
うにゃだれてる(誤字ではない)凛ちゃんの隣に並んで歩く。
「そーた先輩も凛と一緒におにーさんに否定してくれれば話が早かったのにぃ……」
「ごめんごめん。でもラーメン、美味しかったよ。」
「あーっ!話逸らしたにゃー!!」
うにゃーっ!ってオレに飛びかかり、ポカポカと胸を叩く。
けど、鍛えているのもあるし赤くなっているのもあるので全く痛くない。
「あ、そうだ。凛ちゃんまだまだ時間は大丈夫?」
「にゃん?」
「行きたいところがあるんだよ。オレと一緒に来てくれる?」
「うわーっ!!」
凛ちゃんが目をキラキラ輝かせる。
こんなに喜んでくれるなら、こっちも思わず頬が緩んでしまいそうだ。
そう、オレのリクエストで凛ちゃんとやって来たのは遊園地。
実はというとオレは今まで遊園地に来た記憶がなかった。
穂乃果は覚えているらしいから、もしかしたらオレが物心つく前だったのかそれおもつまらなくて途中で飽きたのかもしれない。
でも、今日ここに来たのは遊園地で遊ぶことじゃない。
もっと別の物を凛ちゃんと見たくてここに来たのだ。
「そーたせーんぱいっ♪早く早く!」
「凛ちゃん、待った!!!」
凛ちゃんが待ちきれないと言わんばかりに駆け出すが、腕を伸ばし凛ちゃんの小さな手を掴んだ。
「……そーた先輩?」
「ここで走ったら危ないだろ?それに時間はまだあるんだし、ゆっくり行こう?」
「うんっ!」
何だかこうしてみるとやんちゃな妹みたいだなぁ…。
凛ちゃんはオレの事どう思ってるか分かんねぇけど。
それにしても凛ちゃんが妹…。大いにアリだな。
あぁ…、何でオレは星空家の息子として生まれてこなかったんだ…。
「まずはあれにゃ!」
凛ちゃんが指差したのは最近できた世界で一番スピードが出るというジェットコースター。
通称『ブラッド・オブ・ドラグーン』。
「凛ちゃん…、あれやめねぇ?」
「あれれー?乗りたくないのー?あっ、もしかして怖いのかにゃー?」
凛ちゃんが手で口許を隠しながらニヤニヤしている。
「あん?誰が怖いっつったよ?」
やられたらやり返す…、倍返しだ!
って言う訳じゃないけど後輩…、しかも女の子の挑発なんて屁でもない。
オレは凛ちゃんに挑発し返した。
「よーし!そーた先輩もノリ気になったところで早速行くにゃ!」
……えっ。
乗るなんて一言も言ってねぇ…、
「にゃーっ!!!!!!」
「ちょっ、まっ、アッー!!!!!」
お願いだから汚い叫び声だなんて言わないで欲しい。
あれは乗り物じゃない。
人を気絶させられる凶器だ。
「おーい、凛ちゃーん!」
色んなアトラクションを乗っているうちに、凛ちゃんとはぐれてしまった。
一通り乗ったアトラクションを回って見たけど、黄色のジャケットが見当たらない。
「何処に行ったんだろ……」
オレはまた来た道を戻ろうとした。
「やめてくださいっ!!」
「今の声は…、凛ちゃん!?」
近くから凛ちゃんの声が聞こえたような気がした。
こっちからかっ!?
オレは凛ちゃんの声が聞こえた方に向かって駆け出した。
~Side 星空 凛~
「やめてくださいっ!!」
「いいっしょ別にー?そんなやつなんて放っておいて俺様と遊ぼうぜ?」
凛はそーた先輩とはぐれてしまい、気持ち悪くてチャラい男の人に絡まれてしまった。
最初は断ってきたんだけど、しつこくてしつこくて今のように人があまり通らないようなところで後ろの木に肘をつけて迫っている。
うぅ……、近いし気持ち悪いよぉ…。
「ホラ、俺様が遊んでやるって言ってんだから早く……しろよ!!」
「にゃっ!!」
目の前の気持ち悪い男の人が、凛の腕を掴んで無理矢理引っ張ろうとする。
いやだ…。怖いよ。
助けて……、そーた先輩!!!
