ラブライブ!~Miracle and Track~   作:K-Matsu

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第20話 月夜の邂逅

『4×100Mリレー決勝 第1レーン…、』

 

関東大会もリレー競技を残すのみとなった。

 

個人種目にエントリーをしていたオレはというと、100Mと200Mもホントにギリギリで勝ち抜き念願のインターハイ出場を決めた。

 

そして…、

 

『第7レーン 立華高校 東京』

 

オレが出場する最後の種目、リレー競技だ。

 

ちなみにオレは第2走だ。

 

これで6位以内に入れば……!!

 

『On your marks……』

 

スターターのアナウンスと共に第1走を務める選手は、トラックに一礼をしてからスターティングブロックに足を乗せる。

 

『Set……』

 

スタジアム内は張り詰めた空気に包まれる。

 

そしてスターティングピストルが鳴り、スタジアム内の空気は応援の歓声で沈黙を切り裂いた。

 

少しスタートが遅れた第1走のランナーはみるみるうちにオレに近づいてくる。

 

「行けぇ!松宮ぁ!!!」

 

そして、バトンを貰ったオレは第1走者のゲキを背にトラックのタータンを力強く蹴った。

 

 

 

 

 

 

家に帰ってきたら星や月が静かに照らし出される夜だった。

 

年齢によっては、眠ってしまう人もいるような時間帯だ。

 

大会が終わったという安心感と、張り詰めた緊張の糸が緩んだことによる疲労を引きづりながら家についた。

 

「ただい…ん?」

 

家の玄関を開け、リビングを通ると小さい光と共にテーブルに突っ伏している人を見つけた。

 

こんな時間に無人のオレの家に入り込んでるのは誰だろう…。

 

オレはテーブルに近づくと…、

 

 

 

 

「くー……、すー…、んん…そー、ちゃん……」

 

 

 

 

テーブルに突っ伏している正体は、穂乃果だった。

 

気持ちよく眠っているのか、オレが帰ってきたのに気がついていない。

 

それにテーブルには穂乃果の口から垂れているヨダレで濡れていた。

 

普段なら手荒く起こすのだが、今日は音ノ木坂学院のオープンキャンパスでμ'sのライブパフォーマンスをやったのだそうだ。

 

だからオレは自分の荷物を部屋に置いたついでに、タオルケットを持って下へ降りて穂乃果の背中に掛けてあげた。

 

さて、穂乃果が起きるまでの間にシャワーでも浴びてくるか…。

 

 

 

 

 

 

 

「そーちゃん、おかえり」

 

シャワーから上がるといつものぺかーっとした笑顔とは違い、優しい笑顔の穂乃果がいた。

 

「わりぃ、起こしちまったか?」

 

「ううん、今起きたばっかりだから大丈夫だよ」

 

「何か飲むか?」

 

「じゃあ…、牛乳もらおっかな」

 

「おう」

 

オレはマグカップに牛乳を、ガラスのコップにアップルジュースを注いでから冷蔵庫からプリンを取り出す。

 

「ほらよ」

 

「ありがと」

 

穂乃果は牛乳をコクコクと飲んでからマグカップを置いた。

 

「そーちゃん、頑張ったね。おめでとう」

 

きっと関東大会のことを言っているのだろう。

 

リレーも6位に入り、今年のインターハイは100Mと200Mに加え、リレーの3種目に出れることになった。

 

「ありがとう…。何か誉められると照れるな」

 

「真姫ちゃんや凛ちゃんなんてスマートフォン片手に速報を見てはソワソワしたりしてたんだよ?」

 

「マジか……」

 

想像して見ると面白い画だけど、そんなに心配されるなんて思わなかったわ……。

 

って、オレの話は別に面白い物でもないので話題を穂乃果たちの事に移す。

 

「そういう穂乃果こそオープンキャンパスどうだったんだ?ライブパフォーマンスもやったんだろ?」

 

「うんっ!すっっっっごく楽しかった!」

 

穂乃果は嬉しそうに、楽しそうにライブパフォーマンスの時の話をしてくれた。

 

絵里さんと公園で話したあと、すぐにμ'sのメンバーに向かって自分の非を認めてから頭を下げて自分も仲間に入れて欲しいと懇願したのだそうだ。

 

それと同時にμ'sの名付け親である希さんも絵里さんと同じタイミングで、穂乃果たちに仲間に入れて欲しいとお願いしたのだそうだ。

 

それを聞いた穂乃果は二つ返事で了承し、μ'sはとうとう9人の女神たちによって完成されたのだそうだ。

 

余談なのだが、その日を境に絵里さんは人が変わったかのように笑顔が増えて、本当に楽しそうにしているのだとか。

 

「これもそーちゃんのおかげだね」

 

「オレのおかげ?」

 

なんでだ?

 

オレ何にもしてないような気がするんだが…。

 

「そうだよ。穂乃果が『スクールアイドルになる』って言ったとき、そーちゃんは一度渋ったけど嫌な顔しないで手伝ってくれるって言ってくれてホントに嬉しかったんだよ?その後もいろんな場面で穂乃果たちを助けてくれて…、ことりちゃんも海未ちゃんも感謝してたんだよ?」

 

「やめてくれよ…、別にオレはそんなつもりで手伝い役に名乗りを上げた訳じゃないんだぞ?」

 

「それでもだよ。メンバー代表してお礼言わせてよ…。そーちゃんありがとう」

 

ったく…。

 

ここまで素直にお礼言われると何も言い返せねぇじゃねぇか…。

 

「学校…、存続されるといいな」

 

「うんっ!きっと大丈夫だよ!」

 

何を根拠に大丈夫って言ってるのか分からないけど、何でか分からないけど穂乃果がそう言うなら、きっと大丈夫な気がしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

オレらはその後も他愛の無い雑談をしていると、向かいに住んでいるとはいえ穂乃果を送り届けなければいけない時間になっていた。

 

「穂乃果、夏穂さんが心配するから家に帰りな?」

 

「えー?もっとそーちゃんとお喋りしてたいよー」

 

むーっと睨み返してくるが、娘が家に帰ってこないというのはよろしくないだろう。

 

「わがまま言うんじゃありません。ライブパフォーマンスやって疲れてるんだから早く寝て少しでも疲れを癒しなさい」

 

「分かったよぉ……」

 

ようやく理解してくれたのか穂乃果はサンダルを履いて、家を後にしようとした。

 

「あ!そーちゃん、あっち向いて!!」

 

「え?」

 

「いいから!いいから!!」

 

あまりにもあっちを向けと言われるので、オレは穂乃果に従って指差された方向を見た。

 

何だよ……、何もねぇじゃねぇか。

 

「おい、ほの……」

 

ーーーチュッ……。

 

「……か?」

 

穂乃果がいる方向に向き直ったことによってオレの唇は、穂乃果の唇と重なってしまった。

 

「えへへ……、そーちゃんに穂乃果のファーストキスあげちゃった♪じゃあそーちゃん!まったねー!」

 

頬を赤くした穂乃果は、すたこらさっさと自分の家に戻っていった。

 

まだ唇に残ってる穂乃果とのキスの感触を感じつつ、オレは自分の指を唇に持っていく。

 

キスされた…?

 

オレが、穂乃果に……?

 

突然の行動にオレはただただ呆然とするしかなかった。

 

 

 

 

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