「おい。てめぇこんなとこで何やってんだよ?」
来た。
来てくれた。
凛の数少ない大切な先輩が。
「あぁん?てめぇに関係ねぇだろ?」
「あん?関係あるに決まってんだろカス。」
そーた先輩は口が悪くなるほど怒っている。
「あ?なに?てめぇはこいつのツレだって言いてぇのか?」
「そうだっつったらどうするよ?」
そーた先輩が気持ち悪い人に睨み付ける。
「そうかよ…、だったらそいつの目の前で無様な醜態を晒しやがれぇ!!」
言い終わらないうちに気持ち悪い人が1発殴って、よろけてるそーた先輩を担ぎ上げ壁に投げつけようとしていた。
やだ…。そーた先輩がボコボコにされちゃう。
そんなのやだよ…。
「そーた先輩っ!!!」
凛は先輩の名前を叫んでいた。
だけど、そーた先輩はなぜか笑っていた。
「こっちは1発貰ってんだから、何されても文句言うんじゃねぇぞ?」
「はぁ!?何余裕ぶっこいてんだよ!!自分の状況分かってんのかよぉ!?」
「分かってねぇ訳ねぇ……だろっ!!」
壁に投げられた瞬間、そーた先輩は膝を曲げて衝撃を吸収してから両足で壁を蹴りつけた。
「せいっ…、やぁぁぁぁぁあっ!!!」
壁を蹴りつけたことによって勢いよく飛び出したそーた先輩は気持ち悪い人に飛びかかりながら首元に膝を入れて、そのまま地面に叩き付けた。
凛が最近やったゲームの必殺技みたいだった。
「ゲホッ、ゴホォッ!!!」
「なぁ、あんた?」
気持ち悪い男の人はさらに気持ち悪い顔になって、必死に酸素を求めているところにそーた先輩が歩みより、踵をつけてしゃがんだ。
「まだやる気あるんなら相手するけど?」
「ヒィッ!?」
「あの娘はあんたみてぇな肥溜めから出てきたような奴が触れていいような娘じゃねぇんだよ。分かったんならとっとと消えやがれ!!」
そう言って気持ち悪い男の人はどこかへ走っていった。
「ったく…。凛ちゃん、怪我は…うおっ!?」
凛は気付いたらそーた先輩に抱きついて、大声をあげて泣いた。
もしかしたらそーた先輩が怪我をするんじゃないかって…。
もしかしたらそーた先輩が来てくれないかと思って…。
そう考えるだけで涙が溢れて止まらなかった。
そーた先輩は凛が泣き止むまで黙って片腕を背中に回し、もう片方の手で凛の頭を優しく撫でてくれた。
~Side out~
凛ちゃんを泣き止ませた後、時間が迫ってきていたオレたちが最後に乗ったアトラクションは観覧車。
女の子と遊園地に来たときに最後に乗る定番のアトラクションだ。
「凛ちゃん、今日1日楽しかったかい?」
「うん…。」
オレの質問に頷いてくれるが、凛ちゃんの表情は依然として暗い。
あのナンパ野郎がやったことがなければ、今の質問は笑って返事をしてくれたはずなのに。
これはオレの責任でもあることだ。
でも、過ぎたことを悔いても仕方ない。
ならここでしか見られない光景を見せてあげようじゃないか。
「凛ちゃん、ここでしか見られない光景の話って知ってる?」
「……知らないにゃ」
凛ちゃんは静かに首を横に振る。
聞いておいてあれだが、そうだと思う。
なんせ話を切り出したオレもつい最近まで知らなかったことだったから。
そろそろ時間な筈だ…。
「その景色って言うのはさ…、これの事さ!」
ーーードォォォン…!!
「にゃっ!?」
言い切った瞬間に週末限定で行われるナイトパレードのフィナーレを飾る花火が打ち上がり、凛ちゃんがビックリした表情で観覧車の窓から外を見る。
実は凛ちゃんにこれを見せたくてこの遊園地に来たのだ。
でもあくまで都市伝説レベルの話だったので、色んな人の話を聞いたり掲示板のスレッドを見たりした上で来たので内心は見れるかどうか不安だったのだ。
「キレイだにゃあ……」
でも、連れてきた甲斐があった。
「凛ちゃん、もう一度聞くよ?今日1日楽しかったかい?」
「うんっ!!すっごく楽しかったにゃ!!!」
今日1番の笑顔が見られたのだから……。
家に帰ってきて、部屋着に着替えてすぐお風呂に入り、今はベッドの上でボーッとしていた。
途中で変な人に捕まっちゃったりしたけど、楽しかったなぁ…。
特に最後に観覧車で見た花火…、キレイだったなぁ。
でもなんでだろ…?
何でそーた先輩の事を考えるだけで胸がこんなにドキドキして、ポカポカするんだろう…?
あれ?あれれ??まさか凛、病気になっちゃったのかな…?
そう思った凛はすぐに部屋の電気を消して、いつもより早いけど寝ることにした。
それが恋だと分かるのはまだちょっと先のお話…。
今度デート回書くときはもっともっと甘ったるい話を書きたい。(切実)
では、本編に戻りまーす。